2007年1月10日 (水)

ブログの変更

あけましておめでとうございます。

新年を機会に、ブログの名前とアドレスを変更することとしました。

これhttp://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/ある経営コンサルタントのブログという名前にしました。

理由は、「売れない」が現実になってしまい、ほとほと弱り切ってしまいました。人のコンサルタントどころか自分自身に対して経営コンサルタントをしなくてはならなくなってしまいました。ない知恵を絞った結果、「ある」とすれば、きっと「仕事がある」「楽しみがある」「夢がある」「未来がある」・・・・・・と色々なことが、これから期待できるのではと思ったからです。

今後ともよろしくお願いします。

なお、ブログはおいておきますが、コメントとトラックバックの新規受付は終了します。

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2006年12月28日 (木)

最新の人口推計によれば

約1週間前の20日に「国立社会保障・人口問題研究所が、社会保障審議会人口部会に、長期的な日本の人口動向を予測した「将来推計人口」を報告した。」というニュース(日経-日本の人口、50年で3割減・厚労省が将来推計)がありました。11月 4日のエントリー国勢調査から見る高齢化社会で、国勢調査の結果を踏まえて高齢化社会の様子を見たことから、今回の最新の人口推計を基にした分析を行ってみます。

グラフは、クリックすると小さなウィンドウが開いて読みやすいグラフが現れます。

1) 前回推計(2004年1月発表)との差は?

国立社会保障・人口問題研究所は、5年ごとに人口推計を行っているのですが、前回の推計と今回の推計を比べることにより、5年前に予想した高齢化は更に進んでいるのか、推計の差を見てみます。そこで、人口の様子を表した人口ピラミッドを書いて比べてみました。

Photo_13

65歳以上は余り今と変化がない様ですが、60歳以下は今後人口の減少が続く感じです。なお、前回推計のピラミッドは細い実線で、今回推計のピラミッドは太い実線です。前回より若い世代で推計人口が減少しており、高齢層では逆に推計人口が増加しています。次のグラフは、各年齢における前回推計に対して今回推計での増加或いは減少をパーセントで表しています。若い年齢では減少であり、老年層では増加です。

Photo_14

2) 日本の総人口

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計には、出生率と死亡率についてそれぞれ低位、中位、高位の3通りがあり、従い組み合わせ結果は全部で9通りあります。1)で表した人口ピラミッドは出生中位で死亡中位の場合の推計です。9通のうちで、将来人口が一番大きくなるのが出生高位で死亡低位の推計であり、一番小さくなるのが出生低位で死亡高位の推計です。そこで、この2つの推計と出生中位で死亡中位の推計をグラフに示したのが以下です。なお、前回の出生中位で死亡中位の推計人口も示しました。

Photo_16

日本の人口は、これから減少していきます。

3) 年齢別人口の推計

人口が減少していくが、年齢別に見るとどうなるかを次のグラフに示しました。(出生中位・死亡中位の推計を使用。)

Photo_18

上のグラフを見ると70歳の人口は、今後ともほぼ一定です。そして、80歳、90歳、100歳の人口はこれから増加するのです。一方、減少するのは、0歳、10歳、20歳、30歳で40歳は2014年にピークとなりますが、その後は減少です。

4) 将来の人口構成

次のグラフは、日本の人口を0-24歳、25-64歳と65歳以上の3区分に分けて1950年から2000年までの実績と2010年から2050年の推計を一つのグラフとしたものです。

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次のグラフは、この3区分の人口を示しています。

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0-24歳の人口は1950年頃からずっと減少しています。25-64歳の人口も2000年をピークに減少です。65歳以上の人口は2050年に向けて増加していくのです。細線で表したのが、前回の2002年の推計であり、2002年の推計よりもこの傾向は強くなっていることが分かります。高齢化は進んでいます。この3区分をパーセントで表すと次のグラフのように更にはっきりします。

Photo_24

5) 団塊の世代

3)の年齢別人口の推計を見ると2009年の60歳、2019年の70歳が人口が他の年齢より一番多いことが分かります。この年齢こそ団塊の世代です。団塊の世代である現在58歳の将来の人口を表したのが以下のグラフです。

Photo_25

多くの人が長生きをするようになりました。男性でも半数の人が85歳まで生きます。女性の場合は、半数以上の人が90歳以上生きるのです。

実は私も団塊の世代の一人です。団塊の世代とは、小学生の頃に安保騒動があり、東京オリンピックを高校生、そして大学にはいると全共闘運動と万博です。働き初めて直ぐに、ニクソンショックがあり、その後、ベトナム戦争終結、沖縄返還・・・そんな世代です。3)の年齢別人口の推計グラフからして、自分たちの年齢が一番多いという世代は未だ20年以上続くと予想されます。一番人口の多い世代が隠居をしては何も始まらない。やはり、何かをしなくてはいけないのだと思うのです。出来れば、社会のため。そして、自分でも楽しいこと。これ重要だと思います。そうでなくては、長続きなんかしないと思いますから。何をすべきかお正月の間、ゆっくり考えてみたいと思います。

多分、年内はブログ更新をしないだろうと思います。このブログを読んで頂いている皆様が良い年を迎えられることをお祈り申し上げて今年の最後にしたいと思います。

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2006年12月27日 (水)

日興役員に対する株主代表訴訟

昨日(25日)の日興コーディアルからのプレスリリースは次の3つでした。

・代表執行役等の異動および特別調査委員会の設置について
・社長就任にあたって
・課徴金に係る審判について

日興コーディアルは、金融庁より指摘を受けた2005年3月期の連結決算に関わる利益等は偽りであったことを認め、証券市場の担い手として信頼回復に努めるという内容であります。しかし、日興疑惑の基であるベルシステム24の買収には連結決算の問題のみならず、他にも疑問点が多いと思います。ベルシステム24買収は2005年3月期であり、当時の日興コーデァルグループの代表取締役は本日退任した有村純一でした。株主代表訴訟を起こして取締役の責任(善管注意義務)を問う必要が、ないだろうかとして以下可能な範囲で検討します。

1) プレスリリースを見ると

日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)のベルシステム24に関するプレスリリースは下記です。

a) 2004年7月20日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資引受について
b) 2004年8月5日-株式会社ベルシステム24の株式取得および第三者割当増資払込について
c) 2004年8月6日-株式会社ベルシステム24の株式取得について
d) 2004年9月27日-日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社による株式会社ベルシステム24株式の公開買付けの開始について
e) 2004年10月28日-日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社による株式会社ベルシステム24株式の公開買付け結果について

