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2006年10月16日 (月)

バングラデシュのグラミン銀行

前エントリーに続いてバングラデシュのグラミン銀行関連を書いてみます。

1) テレフォン・レディー

グラミン銀行は面白いと書きましたが、テレフォン・レディーというのもバングラデシュならではの面白さです。

グラミン銀行から融資を受けた女性達(融資を受けるには、5人以上のグループを結成する必要があるので、女性達と書きました。)は、竹細工、牛飼育、山羊飼育、刺繍、絨毯作り、養鶏、機織り、家具作り等をして、これらを販売し、収入を得てグラミン銀行に返済をします。

最近は、新しい職種としてテレフォン・レディーが現れたというのです。テレフォン・レディーとは、携帯電話貸与サービスなのです。これを理解するためには、バングラデシュの電話事情を知らなければならないのですが、2001年で固定電話56万台、携帯電話52万台で合計しても100人当たり0.83台しかなく、しかもこれは事務所等での業務用を含めてであり、そもそも地方に行くと電話線が引かれていなかったり、携帯電話の中継局、基地局もないので地方では電話は100人当たり0.19台となってしまうという世銀関連の報告書があります。日本だったら、携帯電話を加えると100人当たり100台を完全に超えるはずです。

テレフォン・レディーは、グラミン銀行から融資を受けて、携帯電話を購入するのです。そして、これを貸して使用料を得るのです。どこの電話会社の携帯電話かというと、グラミン・フォーンで、ノルウェーのテレノール62%とグラミン・テレコム(グラミン銀行と資本関係はないようです。)38%の合弁会社です。このグラミン・フォーンは今やバングラデシュ最大の携帯電話会社ということです。携帯電話52万台は2001年の数字ですが、2005年末ではグラミン・フォーンだけで550万台であり、そのうち23万台がテレフォン・レディーが保有している電話というわけです。更に面白いのは、テレフォン・レディー23万台は台数では4%を占めるものの、通話量では16%になるというのです。

でも、一体テレフォン・レディーは、どこで携帯を充電するのだろうと思ってしまいました。何故なら、バングラデシュでは未だ配電線網が行き渡っておらず、30%の国民しか電気の恩恵を受けることが出来ないのです。

2) 生命保険

前のエントリーで無利子の乞食ローンがあると書きました。今までに、81,000人の乞食に68百万タカ(1億2千万円)の貸付を行ったと書いてあるので、一人当たり平均1,500円にもならない金額です。子供を学校に行かせたり、乞食の行為を禁止はしないが尊厳ある生き方をするようにグラミン銀行は指導するのです。例えば、乞食をする場所で良いから、何か物を売って収入を得なさいと。資金使途は、蚊帳の購入というのもあるようです。

乞食ローンもキチンと返済されますとグラミン銀行は言っております。68百万タカ(1億2千万円)の貸付中、これまでに41百万タカ(7千万円)が返済されていると。ところで、この無利子乞食ローンは生命保険をグラミン銀行が費用を負担して付保していると説明しています。

乞食ローン以外の通常のローン、住宅ローン、その他のローンについては保険料は借入人負担となるが、生命保険の付保があります。万一死亡しても生命保険金で完済となるのでご安心下さいと言っています。

日本と社会環境がまるで違うので比較することは正しくないのですが、現在マスコミがサラ金の生命保険を非難しています。しかし、本質は債務も相続されるのであり、相続放棄があるから問題はないと簡単には言えないはずです。先ずは、死亡した人がサラ金債務があったかどうか、簡単に分からないかも知れない。あったとしても、未返済額なんていよいよ分からないし、聞くのもバカらしいと放っておけば、相続放棄の期限の3ヶ月を過ぎて、支払を求められたりして。相続放棄は、負債だけを放棄するのではなく現金、預金、住宅、家財を含む一切の資産を含めて全て放棄するのだから、巨額の負債であるならいざ知らず少額のサラ金債務までなかなか目が行き届かないと思います。また、相続放棄をするなら相続人全員がすることとなります。何故なら、負債が大きいからするのであり、一人手続き漏れがあれば、その人に全額が相続されるからです。

私は、生命保険で自動的に全額返済となった方が、よほどスッキリすると思うのです。サラ金業者も、債務者が死亡したら今度は相続人に履行請求をせざるを得ないのですから。しかも、現在の日本のサラ金の生命保険料は全額サラ金業者が負担しているのです。違法な債権取立は、生命保険とは別の問題であり、違法取立は違法取立として厳しく取り締まるべきなのです。問題を混同すると解決に向かわず問題を深刻化させることさえあると思います。

日本のサラ金の生命保険の問題点として言われているのは、「借入人、本人が承認する欄があるが小さくて、無意識でしている。」との指摘ですが、これも保険自身の問題ではなく説明責任の問題のはずです。ちなみに、住友軽金属が従業員個人の承認なし(労働組合幹部からの口頭の承認のみ)で団体生命保険を付保し、その従業員の遺族が住友軽金属に支払われた保険金の退職金を超える部分の金額を遺族に支払うよう求めていた裁判の最高裁判決が本年4月12日にあったのですが、この最高裁判決は遺族の保険金受け取りを認めませんでした。

