2006年12月22日 (金)

大淀病院の産科は来年3月末で閉鎖

10月20日-奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず
10月20日-大淀病院事件の続き
10月21日-大淀病院事件 (続)
10月23日-続続々 大淀病院事件
10月27日-真実の報道-大淀病院事

と本ブログで5回取り上げてきました。そして、本日は来年3月末に閉鎖することになったと報道されました。

朝日(関西)-奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える
読売-妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診
NHK(関西)-妊婦死亡 町立病院産科休診へ

私もそうですが、このブログを読んで頂いている多くの方は、このようなことになることを予感しておられたと思います。

「学校でのいじめ」が最近多く報道され、話題になっています。子供の世界は大人の世界を写している面があると思います。子供の世界に起きていることをよく見て、大人は反省をし、良い社会を未来を作っていかなければならない。大淀病院事件とは、「学校でのいじめ」に通じる事件ではなかったかと思うのです。大淀病院と産科医師とを攻撃して得られるものは何か?本当に悪いのは何か?教訓とすべきは何か?結論を必ずしも急ぐ必要はないと思うのです。重要なことは誤った判断をしないことです。

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2006年11月 8日 (水)

医療事故調査委員会

1) 衆議院厚生労働委員会

10月27日のエントリー真実の報道-大淀病院事件で、当日の27日に開催された衆議院厚生労働委員会で大淀病院事件についても、取り上げられると書きましたが、午後の会議で質問を行った民主党の柚木道義議員が大淀病院事件の関連を取り上げました。詳細は、ここをクリックすれば議事録が読めます。

2) 医療事故調査委員会

この厚生労働委員会の討議の中で、私が注目した点であり、是非実現して欲しいと思ったのが、柚木委員の質問に対する柳澤厚生労働大臣の次の答弁です。

事件、事故には、最近のような複雑な社会のもと、また高度に技術が進歩した段階におきましては、警察権力が直接に入っていろいろと処断をしていくことが必ずしも適切でない分野というものが非常に多くなっているというふうに私は考えるわけでございます。

そういうことで、別に警察権力を排除するという気持ちがあるわけではございませんけれども、やはりその前に、より専門的あるいは技術的な検討がなされるということが、それに携わっている方々が今後十分に活躍をしていくということのためにも必要だというふうに考えるわけでございます。

そういう観点から、実は、先行事例としてあります航空・鉄道事故調査委員会というような、それに類似したような医療事故に対する事故の究明、こういうようなものを行う体制が必要であるということを考えておりまして、現在、そうした機関を構築すべく検討をいたしておりまして、本年度内に厚生省としての試案を提示し、来年度にはそれについてまた有識者の御検討をお願いする、こういうようなことで順を追って体制の整備に取り組んでいるところでございます。

医療事故調査委員会を立ち上げ、国民が安心できる医療が実現することを期待したいと思います。

3) 小田原市立病院の医療事故に関する事故調査委員会

医療事故調査委員会について考える上で、参考になるのが小田原市立病院の医療事故です。報道としては、

毎日-小田原市立病院の医療事故:両親が5830万円損賠提訴 刑事告訴も検討へ /神奈川
朝日-1歳児死亡は病院のミス 両親が小田原市に賠償請求提訴
産経-小田原市立病院の男児死亡、賠償求め両親提訴

があり、概ね以下の内容です。

「2月6日の未明から泣く回数が増えていたにもかかわらず、医師が注視せず異常を見過ごした。看護師もミルクをはく可能性が予見できたのに見過ごした。」ことにより当時1歳の男児が死亡した医療事故で、男児の両親が10月30日、小田原市を相手に5830万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。市側は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。

実は、この医療事故に関しては、小田原市が、事故の背景及び原因について調査等を行い、今後の医療事故の再発防止を図るためとして、小田原市立病院医療事故調査委員会を設置していたのです。事故調査委員会の設立決定は2月20日で、3月1日に第1回審議が開かれ、6月に報告書が作成されました。その報告書はここをクリックすれば読むことが出来ます。

4) 事故調査委員会の報告書を読むと

事故調査委員会の報告書は、再発防止の観点でこの事故をよく分析しており、再発防止と信頼関係の再構築に向けた提言として5項目を挙げています。小田原市もこの提言を受けて、再発防止と信頼関係の再構築に取り組んでいることと思います。

一方、1歳の男児の病状を注視せず見過ごしたことについて、報告書を読んでみると、病院側に特に落ち度があったとは私には認められないのです。続きを読むに事故当時の状況を転記しましたが、6時58分に点滴を終了し、7時10分には窓越しに確認し、その後泣き声も聞こえたが、7時20分にベッドの上でミルクを嘔吐し、ぐったりしているのを発見した(心肺停止状態)とのです。詳細は報告書の4ページ目から12ページ目にわたって書かれています。

5) 小田原市立病院の医療事故の原因

事故調査委員会は、背景の分析や再発防止のための取組等についての検討は行っています。しかし、医療事故の原因究明はしていないのです。理由は、遺体が司法解剖となったため解剖結果を事故調査委員会が手にすることが出来なかったし、一切のデータも入手できなかったからです。

司法解剖とは、刑事訴訟法に基づき検察・警察が犯罪(この場合は、医師の業務上過失致死)捜査を目的として行われる解剖であり、死亡原因を究明する刑法・刑事訴訟法に関係する解剖です。解剖鑑定書は検察庁にわたることになり、その結果は「刑事訴訟法第47条 訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と定められていることから、裁判の前には公表されず、但し書き部分は、司法解剖の鑑定書について適用されていません。

多くの遺族は医師を業務上過失の罪を負うべきだと考えておられるわけではなく、「死に至った納得のいく原因が知りたい。同じ様な思いを他の人がすることのないように、再発防止に取り組んで欲しい。」と思っておられるはずです。でも、小田原市立病院医療事故については、司法解剖となったために、医療関係者のみならず事故調査委員会にも解剖結果は伝わっていないのです。解剖目的は再発防止が主眼ではありません。不起訴となったら、その時点で解剖鑑定書は、遺族や医療機関に開示されることもあるようです。