ベルシステム24のプレスリリースで特に関係があると思われるものは下記です。

a) 2004年7月20日-BBコール株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
b) 2004年7月20日-第三者割当による新株式発行並びに親会社、主要株主および筆頭株主の異動に関するお知らせ
c) 2004年7月20日-株式会社ベルシステム24とソフトバンクBB株式会社との包括的業務提携について
d) 2004年7月20日-当社の第三者割当増資についての株式会社CSKによる新株発行差止仮処分の申立に関するお知らせ
e) 2004年7月30日-仮処分申請却下の決定について
f) 2004年8月3日-株式会社CSKによる仮処分の申立てに関するお知らせ
g) 2004年8月4日-抗告棄却の決定について
h) 2004年8月5日-親会社、主要株主および筆頭株主の異動に関するお知らせ
i) 2004年8月5日-仮処分申立て取り下げについて
j) 2004年8月5日-第三者割当増資の払込み完了のお知らせ
k) 2004年8月11日-取締役及び監査役の就退任に関するお知らせ
l) 2004年8月30日-「第23期決算公告」の掲載(注)NPICが株主になる前の2006年5月31日に終了する営業年度の計算書類がここにあります。
m) 2004年9月27日-平成17 年5 月期(第24 期)配当予想の修正に関するお知らせ(注)中間配当をゼロとし、産業活力再生特別措置法に基づく金銭交付による株式交換を実施する予定を述べている。
n) 2004年9 月27 日-公開買付けの賛同に関するお知らせ
o) 2004年10月28日-NPIホールディングス株式会社による当社株式の公開買付けの結果に関するお知らせ
p) 2004年11月26日-株式交換に関するお知らせ
q) 2004年12月15日-株式交換に伴う株券提出のお願い

NPI/NPIHが第三者公募で過半数株主になる前には、CSKが筆頭株主でした。CSKのプレスリリースは次の通りで、2004年7月20日発表の第三者公募に反対していました。

a) 2004年7月20日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資による新株発行差止仮処分の申立てに関するお知らせ
b) 2004年7月30日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資による新株発行差止仮処分の決定に対する当社の方針について
c) 2004年8月2日-株式会社ベルシステム24に対する法的手続きについて
d) 2004年8月4日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資による新株発行差止仮処分申請の却下に対する即時抗告について
e) 2004年8月5日-株式会社ベルシステム24に対する申立て取り下げについて
f) 2004年8月5日-株式会社ベルシステム24の株式譲渡に関するお知らせ(注)1,580,000株@\27,000
g) 2004年8月6日-株式会社ベルシステム24の株式譲渡に関するお知らせ(注)464,000株@\27,000
h) 2004年8月18日-新コールセンター会社設立のお知らせ

最後にBBコールを売却したソフトバンクのプレスリリースを見ると以下でした。

2004年7月20日-ソフトバンクBBとベルシステム24との包括的業務提携について

3) プレスリリースから読みとる株式第三者発行

4社とも同じ7月20日に重大発表を行っています。

これは、ソフトバンクのプレスリリースから逆にたどると、よく解るのですが、BBコール株式(約500億円)をベルシステム24に売却し、貸付債権(約190億円)をベルシステム24に譲渡する。譲渡対価は合計約690億円。更に、ベルシステム24は、テレマーケティングシステム構築投資及び新サービス提供におけるシステム投資をBBコールにおいて行うことが売却の条件であり、この投資額は約590億円である。総合計では、1280億円となります。

ベルシステム24が1280億円の巨額資金を調達する方法が新株の第三者割り当てによるNPI/NPIHからの調達であったのです。そこで、CSKはプレスリリースa)の通り、新株発行差し止め仮処分の申し立てを行いました。当時は商法ですが、特に有利な発行価額の場合は、株主総会における2/3多数決が必要であり、そうではなく授権資本の範囲であれば取締役会で決定が可能でした。東京地裁の判断はCSKの仮処分申請の却下でした。この東京地裁の判断についてのベルシステム24とCSKのプレスリリースは、それぞれe)とb)です。

私は、東京地裁の判断は誤りではと思うのです。その理由は、

i) 発行価額の20,050円は年7月16日の東京証券取引所における株式終値21,780円の7.94%ディスカウントであり、市場価額よりは有利である。「特に」に該当するかどうかであるが。既存株主にチャンスさえ与えず、株式の希釈化を生じ、市場価額より約8%有利というのは、「特に」に該当すると思える。

ii) 発行済株式数 4,898,700株に対して第三者割り当てによる増加株式数 5,200,000株であり、この取締役会決議はベルシステム24のb)であるが、NPIHを引受人として決議されており、取締役会が50%超の支配株主を決定するという逆転の決議が行われている。私には、このような取締役会決議を認めることは株主軽視も甚だしいと思える。

iii) ベルシステム24の事業年度は5月末であり、定時株主総会は3ヶ月以内の8月末頃である。NPIHが株主となる 5,200,000株は、8月に開催する定時株主総会で議決を有する。この部分についてCSKのプレスリリースc)は、「ベルシステムが行った基準日公告は、定款に定める基準日後に新たに新株主となった者のうちNPIだけに議決権行使を認めようというものであり、商法上、違法である。」と述べている。

株式会社は株主総会が最高意志決定機関であり、多数決による運営となる。しかし、東京地裁の判断は、株式会社の私物化を容認することになる。貯蓄と投資が適正に運営されてこそ、安心して暮らせる世界になるのだが、残念ながらこれでは信頼できない投資の世界を裁判所が作り出しているように思える。

4) 第三者発行以後の動き

5,200,000株の増資に対する104,260百万円の払込は8月5日に実施され、NPIHは8月6日に株主となった。CSKプレスリリースe)のように、期限も短い中CSKはギブアップせざるを得なくなったのだと思います。但し、申し立て取り下げは、CSKプレスリリースf)とg)のように、一株27,000円でCSK及びCSK子会社が保有する2,044,000株をNPIHが購入することでした。総額55,188百万円。この結果、CSKは、プレスリリースh)のとおり、電話のコールセンター業務をベルシステム24ではなく、新規に会社を設立して新会社に委託することにしました。

その後、NPIプレスリリースd)のとおり、NPIは9月27日にベルシステム24のTOBを発表し、10月27日にTOBにより2,633,027株を取得しました。NPIプレスリリースe)によれば、総額73,850百万円であった。更に、TOBに応じなかった、2%強の株主に対しては、ベルシステム24のプレスリリースp)のとおり一株28,000円で産業活力再生特別措置法に基づく金銭交付による株式交換を実施し、強制的に株主とNPIHの金銭と株式の交換を実現しました。

