« 日本航空 | トップページ | 産科崩壊(その3)-尾鷲市が産科医不在に »

2006年9月 3日 (日)

日本航空(その2)-委員会設置会社への移行は?

株式会社日本航空(以下日航と書くことにします。)は、会社の機関として株主総会、取締役会、監査役会を持ち、取締役、監査役、会計監査人がいる上場株式会社です。取締役の人数は18人で、そのうち3人が社外取締役。監査役の人数は5人で、そのうち3人が社外監査役です。

従い、上場株式会社としては、最も多く見受けられる会社のタイプ(機関構成)です。一つ前のエントリーで日航のことを書いたのですが、書き進むに連れて委員会設置会社のほうが、日航にふさわしいのではないかと思い始めました。そのあたりのところを書いてみます。

(1)委員会設置会社とは?

2002年5月の商法特例法の改正(2003年4月施行)により、今から3年ちょっと前から日本の株式会社で機関構成として採用することが可能となりました。米国で採用されている株式会社の機関構成の一つを日本にも取り入れたものであると理解します。なお、現在は会社法による委員会設置会社で、商法特例法は廃止されました。

株式会社とは会社所有者である株主は直接には会社経営、会社業務を行わず、株主総会で取締役を選任し、取締役は取締役会で重要事項を決定すると共に、業務を執行します。(株主総会事項は株主総会での決定)そして、取締役による業務執行の監査を行う監査役を株主総会で選任する。又、会計報告が適正であることを監査する会計監査人も株主総会で選出するという仕組みです。(会計監査人は、上場会社、大会社以外は義務ではない。その他詳細は省略します。)

委員会設置会社とは、取締役以外に、業務執行を行う執行役を取締役会で選任し、執行役が会社の業務を執行する仕組みです。取締役と執行役は兼任が可能ですが、社外取締役は執行役を兼任できません。取締役会は基本方針の決定と執行役(及び取締役)の職務監督を行うという仕組みです。なお、委員会設置会社では指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会が設置されます。3委員会は取締役で構成されるが各委員会の過半数は社外取締役であることが必要です。

監査委員会は取締役と執行役の業務を監査します。このことから、監査役は委員会設置会社には置けません。指名委員会は株主総会へ提出する取締役選任の議案内容を決定します。報酬委員会は取締役と執行役の個人別の報酬額を決定します。

(2)社外役員

監査役会設置会社の監査役は3名以上で、半数以上は社外監査役の必要があります。(会社法335条③)委員会設置会社の監査委員会の委員の過半数は社外取締役であることが必要です。これは、監査という仕事を行うにあたっては、社外の利害関係のない人を起用することが、監査を公平に実施するに当たり重要であると考えたからと理解します。日航の社外監査役が3人であるのは、監査役の総数が5人だからです。

なお、社外監査役は、過去にその会社の取締役、執行役、支配人、使用人になったことがない人です。

社外取締役は、委員会設置会社でなければ任意であり強制されません。日航の場合、何故3人の社外取締役がいるかというと、会社としてのコーポレート・ガバナンスの強化・拡充のためと理解します。例えば、日航は、有価証券報告書で次のような説明を行っています。

透明かつ公正な企業活動を促進し、コーポレート・ガバナンスの体制拡充を図るため、監査役制度の強化を図りつつ、5名の監査役のうち3名を社外監査役としております。また、社外取締役を3名専任しております。

監査役5名のうち3名を社外監査役としているのは、過半数の社外監査役が商法特例法の時から法的な義務であったことと思うのです。コーポレート・ガバナンスの強化と言うのは、後でつけた感じがします。この説明からでは、社外取締役についてまで疑いを持ってしまうことになると思うのです。

社内取締役が自己保全のために、自分たちを擁護してくるであろう人達を、形式的に社外取締役として選任する案を株主総会に提出して承認を受けることがあり得えます。株主総会へ提出する議案は取締役会が作成します。社外取締役選任案の提出は、コーポレート・ガバナンスを強化・拡充すると株主その他関係者にアピールできます。そんな会社があるかも知れません。

なお、社外取締役とは社外監査役と同様にその会社の取締役、執行役、支配人、使用人になったことがない人であることと、更に業務の執行を行わない取締役です。従い、取締役会への出席を含む取締役会での決議決定事項に関連する仕事とガバナンスについての仕事(会社法348条④)が中心になると思います。会社法においては、社外役員の選任案には経歴の詳細を社内役員より詳細に記述することが求められることとなりました。(規則74条④、規則76条の④)また、事業報告書において社外役員の取締役会への出席状況や発言の状況他についても記載が必要となりました。(規則124条)

会社法により強化されたものの一つがコーポレート・ガバナンスの強化であると言われています。日航の説明についても、その通りであることを監視し続ける必要があると思います。なお、コーポレート・ガバナンスは企業統治と言われたりしていますが、内部統制の方がしっくりくるような気もします。ここでは、コーポレート・ガバナンス又は単にガバナンスとしておきます。