(この7月に最初にクローズアップされたパロマ事件の当時21歳の松江市から東京に出てきていた人が96年3月18日に死亡した事件では、この人の母親が10年たった今年2月に、当時をしのばせる物が残っていないか赤坂署を尋ね、署員の勧めで都監察医務院に連絡し、「死体検案書」を手に入れて、そこで、解剖所見欄に、高い濃度の一酸化炭素中毒だったことを示す記述があったことを発見したということもありましたが。)

司法解剖とは、刑事訴訟法による解剖です。犯罪の疑いがなければ司法解剖は行われないが、逆に犯罪の疑いがあれば、検証のために強制的に実施されることとなります。小田原市立病院医療事故については、報告書に以下のように書かれているのです。

本件については、心肺停止に至った理由を医学的に解明する必要があると判断した。診療科責任者より患者家族に解剖の必要性を説明したところ、家族は、司法解剖の実施を望んだ。

病院は病理解剖を望んだと思うのです。病理解剖は、犯罪の為の解剖ではないので、結果の開示については、当事者の取り決めで済みます。警察が司法解剖が必要と判断し、裁判所の鑑定処分許可状を取れば、強制的に司法解剖が実施されることとなるのですが、医療機関における死亡の場合に、司法解剖が必要な場合は、どれだけあるのだろうと思うのです。本来、医療は医師と患者の信頼関係がなければ成立しないはずです。司法解剖を望むことは、医師を犯罪者とし、市民のために医療を提供しようとしてくれている善意の医師を医療から遠ざけ、医療崩壊につきすすんでいくことの恐れがないのだろうかと思うのです。勿論、民事訴訟をすることは国民の権利であり、刑事告発をすることも許されます。でも、真相の解明や再発防止の取り組みを阻害することはよくないと考えます。病理解剖の結果により、訴訟や告訴を行うことも出来るはずです。

柳澤厚生労働大臣の言われた医療事故調査委員会の体制作りを是非お願いしたいと思うのです。医療事故調査委員会が病理解剖の結果を審査、検証することでよいと思うのです。医療事故調査委員会による個々の重大事故の原因や背景を分析した有益な提言を入手できることを期待したいのです。それにより医師と患者の信頼関係も、もっと良くなるのではと期待するのです。

6) 追記

時事通信-2006/11/07-17:03 執刀医ら2人を書類送検=腹腔鏡使用、腸の損傷見落とし-慈恵医大病院死亡事故と言う報道がありました。東京慈恵会医科大学附属病院のこの発表では、この医療事故についても、医療事故調査委員会と外部調査委員会が設置されています。

なお、この慈恵医大附属病院の医療事故も、病院発表にもありますが、単純ではなく、2003年12月10日に○○クリニックにおいて子宮内胎児死亡で流産手術を受けた。手術直後より強い下腹部痛があり、超音波検査で腹腔内出血を認めたため、子宮穿孔、子宮内外同時妊娠などを疑い慈恵医大附属病院に緊急搬送となった。患者様ご本人、ご主人(医師)の同意の下、まず腹腔鏡により腹腔内を検索することとし、腹腔鏡下で子宮穿孔部を止血し縫合処置を受け、開腹術の必要なしとの見解で、手術を終了した。12月12日14時30分ごろまでは患者は意識清明で、普通に会話をしていたが、その後、腹膜炎症状が強まり、16時30分消化管穿孔性腹膜炎の疑いで緊急開腹手術を施行した。12月13日未明、突然の循環機能障害、心停止が発生し、ICUにおいて診療科を越えた懸命の治療を続けた結果、一時的には回復を認めた。しかしその後再度全身状態が悪化し、多臓器不全で2004年1月1日に死亡。

事故の要因として、医師間の患者様に関する情報の伝達が適切でなかったこと、情報の共有化が不足していたことが含まれるとしている。なお、○○クリニックの産科医、麻酔を担当した産科医は慈恵医大の卒業生でした。

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2006年11月 7日 (火)

七海ちゃんと移植医療

最近はほぼ毎日、宇和島徳洲会病院の万波誠医師による腎臓移植について日経新聞-万波医師、前任病院でも・病気腎移植のように報道があります。そんな中で、毎日新聞-腎臓移植:米で手術、七海ちゃん帰国読売新聞-米で腎臓移植の七海ちゃんが帰国、両親が喜びの会見という報道がありました。七海ちゃん及びご両親よかったですねとお祝い申し上げます。しかし、移植医療に関する様々な問題を含んでおり、たまたま、宇和島徳洲会病院の移植手術問題やその前の代理出産問題、代理出産による子供の住民登録問題等にも関係することもあり、これを機会に移植医療に関してすこし書いてみます。

1) 日本での臓器移植

臓器移植法が日本において1997年10月16日に施行され、脳死からの心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、小腸などの移植が法律上可能になりました。最も、心臓の停止を人の死としての心臓停止後の腎臓と角膜の移植は、臓器移植法施行前から角膜及び腎臓の移植に関する法律の下で行われていました。それ以外には、1992年から開始された骨髄バンク事業としての骨髄移植や、1999年に始まったさい帯血バンク事業としてのさい帯血移植もあります。河野洋平氏への長男の河野太郎氏の生体肝移植で有名な生体間臓器移植もあります。広い意味では、輸血も生体間臓器移植と考えられると思います。

法としては、臓器移植法(正式な方の名前は、臓器の移植に関する法律)があり脳死からの臓器摘出等を定めています。日本組織移植学会は倫理委員会による倫理指針(ヒト組織を利用する医療行為の倫理的問題に関するガイドライン)を出しています。

日本における移植医療の原則は、次のような事項と了解します。

1. ドナー本人の自由意志による臓器の提供
2. 臓器売買等の禁止(無償の提供)
3. 人道的精神に基づいて提供
4. 機会の公平性

2) 海外臓器移植

海外で臓器移植を受けるのは、日本で臓器移植が受けられないという理由と了解します。決して、日本の医療技術や医療水準が低いからではないのです。

特に、日本における移植医療の原則の1.のドナー本人の自由意志については、臓器移植法が「臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合のみ、臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。」と規定しており、自由意志の表示が行える年齢は15歳以上であると厚生労働省がガイドラインを出しています。15歳以上とした理由は、民法961条が「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と遺言能力を15歳以上としていることによります。