住友軽金属事件は、被保険者の承諾なしに他人が生命保険を付保し、保険金を受け取ることが許されてよいのかという問題を含んでいるのですが、サラ金保険は、住友軽金属事件よりも問題がないと私は思うのです。(なお、住友軽金属事件は最高裁判決であるので確定です。)

貸金業制度等に関する懇談会が金融庁にあるのですが、その第19回の議事要旨を見ると事務局が次のような説明を行っている部分がありました。

(消費者信用団体生命保険が)安易な債権回収の手段になっているという議論についだが、各担当者のミクロのレベルでは、保険金が請求可能となればノルマが達成できることになるという新聞記事が確かにあった。一方マクロのレベル、会社レベルでみると、保険会社に支払う保険料は業者の負担で払っているが、この保険料は毎年受け取る保険金より高い。これは団体信用生命保険なので、保険金の受取りが増えると翌年支払う保険料の額が高くなる。つまり、ミクロレベルでは債権回収手段となるが、マクロレベルでは持出しになるというような状況。

私には、グラミン銀行の説明がスッキリします。勿論、私の8月22日のエントリーで書いたグレーゾーン金利が日本に存在するので、生命保険も日本はややこしくなっていますが。

なお、生命保険が被保険者の承認を要するとしている商法第674条第1項と貸金業制度等に関する懇談会における消費者信用団体生命保険についての事務局の説明を続きを読むに入れておきます。それから、住友軽金属事件の最高裁判決文はここにあります。

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商法 第十章保険 第二節生命保険

商法第674条第1項 他人ノ死亡ニ因リテ保険金額ノ支払ヲ為スヘキコトヲ定ムル保険契約ニハ其者ノ同意アルコトヲ要ス但被保険者カ保険金額ヲ受取ルヘキ者ナルトキハ此限ニ在ラス

貸金業制度等に関する懇談会(第19回)議事要旨(平成18年8月24日)

消費者信用団体生命保険に関する意見が続いているので説明する。

消費者信用団体生命保険については、生命保険の契約の問題だけでなく、多重債務の問題、グレーゾーン金利で貸し付けて過払い状態になっているという問題が複雑に絡み合っているということを理解していただきたいと思う。個々の論点に分けて説明する。

まず、事前の説明、同意について。本日の報道にもあるように、保険契約の原則として、団体生命保険であっても被保険者となる者に対し、明確にその生命保険の契約内容が伝わっていることが重要であるという観点から、保険会社に対する監督指針において、団体生命保険であっても、顧客に行う場合と同程度の契約内容に関する説明が行われることを確保する措置を講じるべきであるという改正を本年2月に実施しており、10月1日までに契約内容、注意喚起情報などを書面で説明することを実施するよう求めているところ。借入契約書の隅に、「団体生命保険に加入することを契約します」と小さな文字で書かれているだけで、契約者が必ずしも保険に加入することを認識していないという問題があったが、明確化を求める内容の監督指針改正を行っており、10月1日から実施されることとなる。

それから、保険金請求の手続きについても問題となっている。先程意見があった訴訟の事例については、保険金請求に必要なので死亡診断書、死体検案書等を遺族に求めることが遺族の感情を害するということで訴訟になっていると承知している。これについては、一方で国会の議論の中では、貸金業者が遺族に死亡診断書等を求めずに、住民票のみで保険金の請求を行っているのは問題であるとされている。これに関して若干ヒアリングを行ったところ、各社ごとに異なっているが、貸金業者と保険会社との契約で、死亡診断書等の提出は一定の契約年数を超える等の場合は死亡診断書等の書類提出の省略が可能という扱いになっているとのこと。

それから第三の論点として、保険が付いていることが、安易な債権回収の手段となっているのではないか、自殺を促しているのではないか、という議論。自殺に関する総務省の統計では、日本人の死亡事由に占める自殺の割合は、25~49歳の働き盛りの人の場合は約24%、20~59歳で約15%。限られたヒアリングベースでの話になるが、団体信用生命保険を契約しているある大手消費者金融会社に顧客の死亡事由に占める自殺の割合を聞いたところ、その社では10%強ということであった。

安易な債権回収の手段になっているという議論についだが、各担当者のミクロのレベルでは、保険金が請求可能となればノルマが達成できることになるという新聞記事が確かにあった。一方マクロのレベル、会社レベルでみると、保険会社に支払う保険料は業者の負担で払っているが、この保険料は毎年受け取る保険金より高い。これは団体信用生命保険なので、保険金の受取りが増えると翌年支払う保険料の額が高くなる。つまり、ミクロレベルでは債権回収手段となるが、マクロレベルでは持出しになるというような状況。要するに、「病死しても家族に借金を残しません」という一種の宣伝効果、広告効果として会社が始めたとすれば、事前の説明が十分に行われていない、また、遺族感情を害している等の批判を受けるという、皮肉な状況になっている。

それでは、「遺族に借金が残らないのでいいではないか」と簡単に開き直れるかというと、過払いになっている場合があるため、そうは言い切れない。多重債務となり適正なカウンセリングを受けることができずに自殺してしまうという悲劇的な結末を迎えること、それからグレーゾーン金利による過払いという非常に不安定な状況を生んでいること、これらは保険だけの問題として扱うことは困難であるが、だからこそ制度全体の設計を現在懇談会でも議論していただいている。

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