4) 果たしてこのディールは何であったか

NPIHが支出した金銭は合計2400億円です。この2400億円の支出は何時決定したのか。多分、7月20日に、一連の動きを開始したときには、決定していたと見るべきと思います。日興/NPIは、CSKの反対に逢うことを予測していたと思います。その結果として、市場価額より高く株式をCSKから購入することも、その結果として2/3を超える議決権を取得することも。

全ては、日興/NPIの読み通りであったのだろうと思うのですが、最後に全株を取得したのは、何故か?通常であれば、少数株主から横槍を入れられることなく、思い通りに会社を運営するためです。そして、NPIHの会社内容がよく分かっていませんが、ベルシステム24のみに対する投資であれば、短期間に誰かにベルシステム24を転売して利益を得たかったのかもしれません。そうであるとするなら、NPIHの企業活動は一時的であるとして連結子会社から除外したのは意味があるかも知れない。但し、利益計上はトンデモナイと思います。

しかし、それで納得が行くかというと、トンデモナイです。12月20日のエントリー日興疑惑の通り、ベルシステム24から自ら払い込んだ資本金と資本剰余金以上の金銭をNPIHは戻したわけで、100%子会社だからこんなこともできたはずです。でも、金銭を取り戻したのは、ソフトバンクのプレスリリースにある「新サービス提供における関連システム構築投資額:約590億円」を実行しなかったからです。或いは、初めから実行する気がなかったのか。

気にかかるのは、CSKプレスリリースb)にある「1,000億円を超える増資を行い、ベルシステムの資金を含めて約1,280億円をソフトバンクBB株式会社に流出させるという、ベルシステムに何のプラスもないスキーム」と述べている点です。590億円の投資は実行されなかったことから、最終的にはソフトバンクに資金が回ったのは690億円でした。果たして、690億円の価値がある会社であったのかと言うことですが、私はないと思います。何故なら、電話のコールセンター業務であれば、CSKがプレスリリースh)のとおり、簡単に設立可能と思えるからです。青色発光ダイオードの技術のような、人が簡単にまねできないものとは思えないからです。

2006年4月にソフトバンクは1.75兆円のボーだフォンの買収を行いました。1.75兆円は、LBOという手法を使い、1.28兆円は借入金ですが、ソフトバンクにとっては、悪い子会社は売却し、事業拡大の資金を作る方向であったことは間違いないはずです。それからすると、日興はトンデモナイ高値を掴んでしまったのかも知れません。しかし、そうだとして被害者は日興コーディアルの株主です。株主は、今回の粉飾により損害を受けたはずです。代表訴訟は十分考えられると思うのです。

5) 蛇足

前回は、会計士、監査法人の問題点を述べたのですが、今回は弁護士、弁護士事務所の問題点を述べておきます。3)の東京地裁の判断は、弁護士が書く書類やアピールと密接に関係があるはずです。即ち、CSK側の弁護士事務所も相当有名な事務所であったようですが、正義を通せず負けています。私は、関連書類を読んではいませんが、無能弁護士だったのでしょうか?逆に、ベルシステム24側は誰であったのか知らないのですが、所詮このディールは7月20日に決まったことではなく、相当前から関係者で詰めていたはずで、弁護士も加わっていたはずです。NPIも相談に加わっていたと言うか、むしろ主役であったかも知れません。そうなると、NPIの監査役に森・濱田松本法律事務所という自ら「弁護士約220名とスタッフ約300名を擁する日本有数の大規模総合法律事務所」と言っている事務所の弁護士です。この事務所が関わっているかも知れません。いずれにせよ、弁護士とは依頼主の為に全力を尽くす役割です。戦う相手が正しくとも、引き受けたからには、依頼主のために働く人達です。会計士による監査は、お金の交渉をする相手である経営者のために働くのではなく、株主のために働かなければならず、苦労が多いと言えます。

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2006年12月22日 (金)

大淀病院の産科は来年3月末で閉鎖

10月20日-奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず
10月20日-大淀病院事件の続き
10月21日-大淀病院事件 (続)
10月23日-続続々 大淀病院事件
10月27日-真実の報道-大淀病院事

と本ブログで5回取り上げてきました。そして、本日は来年3月末に閉鎖することになったと報道されました。

朝日(関西)-奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える
読売-妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診
NHK(関西)-妊婦死亡 町立病院産科休診へ

私もそうですが、このブログを読んで頂いている多くの方は、このようなことになることを予感しておられたと思います。

「学校でのいじめ」が最近多く報道され、話題になっています。子供の世界は大人の世界を写している面があると思います。子供の世界に起きていることをよく見て、大人は反省をし、良い社会を未来を作っていかなければならない。大淀病院事件とは、「学校でのいじめ」に通じる事件ではなかったかと思うのです。大淀病院と産科医師とを攻撃して得られるものは何か?本当に悪いのは何か?教訓とすべきは何か?結論を必ずしも急ぐ必要はないと思うのです。重要なことは誤った判断をしないことです。

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2006年12月20日 (水)

日興疑惑

本日もプレスリリースから開始します。

日興コーディアルのプレスリリース「当社株式の管理ポスト割り当てについて」

そこで、再度日興疑惑について、検証をすることとします。

1) ベルシステム24増資関連疑惑
1-1) 1042億円の第三者割り当て増資

一昨日のエントリー日興コーディアルグループのプレスリリースの2)でNPIBがベルシステム24の増資に応じて2004年8月に1042.6億円を払い込んだことを書きました。

この増資資金によりソフトバンクBBが保有するBBコール株式をベルシステム24は取得し完全子会社としました。ベルシステム24の2004年11月に終了する中間期の中間有価証券報告書によれば、499億円で譲り受けたとの記載があり、又貸付債権188億円を譲り受けたとあります。

ベルシステム24の個別単体財務諸表の2004年5月から2006年2月までの期間で大きな動きがあった科目を表にしてみました。(表が切れると思います。見る場合はRSSで見て下さい。お手数をかけます。)

          単位:千円 2004年5月末 2004年11月末 2005年2月末 2006年2月末
現金及び預金 18,771,122 25,864,783 19,266,886 8,401,353
短期貸付金 1,829,900 54,455,500 72,367,300 13,210
子会社株式 0 49,957,550 49,957,550 50,064,652
小計 20,601,022 130,277,833 141,591,736 58,479,215
短期及び長期借入金 0 0 0 50,500,000
上記項目のキャッシュフロー -109,676,811 -11,313,903 133,612,521