ウェブ検索で「XXちゃんを救う会」として検索すると多くのサイトが出てきます。ほとんどは、患者が幼くて、15歳未満の同じ年格好のドナーからの臓器提供は日本では禁止されており、移植医療を受けられないから、海外で医療を受けるというケースです。その為に、多額の費用がかかるので募金をお願いしますと書いています。

日本では、法律で禁じていることでも、海外であれば、許されるのかという問題があります。海外で、移植用の臓器が余っているわけではないのです。例えば、朝日新聞の記事に、腎臓提供者に金銭「仕組み立法化を」 米移植医が論文という報道があり、「脳死移植の「先進国」である米国でも提供される腎臓の不足は深刻だ。」と書いています。(記事は、リンク切れとなるかも知れないので、続きを読むにも入れておきます。)

「XXちゃんを救う会」の場合、移植そのものについての報道がないのですが、生体間臓器移植のみならず脳死移植が含まれます。自分の子供の命は救われたかも知れないが、ドナーとなった脳死した子供が存在し、さらにはどこかに本来であればその脳死した臓器を受け入れて助かった人がその国にいるかも知れません。日本のマスコミは「XXちゃんを救う会」の発表は伝えるが、臓器移植そのものについては報道していません。

「XXちゃんを救う会」のウェブをみて驚きました。ほとんどが「X月末まで生きられる可能性は1%以下」と書いてあります。ちなみに、七海ちゃんはこのように2月末と書いてありました。例えば、毎日(神奈川版)-心臓移植:白石逸郎さん待望の渡米、今月中にも心臓移植手術をという報道があります。この方の場合は、心臓移植ですから、渡米して脳死で亡くなる方を待つのです。それと約1億600万円の募金を集めたと書いてありますが、すごいと思いました。

3) 臓器移植について

宇和島徳洲会病院の万波誠医師による腎臓移植に問題がないとは言い切れませんが、「XXちゃんを救う会」の活動により代表される日本では法的に問題となるから海外臓器移植を選ぶ、或いは海外代理母出産等を選択するという問題とどちらがどうなのだろうかと思ってしまいます。日本では、法的に認められないから日本以外の完全に合法となる地域に行って実施する。そこまで、他人の個人問題に私も立ち入る気はありません。でも、割り切れない気持ちになります。

このような倫理問題を抱えている医療について、皆様はどう考えられますか?

「XXちゃんを救う会」はエゴと感情の世界と思います。勿論、自分が、その立場になったら、そうなってしまうかも知れない。でも、大所高所に立った時、問題が大きすぎるはずです。例えば、「XXちゃんを救う会」には、日本の移植医療はどうあるべきかの観点や日本の移植医療に関しての活動はないように思えます。もし、違った観点に立てば、世界にはHIVで薬もなく死亡していく多くの子供達がいます。

多くのマスコミ報道に、大所高所の観点が欠落していると思えて仕方がないのです。

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2006年11月 4日 (土)

国勢調査から見る高齢化社会

(グラフを多く入れたのですが、読みにくい場合はグラフをクリックするかRSS表示で見て下さい。)

昨年実施された国勢調査の第1次基本集計結果が10月31日に発表されました。参考まで、読売新聞の記事は以下でした。

読売新聞-日本の総人口2万2千人減、減少傾向続く…05年時点

記事中にも、あるのですが、特徴として以下があります。

・ 2005年より減少の日本人口
・ 高齢化社会
・ 外国人人口の増加

1) 人口ピラミッド

今回発表があった昨年(2005年)の国勢調査の人口を年齢・男女別に区分して人口ピラミッドを書いてみたのが、次のグラフです。

Populationpilamid_1

最も人口の多い年齢が男女とも56歳で団塊の世代です。団塊ジュニアと呼ばれるのが32歳前後の世代です。ひときわ少ないのがひのえうまの年に生まれた世代の39歳で男71万人、女70万人です。これは、56歳の人口の61%です。0歳児は106万人ですから、団塊の世代に比べると46%で、半数以下です。団塊の世代が高齢化する一方で、生まれてくる世代はその半分以下ですからすごい高齢化社会がやって来ようとしています。

2) 過去の人口ピラミッド

現在の人口ピラミッドは顔の形のようです。しかし、以下の戦前の1930年(昭和5年)と戦後直ぐの1950年(昭和25年)の人口ピラミッドは三角形でした。

193050poppilamid

1950年の方が、1930年より少し膨らんでいるのですが、細部を見ると戦争の影響が見受けられます。1950年の人口ピラミッドは、4歳前後の世代が少なくて、2歳前後が多い。55年経過してこの世代が59歳と57歳であり、そのまま現在の人口ピラミッドに現れています。1950年と1930年を比べて、1950年の人口ピラミッドは男が30歳前後で少なくなっています。1950年は戦後5年を経過した年です。25歳を中心として戦死した男の数は、人口ピラミッドに現れるほど多かったと言うことと思います。

3) 傾向

上の人口ピラミッドに1970年、1990年と今回の2005年を追加したのが、下の図です。

Pilamidhistory_1

さて、これから何が言えるのか考えてみます。

団塊の世代が1950年、1970年、1990年、2005年と年齢が上昇するに連れて人口ピラミッドの上の層に上昇していますが、人数そのものは、ほとんど変化がない様に思えます。次のグラフは1950年から2005年にかけて、その年齢の人口が10年前と比較していくら減少しているか(例えば、2000年の50歳人口の1990年で40歳人口からの減少)を年率減少率で表したグラフです。なお、2005年は5年前との比較、1950年は20年前との比較です。但し、年率に換算しています。

Populdecm_2

Populdecf

各年齢層の人口減少率は死亡率と読み替えてもほぼ同じです。(厳密には、海外居住者や外国人の出入国があるので、少し違います。)死亡率と考えた場合、60歳までは、ほとんどゼロに近く、年齢が高くなるに連れ死亡率が上がります。1950年の死亡率は1930年からの同一世代の人口減少率ですが、男30歳で少し死亡率が高いのは戦争によるものと思います。

