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2006年8月27日 (日)

「堀病院」事件(その2)

昨日は産婦人科というエントリーで「堀病院」事件に関連して考えるべきこととして産科医療の現状を私なりに記載しましたが、本日もこの事件で言われている無資格診療について考えてみることとします。

堀健一院長他が25日に記者会見し、「患者や妊婦に不安を与え、深くおわびしたい」と陳謝したと報道されています。無資格診療についての言及がどうであったのか、知っていませんが、無資格診療とは、何であるのかについてこのエントリーでは考えてみたいと思います。

(1)保健師助産師看護師法

保健師助産師看護師法の違反として、神奈川県警は家宅捜索を行ったのですから、先ずは法律を見ておく必要があります。その第1条に法律の目的が規定されており、この意味は私にも十分理解できます。

第1条  この法律は、保健師、助産師及び看護師の資質を向上し、もつて医療及び公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする。

問題となっているのは、次の第3条と第5条です。

第3条  この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

第5条  この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

実は、解ったような解らないような文章なのです。但し、今回の議論については、第37条も読んでおいた方がよいと思うのです。

第37条  保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

(2)厚生労働省医政局看護課長通知

ところで、看護師は妊婦の世話が全く出来ないのか、ある程度は出来るのか法律を読んで、解らないので、どうするか。昨日、私は法律の解釈は司法(法廷)でないと最終的には決められないと申しました。その通りなのですが、第3条、第5条を読むと厚生労働大臣の免許を受けてとあり、例えば、第14条第1項に次のような条文もあります。

第14条①  保健師、助産師若しくは看護師が第9条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

厚生労働省は助産師、看護師等の免許を与え、取り消すことができる権限を持っており、この業務を行うためには、第3条及び第5条の助産師及び看護師の業務の範囲についても厚生労働省としての統一見解を持つこととなります。持っていなければ、保健師助産師看護師法に関する厚生労働省としての仕事が出来ないことにもなるからです。

昨日のエントリーの(4)の緑部分の冒頭の平成14 年11 月14 日付けの文書とは、厚生労働省内部の文書です。何を言っているかというと、次の通りです。

表記について、別添1の鹿児島県保健福祉部長からの照会に対し、別添2のとおり、回答したので御了知の上、貴管下の病院、診療所への周知徹底及び指導方をよろしくお願いしたい。

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別添1

下記の行為については、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)の第3条で規定する助産であり、助産師または医師以外の者が行ってはならないと解するが貴職の意見をお伺いしたい。

(1) 産婦に対して、内診を行うことにより、子宮口の開大、児頭の回旋等を確認すること並びに分娩進行の状況把握及び正常範囲からの逸脱の有無を判断すること。

(2) 産婦に対して、会陰保護等の胎児の娩出の介助を行うこと。

(3) 胎児の娩出後に、胎盤等の胎児付属物の娩出を介助すること。

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別添2

貴見のとおりと解する。

長くなってしまってお詫びします。(これらの文書は日本産婦人科医会ウェブhttp://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/TAISAKU/kome0410.htmから取りました。)

助産師、看護師の第3条、第5条の解釈については、法廷で争われてないし、法廷で争うとしても単純に線引きをすることが出来ないから、やっかいです。当事者間で問題が発生しないなら、法廷に持ち込む必要が無いと言えます。うまく機能しているなら、それで皆Happyであり、わざわざ問題を起こす必要もないからです。

(3)日本産婦人科医会の要望(見解)

昨日も引用した日本産婦人科医会の文書(日本産婦人科医会2005年9月5日づけ産科における看護師等の業務について)が産婦人医会の意見であり、2004年9月13日にも同様な医政局看護課長通知があり、日本産婦人科医会は2004年10月8日に要望書(看護課長通知「産婦に対する看護師業務について」に対する要望書)を提出しています。

(4)私のコメント

以上を読んで頂いた人には、「看護師の仕事でこれが無資格診療だ。」と決めることの困難さをお解り頂けたと思います。

最も重要なことは、第1条の「医療及び公衆衛生の普及向上を図ること」であると私は考えます。そして、我々が安心して医療を受けられる制度を維持、発展させていくことであると私は考えます。助産師・看護師の仕事の内容も、時代と共に変化すると思っております。医療機器の進歩もあるでしょうが、医師不足、助産師不足の解決の方法として人の養成も必要ですが、医師・助産師・看護師が良い連係を保ったチームワークでコメディカルとして仕事をしていただくことも重要なことと思います。

「厚生労働省に任せておけば」とか「私には何もできない」或いは「私の問題ではない」というのは、危険な気がするのです。又、マスコミに惑わされることにも気をつけた方がよいと思うのです。「本質を突かないさも解ったように発言するTVのコメンテーター」と言った人もおります。

安心できる医療を求めていきたいと思います。法は、国民のためにある。法の制定は国会である。そして法のなかには国民の生活や活動に直接関係するものも多い。法を解釈し、法の正しい運用を行うのは、最終的には国民であると私は考えます。主権在民の下に、良い医療、安心出来る医療を求めていきたいと思います。

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コメント

「ある産婦人科医のひとりごと」へのトラックバックありがとうございます。
「助産師の有資格者の数は毎年どんどん増えている筈。しかし、産科の開業の先生のところでは、いくら必死になって助産師を募集しても、なかなか助産師を集められないと聞きます。」との記述は実際に携わっておられる産婦人科医の生の声として耳の奥に残ります。

投稿: 売れない経営コンサルタント | 2006年8月27日 (日) 11時49分

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