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2006年11月30日 (木)

格差社会の拡大

格差社会の拡大と言っても、実はアメリカ合衆国の話しです。

米国のTax Foundation(納税協会と言えばよいのでしょうか、ホームページはここです。)が、米国連邦歳入庁(Internal Revenue Service)の2004年データをこのSummary of Latest Federal Individual Income Tax Dataで個人所得について発表しています。 国税庁の個人所得データの分析結果という具合です。日本でも、おそらく所得格差は拡大していると思うのですが、個人所得税の納税申告のデータなので前提条件を理解することは必要なのですが、興味深く分析してみました。

1) 全体の1%の人が個人所得全体の19%を得た

全体を大きなパイであるとするなら、2004年の米国では1%の人が19%を手にしたこととなります。この1%の人達とは、年収では$328,049ですから4千万円以上の年収の人達ということになるのでしょう。ちなみに、上位10%の階層は$99,112(12百万円)以上ですから、米国では高収入1%グループの人達の収入額は相当すごい金額になるはずです。

なお、断っておかなければならないのは、必ずしも一人当たりではなく、所得税の申告数当たりなのです。先ず、米国には年末調整制度がないので、全員が所得税の申告書を提出します。但し、夫婦合算申告(Joint Return)が認められており、通常合算申告の方が税金が安くなるので、合算申告をしています。日本の場合だと、夫が年収1千万円で妻が5百万円で共稼ぎだとすると別々の税となるので、累進課税を適用結果、夫の所得税の税率の方が高くなります。しかし、夫婦が協力して家族の収入を得ているのだとすれば、7.5百万円ずつ収入を得たとして所得税を計算した方が合理的と言えます。例えば、妻が専業主婦であれば、夫の収入を役割分担の結果だとして2で割るのです。103万円を超すと配偶者控除が適用されるなくなる・・・なんてことより、よっぽど合理的と思えるのですが。最も、米国の制度も単純に合計して2で割る制度ではありませんが、考え方のベースはこのようなものです。

2004年の米国の個人所得の納税申告者数は130,371,156人で、この中の上位1%の申告に関わる所得金額が全部を合計した所得金額の19%を占めます。上位50%と下位50%の2つのグループに分けた場合に、2つのグループの合計した所得の金額比を計算すると87%対13%になります。数で75:25は、金額で20:80と言う具合にパイの分け方は高額所得者により多くなっています。次の円グラフの左は申告者数で、右が所得金額です。

Uspiconmereturn2004

これを各グループの納税申告者当たりの所得金額で図示したのが次のグラフです。

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2) 格差は拡大しているか縮小しているか

努力すれば報われる社会においては、ある程度の格差は必要であると言えるのでしょう。社会の完璧な制度が存在しない以上は、なかには大金持ちがいても仕方ないし、大金持ちの存在を許すことによって貧しい人も底上げがされているならそれも良いではないかと言えるのでしょう。そんな議論は、ともかくとして1980年以降のデータがこの発表のなかに含まれているので、1980年以降のグループ別の所得の伸びを図示したのが次のグラフです。

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横軸は年ですが、縦軸は各グループの平均所得です。即ち、高所得の1%グループの所得額は2004年所得で平均が1百万ドルを超えている。(1%になるかならないかのボーダーラインは328,049ドル)50%の人々の平均は14,149ドル(年間約170万円)ですから、半数の人々は物価が日本より安いとは言え、なかなか大変だと思います。なお、50%のボーダーラインは年間所得30,122ドル(3百60万円)でした。上の表は、金額ベースですが、物価上昇を加味する必要があるので、米国都市部消費者物価指数を適用して1980年を1.0とした場合の、各グループの平均所得の推移をグラフにしたのが下のグラフです。

Usincomeind

上位所得者の所得増加割合が大きく、下位50%の人達にとってはほとんど所得は増加していないと言えます。従い、私の結論は「米国においては、下位50%の人達の所得は減少はしていない。しかし、高所得者の所得は高い人ほどその増加が大きく、所得格差は米国においては拡大している。」であります。

所得だけが物差しではなく、忙しくて自分の時間も持てずに追い回されているよりは、自分の人生や生き方を追い求めている方がよっぽど幸せであると言えます。しかし、所得は重要で、お金がなくては生きていけない。米国についての私の分析は以上です。本当は、日本についても同じ様なグラフを書いてみたいと思います。データがあれば書いて発表します。良いデータがあれば教えて下さい。

米国では、下位50%のグループ1987年から1997年頃は少し落ちこんでいる時代でありましたがほぼずっと横這いです。日本の所得のグラフを書いたら、まさか下位の人達は下がりつつあるなんてことありますかね?心配になってきました。

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2006年11月27日 (月)

法人税の引き下げ

経団連が法人税率を30%に引き下げるべきとの提言を行っています。その提言はこの2006年9月19日の平成19年度税制改正に関する提言のなかの最初の「II.法人税制 1.実効税率の引き下げ」に書いてあるのですが、政府税制調査会の第1回企画会合(11月9日)資料その他を参照して経団連の提言について検討をしてみたいと思います。(本エントリーのグラフはクリックするとポップアップ・ウィンドーで開きます。)

1) 税収入が足らないのか、支出の節約が不十分なのか

支出に対して不足する額を国債により調達しているのが、現状です。次のグラフは政府税制調査会の資料からですが、日本政府の債務残高はGDPの175%とダントツ一番であることが判ります。

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最近財政再建で話題になっている夕張市は、本年6月に「財政再建団体」の指定を総務省に申請する方針を市議会で明らかにしたのですが、債務残高が632 億円(2005 年度見込み)と標準財政規模45 億円(標準税収入額、普通地方交付税額、地方譲与税額の合計)の14 倍でした。日本において地方自治体の債務は政府が実質補填する制度になっていることから、夕張市はこんなに借金が可能であったのですが、日本政府が夕張市と同じ様な状態になれば大変です。

減税を言い出したときには、やはりその結果の収支見通し、債務予測等を同時に提出し、その是非を論じるべきと思います。一方的に減税効果のみを述べることはアンフェアである。私が経営者なら、一面だけの説明を行った提案は不十分であるとして突き返すかも知れません。

2) 日本の法人税率は高いか

経団連の提言は日本の法人税率が高いと述べているのですが、政府税制調査会の資料に次の国際比較があります。

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日本の法人税率(都道府県及び市町村の地方税をあわせた税率)は40.69%としているので、米国カリフォルニアの40.75%やドイツの39.9%とほぼ同じです。英国、フランスは30%、33%と日本より低い税率ですが、税金が安いのか、政府支出が少ないのか、他の税目での課税が大きいのか、よく見ておく必要があります。例えば、ヨーロッパでは日本の消費税に相当する付加価値税の税率が、ドイツで16%、フランスで19.6%、英国で17.5%、デンマークやスウェーデンでは25%です。年金の税負担等考慮すべき事項は多く、比較は容易ではなく、単純ではありません。

経団連の提言はアジアと同等にとも言っています。例えば、タイの法人税率は30%であり、付加価値税率は7%。インドネシアは法人税率30%で、付加価値税率10%です。両国とも地方税がないので、日本より低い法人税率ではあるが、途上国が産業育成という政策上で採用している税率という側面があります。途上国においては、未だ資本が育っていない。だから、法人税率を低くして資本の育成を計るという面。外国からの投資を呼び込み自国の雇用を増加させるため、税率を低くして少しでも外国資本が自国に投資を行いやすいようにする面があります。従い、これも単純に日本と比較することは正しくないはずです。ちなみに、日本の税率の1980年からの推移は次の通りです。(この税率は地方税を含まない法人税のみの税率です。現行30%で、27.89%と異なっているのは、27.89%は、[27.89%=30.00%÷(1+0.0756)]の計算によるからで事業税率を7.56%として計算しているからです。)

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3) もし法人税率を20%とし、これを消費税でカバーしたなら

一体日本政府の租税収入がいくらかというと、平成17年度の歳入額は47.9億円で、その内訳は以下の通りです。
① 所得税    15.6兆円(32.5%)
② 法人税         13.3兆円(27.7%)
③ 消費税         10.6兆円(22.1%)
④ 揮発油税       2.2兆円(4.5%)
⑤ 酒税             1.6兆円(3.3%)
⑥ 相続税          1.6兆円(3.3%)
⑦ その他          3.1兆円(6.5%) その他としては、たばこ税、関税、自動車重量税、石油税等が含まれます。

小泉政権の終わり頃に消費税増税論議がありました。上記の消費税10.6兆円は地方消費税を除外した税率4%ですから、単純に4で割ると1%あたり2.6兆円となります。一方、日本の法人税を27.89%税率で13.3兆円であるとするなら、10%は4.76兆円です。だから、消費税で法人税減税をカバーするなら1.83%上げればよいとなるのですが、消費税率を上げると実は歳出も増加するので、2.5%位消費税率を上げて、地方税とあわせて7.5%位にする必要があるのかも知れません。

消費税や付加価値税は、最終消費者が負担する税です。企業は仕入の際に払った消費税は、納付に際し控除することが出来ます。例えば、設備投資をしても、設備購入の際に支払った消費税は仕入控除の対象です。消費物資は税率アップと共に上昇するので、例えば生活保護費も上昇します。その分、税支出が増加する。ところで、消費税率が上がれば、その分、給料は増えるのでしょうか?「消費税は、極力避けるべきである。」という考え方があります。理由は、消費者、即ち国民に負担が行くものであるから、所得税で極力対応すべきであり、所得税であれば公平負担が図れるという考え方です。各個人の所得把握が公平に出来ていないと不公正が生じるのですが、私は税務署はキチンと掴んでおり、ごまかしようがないように思えるのですが。

消費税を議論するなら、一番最初にしなければいけない是正は、消費税益税の解消のはずです。誰に益税が生じているかというと、課税売上割合95%以上の企業です。課税売上割合95%以上の場合は、非課税売上に対応する仕入消費税も全額控除可能となるからです。1000億円の売上企業では、1%で3千万円とかの益税になります。課税事業者の最低売上高を1千万円に引き下げたときに是正すべきだったと思いますが、課税売上割合95%については変更なしで据え置かれてしまいました。

4) 法人税を下げれば誰が得をするの

企業活動が活発となり、日本経済が発展し、国民が豊かになるというのが経団連の考え方と理解します。一方、法人税率を下げた分、雇用の増大や給与の増額にあてるような制度にすべしとの議論を聞いたこともあります。しかし、そんなにうまくは行かないというのが私の意見です。

むしろ理論としては、企業の利益は株主に所属するのであり、会社法だってそのように作られれています。他には、経営者に対する報酬として取締役の利益連動給与の増額が計られると思います。人参と馬との関係は、税率が30%であろうが、40%であろうがほとんど変化がないと思うのです。経団連の提言で気になるのは、「赤字法人の税負担のあり方など、広い負担の方途」なんて言っている部分で、赤字法人に法人税を負担させるなんてとんでもない意見であると思います。税の負担能力がない者に、税を負担させると制度そのものが壊れてしまうと思います。

ところで経団連会長の御手洗氏はキャノン会長です。その前の奥田氏はトヨタ元会長です。ところで、キャノンは2005年12月31日現在で51.12%を外国投資家が株を保有しており、フランクフルトとニューヨーク証券市場に株式上場をしています。トヨタは26.62%が外国投資家による株保有(2006年3月31日現在)で、ロンドンとニューヨーク証券市場上場です。即ち、法人を10%下げたなら、現在日本経済成長の牽引車となっておられる優良企業のある部分は、外国投資家に回ることになります。

それを直ちに悪とは言えないのですが、グローバル経済で動いている現代においては、法人税を下げたからという単純な図式で計れない側面があると言うことです。例えば、タイやインドネシアを2)で例として挙げましたが、法人税率が低いから皆投資をするかと言えば、そんな単純ではないはずです。労働者の人件費や能力、技術者の水準、下請け企業の能力、港湾施設、電力・水・道路といったインフラ等様々な要素を考慮して最適な投資を検討します。そこにおいて法人税率の30%ー40%は大きな差ではないと思うのです。違った言い方をすれば、米国企業は法人税率40%だから衰退するでしょうか?私は、マイクロソフトやグーグルは未だ未だ強いと思います。米国自動車メーカーが日本の自動車メーカーに、どうも負けるかも知れないという状況は税の理由ではなく、他に原因があると思うのです。

例えば、日経ビジネス11月27日号は「電子二等国ニッポン」なんて特集みたいですが、もしそうだとしてそれは法人税率とは異なる話しと思います。もし、言うなら研究開発を怠ったという面があるのかも知れませんが。参考に、法人税は研究開発費の支出に対して支出額の10%が税額より控除されるのです。キャノンの場合は、2005年で2865億円の研究開発費を支出しています。これが全てキャノンの日本法人とは限らないのですが、法人税率30%だからこのような税による研究開発支援の制度も可能なのだろうと思うのです。税による企業支援について次の表を掲げておきます。

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5) 今後に向けて

税とは政府を支えるものである。いかなる政策も税なくして不可能である。税は制度において徴収において公平でなくてはならない。制度的な公平とは、私は多くの国民が納得し、賛成するということであると思う。経団連の役員になっておられる企業の方々は勝ち組の代表である。そのような方々の意見も重要であるが、格差社会の下層に位置している人々あるいはごく普通の生活を送っておられる方々も税については声を大にして自分の主張を繰り広げるのが良いと思うのです。ある時までは、労働組合なるものがもっと強かって経営者に対して声を上げていた時代があった。労働組合が弱くなった分、声を誰かが自動的に集約してくれるなんてことを期待してはならないと思う。

これモトケン弁護士のブログ「体罰容認論がちらほらと」ですが、エントリーの記述やコメントの内容は、その通りと思うのです。権威ある人が言ったからと、それを聞き流していると、大変なことになりかねないと思います。自分自身でもしっかりと考えたいと思います。

ところで経団連って選挙権ないんですよね。法人もない。選挙権は20歳または25歳以上の個人だけです。選挙権のない団体が政府の政策に対して意見を出してよいのかしらと思ってしまいます。御手洗氏個人であれば、問題はないのですが、団体としてとなると個人という主権者を飛び越しているような気がします。

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2006年11月25日 (土)

内部統制、SOX法と企業犯罪

内部統制、SOX法とと企業犯罪なんて大層なエントリーにしましたが、ホリエモン事件を少し引きずります。

1) 証券取引法違反の罰金と懲役

11月22日のエントリーの「3)ヤメ検弁護士高井康行の反撃」のなかで、証券取引法違反は5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金であり、業務上横領は10年以下の懲役、特別背任は10年以下の懲役又は千万円以下の罰金なので証券取引法違反は罪が軽いと書いたのですが、実は本年6月14日に公布された証券取引法等の一部を改正する法律により197条及び198条が改訂され197条の2が追加され、次のようになり本年7月4日から施行となっています。(厳密には、197条のなかでも、197条の2に移され、改正がなかった部分もある。)

197条:5年を10年に延長し、5百万円を1千万円に増額(対象犯罪は、有価証券届出書の虚偽記載及び風説の流布・偽計、相場操縦等)
197条の2:改正前の198条の1号から10号を197条の2とし3年と3百万円を5年と5百万円に改正した。(対象犯罪はインサイダー取引等)
198条:改正前の198条の10号から19号は、3年と3百万円で改正なし。

ホリエモンについては、改正前の規定が適用となるはずです。

2) 改正の理由

金融庁の言葉で言えば、「金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、投資者保護のための横断的法制を整備することで利用者保護ルールの徹底と利用者利便性を向上し、「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図るという所要の目的を達成するため」です。改正は、罰則の強化のみが行われたのではなく、改正の条文ボリュームからすれば、罰則部分はほんの1%強位です。改正の主要部分は公布から1年6月以内に施行となっているので、2007年12月と思います。そして、この時に証券取引法は金融商品取引法と名称が変わります。

罰則の強化は、ホリエモン事件が関係あったと、言えます。但し、ホリエモン事件のみならずカネボウ事件、村上ファンド事件、その他の事件も関係しています。太平洋のかなたのエンロン事件やワールド・コム事件の影響もあると言えます。

資金運用を行う方法としては、(1)不動産等の資産購入をする。(2)預金として銀行に預ける。(3)株式や債券を購入する。の3通りが考えられます。(2)の銀行預金は、最終的には銀行が企業等に貸付を行うのであり(3)を銀行経由で行うこととなるので似通った所があります。銀行経由にすることにより、リスクは銀行に振り替わるので、安心できると言えます。但し、銀行も(現時点では郵貯を除けば)株式会社等であるので実は(3)の信用リスクがない企業の債券と本質的に変わりはないと言えます。

預金には銀行の経費・利益・リスク相当分が加わって企業に貸し付けられているのであり、また預金保険(ペイオフ)で一行1千万円まで預金保険のカバーがありますが、この費用も貸付利率と預金利率の差で賄われています。

銀行を通さずに直接企業に出資したり貸付けた場合は、リスクヘッジ等の銀行による仲介機能はなくなるが、費用は安く済むはずです。投資家にとっては、銀行金利より高い収益が期待でき、企業側にとっては銀行借入より安く資金調達を行える。このような銀行を通さない直接金融がもっと活発になって良いのですが、その大前提は一般投資家から資金調達を行う各企業が、その企業内容、事業内容、事業成績、財政状態等を正しく公表することです。もし、情報開示が不正確であるならば、安心して株や社債に投資できない。だから、2)の冒頭の金融庁の言葉となっています。

3) SOX法

SOX法とは、Sarbanes-Oxley Act of 2002と称する2002年に制定された、日本でSOX法とかサーベンス・オックスレイ法と呼ばれている米国連邦法です。その法の冒頭には、An Act to protect investors by improving the accuracy and reliability of corporate deisclosures made pursuant to the securities laws, and for other purposes.と書いてあります。

連邦法である米国証券取引法(Securities Exchange Act)に加えて投資家保護としてSOX法が制定されたのですが、その契機となったのがエンロンやワールド・コム事件です。優良だと信じていた会社が虚偽の報告、粉飾を行っていた。ホリエモン事件で検察が言っている偽計、風説の流布、粉飾決算でありほぼ同じです。(エンロンであったマネーロンダリングはホリエモン事件では検察の起訴事項に入っていないようですが、ホリエモン事件でもスイス、香港の口座やダミー会社を使い何の金か判らなくするような操作をしているので、私はホリエモン事件でもマネーロンダリングがあったと思うのです。)

SOX法により企業からの正確な情報開示をすることとなるとそんな単純ではありません。正確な情報開示なんてことは、元々証券取引法等に書いてあることです。でも最近は本屋さんに行くと「SOX法****」との表題の本が山のようにあります。これは何かというと、SOX法404条にManagement Assessment of Internal Controlsが書いてあります。404条の全文は続きを読むに入れておきますが、年次報告書(Annual Report)にInternal Control Report(内部統制報告書)を含めるようにし、そのルール作成はSecurities and Exchange Commission(米国証券取引委員会-SEC)が行うと規定しています。SECは、2004年2月にルールを発表し、2004年11月15日以降終了する事業年度から適用されることとなりました。

日本の場合、SOX法404条に相当するのが金融商品取引法24条の4の4です。条文は続きを読むに入れておきますが、SOX法404条とよく似ているので日本版SOX法とも言われています。私にとって大きく違うと思うのが、米国では証券取引委員会がルールを作るが、日本では内閣府令が定めるとなっていることです。日本では、政府が様々な意見を聴取し調整を行い、決定するのが多くの関係者が、仕方がないかと受け入れられる方法。一方、米国の場合は、政府は中立とは限らず、自分たちのことは自分たちがとことん議論して決める。政治決着は良くないのであり、専門家である証券取引委員会が関係先の意見をくみ入れて決定するのがよい。こう言ったところで、日米の文化、伝統、考え方、社会の違いが出ているのかなと思います。

4) 裁判と判決

カネボウ事件の帆足隆元社長に対する東京地裁の判決は懲役2年、執行猶予3年で、宮原卓元副社長は懲役1年6月、執行猶予3年でした。(日経記事)ライブドア事件では、宮内被告に懲役2年6月、熊谷被告、岡本被告、中村被告ら3人に懲役1年6月が求刑されており、この4人の公判は本日結審した。(共同記事

実は、これを米国のエンロン事件、ワールド・コム事件と比べると日本では罪が極めて軽い。エンロン元CEOのJeffrey Skillingは禁固24年4ヶ月の判決。(Sacbee-Associated Press)ワールド・コム元CEOのBernard Ebbers は25年の禁固刑。(Chicago Tribune)米国の場合は、犯罪の数が全部積み重なるから禁固期間が長くなると理解しますが、それでも実質終身刑です。それに比べると日本は桁が違うのと、全員執行猶予ですから刑務所には入らない。

アメリカ合衆国は、自由の国です。でも何をしても自由なのかというと、ルールに従うことが前提で、ルールを受け入れることが出来なければ、合衆国で暮らすことは出来ない。米国市民ではないという考え方です。特に市場ルールは尊重されなければならないものです。公正な市場ルールを悪用することは最大の罪なのです。11月22日のエントリーで日本では、業務上横領や特別背任の方が罪が重いと書きました。合衆国的発想からすれば、法廷で弁護をするなら、業務上横領や特別背任の方が罪を軽くすることが出来ると思えます。何故なら、与えた損害はずっと小さいはずだし、そこには監視制度・管理制度・内部統制にも問題があったと指摘出来るはずだからです。公平な競争が行われるべき市場を荒らすことは合衆国ではより大きな罪なのです。だから、談合を合衆国でやったら大変なことになります。

実は、米SOX法は、罰則の強化もしています。意図的な市場操作は25年。悪質な違反は20年及び罰金5百万ドル(6億円)。風説の流布の様なことは5年が20年に改正されました。いずれにせよ、米国はこの種の犯罪に非常に厳しいことが判ります。だから、ルールを守っていれば、村上ファンド事件で村上被告が会見したときのセリフ「無茶苦茶儲けました。それが悪いことですか?」です。合衆国の考え方は、「自由な市場を維持することにより社会全体が繁栄し、発展する。でも市場には、市場ルールがある。」です。

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2006年11月22日 (水)

ホリエモン裁判

1) ホリエモン裁判

本日(22日)の公判の報道は、共同:株売却益、損益計上できぬ 堀江被告公判で会計専門家のようなものでありました。ホリエモン裁判は、Nikkei Net IT Plus 堀江被告の初公判9月4日、ライブドア事件全面否認へと報じられていることから後2回の公判を残すのみと理解します。

公判に関する報道からするとホリエモンの主張と他の宮内被告等とは、随分と違っているように思えます。大鹿靖明氏のヒルズ黙示録・最終章を読みましたが、裁判に関連する部分の記述もあり、興味ある内容でした。

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著者:大鹿 靖明
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2) ホリエモン犯罪

ホリエモン一人の犯罪ではなく、堀江貴文(34)、宮内亮治(39)、熊谷史人(28)、岡本文人(38)、中村長也(39)及び(起訴されていない結果的に荷担してしまった人も含め)その他の関係者の犯罪であり、その意味では、ホリエモンが公判で主張しているように、ホリエモンは広告塔の役割を果たした、創業者であり、大株主であり、代表取締役であったのです。ライブドアの旧社名であるエッジは、2000年4月にマザーズに上場した。1999年頃から上場を目指し不眠不休で働いていたのは宮内と中村それに本年1月に沖縄で自殺した野口(この記事参照)であった。

上場会社となり、一般投資家から株式発行により資金を調達し、マネーゲームに彼らは陥っていった。ゲーム感覚でビジネスを実行し、コンプライアンス、ガバナンス、内部統制なんて言葉には全く関係がなかったであろう。だから、自社株売買で会社によるインサイダー取引も投資組合を隠れ蓑にして、積極的に進めた。ヒルズ黙示録・最終章を読んで知ったのですが、宮内、中村は交際費さえ使えなかった様です。だから、裏金を作り、スイスや香港のある会社の口座に預金した。このことをホリエモンは知っていたのか、いなかったのか。

3) ヤメ検弁護士高井康行の反撃

さすが検察の手の内を知っているヤメ検弁護士と思います。共同10月04日-中村被告も流用認める LD株売却益1300万円のように、約1億5000万円が中村、宮内両被告が香港で設立した会社「PTI」に送金されたと指摘し、経緯を追及しているし、共同:09月29日-「横領見逃し関与供述」 堀江被告の公訴棄却求めると「公訴権の乱用で棄却を免れない」との主張もしています。

証券取引法違反は5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金(証券取引法197条)ですが、業務上横領は10年以下の懲役(刑法253条)であり、特別背任は10年以下の懲役又は千万円以下の罰金(商法486条、会社法では960条)であり、業務上横領、特別背任の方が最高刑は思いのです。即ち、私には高井弁護士は、「重い罪を見逃す取引をしてまで、より罪の低いホリエモンを首謀者であるとして、起訴している。」との主張であると思えます。最終的に、宮内への求刑は懲役2年6月、熊谷、岡本、中村には懲役1年6月でした。共同10月19日-宮内被告に2年6月求刑 熊谷被告らは懲役1年6月

4) 今後

見守るしかないと思うのです。ライブドア・ホリエモン事件とはNikkei Net 6月5日-ライブドア株主らが集団提訴・101億円賠償求めるのように一般の投資家が被害を受けた事件です。妥当な判決が下されるだろうと思うのですが、ある意味では法の抜け穴であるLoopholeを巧みに突いてもいます。法の整備が追いついていなかったと言えると思います。投資家を守るのは法であり、金儲けをする側は、Loopholeを巧みに突いてくるはずです。永遠のいたちごっこだと思うのです。

5) 蛇足

ヤメ検弁護士にも色々おられる。立場が違えば、異なるのも当然だが、例えば、ヤメ検弁護士堀田力はここで9月11日のことであるが、「レッドカードが見えてきた―ホリエモン裁判の意味合い―ホリエモンはずっとしゃべらずにいて最後は無罪を願っているだろうが、実はその作戦は、成功していない可能性がきわめて高い。つまり、有罪でしかも実刑になる可能性が高い。」と語っている。

では、高井ヤメ検弁護士は悪人であるかと言うと、決してそうではない。検察が行き過ぎることはあってはならない。検察が警察がつっぱしたなら恐怖国家になってしまう。戦前の特高警察をつくってはならない。

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2006年11月19日 (日)

ホリエモンの個人資産

1) ホリエモンの個人資産

共同通信:11月17日ー資産100何十億円と堀江被告 検察官に「悔い改めよ」という記事がありました。東京地裁で検察側の被告人質問で個人資産を問われ「有価証券などが100何十億円あり、現金や預金も数億円」答えたとのことです。同じ記事ですが、朝日:11月17日-堀江被告公判 検察「高株価の恩恵で女性と旅行」は、「欲のために使っていた」と報道しています。共同通信の記事は、続きを読むに入れておきます。

2) ホリエモンは一般株主の資金でこの個人資産を形成した

当然、ホリエモン個人の収入からですが、一般投資家からの資金で個人資産を作り、六本木ヒルズに住み豪華な生活を送っていたのです。ホリエモンの起訴理由に粉飾決算がありますが、この粉飾の内容は、ライブドア株の売却益を利益として計上したと言うことです。でも、ライブドア株の大株主はホリエモンであったのです。当然、ライブドア株をホリエモンは、高値売却しています。そして、高値で買ったのは、一般投資家ですから、一般投資家の資金がホリエモンに渡ったのです。現在ホリエモンが何株のライブドア株を保有しているか調べていませんが、100何十億円の有価証券と言うからには、ライブドア株以外の有価証券で、他の上場株式や国債、社債、投資信託等も含まれているのだと思います。

ちなみに、ライブドア株は、素人の投資家がムードで勝ってしまった感じがあると思います。この辺りについて、ホリエモンは独特のセンスを持っていたと思います。綿密に会社内容を分析したら、こんな訳のわからない会社に投資など出来ない。でも、近鉄球団を買収するなんて、ホワイトナイトの様なことを言うかわいい奴だと思わせる。

だから、悲劇ですね。私は豊田商事事件を思い出してしまいます。

3) 他の経済事件との違い

ホリエモンの保釈金は3億円でした。これと比べると、カネボウ事件の帆足元社長は800万円で、三井銀行から来た宮原元常務は500万円であった。山一証券の粉飾決算で起訴された行平元会長は、2500万円で、三木元社長は600万円であった。ホリエモンの保釈金は桁違いである。

カネボウ事件で起訴された帆足にしろ、宮原にしろ、ホリエンモンの様な個人資産形成はしていない。カネボウという会社の体質に巻き込まれてしまった。それは、山一証券事件も似たようなものと思う。彼らは、粉飾を正す勇気がなかったと言えば、それまでで、経営者として失格だったと言えるだろう。しかし、山一証券の自主廃業を涙を流して「社員は悪くありません。再就職できるようよろしくお願いします。」と発表したのは最後の社長野沢正平であったが、会社が信用を失い、多くの社員を路頭に迷わせることを恐れて、粉飾を正すことが出来なかった。自分の私利私欲よりも、サラリーマンとして会社のため、社員のため、取引先のために回りを見失ってまでもがむしゃらに働いたというのが実体に近い気がする。

ホリエモンは古い経営者とは異なるというより、自分のことしか頭になく、人を騙すのが上手な人間が、たまたま金脈にぶつかったときに形成される人物なのかなと思う。

4) ホリエモンの所得税

2004年の高額所得税納税者第一位は約36億9000万円を納税した東京都内の投資顧問会社部長の清原達郎さん(46)で推定収入額100億円ということでした。ホリエモンは1400万円だったと言うことです。

何故、ホリエモンは節税が可能であったかというと、証券税制です。現在、上場株式は譲渡益の7%所得税+3%地方税ですが、創業者の場合で上場後3年以内に譲渡する場合は、1/2の税率となります。証券税制が目まぐるしく変わっていますが、いずれにせよ低い税率でしか課税されないので、100何十億円の資産は作るが、払う税金はほんの少しという構造は可能でした。

これって、インサイダー取引ではないのと思うのですが、ホリエモンがインサイダー取引で起訴されたと報道されていないことから、検察もインサイダー取引の証拠を掴めなかったのかなと思っています。どのみち、ホリエモンは、全てふてぶてしく否定するでしょうが。

5) ストックオプションの所得税の訂正

11月12日のエントリーファンド・マネジャーFortressの株式上場の2)でストックオプションで株式を入手すると税金がかかると書いたのですが、租税特別措置法第29条の2(特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)により非課税あつかいになるだろうと思いました。但し、権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えない部分についてのみですが。

売却した際には、売却益に税金はかかります。いずれにせよ、ストックオプション自体、会計面、税務面はそうとうややこしいです。

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2006年11月16日 (木)

教育とは?

毎日のように「いじめによる自殺」という報道が続いています。この記事読売11月16日-「自殺予告」、文科省に新たに4通…計22通になんかとても悲しいことだと思うのです。

でも、いじめ自殺に関連して読売11月12日-校長が自殺、児童のたかり行為を正確報告せず…北九州という、校長が自殺することがありました。

自らの命を絶つことはとても悲しいことです。教育とは、何であるか。一番大事なことは「生きることの喜び、楽しさ、うれしさ」そんなことを教えることだと思うのです。疲いこと、悲しいこと、寂しいこと、苦しいこと、その他嫌なことは一杯あります。でも、それ以上にうれしいことがあるんだって、勇気とか希望とか、そのようなものがあることを学ぶのが教育ではないかと思うのです。

校長は学校の責任者です。すなわち、その学校の児童や生徒のことを本当に思い、児童や生徒のために心身をなげうって奉仕する人であり、その為に全力を投じて先生を指導し、力になり、助けていく人のはずです。自殺した校長は、児童のために働いていたのではなく、教育委員会のために働いていたと思えてしまいます。

本当に児童のためを思っている本当の教師であれば、何がいじめを金銭トラブルと報告させたのか、何を改善する必要があるのか、そんなことに全力を尽くすべきで、自殺なんてとんでもないと思います。自殺をするほど、追い込まれていたのだと思います。でも、そこで、自殺をしたら、児童と同じであり、今のいじめ自殺を解決し、なくすことができないのだと思うのです。

本日は読売11月16日-教育基本法改正案が衆院通過、野党は欠席というニュースがあった日です。力で、押し進めていくことに教育があるのだろうか?教育基本法は1947年3月31日に公布され同日施行の法律である。私は、戦前の軍国主義教育の反省から生まれた法律と理解する。憲法を守るなら、教育基本法なんて必要ないじゃないのと言いたいのだが。今回、野党欠席のなか衆議院本会議で採決してしまった。これって、学校では、どう教えるのでしょうか?もし「そんな採決は、いじめじゃないの?」とか「弱い者の声には、耳を傾けないのね?」と子供達に質問されたら、どう答えるのでしょうか?先生には、自分が信じる真実の回答をして欲しいと思います。

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2006年11月14日 (火)

ホリエモン「バカ殿戦術」の勝算

ホリエモン「バカ殿戦術」の勝算て実は私の言葉ではなく、AERA11月20日号(13日発売)の広告に出ていたタイトルでした。

言い得て面白いなと感心しました。ホリエモンは、よく「想定内」、「想定外」等と言っていました。想定とは、現状を分析した結果の今後の予想です。綿密な分析に基づいた予想という感じです。今になって、それを「私は、理解せずに、単なる広告塔として発言していました。」と言うのだから、バカ殿ってあたっているなと思ったからです。

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2006年11月12日 (日)

ファンド・マネジャーFortressの株式上場

1) ファンド・マネジャーFortressの株式上場

資金総額260億米ドル(約3兆円)を運用する米国の大手ファンド・マネジャーFortressのニューヨーク証券市場(NYSE)への株式上場というニュースがあります。NYSEに対して、上場(IPO)に関して届けた文書がこれです。そのまま聞き流すとどういうことも無い感じですが、ファンド・マネージャーそのものの株式上場というのは、少し矛盾があるのです。

ファンドとは、何か?村上ファンドを例にします。村上氏の会社(マック・アセット・マネージメント)がファンド・マネージャーであり、例えば、オリックスと現日銀総裁の福井氏が村上ファンド会社を起用して投資をするとします。その際は、3者で契約をして、投資家オリックスと福井氏の資金の投資先の選定と運用について村上会社に委託し、運用成績に応じて報酬を村上会社に支払うことを取り決めるのです。この契約は、高い運用成績を上げれば、利益を得るのは投資家です。但し、人参をぶら下げる必要があるから、運用成績が高ければ高いほどファンド・マネージャーの報酬を高額とするのが一般的です。

ファンド・マネージャーは、自分の資金を投資するのではないのです。いくら高い運用成績を上げても、その結果の分け前は資金を出した投資家の方が多いのが通常です。もし、ファンド・マネージャーが自分の資金を出すとするなら、人の運用成績を上げるより、自分のリターンを大きくするように動くはずです。

この関係に頭を悩まして、色々Web等を見てみたのですが、結局は解りませんでした。情報を更に集めると共に、少し様子を見るしか仕方ないのかも知れません。

なお、ニュースとして解りやすいのは、このこのBloombergのニュースFortress Seeks up to $750 Million in First Share Sale と思います。又、株式上場と書いたのですが、厳密にはLLCで、日本で言えば合同会社であり持分と言うべきなのでしょう。又、日本の連結納税の様なこと(日本は100%保有の完全親子関係にないと、連結納税は出来ないが米国では、条件が異なる。)が関係するので、細かく分析するのは、そうとう大変です。又、市場に出すのは10%でしかなく90%は従来の出資者が保有するので、実質は変化が無いとも言えます。

2) ストックオプションの税金

10月26日のエントリーの(5)でストックオプションの会社側の法人税について、どうなるのだろうかと書いたのですが、会社法の施行日本年5月1日から施行となった法人税法で追加された第54条に「当該個人において当該役務の提供につき所得税法(昭和40年法律第33号)その他所得税に関する法令の規定により当該個人の同法 に規定する給与所得その他の政令で定める所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額を生ずべき事由(次項において「給与等課税事由」という。)が生じた日において当該役務の提供を受けたものとして、この法律の規定を適用する。」とあることから、会社が所得税法に基づき源泉徴収を行った日に会社がストックオプションで役員・従業員に給与を支払ったとして損金算入が可能になるのだろうと思いました。

当然個人の所得税も源泉徴収が基礎となるはずで、もし源泉徴収を会社が怠ったら、源泉徴収・申告・納付のペナルティーが会社にも来るのだろうなと思いました。10月26日のエントリーで、税金の部分の補足のつもりで書いています。

3) ストックオプションとインサイダー取引

インサイダー取引に関しては、日経-日経元社員の初公判10月2日・インサイダー事件日経-東証・大証・ジャスダックが自主規制で連携等がありますが、何と言っても有名なのは、日経-村上被告側が無罪主張、「村上ファンド」事件で整理手続きです。

インサイダー取引とは、上場会社の役員等が重要事実の公表前に当該上場会社の株式等を売買することで、証券取引法第166条で禁止されています。重要事実とは何であるかです。日経元社員の場合は、会社が正式決定した後の公表する内容そのものを事前に見て売買したからインサイダー取引であると言えるのです。

村上事件については、ニッポン放送株を取得するというライブドアの計画をその計画段階での情報を耳にして、村上ファンドが株を取得したというものです。会社が正式に取締役会で決議したのであれば、決定であり、これが重要事項であり、その公表前に株式を売買すれば、インサイダー取引であると言えるでしょう。しかし、計画中の段階まで含まれるのであれば、下手をすると、その範囲は限りなく広まってしまいます。

ストックオプションで株式を購入するのは、インサイダー取引の禁止に当てはまらないとなっていますが、売却はインサイダー取引の対象です。ストックオプションで入手した株式は何時ならインサイダー取引とならないのか、村上裁判で何か示されるのでしょうか?

4) 蛇足

ストックオプションを与えた場合、会社はその価値をブラックショールズの式か何かを使って計算して、権利確定日まで毎月給与としてコスト計上すると同時に源泉徴収をすることになると思うのです。これを個人の方から見ると、ストックオプションについては現金が支給されないにも係わらず、源泉徴収されるわけで、手取額が減ってしまう。しかも、ストックオプション実行時も(無償交付を除き)定められた金額を支払う必要あり。一方、株式売却もインサイダー取引でままにならずであるなら、ストックオプションとは魅力があるのでしょうか?

日経株価平均銘柄企業で、4社に1社がストックオプションの予定を持っているとの話しがあるが、今後どのようになっていくのかと思いました。

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2006年11月 8日 (水)

医療事故調査委員会

1) 衆議院厚生労働委員会

10月27日のエントリー真実の報道-大淀病院事件で、当日の27日に開催された衆議院厚生労働委員会で大淀病院事件についても、取り上げられると書きましたが、午後の会議で質問を行った民主党の柚木道義議員が大淀病院事件の関連を取り上げました。詳細は、ここをクリックすれば議事録が読めます。

2) 医療事故調査委員会

この厚生労働委員会の討議の中で、私が注目した点であり、是非実現して欲しいと思ったのが、柚木委員の質問に対する柳澤厚生労働大臣の次の答弁です。

事件、事故には、最近のような複雑な社会のもと、また高度に技術が進歩した段階におきましては、警察権力が直接に入っていろいろと処断をしていくことが必ずしも適切でない分野というものが非常に多くなっているというふうに私は考えるわけでございます。

そういうことで、別に警察権力を排除するという気持ちがあるわけではございませんけれども、やはりその前に、より専門的あるいは技術的な検討がなされるということが、それに携わっている方々が今後十分に活躍をしていくということのためにも必要だというふうに考えるわけでございます。

そういう観点から、実は、先行事例としてあります航空・鉄道事故調査委員会というような、それに類似したような医療事故に対する事故の究明、こういうようなものを行う体制が必要であるということを考えておりまして、現在、そうした機関を構築すべく検討をいたしておりまして、本年度内に厚生省としての試案を提示し、来年度にはそれについてまた有識者の御検討をお願いする、こういうようなことで順を追って体制の整備に取り組んでいるところでございます。

医療事故調査委員会を立ち上げ、国民が安心できる医療が実現することを期待したいと思います。

3) 小田原市立病院の医療事故に関する事故調査委員会

医療事故調査委員会について考える上で、参考になるのが小田原市立病院の医療事故です。報道としては、

毎日-小田原市立病院の医療事故:両親が5830万円損賠提訴 刑事告訴も検討へ /神奈川
朝日-1歳児死亡は病院のミス 両親が小田原市に賠償請求提訴
産経-小田原市立病院の男児死亡、賠償求め両親提訴

があり、概ね以下の内容です。

「2月6日の未明から泣く回数が増えていたにもかかわらず、医師が注視せず異常を見過ごした。看護師もミルクをはく可能性が予見できたのに見過ごした。」ことにより当時1歳の男児が死亡した医療事故で、男児の両親が10月30日、小田原市を相手に5830万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。市側は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。

実は、この医療事故に関しては、小田原市が、事故の背景及び原因について調査等を行い、今後の医療事故の再発防止を図るためとして、小田原市立病院医療事故調査委員会を設置していたのです。事故調査委員会の設立決定は2月20日で、3月1日に第1回審議が開かれ、6月に報告書が作成されました。その報告書はここをクリックすれば読むことが出来ます。

4) 事故調査委員会の報告書を読むと

事故調査委員会の報告書は、再発防止の観点でこの事故をよく分析しており、再発防止と信頼関係の再構築に向けた提言として5項目を挙げています。小田原市もこの提言を受けて、再発防止と信頼関係の再構築に取り組んでいることと思います。

一方、1歳の男児の病状を注視せず見過ごしたことについて、報告書を読んでみると、病院側に特に落ち度があったとは私には認められないのです。続きを読むに事故当時の状況を転記しましたが、6時58分に点滴を終了し、7時10分には窓越しに確認し、その後泣き声も聞こえたが、7時20分にベッドの上でミルクを嘔吐し、ぐったりしているのを発見した(心肺停止状態)とのです。詳細は報告書の4ページ目から12ページ目にわたって書かれています。

5) 小田原市立病院の医療事故の原因

事故調査委員会は、背景の分析や再発防止のための取組等についての検討は行っています。しかし、医療事故の原因究明はしていないのです。理由は、遺体が司法解剖となったため解剖結果を事故調査委員会が手にすることが出来なかったし、一切のデータも入手できなかったからです。

司法解剖とは、刑事訴訟法に基づき検察・警察が犯罪(この場合は、医師の業務上過失致死)捜査を目的として行われる解剖であり、死亡原因を究明する刑法・刑事訴訟法に関係する解剖です。解剖鑑定書は検察庁にわたることになり、その結果は「刑事訴訟法第47条 訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と定められていることから、裁判の前には公表されず、但し書き部分は、司法解剖の鑑定書について適用されていません。

多くの遺族は医師を業務上過失の罪を負うべきだと考えておられるわけではなく、「死に至った納得のいく原因が知りたい。同じ様な思いを他の人がすることのないように、再発防止に取り組んで欲しい。」と思っておられるはずです。でも、小田原市立病院医療事故については、司法解剖となったために、医療関係者のみならず事故調査委員会にも解剖結果は伝わっていないのです。解剖目的は再発防止が主眼ではありません。不起訴となったら、その時点で解剖鑑定書は、遺族や医療機関に開示されることもあるようです。

(この7月に最初にクローズアップされたパロマ事件の当時21歳の松江市から東京に出てきていた人が96年3月18日に死亡した事件では、この人の母親が10年たった今年2月に、当時をしのばせる物が残っていないか赤坂署を尋ね、署員の勧めで都監察医務院に連絡し、「死体検案書」を手に入れて、そこで、解剖所見欄に、高い濃度の一酸化炭素中毒だったことを示す記述があったことを発見したということもありましたが。)

司法解剖とは、刑事訴訟法による解剖です。犯罪の疑いがなければ司法解剖は行われないが、逆に犯罪の疑いがあれば、検証のために強制的に実施されることとなります。小田原市立病院医療事故については、報告書に以下のように書かれているのです。

本件については、心肺停止に至った理由を医学的に解明する必要があると判断した。診療科責任者より患者家族に解剖の必要性を説明したところ、家族は、司法解剖の実施を望んだ。

病院は病理解剖を望んだと思うのです。病理解剖は、犯罪の為の解剖ではないので、結果の開示については、当事者の取り決めで済みます。警察が司法解剖が必要と判断し、裁判所の鑑定処分許可状を取れば、強制的に司法解剖が実施されることとなるのですが、医療機関における死亡の場合に、司法解剖が必要な場合は、どれだけあるのだろうと思うのです。本来、医療は医師と患者の信頼関係がなければ成立しないはずです。司法解剖を望むことは、医師を犯罪者とし、市民のために医療を提供しようとしてくれている善意の医師を医療から遠ざけ、医療崩壊につきすすんでいくことの恐れがないのだろうかと思うのです。勿論、民事訴訟をすることは国民の権利であり、刑事告発をすることも許されます。でも、真相の解明や再発防止の取り組みを阻害することはよくないと考えます。病理解剖の結果により、訴訟や告訴を行うことも出来るはずです。

柳澤厚生労働大臣の言われた医療事故調査委員会の体制作りを是非お願いしたいと思うのです。医療事故調査委員会が病理解剖の結果を審査、検証することでよいと思うのです。医療事故調査委員会による個々の重大事故の原因や背景を分析した有益な提言を入手できることを期待したいのです。それにより医師と患者の信頼関係も、もっと良くなるのではと期待するのです。

6) 追記

時事通信-2006/11/07-17:03 執刀医ら2人を書類送検=腹腔鏡使用、腸の損傷見落とし-慈恵医大病院死亡事故と言う報道がありました。東京慈恵会医科大学附属病院のこの発表では、この医療事故についても、医療事故調査委員会と外部調査委員会が設置されています。

なお、この慈恵医大附属病院の医療事故も、病院発表にもありますが、単純ではなく、2003年12月10日に○○クリニックにおいて子宮内胎児死亡で流産手術を受けた。手術直後より強い下腹部痛があり、超音波検査で腹腔内出血を認めたため、子宮穿孔、子宮内外同時妊娠などを疑い慈恵医大附属病院に緊急搬送となった。患者様ご本人、ご主人(医師)の同意の下、まず腹腔鏡により腹腔内を検索することとし、腹腔鏡下で子宮穿孔部を止血し縫合処置を受け、開腹術の必要なしとの見解で、手術を終了した。12月12日14時30分ごろまでは患者は意識清明で、普通に会話をしていたが、その後、腹膜炎症状が強まり、16時30分消化管穿孔性腹膜炎の疑いで緊急開腹手術を施行した。12月13日未明、突然の循環機能障害、心停止が発生し、ICUにおいて診療科を越えた懸命の治療を続けた結果、一時的には回復を認めた。しかしその後再度全身状態が悪化し、多臓器不全で2004年1月1日に死亡。

事故の要因として、医師間の患者様に関する情報の伝達が適切でなかったこと、情報の共有化が不足していたことが含まれるとしている。なお、○○クリニックの産科医、麻酔を担当した産科医は慈恵医大の卒業生でした。

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2006年11月 7日 (火)

七海ちゃんと移植医療

最近はほぼ毎日、宇和島徳洲会病院の万波誠医師による腎臓移植について日経新聞-万波医師、前任病院でも・病気腎移植のように報道があります。そんな中で、毎日新聞-腎臓移植:米で手術、七海ちゃん帰国読売新聞-米で腎臓移植の七海ちゃんが帰国、両親が喜びの会見という報道がありました。七海ちゃん及びご両親よかったですねとお祝い申し上げます。しかし、移植医療に関する様々な問題を含んでおり、たまたま、宇和島徳洲会病院の移植手術問題やその前の代理出産問題、代理出産による子供の住民登録問題等にも関係することもあり、これを機会に移植医療に関してすこし書いてみます。

1) 日本での臓器移植

臓器移植法が日本において1997年10月16日に施行され、脳死からの心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、小腸などの移植が法律上可能になりました。最も、心臓の停止を人の死としての心臓停止後の腎臓と角膜の移植は、臓器移植法施行前から角膜及び腎臓の移植に関する法律の下で行われていました。それ以外には、1992年から開始された骨髄バンク事業としての骨髄移植や、1999年に始まったさい帯血バンク事業としてのさい帯血移植もあります。河野洋平氏への長男の河野太郎氏の生体肝移植で有名な生体間臓器移植もあります。広い意味では、輸血も生体間臓器移植と考えられると思います。

法としては、臓器移植法(正式な方の名前は、臓器の移植に関する法律)があり脳死からの臓器摘出等を定めています。日本組織移植学会は倫理委員会による倫理指針(ヒト組織を利用する医療行為の倫理的問題に関するガイドライン)を出しています。

日本における移植医療の原則は、次のような事項と了解します。

1. ドナー本人の自由意志による臓器の提供
2. 臓器売買等の禁止(無償の提供)
3. 人道的精神に基づいて提供
4. 機会の公平性

2) 海外臓器移植

海外で臓器移植を受けるのは、日本で臓器移植が受けられないという理由と了解します。決して、日本の医療技術や医療水準が低いからではないのです。

特に、日本における移植医療の原則の1.のドナー本人の自由意志については、臓器移植法が「臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合のみ、臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。」と規定しており、自由意志の表示が行える年齢は15歳以上であると厚生労働省がガイドラインを出しています。15歳以上とした理由は、民法961条が「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と遺言能力を15歳以上としていることによります。

ウェブ検索で「XXちゃんを救う会」として検索すると多くのサイトが出てきます。ほとんどは、患者が幼くて、15歳未満の同じ年格好のドナーからの臓器提供は日本では禁止されており、移植医療を受けられないから、海外で医療を受けるというケースです。その為に、多額の費用がかかるので募金をお願いしますと書いています。

日本では、法律で禁じていることでも、海外であれば、許されるのかという問題があります。海外で、移植用の臓器が余っているわけではないのです。例えば、朝日新聞の記事に、腎臓提供者に金銭「仕組み立法化を」 米移植医が論文という報道があり、「脳死移植の「先進国」である米国でも提供される腎臓の不足は深刻だ。」と書いています。(記事は、リンク切れとなるかも知れないので、続きを読むにも入れておきます。)

「XXちゃんを救う会」の場合、移植そのものについての報道がないのですが、生体間臓器移植のみならず脳死移植が含まれます。自分の子供の命は救われたかも知れないが、ドナーとなった脳死した子供が存在し、さらにはどこかに本来であればその脳死した臓器を受け入れて助かった人がその国にいるかも知れません。日本のマスコミは「XXちゃんを救う会」の発表は伝えるが、臓器移植そのものについては報道していません。

「XXちゃんを救う会」のウェブをみて驚きました。ほとんどが「X月末まで生きられる可能性は1%以下」と書いてあります。ちなみに、七海ちゃんはこのように2月末と書いてありました。例えば、毎日(神奈川版)-心臓移植:白石逸郎さん待望の渡米、今月中にも心臓移植手術をという報道があります。この方の場合は、心臓移植ですから、渡米して脳死で亡くなる方を待つのです。それと約1億600万円の募金を集めたと書いてありますが、すごいと思いました。

3) 臓器移植について

宇和島徳洲会病院の万波誠医師による腎臓移植に問題がないとは言い切れませんが、「XXちゃんを救う会」の活動により代表される日本では法的に問題となるから海外臓器移植を選ぶ、或いは海外代理母出産等を選択するという問題とどちらがどうなのだろうかと思ってしまいます。日本では、法的に認められないから日本以外の完全に合法となる地域に行って実施する。そこまで、他人の個人問題に私も立ち入る気はありません。でも、割り切れない気持ちになります。

このような倫理問題を抱えている医療について、皆様はどう考えられますか?

「XXちゃんを救う会」はエゴと感情の世界と思います。勿論、自分が、その立場になったら、そうなってしまうかも知れない。でも、大所高所に立った時、問題が大きすぎるはずです。例えば、「XXちゃんを救う会」には、日本の移植医療はどうあるべきかの観点や日本の移植医療に関しての活動はないように思えます。もし、違った観点に立てば、世界にはHIVで薬もなく死亡していく多くの子供達がいます。

多くのマスコミ報道に、大所高所の観点が欠落していると思えて仕方がないのです。

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2006年11月 4日 (土)

国勢調査から見る高齢化社会

(グラフを多く入れたのですが、読みにくい場合はグラフをクリックするかRSS表示で見て下さい。)

昨年実施された国勢調査の第1次基本集計結果が10月31日に発表されました。参考まで、読売新聞の記事は以下でした。

読売新聞-日本の総人口2万2千人減、減少傾向続く…05年時点

記事中にも、あるのですが、特徴として以下があります。

・ 2005年より減少の日本人口
・ 高齢化社会
・ 外国人人口の増加

1) 人口ピラミッド

今回発表があった昨年(2005年)の国勢調査の人口を年齢・男女別に区分して人口ピラミッドを書いてみたのが、次のグラフです。

Populationpilamid_1

最も人口の多い年齢が男女とも56歳で団塊の世代です。団塊ジュニアと呼ばれるのが32歳前後の世代です。ひときわ少ないのがひのえうまの年に生まれた世代の39歳で男71万人、女70万人です。これは、56歳の人口の61%です。0歳児は106万人ですから、団塊の世代に比べると46%で、半数以下です。団塊の世代が高齢化する一方で、生まれてくる世代はその半分以下ですからすごい高齢化社会がやって来ようとしています。

2) 過去の人口ピラミッド

現在の人口ピラミッドは顔の形のようです。しかし、以下の戦前の1930年(昭和5年)と戦後直ぐの1950年(昭和25年)の人口ピラミッドは三角形でした。

193050poppilamid

1950年の方が、1930年より少し膨らんでいるのですが、細部を見ると戦争の影響が見受けられます。1950年の人口ピラミッドは、4歳前後の世代が少なくて、2歳前後が多い。55年経過してこの世代が59歳と57歳であり、そのまま現在の人口ピラミッドに現れています。1950年と1930年を比べて、1950年の人口ピラミッドは男が30歳前後で少なくなっています。1950年は戦後5年を経過した年です。25歳を中心として戦死した男の数は、人口ピラミッドに現れるほど多かったと言うことと思います。

3) 傾向

上の人口ピラミッドに1970年、1990年と今回の2005年を追加したのが、下の図です。

Pilamidhistory_1

さて、これから何が言えるのか考えてみます。

団塊の世代が1950年、1970年、1990年、2005年と年齢が上昇するに連れて人口ピラミッドの上の層に上昇していますが、人数そのものは、ほとんど変化がない様に思えます。次のグラフは1950年から2005年にかけて、その年齢の人口が10年前と比較していくら減少しているか(例えば、2000年の50歳人口の1990年で40歳人口からの減少)を年率減少率で表したグラフです。なお、2005年は5年前との比較、1950年は20年前との比較です。但し、年率に換算しています。

Populdecm_2

Populdecf

各年齢層の人口減少率は死亡率と読み替えてもほぼ同じです。(厳密には、海外居住者や外国人の出入国があるので、少し違います。)死亡率と考えた場合、60歳までは、ほとんどゼロに近く、年齢が高くなるに連れ死亡率が上がります。1950年の死亡率は1930年からの同一世代の人口減少率ですが、男30歳で少し死亡率が高いのは戦争によるものと思います。

上のグラフからは1970年以降60歳を超える高年齢者の死亡率が下がってきているのが読みとれます。2005年の100歳での人口減少率の低下は計算の都合上100歳以上の年齢層の合計で比較したので、実際より低くなり過ぎています。

4) 高齢化

3)の結果は、高齢化ですが、人口を0歳~25歳、26歳~64歳、65歳以上の3区分で表したのが、次のグラフです。

Populage1

このグラフを見ると65歳以上の人口が多くなったのは、それ程以前ではなく15年前の1990年頃からだったのでしょうか。今後益々高齢化が進むと予想されます。そこで、国立社会保障・人口問題研究所による2002年時点の推計を加えた同じグラフを以下に示します。

Poulage2

総人口が減少する一方で、65歳以上の人口はさほど変わらないと言った感じです。同推計では、65歳以上の人口が最大となるのは2040年。総人口の最大は2004年で、既に減少傾向にある。0歳から22歳人口は1950年から現在まで減少傾向にあります。働き盛りの23歳から64歳の人口は2000年にピークを迎え現在は減少傾向に入っています。

最後に、これら3区分の人口の変化を表したグラフを掲げておきます。女性が働くことが当たり前ではなく不可欠の社会に入ってきたと思います。そして、65歳でリタイヤーではなく、65歳以上の高齢者にも適した働き方を社会が作っていかないといけない時代になってきているのだろうと思います。

Jpopulation

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