上のグラフからは1970年以降60歳を超える高年齢者の死亡率が下がってきているのが読みとれます。2005年の100歳での人口減少率の低下は計算の都合上100歳以上の年齢層の合計で比較したので、実際より低くなり過ぎています。

4) 高齢化

3)の結果は、高齢化ですが、人口を0歳~25歳、26歳~64歳、65歳以上の3区分で表したのが、次のグラフです。

Populage1

このグラフを見ると65歳以上の人口が多くなったのは、それ程以前ではなく15年前の1990年頃からだったのでしょうか。今後益々高齢化が進むと予想されます。そこで、国立社会保障・人口問題研究所による2002年時点の推計を加えた同じグラフを以下に示します。

Poulage2

総人口が減少する一方で、65歳以上の人口はさほど変わらないと言った感じです。同推計では、65歳以上の人口が最大となるのは2040年。総人口の最大は2004年で、既に減少傾向にある。0歳から22歳人口は1950年から現在まで減少傾向にあります。働き盛りの23歳から64歳の人口は2000年にピークを迎え現在は減少傾向に入っています。

最後に、これら3区分の人口の変化を表したグラフを掲げておきます。女性が働くことが当たり前ではなく不可欠の社会に入ってきたと思います。そして、65歳でリタイヤーではなく、65歳以上の高齢者にも適した働き方を社会が作っていかないといけない時代になってきているのだろうと思います。

Jpopulation

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2006年10月29日 (日)

顔のビジネス-お化粧

顔のビジネスなんて言ったら、ヤクザ屋さんの仕事みたいですが、そうではなくて広告の顔の話しです。先ず、次の顔ですが、多分化粧品の広告の顔だと思います。

Advtz

彼女のお化粧をする前の顔は、これだったというのです。

Realface

どう思われますか?私は、お化粧をする前の方が暖かみを感じてしまうのですが。人の顔はそれぞれの色々なものを写しだしており、それぞれに魅力があると思うのです。でも、ビジネスは違うのです。最大の利益を生み出すには、どうするか。それは、各人の利益ではないから別の判断が入る。ビジネスとは冷酷な面が多いですね。

ところでこの写真はYouTubeから持ってきたものです。どのようにお化粧で変身したのか興味ある人は、これを見て下さい。

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2006年10月27日 (金)

真実の報道-大淀病院事件

もう少し大淀病院事件を引きずります。2チャンネルに大淀病院のカルテを下にして書いた文章というのがありました。

これの701、703、704、705です。

毎日新聞のスクープ記事はこれであったのですが、やはり私には筆が走りすぎていると思えます。なかでも、「この日当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。」の部分は、その後もこれを裏付ける情報はネットでも確認できず、情報源は何であったのだろうと思います。マスコミに情報源の開示を求めないが、情報が正しいことを確認した上で発信する必要があり、その情報に関する責任をマスコミは持つべきです。(誤報なら、誤報であったと入れることも必要。)

なお、10月21日のエントリー大淀病院事件 (続)の3)一つ前のエントリでの”4)  裏情報”の一部訂正でカルテのコピーが病院から報道陣に渡されたとありますが、これに関して2チャンネルの707も同じ趣旨を言っています。事実である可能性が高いと思うのですが、そうなるとマスコミとはバカ集団で真実を追い求めることが出来ない人達なのだろうかと思ってしまいます。

米国であれば、マスコミ各社は病院と医師から名誉毀損による損害賠償で訴えられたのだろうと思います。

これは、2006年5月17日の奈良新聞の記事ですが、今回の事件の背景を良く映し出していると思います。リンク切れにならないと思いますが、念のため、続きを読むに入れておきます。

「南和地域は、病院と診療所を合わせても町立大淀病院だけしか出産を扱う医療機関がない。」と言っていますが、南和地域とは奈良県南部の五條市と吉野郡の一市三町十村(五條市、吉野町、大淀町、下市町、黒滝村、天川村、野迫川村、十津川村、下北山村、上北山村、川上村及び東吉野村)の地域のことで、町立大淀病院産科の存在は貴重だと思います。2006年5月17日の奈良新聞の報道で伝えている奈良県の産科及び産科医不足が問題を引き起こしたと見るべきで、この現象は奈良県だけではないと思います。高校の履修単位不足問題と同じように日本各地に広がっているのではと思います。

医療において地域格差が拡大していっていると私は考えます。でもかけ声だけで無くならないのでしょう。根本的なところを良くして行かねばならないと感じます。これ以上の格差拡大は日本国民を悲惨な道に追い込んでいく恐れもあるのではと心配します。

本日の衆議院厚生労働委員会で、この事件に関連しての討議があったものと了解します。議事録を見て追って紹介します。

誰も知らずに問題が発生することは更に悪く、改善すら出来ない。その意味では、毎日新聞も貢献したことを認めます。

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2006年10月24日 (火)

良いサマリア人法

医療関係を続けます。良いサマリア人をご存じですか?(ルカによる福音書10章29節~37節に出てくる良いサマリア人です。続きを読むにルカによる福音書10章29節~37節の部分を参考として掲載しました。)

(1) 機内緊急放送

あなたは医師であったとします。用があってパリに行っていました。帰国の飛行機は日本航空406便、パリ発18時05分、成田着14時00分)でした。飛行機は定刻通り、シャルルドゴール空港を離陸。離陸後2時間ほどして、食事が終わりかけようとしていた時に機内放送がありました。

「ただ今、突然具合の悪くなられたお客さまがおられます。お医者様、看護師の方はおられませんか?」

さあどうしますか?名乗り出るか、ダンマリでいるか。大淀病院事件を報じているマスコミだったら、ダンマリでいたら、無茶苦茶たたかれるでしょうね。でも、医療機材は飛行機に装備してある物だけだし。自分の専門外の分野であれば的確な診断は出来ないし。所詮治療なんて出来ないだろう。注射をするにしても気圧が低いから、いつもとは少し違う。患者を助けるには緊急着陸をしての救急医療が必要かの判断が重要かも知れない。丁度今サントペテルブルグ上空を飛行中。間もなくシベリアだし、時間も深夜となる。緊急着陸をしたら、到着時間の遅れは生じるし、航空会社の費用負担も多大だし、乗客にも迷惑を掛ける。もし、名乗り出て何もできなかったら、もし診断を間違ったら、今のマスコミだったらもっと厳しい非難を投げつけてくるかも知れません。

