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2006年10月20日 (金)

大淀病院事件の続き

19病院で搬送の受入が出来なかったことから、相当色々なメディア等で取り上げられています。情報源による違いからなのか、記者の受け取り方の違いからなのか、編集方針の違いからなのか、実は本日の報道は様々です。

1) 妊婦、1時間以上放置けしからん

この朝日新聞-意識消失の妊婦、1時間以上放置 奈良・町立大淀病院は、「看護記録を見た日本産科婦人科学会の専門医は「意識を失った患者には医師が付き添い、原因を調べなければならない。けいれんが起きるまで1時間以上放置したのは信じられない行為」と驚く。」と書いています。

2) 奈良県産婦人科医会の発表「主治医にミスなし」

これも朝日新聞-産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡ですが、「記者会見した同医会の平野貞治会長は「失神とけいれんは、子癇でも脳内出血でも起こる症状で、見分けるのは困難。妊婦の最高血圧が高かったこともあり、子癇と考えるのが普通だ」と説明。「CTを撮らなかったのは妊婦の搬送を優先したためで、出席した理事らは『自分も同じ診断をする』と話している」と書いています。

3) 本当の話は?

大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長の話しを前のエントリーの3)で朝日新聞の記事を引用しました。同じ人が毎日新聞-奈良妊婦死亡:搬送先探し、診断不正確で遅れかでは、次のように言っています。本当は、どのような話しをされたのか、新聞ではまた聞きとなり怖いのでしょうか?最も、TVも一部のみをカットして報道するからこれも下手をするともっと怖いのですが。

末原部長は「脳内出血で母親の命が危ないと分かっていれば、産科より救命救急センター、大学病院を中心に搬送依頼した。搬送先が決まるまで待つ時間があるなら、CTを撮る時間もあったのではないか」と指摘している。

4)  裏情報

言葉は適切でないのですが、医療関係者が書いた掲示板にあった文章です。私も、この掲示板を直接見てはいないのですが、相当細かいことまで書いてあるので、真実味を感じます。(おそらく真実と思うが、その確証は取れていないとして読んで下さい。)

ソースが確実なきょう聞いた話。
当夜の当直は外科系は整形外科医、内科系は内科医、産婦人科は奈良医大から派遣の当直医。
患者さんは午前0時に頭痛を訴えて失神、ただ痛みに対する反応(顔をしかめる)はあった。産婦人科当直医は念のため内科当直医に対診を依頼、内科医は「陣痛による失神でし ょう、経過を見ましょう」ということになった。しかしその後強直性の痙攣発作が出現し、血圧も収縮期が200mmHgになったので、子癇発作と判断、マグネゾールを投与し ながら産婦人科部長に連絡した。部長は午前1時37分、連絡してから約15分程で病院に到着。以後二人で治療にあたったが、状態が改善みられないため、午前1時50分、母 体搬送の決断を下し、奈良医大へ電話連絡を始めた。
午前2時、瞳孔散大を認めるも痛覚反応あり。血圧は148/70と安定してきた。この時点で頭部CTも考慮したが、放射線技師は当直していないし、CT室が分娩室よりかな り離れたところにあること、患者の移動の刺激による子癇の重積発作を恐れ、それよりも早く高次医療機関をさがして搬送するほうがよいと判断、電話をかけ続けたが、なかなか 搬送先がみつからない。
午前2時30分、産婦人科部長が家族に状況を説明、そのあいだにも大淀病院の当直医や奈良医大の当直医は大阪府をふくめて心当たりの病院に受け入れ依頼の電話をかけつづけ た。家族はここで「ベビーはあきらめるので、なんとか母体をたすけてほしい。ICUだけがある病院でもいい」と言ったので、NICUを持たない病院にまで搬送先の候補をひ ろげ、電話連絡をとろうとした。家族も消防署の知り合いを通じ、大阪府下の心当たりの病院に連絡をとって、受け入れを依頼した。この頃には産科病棟婦長(助産師)も来院、 手伝いはじめてくれた。大淀病院看護師OGで患者さんの親戚も来院し、多くの人が集まり始めた。けれども受け入れてくれる施設が見つからない。担当医は当直室(仮眠室)か ら絶望的な気分になりながら電話をかけ続けたし、大学の当直医は大学の救命救急部門にまで交渉に行ったが子癇は産婦人科の担当で、我々は対処できないと言うことで受け入れ 拒否された。午前4時30分、呼吸困難となり、内科医が挿管したが、その後自発呼吸ももどり、サチュレーションは98%と回復した。その後すぐに国立循環器病センターが受 け入れOKと連絡してきたので、直ちに救急車で搬送した。患者さんは循セン到着後CT検査等で脳内出血と診断され、直ちに帝王切開術と開頭術をうけたが、生児は得られたも のの脳出血部位が深く、結局意識が戻らないまま術後8日目の8月16日死亡された。

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コメント

循環器内科医のDr. Iと申します。

放置の意味を取り違えていますね。
子癇の治療である、点滴をしてそれが効くまでに時間がかかるので、看護師に様子を見るように言って、自分は院内で待機していた、と言うべきでしょうね。

子癇か脳出血かはっきりしない以上、医学的にも適切な処置だったと思います。

搬送するまで、2時間かかるって最初からわかっていれば、頭のCTを撮っても良いと思いますが。
それよりも、搬送を優先しただけで、問題にするのはおかしいと思います。

TBもさせて頂きました。
今後とも、よろしくお願い致します。

投稿: Dr. I | 2006年10月21日 (土) 18時46分

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