2004年11月末の貸借対照表では子会社株式の計上はなく全て投資有価証券となっていましたが、比較のため、2005年2月末の子会社株式と同額としました。貸付債権188億円はBBコールに対する貸付金と思うが、その場合でもBBコールの株式取得と貸付債権の合計は687億円であり、355億円はBBコールの取得以外に使われたと思われる。上記表の資産の勘定科目でも現金預金の増加が71億円で短期貸付金の増加が527億円である。

1-2) ベルシステム24の資本の払い戻し

次の表は、ベルシステム24の個別単体財務諸表の資本金と資本剰余金の動きです。

         単位:千円 2004年5月期 2004年11月期 2005年2月期 2006年2月期
資本金 10,045,000 62,175,000 62,175,000 9,000,000
資本準備金 2,511,250 54,641,250 54,641,250 2,279,000
資本金及び資本準備金減少差益 9,385,364 9,385,364 9,385,364 56,407,695
自己株式処分差益 4,391 368,795 368,795 0

2004年11月期は資本金と資本準備金がそれぞれ521.3億円増加し、合計で1042.6億円増加しています。これは、NPIHの払込と一致します。問題は2006年2月期です。資本金が532億円と資本準備金が523億円減少しています。ところが期末に残っている資本金及び資本準備金減少差益は564億円ですから、585億円は資本剰余金の配当としてNPIHに払い戻したことになります。更に、この期の損益計算書を見ると731億円の自己株式償却額を計上しています。即ち、合計すると1316億円をNPIHに払い戻しています。

1.1の表を再度見ると短期貸付金723億円が2006年2月期には消滅し借入金が505億円増加していることから、預金残高の減少と合わせ1300億円程度のキャッシュが株主であるNPIHに流れたと見てよいはずです。

借入金が505億円は、NPIH若しくは日興グループからの借入金である可能性がありますが、1042.6億円の増資に応じて払い込んだ後1年も経過しない2005年7月に1316億円のキャッシュを戻した。通常であれば、考えられない取引です。(このブログISOLOGUEによれば2006年1月の日経で2005年7月に資本の払い戻しが実行されたと報じられていたとのこと。)

では、利益を得たのかと言うと、前回CSKから購入代金を317億円としましたが、ISOLOGUEによれば1株27,000円だったことのことで、総額2370億円の平均単価23,668円と計算されておられる。85.52%の株式が1316億円で払い戻されたのであるから、712億円の損失となる。

2 EB債評価益の訂正に関する疑惑

この今回の有価証券報告書の訂正はEB債評価益を盛り込んだのが、誤りであったから訂正するとしている。一般的なEB債は、発行側にオプションが存在するが、多分このEB債は保有側に株式と交換する権利が存在する転換社債と似たような社債ではないかと想像する。即ち、オプション実行により社債発行者の株式に転換されるのでなく第三者(この場合は、ベルシステム24)の株式と交換される。半期有価証券報告書から取り出したベルシステム24の株価です。

2004年 6月 7月 8月 9月 10月 11月
最高(円) 24,910 23,170 26,900 28,950 28,000 27,930
最低(円) 22,540 19,500 21,700 25,050 26,770 26,030

日興が訂正を行っているのは、2004年3月期と2005年3月期が経常利益と純資産額の減少であり、2006年3月期が利益増と純資産減です。この結果からすると2004年3月期にては156億円資産を多く評価し、2005年3月期では188億円多く評価していたという感じです。5,200,000株の1042.6億円に直接リンクしていたのであれば、低く見積もっても9月末で250億円くらいの評価益のはずで、完全に1対1の結びつきではなかったと思います。

不思議なのは、ベルシステム24は2005年1月16日に上場廃止となっています。しかし、2005年3月期に至っても日興はEB債評価益を計上していた。だからこそ、今回訂正を行っている。これに関しては、何がどうなっているのか理解に苦し見ます。日経-会計ルール見直しに言及、日興問題で東証社長と言うのがありますが、SPCに関する会計ルールなんてこと以前の問題が今回の疑惑だと私は感じます。

3. 何故という疑惑

何故こんなことをしたのか、だんだん解らなくなってきます。例えば、700億円近い金額で買い付けたBBコールの資本金はベルシステム24のウェブからすると1億円です。資本金で会社の規模や資産価値が計れるものではないし、逆に事業税の外形標準課税を避けたり法人税の中小企業優遇を受けるために資本金を1億円で押さえている会社もなかには存在します。BBコールを子会社にした直後の、2004年11月末のベルシステム24の連結貸借対照表には390億円の連結調整勘定が計上されている。貸付金は(あったとしても借入金と連結相殺となるから)関係なく株式取得499億円のみで計算することとなり、109億円が時価評価を行った結果のBBコールの純資産額である。時価純資産の4.84倍の価格で日興はソフトバンクから購入したこととなる。

しかし、2004年8月に1042.6億円を払い込んで、2005年7月に1316億円払い戻すという取引は貸付金の場合は存在しても資本金では普通は考えられない。考え得るとすれば日興は2002年3月期、2003年3月期と赤字決算であった。2004年3月期は利益を計上したが、無理矢理でも良いからと架空利益の計上に走ったのだろうか?

解らないのは、中央監査法人がどこまで知っていたのだろうかである。NPIHは連結対象外であったが、しかしNPIは連結子会社であった。連結子会社には監査の手が及ぶ。NPIに監査が及べば、変なEB債評価益に気が付くはずである。又、こんな2000億円を超える投資を見過ごすはずがないと思う。会計ルールの問題ではなく、監査法人や公認会計士の良心の問題ではないかとさえ思えてくるのだが。

(注)本ブログで引用・参照した財務諸表はEDINETの有価証券報告書とベルシステム24のウェブにおいて公告がなされていた財務諸表です。

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2006年12月18日 (月)

日興コーディアルとミサワホーム

日興コーデァルについては、昨日のエントリーで触れましたこのプレスリリース。ミサワホームも、同じ様なプレスリリースを昨日出していました。

両社とも題が全く同じ「本日の一部報道について」であります。少し違うのは、ミサワホームが月曜日に正式発表すると何となく認める予告をしていました。

そして本日両社とも報道の通りと認めたようなものと思います。

日興プレスリリース-内部管理体制に関する今後の対応等について
ミサワホームプレスリリース-業績に影響を与える事象の発生について

最も、日興コーディアルは、昨日のエントリーに書いたように単純ではなく、不可解な部分が多いのであり、私にとって疑問は解けていません。まだ続きがあるかも知れませんね。

蛇足ですが、両社とも会計監査人は中央青山監査法人でした。中央青山(現みすず監査法人)のことをどう考えるべきか?だらしない、能力不足、或いは中央青山がいたから両社の不正も明るみに出たのだと考えるべきか?