この資料-航空機内での救急医療援助に関する医師の意識調査~よきサマリア人の法は必要か?~ によれば、アンケート結果はドクターコールに遭遇したら申し出ると回答した医師は41.8%(28名),その時にならないとわからないと回答した医師は49.2%(33名),申し出ないと回答した医師は7.5%(5名),その他1.5%(1名)であった。

(2) 良いサマリア人法

米国の各州には良いサマリア人法(Good Samaritan Act)があります。ここに各州の良いサマリア人法の該当条文番号があります。一つの法があるのではなく、ある法に条文を追加しており、リンク先が出てきます。

これらの良いサマリア人法は、緊急の場合に病人やけが人の救助に無報酬で従事する医師等の民事責任の免責(故意または重過失を除く)を規定しており、州によっては一般人も免責の対象としています。例えば、カリフォルニア州の次の規定です。

No licensee, who in good faith renders emergency care at the scene of an emergency, shall be liable for any civil damages as a result of any acts or omissions by such person in rendering the emergency care.

(3) 日本では

日本には良いサマリア人法がありません。従い、民法の事務管理による権利義務が発生します。民法第698条(緊急事務管理)は次のように規定しています。

管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

しかし、この698条は医療行為を想定したものではなく、一般的な条文です。例えば、台風が近づいてきているが隣家は空き家である。親切で補強してあげたと言ったケースです。民法の事務管理は、『他人の事務を管理する義務はない(行き倒れの人を助ける義務は民法上は存在しない)。しかし、ひとたび他人の事務の管理を始めた以上は、依頼された場合と同様に責任を持って事務にあたらなければならない。その代わり、その費用は償還される』と言っているとも考えられます。

医師法第19条第1項は次のように規定しています。

診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

但し、たまたま乗客として乗り合わせていた医師が診療に従事する医師と言うには、無理があると思うし、また機内放送が特定の乗客(医師)になされたものでないことから診察治療の求と言えるのかと考え、私は医師の義務は発生していないと考えます。しかし、名乗り出たらどうなのでしょう。医師法を初め様々な義務が医師に発生しないでしょうか。

日本航空と全日空は、上記(1)の資料によれば「JALとANAは紛争が生じた際に弁護士費用まで含めて医師を保護する方針を公表している。」と記載あることから、航空会社の責任として医師に医療過誤訴訟が生じたとしても対処する方針と理解します。(両社への確認はしておりません。)

(4) 秋田県救急救命士の書類送検事件

2005年3月25日患者を搬送中に救命救急師が除細動器を使用しました。除細動器というのは、この東京消防庁がAEDの講習が始まりました!-平成16年7月から一般市民も行うことができるようになったAED(自動体外式除細動器)と言っているこの除細動器なのですが、少し違うのは自動(Automatic)でない手動除細動器だったのです。実は、救急車は自動除細動器も設置されていたのですが、故障で使えなかったのです。そこで、救命救急師は手動で操作する除細動器を病院に到着するまでの間使用して心臓蘇生に努めたのです。病院到着後も病院の医師がすぐに患者に対応できない状況だったということで、医師が対応できるまでの間継続したと思います。

でも、手動除細動器は医師にしか使用は認められないと秋田県警は医師法違反でこの救命救急師を2005年7月4日に書類送検したのです。秋田地検は8月31日起訴猶予としました。2005年9月1日の共同通信のニュースは以下でした。

「除細動必要だった」 機器使用の救命士起訴猶予

記事:共同通信社 【2005年9月1日】

 秋田地検大館支部は31日、医師しか使用してはいけない除細動器を患者に使ったとして、医師法違反の疑いで書類送検された大館市消防署勤務の男性救急救命士(34)を起訴猶予とした。
 秋田地検は「患者は非常に危険な状態で、除細動しなければならない状況だった」とし、除細動器を使った救命士の判断が患者の遺族から感謝されていることも考慮したという。
 秋田地検などによると、救命士は今年3月25日、心室細動を起こし心肺停止状態となった男性患者を大館市の病院へ運んだ際、病院の医師がすぐに患者に対応できない状況だったため、違法行為と知っていて独断で手動式の除細動器を使用した。

 その後、医師が除細動器を再度使い、患者は一時心拍を再開したものの、間もなく死亡した。

 救急車には、心臓の動きを機械が解析し、電気ショックを与えるかどうかを表示する半自動式除細動器が備え付けられており、救命士は使おうとしたが作動しなかった。手動式除細動器の使用は医療行為に当たり、医師以外は使用できない。
 その後、半自動式除細動器のケーブルが断線していたことが判明し、輸入販売元が各地の消防本部に緊急点検を依頼した。

(5) 良いサマリア人法は日本にも必要と思うが

(4)の秋田県の救命救急師事件のこと、それに奈良の大淀病院事件、福島の大野病院事件、或いはこれ亀田病院事件ですが、医師のほとんどの方はトンデモ判決と言っておられます。千葉日報(本年9月12日)-高2男子死亡 病院に8150万円賠償命令:千葉地裁 カテーテルで血管損傷

「亀田病院はの亀田信介院長は「致死量のテオフィリン中毒のため救命できなかった。このような症例で医療機関に責任があると判断されては、日本の医療は荒廃する。直ちに控訴する」とのコメントを出した。」とのことであります。民事で、トンデモ判決が下される可能性はあるのです。

良いサマリア人法は、私は制定により不都合が生じることはないと思うのです。万一の時でも、医師から治療を受けたい。でも制定に向けての動きはそれ程大きくはありません。むしろ、大淀病院事件の様にマスコミは病院や医師を問題ありとしてたたいています。私の10月14日のエントリー”救急医療ーどうなるの”のこんにゃくゼリー事件も5病院で受入が出来なかったのですが、最終的に受入を行った川崎市立病院が悪者になっている感じです。

日本でもボランティアが推奨されるようになってきた。良いサマリア人が尊敬されて良いと思うのです。

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2006年10月23日 (月)

続続々 大淀病院事件

またまた大淀病院事件について書いてしまいます。

(1)正義のマスコミ?

