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2006年12月20日 (水)

日興疑惑

本日もプレスリリースから開始します。

日興コーディアルのプレスリリース「当社株式の管理ポスト割り当てについて」

そこで、再度日興疑惑について、検証をすることとします。

1) ベルシステム24増資関連疑惑
1-1) 1042億円の第三者割り当て増資

一昨日のエントリー日興コーディアルグループのプレスリリースの2)でNPIBがベルシステム24の増資に応じて2004年8月に1042.6億円を払い込んだことを書きました。

この増資資金によりソフトバンクBBが保有するBBコール株式をベルシステム24は取得し完全子会社としました。ベルシステム24の2004年11月に終了する中間期の中間有価証券報告書によれば、499億円で譲り受けたとの記載があり、又貸付債権188億円を譲り受けたとあります。

ベルシステム24の個別単体財務諸表の2004年5月から2006年2月までの期間で大きな動きがあった科目を表にしてみました。(表が切れると思います。見る場合はRSSで見て下さい。お手数をかけます。)

          単位:千円 2004年5月末 2004年11月末 2005年2月末 2006年2月末
現金及び預金 18,771,122 25,864,783 19,266,886 8,401,353
短期貸付金 1,829,900 54,455,500 72,367,300 13,210
子会社株式 0 49,957,550 49,957,550 50,064,652
小計 20,601,022 130,277,833 141,591,736 58,479,215
短期及び長期借入金 0 0 0 50,500,000
上記項目のキャッシュフロー -109,676,811 -11,313,903 133,612,521

2004年11月末の貸借対照表では子会社株式の計上はなく全て投資有価証券となっていましたが、比較のため、2005年2月末の子会社株式と同額としました。貸付債権188億円はBBコールに対する貸付金と思うが、その場合でもBBコールの株式取得と貸付債権の合計は687億円であり、355億円はBBコールの取得以外に使われたと思われる。上記表の資産の勘定科目でも現金預金の増加が71億円で短期貸付金の増加が527億円である。

1-2) ベルシステム24の資本の払い戻し

次の表は、ベルシステム24の個別単体財務諸表の資本金と資本剰余金の動きです。

         単位:千円 2004年5月期 2004年11月期 2005年2月期 2006年2月期
資本金 10,045,000 62,175,000 62,175,000 9,000,000
資本準備金 2,511,250 54,641,250 54,641,250 2,279,000
資本金及び資本準備金減少差益 9,385,364 9,385,364 9,385,364 56,407,695
自己株式処分差益 4,391 368,795 368,795 0

2004年11月期は資本金と資本準備金がそれぞれ521.3億円増加し、合計で1042.6億円増加しています。これは、NPIHの払込と一致します。問題は2006年2月期です。資本金が532億円と資本準備金が523億円減少しています。ところが期末に残っている資本金及び資本準備金減少差益は564億円ですから、585億円は資本剰余金の配当としてNPIHに払い戻したことになります。更に、この期の損益計算書を見ると731億円の自己株式償却額を計上しています。即ち、合計すると1316億円をNPIHに払い戻しています。

1.1の表を再度見ると短期貸付金723億円が2006年2月期には消滅し借入金が505億円増加していることから、預金残高の減少と合わせ1300億円程度のキャッシュが株主であるNPIHに流れたと見てよいはずです。

借入金が505億円は、NPIH若しくは日興グループからの借入金である可能性がありますが、1042.6億円の増資に応じて払い込んだ後1年も経過しない2005年7月に1316億円のキャッシュを戻した。通常であれば、考えられない取引です。(このブログISOLOGUEによれば2006年1月の日経で2005年7月に資本の払い戻しが実行されたと報じられていたとのこと。)

では、利益を得たのかと言うと、前回CSKから購入代金を317億円としましたが、ISOLOGUEによれば1株27,000円だったことのことで、総額2370億円の平均単価23,668円と計算されておられる。85.52%の株式が1316億円で払い戻されたのであるから、712億円の損失となる。

2 EB債評価益の訂正に関する疑惑

この今回の有価証券報告書の訂正はEB債評価益を盛り込んだのが、誤りであったから訂正するとしている。一般的なEB債は、発行側にオプションが存在するが、多分このEB債は保有側に株式と交換する権利が存在する転換社債と似たような社債ではないかと想像する。即ち、オプション実行により社債発行者の株式に転換されるのでなく第三者(この場合は、ベルシステム24)の株式と交換される。半期有価証券報告書から取り出したベルシステム24の株価です。

2004年 6月 7月 8月 9月 10月 11月
最高(円) 24,910 23,170 26,900 28,950 28,000 27,930
最低(円) 22,540 19,500 21,700 25,050 26,770 26,030

日興が訂正を行っているのは、2004年3月期と2005年3月期が経常利益と純資産額の減少であり、2006年3月期が利益増と純資産減です。この結果からすると2004年3月期にては156億円資産を多く評価し、2005年3月期では188億円多く評価していたという感じです。5,200,000株の1042.6億円に直接リンクしていたのであれば、低く見積もっても9月末で250億円くらいの評価益のはずで、完全に1対1の結びつきではなかったと思います。

不思議なのは、ベルシステム24は2005年1月16日に上場廃止となっています。しかし、2005年3月期に至っても日興はEB債評価益を計上していた。だからこそ、今回訂正を行っている。これに関しては、何がどうなっているのか理解に苦し見ます。日経-会計ルール見直しに言及、日興問題で東証社長と言うのがありますが、SPCに関する会計ルールなんてこと以前の問題が今回の疑惑だと私は感じます。

3. 何故という疑惑

何故こんなことをしたのか、だんだん解らなくなってきます。例えば、700億円近い金額で買い付けたBBコールの資本金はベルシステム24のウェブからすると1億円です。資本金で会社の規模や資産価値が計れるものではないし、逆に事業税の外形標準課税を避けたり法人税の中小企業優遇を受けるために資本金を1億円で押さえている会社もなかには存在します。BBコールを子会社にした直後の、2004年11月末のベルシステム24の連結貸借対照表には390億円の連結調整勘定が計上されている。貸付金は(あったとしても借入金と連結相殺となるから)関係なく株式取得499億円のみで計算することとなり、109億円が時価評価を行った結果のBBコールの純資産額である。時価純資産の4.84倍の価格で日興はソフトバンクから購入したこととなる。

しかし、2004年8月に1042.6億円を払い込んで、2005年7月に1316億円払い戻すという取引は貸付金の場合は存在しても資本金では普通は考えられない。考え得るとすれば日興は2002年3月期、2003年3月期と赤字決算であった。2004年3月期は利益を計上したが、無理矢理でも良いからと架空利益の計上に走ったのだろうか?

解らないのは、中央監査法人がどこまで知っていたのだろうかである。NPIHは連結対象外であったが、しかしNPIは連結子会社であった。連結子会社には監査の手が及ぶ。NPIに監査が及べば、変なEB債評価益に気が付くはずである。又、こんな2000億円を超える投資を見過ごすはずがないと思う。会計ルールの問題ではなく、監査法人や公認会計士の良心の問題ではないかとさえ思えてくるのだが。

(注)本ブログで引用・参照した財務諸表はEDINETの有価証券報告書とベルシステム24のウェブにおいて公告がなされていた財務諸表です。

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