(3)過去の企業不祥事

まず思い起こすのが、カネボウです。9月1日から中央青山監査法人(みすず監査法人と名前を変えましたが)も監査業務を再開しました。カネボウ事件は、単純で古典的手法を使った粉飾であったことから、会計士は、かなり前からその概要を知っていたのだと私は思っています。しかし、その会計士と帆足隆元会長兼社長のみが悪かったとすることは、本質を見誤ると思います。カネボウとはドライなリストラをしない会社であり、社内の和を大切にする会社であったのだろうと思うのです。粉飾の様なことをしていることを皆知っていた。でも、会社がつぶれれば元も子もない。そのうち、大ヒット商品がでれば解決するだろう。そんな気持ちで皆働いていたのだろうと思うのです。だから、会計士も、それに引きずられていった。

取締役会や監査役も機能しなかった。ちなみに、カネボウは2004年3月期までの5年間財務諸表の粉飾を行ったとされているが、2004年3月期において取締役には三井銀行副頭取を経験した人もおられたのです。社外監査役2名のうち1名は弁護士でした。

日航の現在の3名の社外取締役は、元東京海上社長、元東急電鉄社長、元秩父セメント社長の3名です。社外監査役は元関電社長、元興銀頭取、元JR東日本社長の3名です。日航社外役員は全員が元大企業のトップ経験者です。企業トップの方が能力がないとは言いません。しかし、なかにはサラリーマン出世競争に強引に勝ち残っただけの人もおられると思います。それぞれ個人の方を知らないので、何も言えませんが、航空機を利用する一般の人の代表みたいな人が社外取締役として入っていても良いのではと私は思うのです。

(3)の冒頭にカネボウのことを書きましたが、皮肉なことにカネボウ会長の伊藤淳二氏が1985年に日航副会長を兼任していたことがあるのです。最も、伊藤淳二氏の副会長就任には、その年の8月12日に発生した御巣鷹山墜落事件が関係していますが。

(4)委員会設置会社とガバナンス

前回のエントリーで問題であるとしたことが、株主への説明不足でした。6月28日の株主総会のわずか2日後の6月30日の日航取締役会は35.4%の増資を決議しました。取締役会ですから、社外取締役も社内取締役と同じ権利・義務を持っています。社外取締役は、どのような発言をしたか、監査役はどうであったか興味があるところです。(監査役の取締役会出席義務は会社法383条①)来年6月初め頃に出される事業報告書に記載されるかも知れません。(会社法施行規則124条)

ところで委員会設置会社だったらどうだったのでしょうか?委員会設置会社の取締役と執行役の任期は1年です。(会社法332条③、402条⑦)そして、毎年株主総会に提案する取締役の候補者は社外取締役が過半数を占める指名委員会が決定します。来年も取締役にとどまれるだろうかと、各取締役に対して結構なプレッシャーを与えるかも知れません。どんな人格者が社長になっても、しばらく立つと回りはイエスマンばかりになると言う人がいます。日本の会社は、社長が役員の実質上の人事権を持ち、取締役・監査役の候補者は実質社長が決めるというスタイルがあると耳にすることがあります。会計監査をする監査法人についても取締役会の案を株主総会で承認するのだから、まずは承認されます。

委員会設置会社の方が、種々のしがらみからはフリーになれそうに思うのです。だから、日航も、「この際、委員会設置会社に移行することを検討されては如何ですか?」と問いかけたいのです。

なお、委員会設置会社となっている会社は、この委員会設置会社 移行会社リストを参照してみて下さい。でも、委員会設置会社にも色々あり、例えば、日立製作所のように取締役14名で4名が社外取締役。各委員会は5名なので、社外取締役の兼任がある。ソニーは取締役14名で10名が社外取締役です。

日航は6月4日ワンワールド加盟招請状に署名し、2007年初めにワンワールドに参加予定です。そこで、ワンワールドのパートナーの1社である米国のAmerican Airを見てみることとします。但し、上場しているのは持株会社AMR Corporationで、13名の取締役のうち執行役はChairman, President and Chief Executive OfficerのGerard J. Arpey氏のみで、この人以外は社外取締役です。法律自体が異なるので同列での議論は出来ないが、委員会設置会社です。

なお、米国で社外取締役(independent director)は、当然昔から存在した制度ですが、エンロン・ワールドコム事件を契機としてコーポレート・ガバナンスの強化が叫ばれた。その結果、上場会社においては社外取締役(independent director)が過半数を占めることや取締役会の独立性(board independence)等がNYSE、NasdaqやSECのルール(例えば、NYSE Corporate Governance Rule Section 303A)として制定されたことがあります。

ブログランキング・にほんブログ村へ

|

« 日本航空 | トップページ | 産科崩壊(その3)-尾鷲市が産科医不在に »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本航空(その2)-委員会設置会社への移行は?:

« 日本航空 | トップページ | 産科崩壊(その3)-尾鷲市が産科医不在に »