10月17日に報道があったのですが、毎日新聞のスクープだったのです。毎日新聞2006年10月22日支局長からの手紙:遺族と医師の間で(奈良支局長・井上朗)で「結果的には本紙のスクープになったのですが、第一報の原稿を本社に放した後、背筋を伸ばされるような思いに駆られました。」と言っています。

Webのニュースで各社の時間を見ると毎日新聞3時00分、朝日新聞12時13分、読売新聞13時1分、産経新聞13時03分でした。

報道されている内容は、事件を部分的に捉えているだけで、本質には迫っていないと思うんです。毎日新聞の支局長からの手紙の「背筋を伸ばされるような思い」とはよく分からないのですが、「やったー。万歳!」という感じではないかと思ったのです。

でも「病院のガードは固く、医師の口は重い。」とあり、取材したのは、遺族が中心であったと思うのです。新生児の誕生が8月8日で妊婦死亡が8月16日でした。2ヶ月以上経過しての報道です。だったら、一方のみの取材ではなく多方面の取材を行い誤解を与えない真の問題点や核心を突いた報道にすべきと私は考えます。他社も負けずにと報道しているが、同じ様なセンセーショナルな報道が多く、それに更に輪をかけたのがTV局であり、その上を行っているのがTVワイドショーです。

例えば、医師には守秘義務があります。「医師からは取材できないので、患者からの情報だけとする。」は偏り過ぎと思います。自分自身が患者だとしたら、医師には守秘義務を守って欲しいと思うはずです。さもないと、裸になって弱点をさらけ出せないはずです。医師と患者の信頼関係は重要です。医師が慎重になるのは解ります。

「マスコミは暴力です...」と言っておられるのは、いなか小児科医さんです。マスコミは良い社会をつくるために報道をして欲しいと考えます。

(2) 子癇発作

「元検弁護士のつぶやき」の中のコメントで山口(産婦人科)さんが、解りやすい解説をされておられるので、転載させていただきます。

浅学ながら、他の産科医が書き込みなさらないのでXXXさんに。

まず子癇発作というのは血管が締まって脳に血が行かなくなる状態です。当然脳以外の所でも血管が締まっていますから胎盤や腎臓、肝臓でも血流が極端に落ちます。従って一時的とはいえ脳全体が酸欠になっている上、さらに腎不全と肝不全がこれまた一時的とはいえ起こっているとお考えください。そうなれば脳浮腫(脳がむくむ)も起きますし、胎児の状態も悪くなります。けいれんが起きていれば呼吸状態も悪いでしょうから、胎児の状態はさらに悪いでしょう。母体がそのまま死んでしまうことだってあります。前にも書きましたがこれくらい重症だと大体1割死亡。ここまでで重症の子癇発作がどんな状態かイメージできたでしょうか?
で、医者の間では知られた事実ですが、脳梗塞の後血流が再開すると、そこで脳出血が起こることもあります。今回はこれではないかと推定しているわけです。
さらにさらに子癇発作というのは妊娠中毒症の妊婦に起きやすいわけですが、比較的軽症中毒症でも血が固まりやすくなって、ちょっとしたきっかけで体内に血栓が起きてしまいます。ましてや子癇発作時は、全身に微少な血栓が飛び散ったあげく、かえって止血機構が破綻して出血が止まらなくなるDICという状態も起きやすくなります。こうなったらもう多臓器不全から死亡へまっしぐらです。妊娠中毒症や子癇発作がどんなに危険なものか、おわかりいただけたでしょうか。私自身も遭遇経験はないので、ちょっと怖さを大げさに書いているかもしれませんが、間違っていたらどなたか修正してください。

というわけで、意識の戻らない重症の子癇発作患者を受け入れるというのは、並ではない覚悟が必要です。胎児も死ぬかもしれず、母体も死ぬかもしれない。しかも死ねばバッシングが待っている。おまけに前に書いたように、検察は「万全の体制でやれないところで危険な症例を引き受けるべきではない」と福島県立大野病院の事件で医師を逮捕したのですから、NICU,ICU,新生児専門小児科医、麻酔医、産科医数人ずつと、脳出血が明らかになった時点でさらに少なくとも脳外科医2名を直ちに用意できなければ受け入れ不能と回答するしかありません。野戦病院じゃあるまいし、「ベッドがなくても受け入れろ」という言葉の非現実性がお解りでしょう。
最後に外科医が脳をいじるのは全然無理。どこを切れば脳にダメージを極力与えずに血腫を取り除けるかなんて、脳外科医以外にはできない判断。それにこんな修羅場の帝王切開を専門医でもない外科医がやったら大変ですよ。「やったこともない手術をやった!そのため患者が死んだのだ!逮捕だ!」となるのが分かり切っています。

(3) 脳内出血

脳内出血を子癇と誤診したから、妊婦が死亡したなんて、そんな報道されているほど単純ではないことを多くの方は理解しておられると思いますが、この妊婦の脳内出血とはどのような状態であったのかm3という医師のブログ・掲示板に転載可として書かれていたというので、下記に掲げます。

今日、患者さんの死亡原因の診断を教えてもらいました。右脳混合型基底核出血で、手術としては脳室ドレナージが行われたようですが、かなり大きな出血だったため、回復され なかったそうです。
脳内出血の原因は、年齢から考えて、aneurysm
(動脈瘤)があったんだろうか。32歳といえば、aneurysm破裂の好発年齢ですよね。年齢から考えるとAVM(動静脈奇形)は、否定的で すし、予後は比較的いいはずですから。aneurysmは分娩時におこる頻度はまれだったな。そういえば妊娠20週まではAVMが多くって、30週から40週まではaneurysmが多いという文献もあったっけ。PUBMEDでももう一度調べてみます。
不幸にも亡くなられた方の既往のepisodeに何かなかったのかなと思いました。
()は私の注です。

大淀病院でこの患者の脳内出血に対処可能であったかに付いては、「元検弁護士のつぶやき」の中で、転載可として脳外科医(留学中)さんが書かれていますので、下記に掲載します。

