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2006年9月11日 (月)

ライブドア事件-投資事業組合

(1)投資事業組合についての会計上の取扱

企業会計基準委員会が9月8日(金)に実務対応報告第20号として「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を公表しました。(平成18年9月8日企業会計基準委員会「公表にあたって」

実務対応報告とは、企業会計基準委員会が公表する会計基準等で、次の3つのカテゴリーの3番目の区分です。

  1. 企業会計基準 ・・・・・・会計処理及び開示の基本となるルール
  2. 企業会計基準適用指針・・・基準の解釈や基準を実務に適用するときの指針
  3. 実務対応報告 ・・・・・・基準がない分野についての当面の取扱いや、緊急性のある分野についての実務上の取扱い、等

(2)ライブドア事件

ライブドア事件においては堀江貴文、宮内亮治、熊谷史人、岡本文人、中村長也及び港陽監査法人の小林元と久野太辰の個人7人と法人としてのライブドアが証券取引法違反容疑で起訴された。容疑の内容は、容疑者により「粉飾決算」と「偽計と風説の流布」の双方又は粉飾決算のみと了解するが、いずれにせよ投資事業組合の利用が深く関係している取引であると推測する。

例えば、平成16年8月30日に「株式交換による株式会社ロイヤル信販の完全子会社化に関するお知らせ」をライブドアは発表しているが、この発表の中でロイヤル信販の株の100%はJMAM サルベージ1 号投資事業組合により保有されているとしている。その結果、JMAM サルベージ1 号投資事業組合に対してライブドア株式を交付し、ライブドアがロイヤル信販の株の100%を入手している。取引を整理すると次のようなものです。

  1. ライブドアは、新株を投資組合に交付したのであり、キャッシュの支出は無い。
  2. 上記1.の対価としてロイヤル信販の全株式をライブドアは入手した。
  3. 投資組合にとっての、ライブドア新株の原価は投資組合がロイヤル信販の株式を入手した対価である。(次の4.の売却額よりは、相当安かったのであろうと推測する。)
  4. 投資組合は、ライブドア新株を証券市場で売却して原価との差額の売却益を得た。
  5. 投資組合は、売却益を、その組合員であるライブドアに支払った。
  6. ライブドアは、投資組合から支払を受けた売却益を投資利益(営業外利益・経常利益)として認識・計上した。

ライブドアにとっては、発行済み株式が水増しとなったので、配当や、1株当たりの利益などが負担となるが、配当はしていない会社であり、宣伝効果で株価上昇の方が望ましかった。又、株価上昇は、上記の6.の営業外利益を増加させることにつながった。

JMAM サルベージ1 号投資事業組合が、子会社に相当するとなると、6.の利益は営業外利益・経常利益ではなく、自己株式処分差益であり損益計算書には計上されず直接資本の部(現行のルールでは純資産の部)に”その他資本剰余金”として計上されるものである。即ち、”その他資本剰余金”として計上されるべき”自己株式処分差益”を”営業外利益”、”経常利益”として財務諸表を作成したというのが粉飾決算の内容の大部分と私は理解している。

「偽計と風説の流布」とは、次の証券取引法第158条である。

第158条  何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくは有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、外国市場証券先物取引等若しくは有価証券店頭デリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。

(3)JMAM サルベージ1 号投資事業組合はライブドア子会社に相当するか?

実務対応報告第20号は、、「株式会社における議決権を想定している連結原則等を投資事業組合に対して適用する場合には、基本的には業務執行の権限を用いることによって、当該投資事業組合に対する支配力又は影響力を判断することが適当である。
もっとも、出資者が投資事業組合に係る業務執行の権限を有していない場合であっても、当該出資者からの出資額や資金調達額の状況や、投資事業から生ずる利益又は損失の享受又は負担の状況等によっては、当該投資事業組合は当該出資者の子会社に該当するものとして取り扱われることがあることに留意する必要がある。」
と述べて、種々のケースを示している。

実務対応報告第20号でも述べられているが、投資事業組合には、

  1. 投資事業有限責任組合契約に関する法律で設立された投資事業有限責任組合
  2. 民法上の任意組合(民法第667 条以下)として組成された投資事業組合
  3. 商法上の匿名組合(商法第535 条以下)として組成された投資事業組合

があり、個々の組合契約で業務執行に関する取り決めが存在することから、JMAM サルベージ1 号投資事業組合がライブドアの支配下であったかを検証するにも、この投資組合についての情報が必要であり、情報を持っていないので不可能です。更には、ライブドアが組合員となるにあたっても、香港、ヨーロッパ等の海外も経由したり相当複雑な仕組みを採用し、簡単には証券取引法違反として発覚しないようにしていると思います。

(4)実際はどうか

ライブドア事件の証券取引法違反は刑事事件ですが、これ以外に民事で訴訟になっている事件があります。共同通信の2006年06月のライブドア関連記事の2006年06月08日を見ると次の記事があります。

検察「投資組合はダミー」 堀江被告の公判前協議で

ライブドアが争う姿勢 個人株主の損害賠償訴訟 ライブドアの有価証券報告書虚偽記載で株価が下落し、損失を被ったとして、同社などの株主計96人が同社と前社長堀江貴文被告(33)=証券取引法違反罪で起訴=ら8人に総額約21億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が8日、東京地裁(鹿子木康裁判長)であり、ライブドアなどはいずれも請求棄却を求め、争う姿勢を示した。  ライブドア側は虚偽記載を認めたものの「虚偽記載がなければ株主にならなかったという原告の主張には証明がなく、損害額との因果関係も証明がない」と主張した。  堀江前社長側は「虚偽記載の事実はなく、原告の主張は前提を欠く」と原告の訴えを否定した。

この記事によればライブドア社は、虚偽記載を認めています。ホリエモンは自分個人の犯罪容疑とも関係があることから、虚偽記載も否定しているのでしょう。そうなると、「虚偽記載が本当である。検察が言う「粉飾決算」と「偽計と風説の流布」も、その通りである。」となると思うのですが。今後の裁判の行方を見ていきたいと思います。

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(日本経済新聞2006年9月9日)  投資組合、連結ルール厳格化  会計基準を決める民間組織の企業会計基準委員会は8日、企業が投資事業組合を連結決算から安易に外せなくする新ルールを発表した。 実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力....... [続きを読む]

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