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自民党の来年の税制改正案

自民党が12月14日付で、来年の税制改正案である平成19年度税制改正大綱を発表しました。ここにあります。

このブログでも11月27日のエントリー「法人税の引き下げ」で経団連の税制に対する提言、12月 3日のエントリー「来年の税制改正」で政府税制調査会の答申について触れたことから、この自民党の税制改正大綱についても書いてみます。

1) 有形固定資産の減価償却

正直言ってスッキリした案と思いました。即ち、減価償却の計算に使用する償却率を改正するのは、2007年4月以降取得した固定資産を対象とし、それ以前に取得した固定資産は従来通りの償却率であるが、従来より償却期間を5年間延長して1円までの償却を認める。面白いと思ったのは、定率法の減価償却率を定額法の償却率の2.5倍にすることです。10年の場合は定額法なら0.1、定率法なら0.25と言うわけです。従来は、定額法は0.9を掛けることから0.09で、定率法は0.206であったことから、最初の1年間について定額法では固定資産取得価額の1%、定率法では4.4%減価償却費が多くなります。余談かも知れませんが、定率法の場合は、残存価額を0円にする償却率は数学的には存在しません。償却率が1でない限りは永遠に掛け算が続きます。定率法として定額法の償却率の250%を使用するのは、米国等で採用されていると思いました。国によっては、税務上の減価償却として定率法を認めていない場合もあると思います。

一種の固定資産の投資促進で、色々掲げた中で、これが経済活性化・国際競争力の強化に一番有効と思われるのですが。

なお、市町村民税の税収の40%以上を占める固定資産税の評価の基礎となる評価方法は現行を維持するとしており、当然のことと思います。但し、固定資産税の評価方法として現行の方法が合理的であるかについては、例えば日本公認会計士協会の租税調査会研究報告第16号「固定資産税のあり方について」の公表にも批判があり、今後の課題として検討をすべきと考えます。

2) 特定同族会社の留保金課税と特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入

特定同族会社の留保金課税については、本年3月の改正で課税対象が狭くなっており、更に資本金1億円以下が対象外と狭まる。でも、ほとんどの中小企業は、留保金課税を払うほど利益がなく、どう評価すべきか解りません。特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入については、本年3月の改正で突然導入され、こちらは逆に多くの中小企業が利益を出すと対象となる、法人税と所得税をゴッチャにしたような嫌な税制です。基準所得金額を1600万円にするというのは、妥当ではないかと思います。なお、基準所得金額とは、「オーナー社長の給与と会社の税前利益の合計の過去3年平均です。法人所得が基準所得金額を超えた場合は、所得税の給与所得控除相当額の損金算入を認めない制度です。資本金1円で会社が設立できるから、こんな制度を新設したとの説明でしたが。最も、この800万円を1600万円に変更するのは、法律ではなく政令ですから、これで決定と考えればよいのでしょうか?

3) 移転価格税制についての租税条約の相手国との相互協議に係る納税猶予制度 

日経10月25日-移転価格税制、追徴最高に・申告漏れ総額2836億円のように移転価格税制による追徴課税が増加しています。今後もっと増加すると思います。何故なら、途上国への生産シフトやグローバリゼーションが更に増大すると思うからです。生産シフトは、1国で完成品まで製造するよりは、A国で第1加工をB国で第2加工をC国でアセンブルをと言った具合に、仕掛品や半完成品が国をまたいで親子関係の会社を行ったり来たりしたら、それぞれの適正価格はいくらか、訳がわからないです。そして、価格の付け方により、日本、A国、B国、C国それぞれの源泉利益は違ってくるので、各国の法人税の取り分は微妙に異なってきますから。

租税条約に基づく相互協議は必要である。むしろ積極的に取り組むべきと思います。その際、納税猶予は与えればよいと思います。なお、納税猶予には国税通則法50条に定められた担保を納税者は提供しなければならない。当然のことと思います。

4) 上場株式に関する所得税

1年延長は証券業界に配慮したことと参議院選に対する対策でしょうか?そのうちに株式についても総合課税制度に移行して欲しいと思うのですが。そうすれば、高齢者で所得の低い人は確定申告で源泉税の還付を受けられる。

5) 寄付金税制(所得税)

寄付金控除の限度額を現行の総所得金額等の30%から40%に引き上げるとしています。総所得金額とは、給与所得控除等は差し引くが社会保険料控除のような所得控除は差し引く前の金額です。総所得金額の30%や40%も寄付を出来る人はある程度の高額所得者になると思うのです。でも、社会のためになる寄付であれば、支出した寄付金額を所得金額から控除するのは当然と思うのです。

寄付金税制で重要なのは、何が社会のためになる寄付金として認定しうるのかという点のはずです。NPO法人にも、もっと拡大すべきと思いますが、一方でNPO法人を隠れ蓑とした制度の悪用を防ぐ手段も確立すべきです。正当な機関(日本では、未だ育っていないので当面は、市町村の地方公務員と市民団体等で構成する委員会の様なものでしょうか?)が認める法人、団体への資金使途を特定した寄付となるのでしょうか?会計報告がなされ会計監査がなされることは、絶対条件にすべきと思います。会計報告についての罰則規定も必要と思います。

税が健全な社会活動をサポートする形になって欲しいと思います。

6) 無駄口

無駄口を一つ。日刊スポーツ12月15日-松坂6年70億円、新人史上最高額というニュースについては誰でも知っています。70億円というのは、6年間で70億円だと思うのですが、契約一時金はこのうちいくらなのでしょうか?何故、このようなことを言うかというと、契約一時金は松坂が日本で所得税の納付義務がある日本居住者として受領する対価のはずです。だから、日本で所得税と住民税を払ってくれる。でも、住民票を米国に移して、米国でプレーすれば、日本で松坂は所得税も住民税も払いません。税法だから、それでよいし、松井も皆そうですから。でも、契約時金が多ければ、日本の税金に少しだけ貢献してくれるのになと、つい思ってしまったのです。

でも米国が全額が米国に帰属するのであり日本には税が発生しないと言うかも知れませんね。3)の移転価格税制と似たようなことになるのでしょうか?

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日興コーディアルグループのプレスリリース

証券大手の日興コーディアルグループが2005年3月期決算について証券取引等監視委員会が調べを進めているとの報道がありました。

日経-日興が不適切な利益計上・監視委調査、課徴金も視野
朝日-日興、利益水増しの疑い 証券監視委、課徴金5億円検討

これに対する日興コーディアルグループのプレスリリースはここにありますが、「本日、当社が不適切な利益を計上との一部報道がありましたが、現時点で申し上げられることは何もございません。」との、これプレスリリースなのと驚く文書でありました。でも、少し調べると余りにも不可解な事件なので以下、少し書いてみます。

1) 日興疑惑

月刊現代2006年2月号に「スクープ! 機密資料が物語る有村社長の『罪』、そして新たな『飛ばし』疑惑 日興証券『封印されたスキャンダル』呪縛はとけていなかった!」が載った。書き手は、元日経新聞記者の町田徹氏。発売されたのが、2005年12月28日で、この月刊現代2006年2月号の目次はここにあります。そして、翌日の12月29日に日経新聞が日興コーディアルグループの会計監査人である中央青山監査法人がNPIホールディングス(NPIH)を連結対象子会社とするように要請していたという内容を報じた。これらのことは、このブログ2006年1月2日に書かれていました。

そして、2006年2月3日の参議院財政金融委員会で民主党峰崎議員が日興コーディアルの粉飾疑惑として取り上げています。財政金融委員会議事録のこの部分は、続きを読むに入れておきます。

2) 疑惑の内容

日興コーディアルグループ(NPIHにしろ親会社である日興コーディアルグループのコントロール下であり、NPIHの判断で投資を行うことはあり得ない。以下”日興”とします。)は、2004年8月にベルシステム24の株式を取得し一気に3分の2以上の67.71%を保有する株主になっています。ここにベルシステム24のプレスリリースがあります。

ベルシステム24のホームページはここにありますが、電話をかけるコールセンターの会社です。日興が2004年8月にベルシステム24の株式を取得した方法は、5,200,000株を第三者割り当てにより1042.6億円で、そして1,580,000株をCSKから購入した。CSKから購入代金は不明であるが株式単価は同じ若しくはそれ以上と見てよいはずであるから317億円以上。従い、合計1,359億円でベルシステム24の株主となった。更にNPIHは、ベルシステム24の株式の公開買い付けを2004年10月に行い、全株を取得。公開買い付けの株式単価は28,000円であったことから公開買い付けにおいて支払った対価は776億円と推定される。以上で日興のベルシステム24に対する投資総額は2,135億円となる。

2,135億円の巨額の投資を日興は何故したのであろうか?日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)によるプレスリリースはここにありますが、このプレスリリースにてNPIは、事業内容を上場企業・未公開企業や証券化関連商品等を対象とした中長期的な投資事業と説明しており、投資目的でベルシステム24の全株式を取得したとのことである。投資事業とは投資の結果としての配当収入と転売益になるが、ベルシステム24の2004年5月期の年間連結売上高は672億円で純益47億円であった。純資産額は431億円で1株当たり8,950円である。2,135億円の投資のうちで、1042.6億円が増資に応じて払い込んだ資金で、残1092.4億円が発行済み株式の購入に充てられたこととなる。そこで、資産・負債価額が帳簿通りであったなら、1042.6億円から431億円を差し引いた661億円が連結貸借対照表に営業権として計上されなければらないことなる。

売上高は672億円、純益47億円、純資産額431億円の会社に対して2,135億円の巨額投資をおこなうことは、不可解と思ってしまう。そして、公開買い付けで買い付けできなかった株式については、産業活力再生特別措置法を使って現金による株式交換を行っている。何故こんなことを日興はしたのであろうか?なお、2006年2月期のベルシステム24の貸借対照表では622億円あると思った資本金がなんと90億円になっている。532億円はどこへ消えたのか、資本剰余金は564億円残っているが、損益計算書を見ると自己株式償却額として731億円が計上させれている。・・・・と言うことは、ベルシステム24は株主である日興から731億円の自己株式を購入した。即ち払い戻しを行ったこととなる。プレスリリースでは、資本減少公告が見あたらなかったが、多分誰も気が付かないうちに官報で公告を行ったのであろう。

不可解さは益々増大するばかりである。株式の3分の2多数を得られれば何でも出来る。3分の2の取得となるように第三者増資を仕組み、払い込んだ後は資本、資本剰余金、利益剰余金を好きなように組み替えし(この時点では100%子会社であったから、何でも可能)そして不必要であった資金は回収する。でも、こんなことがばれればやばいから連結対象外とした。そんな憶測も出来る気がします。

参考までに2006年9月29日のJ Castニュース です。

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2006年12月 3日 (日)

来年の税制改正

政府税制調査会は平成19年度税制改正に関する答申を昨日の12月1日に安倍内閣総理大臣へ提出しました。答申そのものはここ(PDF Format)にあります。ニュースは以下です。

日経-証券税制、軽減税率廃止を明記・政府税調答申
読売-企業の税負担軽減、07年度税制改正を答申…政府税調
NHK-政府税調 企業税負担軽減答申(NHKニュースはリンク切れが早いので続きに読むに入れておきます。)

読売新聞とNHKは企業負担軽減と報道しています。いずれにせよ、来年或いは再来年の税に、更には今後の税にも関係してくるので、少し政府税制調査会の答申を見てみます。

1) 減価償却制度の変更

答申の「1.経済活性化に向けた速やかな対応」のなかで、「(1)減価償却制度」については「残存価額(10%)を廃止するとともに、償却率についても国際的に遜色のない水準に設定すべきである。」という文章で強い表現となっています。一方、他の(2)同族会社の留保金課税、(3)エンジェル税制、(4)事業承継関連税制、(5)国際課税、(6)外形標準課税及び(7)政策税制の集中・重点化については、「検討すべきである。検討する必要がある。適切な対応を講ずべきである。見直しが課題となる。引き続き整理合理化を進めることが重要である。」 という様な柔軟性の高い表現であり、経済活性化に向けた速やかな対応という項目なかでは、減価償却制度が来年の税制改正に盛り込まれると予想します。

償却可能限度額(取得価額の95%)の撤廃」とは、耐用期間10年の固定資産の簿価は10年を経過した時点でゼロになることが許される様に変更することで、逆に、今まで何故許されなかったのかという感じもあります。現行では耐用期間終了時の簿価は10%以上である必要があります。そして、耐用年数終了後も更に減価償却を継続してもよい。但し、5%以下の簿価にするような減価償却をしてはならないという規定です。