脳室体外ドレナージだけであったのならば、大淀病院で可能です。
ただし、臨月の妊婦でなければ。
決断してから、準備、手術、回路の設置終了までは、急げば30分程度の処置ですが、この場合片方だけでなく、両側脳室をドレナージした方がベターなので、さらに15分ほど追加、さらに出血で脳室がシフトしていて一度で穿刺できない可能性なども考えると、処置のために「最低」1時間は予測しなければなりません。
そしてドレナージの最中に脳圧の急激な変化が、胎児の心拍数低下などの危機的状況を導く可能性なども考えれば、この処置は手術室で帝王切開と同時に行うべきです。
麻酔科も、NICUもない病院で、このような危険な処置は行うべきではありません。
さらに、いつ搬送先が決まるかもわからない状況です。
もし、CTで出血がわかったとしても、「母子の管理が十分に出来る施設へ一刻も早く搬送して、搬送先の手術室で処置を行ってください」というのが、正しい判断だと確信します。

また、視床から被殻を巻き込む大型の血腫で、かつ脳室穿破を伴っているタイプの脳内出血であれば、CTを撮れば見逃すことはありませんが、たとえ手術を行ったとしても予後は不良です。
出血の原因としては、高血圧性のものが第一に考えられます。若年者なので、脳動静脈奇形も鑑別しなければなりません。動脈瘤破裂の好発年齢は50代で、部位的にも考えにくいと思います。ただし、血腫で何が何だかわからなくなっていると思います。

いつかは起こりえる、そして起こるべくして起きた事故ですが、学ぶことはとても多いと思います。
問題点は、たくさん見えてきました。
少なくとも、このブログをご覧になられている方には、この産婦人科医を責めることは、何も生み出さないということを認識していただけるのではないかと思います。
そしてこれから生まれる命と母になる女性のためにも、今後どのような体制を整えていかなければならないかを考える必要があります。
それが、亡くなられた方と、残されたご家族に報いる、唯一の方法であると思います。

(追記)

たまたま見つけた文章です。

脳室ドレナージは要するに脳圧が上がらないように、水抜きをするということだから、それで 患者の家族が満足できるレベルの「救命ができた」とは言えない。てか、ふつうの人は救命=ふつうに生活できると思いこんでいるが、あくまでも救命=寝たきりであろうがなんだろうが「生きている」状態のことだ。

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2006年10月21日 (土)

大淀病院事件 (続)

大淀病院事件について、またまたエントリーを。

1) 医師個人の問題か?システムの問題か?

本日、こんな報道共同通信-ベッドあったが拒否 「別の妊婦に必要」とがありました。記事の中で、”奈良病院は「切迫早産で入院中の妊婦がいて、確保する必要があった。受け入れていたら、その人を大阪方面に転院させることになった」としている。”と書いてあるので、表題ほど単純な話しではないと思います。

本事件では、産科の医師、医療機関、それに救急医療体制とかの問題がクローズアップされたのだと思うのです。厚生労働省は異なった見解かも知れませんが、医師不足があり、医師不足のために産科を中止せざるを得ない医療機関が多いのは事実と思います。医師を増やすと医療費が増加する、そして国民の医療費負担が増加するとの議論があります。しかし、「医師を増加すると、いくら医療費が増加するか?」、「医療費は高齢化社会を向かえるにあたって、いくらが妥当であるか?」が本当に重要な議論だと思うのです。

それと、一人前の医師を育てるには、相当の長期を要することです。年寄りの医師ばかり、皆これからリタイアしつつある。熟練者が新人に経験をさせつつ、教育していくことは大事だと思います。パソコンの操作だったら、新人は優秀。でも、医療はパソコン操作で出来る仕事ではないし、医療を同一にして欲しいとは思いません。若手を含め多くの医師には、最新医療を学ぶと同時に、過去の先輩の蓄積を吸収して欲しいと思うのです。

大淀病院事件は、私は間もなく出産という妊婦が脳内出血となってしまった不幸な事態だと思うのです。時間も深夜であり、転送が手間取ってしまった。私たちが、学ぶべきは何であるのかを考え、今後に生かして欲しいと思うのです。

2) 大淀病院でのCT検査

大淀病院でCT検査をしなかったことについて、批判があります。私は、10月20日のエントリーで「CT検査をするのであれば、CTを扱える検査技師か医師を呼ばねばならなかった。」と書きました。それに加え、次のように言っておられるブログssd's Diary-October 18, 2006エントリーがあります。

CTでのTisch tot(台上死)というのは実は、非常にポピュラーであり、トラブルの元なのだ。交通事故の外傷などでも、手術中に死ぬのと、CT検査中に死ぬのとでは遺族の受け取られ方が全然違う。
救急室で目に見える外傷のとりあえずの止血をしても、血圧が安定しない。開腹開胸手術、あるいはIVRをするにも主たる出血源を決定する必要があり、救急医はプロテクターを来て被曝しながら輸血をpumpingし、アンビューバッグを押しながら、CT台に乗せる。スカウトを撮ったとたんにアレスト。
治療の流れの上でたまたまCT撮影中に亡くなっても、医療側としては不可避の結果であると理解できるが、治療中の死亡なら納得がいっても、検査中の死亡というと遺族は荒れる。裁判まで行かなくとも(今まではだが)現場でなじられるのは珍しくない。
シリンジポンプやモニターが付いた重症患者をCT検査するには、とにかく人手がいる。最低でも循環・呼吸動態に知悉した人間が二人、頭は回らなくても体はよく動く研修医か看護師が二人に、とりあえず、いてくれるだけでありがたい力仕事担当二人。これくらい欲しい。守衛さんや事務当直を動員しても300床の病院では望むべくもあるまい。
高次搬送を早々に決めたことに落ち度はない。そして、搬送するとなったら、CTを撮ることには意義がなくなる。
意地悪な見方では、もし、脳出血が判明していたら、国立循環器センターでも受けなかったのではないかという意見もある。その意味では撮らない方が「正解」だったのかも。

3) 一つ前のエントリでの”4)  裏情報”の一部訂正

一つ前のエントリでの”4)  裏情報”で、紹介した文章で一部訂正が出ていたので、それを以下に掲載します。但し、本質の部分は変更はないと思います。なお、この文章は、2チャンネルhttp://society3.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1161360294/から取ったものです。

なんだ。m3.com情報間違ってたみたいだぞ。
産科当直は一人医長だったそうだ。
ttp://community.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=338896&boardId=3&messageRecommendationMessageId=338896&topicListBoardTopicId=39495&pageFrom=showMessageDetail
1.主治医=担当医=産婦人科部長で、当日の産科当直は産婦人科部長ただ一人でした。産婦人科部長に連絡したというのは、院内(部長室か当直室でしょう)にいる産婦人科部 長に連絡したということです。
お詫びして訂正します。
2.当直の内科医と産婦人科部長の間でCT撮影について議論した事実はなく、当該内科医もそんなことは言っていないし、カルテにもこれに関する記載はない。
3.奈良医大に搬送受け入れを要請したとき、大学当直医は緊急帝王切開で手術室にいた。
4.マグネゾールで痙攣はおさまり、以後投与中は痙攣の再発はなかった。
5.CTGは入院の全経過中ほとんど装着しており、患者には担当の助産師がほとんど付き添っていた。
6.カルテのコピーは病院側から報道陣にあらかじめ配布されたらしい。報道サイドは看護記録の経過をもとにストーリーを作っているが、カルテの内容については専門的で、technical termもあり、十分に把握していない。
7.患者家族の親戚に当たる勤続50年近かった元総婦長が病院側と患者家族の橋渡し役(スポークスマン?)になっている。
以上です。ここに訂正してお詫びします。

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2006年10月20日 (金)

大淀病院事件の続き

19病院で搬送の受入が出来なかったことから、相当色々なメディア等で取り上げられています。情報源による違いからなのか、記者の受け取り方の違いからなのか、編集方針の違いからなのか、実は本日の報道は様々です。

1) 妊婦、1時間以上放置けしからん

この朝日新聞-意識消失の妊婦、1時間以上放置 奈良・町立大淀病院は、「看護記録を見た日本産科婦人科学会の専門医は「意識を失った患者には医師が付き添い、原因を調べなければならない。けいれんが起きるまで1時間以上放置したのは信じられない行為」と驚く。」と書いています。

2) 奈良県産婦人科医会の発表「主治医にミスなし」

これも朝日新聞-産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡ですが、「記者会見した同医会の平野貞治会長は「失神とけいれんは、子癇でも脳内出血でも起こる症状で、見分けるのは困難。妊婦の最高血圧が高かったこともあり、子癇と考えるのが普通だ」と説明。「CTを撮らなかったのは妊婦の搬送を優先したためで、出席した理事らは『自分も同じ診断をする』と話している」と書いています。

3) 本当の話は?

大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長の話しを前のエントリーの3)で朝日新聞の記事を引用しました。同じ人が毎日新聞-奈良妊婦死亡:搬送先探し、診断不正確で遅れかでは、次のように言っています。本当は、どのような話しをされたのか、新聞ではまた聞きとなり怖いのでしょうか?最も、TVも一部のみをカットして報道するからこれも下手をするともっと怖いのですが。

末原部長は「脳内出血で母親の命が危ないと分かっていれば、産科より救命救急センター、大学病院を中心に搬送依頼した。搬送先が決まるまで待つ時間があるなら、CTを撮る時間もあったのではないか」と指摘している。

4)  裏情報

言葉は適切でないのですが、医療関係者が書いた掲示板にあった文章です。私も、この掲示板を直接見てはいないのですが、相当細かいことまで書いてあるので、真実味を感じます。(おそらく真実と思うが、その確証は取れていないとして読んで下さい。)

ソースが確実なきょう聞いた話。
当夜の当直は外科系は整形外科医、内科系は内科医、産婦人科は奈良医大から派遣の当直医。
患者さんは午前0時に頭痛を訴えて失神、ただ痛みに対する反応(顔をしかめる)はあった。産婦人科当直医は念のため内科当直医に対診を依頼、内科医は「陣痛による失神でし ょう、経過を見ましょう」ということになった。しかしその後強直性の痙攣発作が出現し、血圧も収縮期が200mmHgになったので、子癇発作と判断、マグネゾールを投与し ながら産婦人科部長に連絡した。部長は午前1時37分、連絡してから約15分程で病院に到着。以後二人で治療にあたったが、状態が改善みられないため、午前1時50分、母 体搬送の決断を下し、奈良医大へ電話連絡を始めた。
午前2時、瞳孔散大を認めるも痛覚反応あり。血圧は148/70と安定してきた。この時点で頭部CTも考慮したが、放射線技師は当直していないし、CT室が分娩室よりかな り離れたところにあること、患者の移動の刺激による子癇の重積発作を恐れ、それよりも早く高次医療機関をさがして搬送するほうがよいと判断、電話をかけ続けたが、なかなか 搬送先がみつからない。
午前2時30分、産婦人科部長が家族に状況を説明、そのあいだにも大淀病院の当直医や奈良医大の当直医は大阪府をふくめて心当たりの病院に受け入れ依頼の電話をかけつづけ た。家族はここで「ベビーはあきらめるので、なんとか母体をたすけてほしい。ICUだけがある病院でもいい」と言ったので、NICUを持たない病院にまで搬送先の候補をひ ろげ、電話連絡をとろうとした。家族も消防署の知り合いを通じ、大阪府下の心当たりの病院に連絡をとって、受け入れを依頼した。この頃には産科病棟婦長(助産師)も来院、 手伝いはじめてくれた。大淀病院看護師OGで患者さんの親戚も来院し、多くの人が集まり始めた。けれども受け入れてくれる施設が見つからない。担当医は当直室(仮眠室)か ら絶望的な気分になりながら電話をかけ続けたし、大学の当直医は大学の救命救急部門にまで交渉に行ったが子癇は産婦人科の担当で、我々は対処できないと言うことで受け入れ 拒否された。午前4時30分、呼吸困難となり、内科医が挿管したが、その後自発呼吸ももどり、サチュレーションは98%と回復した。その後すぐに国立循環器病センターが受 け入れOKと連絡してきたので、直ちに救急車で搬送した。患者さんは循セン到着後CT検査等で脳内出血と診断され、直ちに帝王切開術と開頭術をうけたが、生児は得られたも のの脳出血部位が深く、結局意識が戻らないまま術後8日目の8月16日死亡された。

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