大淀病院事件 (続)
大淀病院事件について、またまたエントリーを。
1) 医師個人の問題か?システムの問題か?
本日、こんな報道共同通信-ベッドあったが拒否 「別の妊婦に必要」とがありました。記事の中で、”奈良病院は「切迫早産で入院中の妊婦がいて、確保する必要があった。受け入れていたら、その人を大阪方面に転院させることになった」としている。”と書いてあるので、表題ほど単純な話しではないと思います。
本事件では、産科の医師、医療機関、それに救急医療体制とかの問題がクローズアップされたのだと思うのです。厚生労働省は異なった見解かも知れませんが、医師不足があり、医師不足のために産科を中止せざるを得ない医療機関が多いのは事実と思います。医師を増やすと医療費が増加する、そして国民の医療費負担が増加するとの議論があります。しかし、「医師を増加すると、いくら医療費が増加するか?」、「医療費は高齢化社会を向かえるにあたって、いくらが妥当であるか?」が本当に重要な議論だと思うのです。
それと、一人前の医師を育てるには、相当の長期を要することです。年寄りの医師ばかり、皆これからリタイアしつつある。熟練者が新人に経験をさせつつ、教育していくことは大事だと思います。パソコンの操作だったら、新人は優秀。でも、医療はパソコン操作で出来る仕事ではないし、医療を同一にして欲しいとは思いません。若手を含め多くの医師には、最新医療を学ぶと同時に、過去の先輩の蓄積を吸収して欲しいと思うのです。
大淀病院事件は、私は間もなく出産という妊婦が脳内出血となってしまった不幸な事態だと思うのです。時間も深夜であり、転送が手間取ってしまった。私たちが、学ぶべきは何であるのかを考え、今後に生かして欲しいと思うのです。
2) 大淀病院でのCT検査
大淀病院でCT検査をしなかったことについて、批判があります。私は、10月20日のエントリーで「CT検査をするのであれば、CTを扱える検査技師か医師を呼ばねばならなかった。」と書きました。それに加え、次のように言っておられるブログssd's Diary-October 18, 2006エントリーがあります。
CTでのTisch tot(台上死)というのは実は、非常にポピュラーであり、トラブルの元なのだ。交通事故の外傷などでも、手術中に死ぬのと、CT検査中に死ぬのとでは遺族の受け取られ方が全然違う。
救急室で目に見える外傷のとりあえずの止血をしても、血圧が安定しない。開腹開胸手術、あるいはIVRをするにも主たる出血源を決定する必要があり、救急医はプロテクターを来て被曝しながら輸血をpumpingし、アンビューバッグを押しながら、CT台に乗せる。スカウトを撮ったとたんにアレスト。
治療の流れの上でたまたまCT撮影中に亡くなっても、医療側としては不可避の結果であると理解できるが、治療中の死亡なら納得がいっても、検査中の死亡というと遺族は荒れる。裁判まで行かなくとも(今まではだが)現場でなじられるのは珍しくない。
シリンジポンプやモニターが付いた重症患者をCT検査するには、とにかく人手がいる。最低でも循環・呼吸動態に知悉した人間が二人、頭は回らなくても体はよく動く研修医か看護師が二人に、とりあえず、いてくれるだけでありがたい力仕事担当二人。これくらい欲しい。守衛さんや事務当直を動員しても300床の病院では望むべくもあるまい。
高次搬送を早々に決めたことに落ち度はない。そして、搬送するとなったら、CTを撮ることには意義がなくなる。
意地悪な見方では、もし、脳出血が判明していたら、国立循環器センターでも受けなかったのではないかという意見もある。その意味では撮らない方が「正解」だったのかも。
3) 一つ前のエントリでの”4) 裏情報”の一部訂正
一つ前のエントリでの”4) 裏情報”で、紹介した文章で一部訂正が出ていたので、それを以下に掲載します。但し、本質の部分は変更はないと思います。なお、この文章は、2チャンネルhttp://society3.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1161360294/から取ったものです。
なんだ。m3.com情報間違ってたみたいだぞ。
産科当直は一人医長だったそうだ。
ttp://community.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=338896&boardId=3&messageRecommendationMessageId=338896&topicListBoardTopicId=39495&pageFrom=showMessageDetail
1.主治医=担当医=産婦人科部長で、当日の産科当直は産婦人科部長ただ一人でした。産婦人科部長に連絡したというのは、院内(部長室か当直室でしょう)にいる産婦人科部 長に連絡したということです。
お詫びして訂正します。
2.当直の内科医と産婦人科部長の間でCT撮影について議論した事実はなく、当該内科医もそんなことは言っていないし、カルテにもこれに関する記載はない。
3.奈良医大に搬送受け入れを要請したとき、大学当直医は緊急帝王切開で手術室にいた。
4.マグネゾールで痙攣はおさまり、以後投与中は痙攣の再発はなかった。
5.CTGは入院の全経過中ほとんど装着しており、患者には担当の助産師がほとんど付き添っていた。
6.カルテのコピーは病院側から報道陣にあらかじめ配布されたらしい。報道サイドは看護記録の経過をもとにストーリーを作っているが、カルテの内容については専門的で、technical termもあり、十分に把握していない。
7.患者家族の親戚に当たる勤続50年近かった元総婦長が病院側と患者家族の橋渡し役(スポークスマン?)になっている。
以上です。ここに訂正してお詫びします。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント