内部統制、SOX法と企業犯罪
内部統制、SOX法とと企業犯罪なんて大層なエントリーにしましたが、ホリエモン事件を少し引きずります。
1) 証券取引法違反の罰金と懲役
11月22日のエントリーの「3)ヤメ検弁護士高井康行の反撃」のなかで、証券取引法違反は5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金であり、業務上横領は10年以下の懲役、特別背任は10年以下の懲役又は千万円以下の罰金なので証券取引法違反は罪が軽いと書いたのですが、実は本年6月14日に公布された証券取引法等の一部を改正する法律により197条及び198条が改訂され197条の2が追加され、次のようになり本年7月4日から施行となっています。(厳密には、197条のなかでも、197条の2に移され、改正がなかった部分もある。)
197条:5年を10年に延長し、5百万円を1千万円に増額(対象犯罪は、有価証券届出書の虚偽記載及び風説の流布・偽計、相場操縦等)
197条の2:改正前の198条の1号から10号を197条の2とし3年と3百万円を5年と5百万円に改正した。(対象犯罪はインサイダー取引等)
198条:改正前の198条の10号から19号は、3年と3百万円で改正なし。
ホリエモンについては、改正前の規定が適用となるはずです。
2) 改正の理由
金融庁の言葉で言えば、「金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、投資者保護のための横断的法制を整備することで利用者保護ルールの徹底と利用者利便性を向上し、「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図るという所要の目的を達成するため」です。改正は、罰則の強化のみが行われたのではなく、改正の条文ボリュームからすれば、罰則部分はほんの1%強位です。改正の主要部分は公布から1年6月以内に施行となっているので、2007年12月と思います。そして、この時に証券取引法は金融商品取引法と名称が変わります。
罰則の強化は、ホリエモン事件が関係あったと、言えます。但し、ホリエモン事件のみならずカネボウ事件、村上ファンド事件、その他の事件も関係しています。太平洋のかなたのエンロン事件やワールド・コム事件の影響もあると言えます。
資金運用を行う方法としては、(1)不動産等の資産購入をする。(2)預金として銀行に預ける。(3)株式や債券を購入する。の3通りが考えられます。(2)の銀行預金は、最終的には銀行が企業等に貸付を行うのであり(3)を銀行経由で行うこととなるので似通った所があります。銀行経由にすることにより、リスクは銀行に振り替わるので、安心できると言えます。但し、銀行も(現時点では郵貯を除けば)株式会社等であるので実は(3)の信用リスクがない企業の債券と本質的に変わりはないと言えます。
預金には銀行の経費・利益・リスク相当分が加わって企業に貸し付けられているのであり、また預金保険(ペイオフ)で一行1千万円まで預金保険のカバーがありますが、この費用も貸付利率と預金利率の差で賄われています。
銀行を通さずに直接企業に出資したり貸付けた場合は、リスクヘッジ等の銀行による仲介機能はなくなるが、費用は安く済むはずです。投資家にとっては、銀行金利より高い収益が期待でき、企業側にとっては銀行借入より安く資金調達を行える。このような銀行を通さない直接金融がもっと活発になって良いのですが、その大前提は一般投資家から資金調達を行う各企業が、その企業内容、事業内容、事業成績、財政状態等を正しく公表することです。もし、情報開示が不正確であるならば、安心して株や社債に投資できない。だから、2)の冒頭の金融庁の言葉となっています。
3) SOX法
SOX法とは、Sarbanes-Oxley Act of 2002と称する2002年に制定された、日本でSOX法とかサーベンス・オックスレイ法と呼ばれている米国連邦法です。その法の冒頭には、An Act to protect investors by improving the accuracy and reliability of corporate deisclosures made pursuant to the securities laws, and for other purposes.と書いてあります。
連邦法である米国証券取引法(Securities Exchange Act)に加えて投資家保護としてSOX法が制定されたのですが、その契機となったのがエンロンやワールド・コム事件です。優良だと信じていた会社が虚偽の報告、粉飾を行っていた。ホリエモン事件で検察が言っている偽計、風説の流布、粉飾決算でありほぼ同じです。(エンロンであったマネーロンダリングはホリエモン事件では検察の起訴事項に入っていないようですが、ホリエモン事件でもスイス、香港の口座やダミー会社を使い何の金か判らなくするような操作をしているので、私はホリエモン事件でもマネーロンダリングがあったと思うのです。)
SOX法により企業からの正確な情報開示をすることとなるとそんな単純ではありません。正確な情報開示なんてことは、元々証券取引法等に書いてあることです。でも最近は本屋さんに行くと「SOX法****」との表題の本が山のようにあります。これは何かというと、SOX法404条にManagement Assessment of Internal Controlsが書いてあります。404条の全文は続きを読むに入れておきますが、年次報告書(Annual Report)にInternal Control Report(内部統制報告書)を含めるようにし、そのルール作成はSecurities and Exchange Commission(米国証券取引委員会-SEC)が行うと規定しています。SECは、2004年2月にルールを発表し、2004年11月15日以降終了する事業年度から適用されることとなりました。
日本の場合、SOX法404条に相当するのが金融商品取引法24条の4の4です。条文は続きを読むに入れておきますが、SOX法404条とよく似ているので日本版SOX法とも言われています。私にとって大きく違うと思うのが、米国では証券取引委員会がルールを作るが、日本では内閣府令が定めるとなっていることです。日本では、政府が様々な意見を聴取し調整を行い、決定するのが多くの関係者が、仕方がないかと受け入れられる方法。一方、米国の場合は、政府は中立とは限らず、自分たちのことは自分たちがとことん議論して決める。政治決着は良くないのであり、専門家である証券取引委員会が関係先の意見をくみ入れて決定するのがよい。こう言ったところで、日米の文化、伝統、考え方、社会の違いが出ているのかなと思います。
4) 裁判と判決
カネボウ事件の帆足隆元社長に対する東京地裁の判決は懲役2年、執行猶予3年で、宮原卓元副社長は懲役1年6月、執行猶予3年でした。(日経記事)ライブドア事件では、宮内被告に懲役2年6月、熊谷被告、岡本被告、中村被告ら3人に懲役1年6月が求刑されており、この4人の公判は本日結審した。(共同記事)
実は、これを米国のエンロン事件、ワールド・コム事件と比べると日本では罪が極めて軽い。エンロン元CEOのJeffrey Skillingは禁固24年4ヶ月の判決。(Sacbee-Associated Press)ワールド・コム元CEOのBernard Ebbers は25年の禁固刑。(Chicago Tribune)米国の場合は、犯罪の数が全部積み重なるから禁固期間が長くなると理解しますが、それでも実質終身刑です。それに比べると日本は桁が違うのと、全員執行猶予ですから刑務所には入らない。
アメリカ合衆国は、自由の国です。でも何をしても自由なのかというと、ルールに従うことが前提で、ルールを受け入れることが出来なければ、合衆国で暮らすことは出来ない。米国市民ではないという考え方です。特に市場ルールは尊重されなければならないものです。公正な市場ルールを悪用することは最大の罪なのです。11月22日のエントリーで日本では、業務上横領や特別背任の方が罪が重いと書きました。合衆国的発想からすれば、法廷で弁護をするなら、業務上横領や特別背任の方が罪を軽くすることが出来ると思えます。何故なら、与えた損害はずっと小さいはずだし、そこには監視制度・管理制度・内部統制にも問題があったと指摘出来るはずだからです。公平な競争が行われるべき市場を荒らすことは合衆国ではより大きな罪なのです。だから、談合を合衆国でやったら大変なことになります。
実は、米SOX法は、罰則の強化もしています。意図的な市場操作は25年。悪質な違反は20年及び罰金5百万ドル(6億円)。風説の流布の様なことは5年が20年に改正されました。いずれにせよ、米国はこの種の犯罪に非常に厳しいことが判ります。だから、ルールを守っていれば、村上ファンド事件で村上被告が会見したときのセリフ「無茶苦茶儲けました。それが悪いことですか?」です。合衆国の考え方は、「自由な市場を維持することにより社会全体が繁栄し、発展する。でも市場には、市場ルールがある。」です。
Sarbanes Oxley Act 2002
Sec. 404. Management Assessment of Internal Controls
(a) Rules Required.- The Commission shall prescribe rules requireing each annual report required by section 13(a) or 15(d) of the Securities Exchange Act of 1943 (15 U.S.C. 78m or 78o(d)) to contain an internal control report, which shall -
(1) state the responsibilitey of management for establishing and maintaining an adequate internal control structure and procedures for financial reporting; and
(2)contain an assessment, as of the end of the most recent fiscal year of the issuer, of the effectiveness of the internal control structure and procedures of the issuer for financial reporting.
(b) Internal Control Evaluation and Reporting - With respect to the internal control assessment required by subsection (a), each registered public accouting firm that prepares or issues the audit report for the issuer shall attest to, and report on, the assessment made by the management of the issuer. An attestation made under this subsection shall be made in accordance with standards for attestation engagements issued or adopted by the Board. Any such attestation shall not be the subject of a sparate engagement.
金融商品取引法(未施行)
第24条の4の4 第24条第1項の規定による有価証券報告書を提出しなければならない会社(第23条の3第4項の規定により当該有価証券報告書を提出した会社を含む。次項において同じ。)のうち、第24条第1項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書(同条第8項の規定により同項に規定する有価証券報告書等に代えて外国会社報告書を提出する場合にあつては、当該外国会社報告書)と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。
第2項から第8項は省略します。
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コメント
ベリングです。
05年決算で-7.2億ドル赤字計上、累積赤字-14.8億ドル、
US本体が債務超過転落
もうダメポ!!
http://finance.yahoo.com/q/h?s=BE
http://library.corporate-ir.net/library/12/121/121861/items/222363/BE200510K.pdf
投稿: ベリング | 2006年11月26日 (日) 23時24分