なお、この減価償却基準は税額計算に使用する減価償却計算用です。会計上、財務諸表上の減価償却は税額計算の減価償却と違って構わないのです。企業は、自己の事業成績や財政状態を正しく表現すると信じる損益計算書、貸借対照表を作成すべきです。例えば、ある製造設備が設備そのものは8年使用できてもマーケットでは次々と新製品が発売されその製造設備は実質3年しか生産に使用できないと考えれば3年で減価償却をすべきです。もし、会計上の耐用期間が税務上より短ければ会計上の減価償却費が多くなり、企業利益は少なくなります。この結果、企業利益と税務上の所得金額及び納付税額は対応しなくなり、対応しない差額を繰延税金資産として計上することとなります。これが、税効果会計であり、上場企業は税効果会計を適用していないと、会計監査で問題が生じます。従い、減価償却制度の変更は本質としては企業利益には影響を与えないのです。

但し、実体として日本のほとんどの企業は耐用年数終了時に10%の残存価額を持つという減価償却方法を採用しているので、多分税制改正と同時に残存価額なしの減価償却方法に変更すると思います。また、そうしないとこの税制改正の恩恵を受けられなくなります。即ち、減価償却に関して税法は減価償却限度額を規定しており、損金計算をした金額以上には税務上も損金扱いできなくなるからです。

減価償却期間を短くし残存価額をゼロとすれば、減価償却費は大きくなります。しかし、その固定資産の取得から破棄までに至る減価償却費の合計は変わりません。費用合計が変わらないので、結局は、税額も固定資産の保有期間全体を合計すれば同じです。減価償却終了後は減価償却費がなくなるので、課税所得が多くなり、税額も多くなるのです。企業にとっての効果は、前の方の期間の税が安くなり、後の方の期間の税がその分増加することとなり、資金効果、利息効果があることから現在価値・DCFで考えれば有利になると言えます。

それと固定資産の減価償却が関係するのは、法人税だけではありません。所得税のうちで事業所得と不動産所得には当然全く同じことが言えます。だから減価償却制度の変更は、企業に有利と特別に言えるほどのものではないと私は思います。

2) 上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率の廃止

3.国民生活に関連する税制」では「(1)金融所得課税」のなかの「②上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率」において「期限到来とともに廃止し、簡素でわかりやすい制度とすべきである。」と、廃止という言葉を使って書いてあります。

預金利息は15%の所得税と5%の地方税が差し引かれて80%しか受け取れません。上場株式の場合は、受取配当金が7%の所得税と3%の地方税が差し引かれ、売却した場合は売却益に対して7%の所得税と3%の地方税が課税されます。株式の場合は、預金の半分の税しか払わないことになっているのです。

但し、2008年3月31日以降に受け取る配当金は所得税15%+地方税5%の合計20%が差し引かれ、株式の売却益(売却損がある場合は、売却損を控除した純利益)については2008年1月1日から所得税15%+地方税5%の合計20%の税率適用となります。即ち、再来年から預金と投資が同条件となるのです。少し前には、株式売却時の税は、売却価格の1%の所得税と0.3%の有価証券取引税のみという時代があり、嘗ては架空名義の預金や株取引が多く存在しました。しかし、IT時代の現代では米国のように総合課税をすべきと思います。

即ち、超過累進課税の適用で、所得はその原因が何であれ平等に課税するのが原則で公平課税がなされるはずです。公平は税において最も重要です。公平でなければ、バカらしくて税を真面目に納めたいとは思いません。社会を支える金であるとして社会貢献をしている気持ちで納めることができる税を私は望みます。本当は、株式売却益を総合課税で納付できれば20%より税を節約できるのです。何故なら、所有期間5年以上の長期譲渡所得は利益から50万円(短期譲渡所得がない場合)を控除した残額の1/2が総所得金額となるからです。即ち、税率を1/2にしたのと同じです。

しかし、この証券税制は政府税制調査会の提案通りに政府案が作られるかどうか不明です。何故なら、産経-自民税調 証券優遇の延長が大勢 道路特定財源は19年度にこだわらず のような報道もあり、政府案は与党と話し合いの上で作られますから。

一つ断っておきますが、これ全て個人所得税の話しです。法人税は、受取配当金も売却益も所得の計算に入れるので、軽減税はありません。

3) 減税?まさか?

実は、来年(2007年)は変なことが生じる人がでてきます。本年3月の税制改正で定率減税がなくなり、増税となりました。この改正で、住民税は一律10%となり、所得税の税率が従来の所得税と住民税の合計の税率を維持するように調整されました。住民税の特別徴収は6月から翌年の5月までです。本年3月の税制改正で住民税の税率が10%以下であった人は、来年1月から5月までは、その前の年の住民税を払うことから旧税率です。一方、所得税の源泉税は新税率で計算するので、今年より減額となる人がいます。定率減税が廃止されて増税となったはずなのに、来年の1月~5月は徴収される税金が安くなるのです。騙されているみたいですが。

どのような人かというと、課税所得金額が700万円以下位の人なので多くの人です。この水準は、給与のみの収入であれば1千1百万ぐらいでしょうか。例として、給与が1千万円であれば、給与所得控除220万円であり、所得控除を180万円とすると、課税所得は600万円程度となります。この人の場合、本年は毎月所得税38,000円と住民税31,700円が差し引かれていたとすると、改正後は所得税36,100円と住民税41,700円になるのですが、住民税の41,700円の適用は6月からですから、所得税が下がった分の毎月1,900円ほど1月から5月は手取りが多くなります。騙されるような話しです。

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2006年12月 1日 (金)

村上ファンド裁判

村上世彰被告とファンド投資顧問会社のMACアセットマネジメントに対する刑事裁判の初公判が本日30日に東京地裁で開かれました。

日経-村上世彰被告「無罪と確信」・東京地裁で初公判
朝日-村上世彰被告「無罪と確信」 検察側と全面対決の姿勢

村上ファンド事件には、様々な側面があると私は思っていますが、初公判が開かれたこと故、少しだけ書いてみたいと思います。

1) 容疑

証券取引法違反(インサイダー取引)と検察は言っていますが、これは何であるかについてです。

一般的にインサイダー取引と言われているのは、証券取引法第166条の違反ですが、村上被告が起訴されているのは証券取引法第167条の違反です。166条は、会社の役員や従業員である会社関係者が自分の会社の株式等を重要事実の公表前に有利に売買して利益を得ることを禁じた条項です。堤義明コクド前会長は証券取引法違反により懲役2年6月、罰金500万円、執行猶予4年で有罪となっていますが、堤義明による西武鉄道株の売買は、166条の違反です。

村上世彰被告はニッポン放送株の売買で証券取引法違反を問われているのですが、ニッポン放送の関係者から入手した情報(インサイダー情報)を利用したとされているのではなく、ライブドアがニッポン放送株を取得しようとしている情報を入手し、これを利用して株式売買で利益を得たとして起訴されたのです。

では167条はと言うと、続きを読むに入れました。でも、この167条を読んでもピンと来ないはずです。そもそもは、公開買い付け情報を事実の公表前に知って公開買い付けにおいて高く売って利益を得ることを禁止した条文だからです。ライブドアがニッポン放送株をToSTNeT-1による時間外取引により取得したのは、2005年2月8日です。実は、この前の2005年1月17日にフジテレビジョンが子会社化を目的に株式公開買付け(TOB)を開始することを発表していました。参考記事は、これを見て下さい。

11月22日のエントリーで紹介したヒルズ黙示録・最終章によれば、ライブドアが2月8日に取得したニッポン放送株は972万株であり、取得した相手は米サウスイースタン・アセット・マネージメントから348万株、村上ファンドから328万株、米ブランデンスから136万株等であり、村上ファンドから取得したのはこの時の1/3だったのです。

何故167条の違反になるかというと、「これに準ずる行為として政令で定めるもの」に該当すると言うわけです。この政令は証券取引法施行令であり、31条に議決権の5%以上を取得する行為を「これに準ずる行為」として規定しているのです。証券取引法施行令第31条も、続きを読むに入れました。

村上ファンドは当時フジテレビジョンによるTOBに応じて、ニッポン放送株を売っても良かった。しかし、ライブドアにけしかけて、フジテレビジョンに売るより高く売れるなら、その方が良かった。ライブドアが多額の資金調達は困難であろうと予測していたのだろうと思います。だから、ライブドアがニッポン放送取得をギブアップしても良しとしていたのだと私は思うのです。村上ファンドは、2003年7月頃からニッポン放送株を買い始め2004年10月以降に大量に取得を始めたようですが、ライブドアへの高値売却を狙っていたと言うよりは、もしかしたらフジテレビジョンへの高値売却を狙っていたのではないかと思うのです。

村上世彰被告が裁判の結果、証券取引法違反となるのか、私もよく解かりません。今後を見ましょう。

2) 何故村上世彰被告は認めたのか

これについては、村上被告自分の口から今回の公判で「事実に反して有罪だと認めて私一人の逮捕で済ませた。」と言っており、すごい演技をしたのだと思います。でも、実はもう一度、やっているのです。本年6月26日に保釈金5億円で保釈が認められ東京拘置所を出てきました。日経-村上世彰被告、21日ぶり保釈・保証金5億円にも、「同地裁は、同被告が起訴事実を大筋で認めていることなどから、証拠隠滅などのおそれはないと判断したもよう。検察側も準抗告しなかった。」とあるように、保釈の際には証券取引法違反を認めているはずです。例えば、共同-堀江前社長の保釈認める 保証金3億円はホリエモン保釈時のニュースですが、ホリエモンは有罪を認めていませんでした。だから、「裁判所が起訴事実を否認している被告の保釈を初公判の前に認めるのは異例。」と書いています。

「一旦有罪と認め、裁判で戦う。」そんな方法があることを、村上世彰被告は示したのかと思いました。

村上ファンド関連は他にも書きたいことはあるので、また今度書きます。

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2006年11月30日 (木)

格差社会の拡大

格差社会の拡大と言っても、実はアメリカ合衆国の話しです。

米国のTax Foundation(納税協会と言えばよいのでしょうか、ホームページはここです。)が、米国連邦歳入庁(Internal Revenue Service)の2004年データをこのSummary of Latest Federal Individual Income Tax Dataで個人所得について発表しています。 国税庁の個人所得データの分析結果という具合です。日本でも、おそらく所得格差は拡大していると思うのですが、個人所得税の納税申告のデータなので前提条件を理解することは必要なのですが、興味深く分析してみました。

1) 全体の1%の人が個人所得全体の19%を得た

全体を大きなパイであるとするなら、2004年の米国では1%の人が19%を手にしたこととなります。この1%の人達とは、年収では$328,049ですから4千万円以上の年収の人達ということになるのでしょう。ちなみに、上位10%の階層は$99,112(12百万円)以上ですから、米国では高収入1%グループの人達の収入額は相当すごい金額になるはずです。

なお、断っておかなければならないのは、必ずしも一人当たりではなく、所得税の申告数当たりなのです。先ず、米国には年末調整制度がないので、全員が所得税の申告書を提出します。但し、夫婦合算申告(Joint Return)が認められており、通常合算申告の方が税金が安くなるので、合算申告をしています。日本の場合だと、夫が年収1千万円で妻が5百万円で共稼ぎだとすると別々の税となるので、累進課税を適用結果、夫の所得税の税率の方が高くなります。しかし、夫婦が協力して家族の収入を得ているのだとすれば、7.5百万円ずつ収入を得たとして所得税を計算した方が合理的と言えます。例えば、妻が専業主婦であれば、夫の収入を役割分担の結果だとして2で割るのです。103万円を超すと配偶者控除が適用されるなくなる・・・なんてことより、よっぽど合理的と思えるのですが。最も、米国の制度も単純に合計して2で割る制度ではありませんが、考え方のベースはこのようなものです。

2004年の米国の個人所得の納税申告者数は130,371,156人で、この中の上位1%の申告に関わる所得金額が全部を合計した所得金額の19%を占めます。上位50%と下位50%の2つのグループに分けた場合に、2つのグループの合計した所得の金額比を計算すると87%対13%になります。数で75:25は、金額で20:80と言う具合にパイの分け方は高額所得者により多くなっています。次の円グラフの左は申告者数で、右が所得金額です。

Uspiconmereturn2004

これを各グループの納税申告者当たりの所得金額で図示したのが次のグラフです。

Usincomedistr

2) 格差は拡大しているか縮小しているか

努力すれば報われる社会においては、ある程度の格差は必要であると言えるのでしょう。社会の完璧な制度が存在しない以上は、なかには大金持ちがいても仕方ないし、大金持ちの存在を許すことによって貧しい人も底上げがされているならそれも良いではないかと言えるのでしょう。そんな議論は、ともかくとして1980年以降のデータがこの発表のなかに含まれているので、1980年以降のグループ別の所得の伸びを図示したのが次のグラフです。

Usincomef

横軸は年ですが、縦軸は各グループの平均所得です。即ち、高所得の1%グループの所得額は2004年所得で平均が1百万ドルを超えている。(1%になるかならないかのボーダーラインは328,049ドル)50%の人々の平均は14,149ドル(年間約170万円)ですから、半数の人々は物価が日本より安いとは言え、なかなか大変だと思います。なお、50%のボーダーラインは年間所得30,122ドル(3百60万円)でした。上の表は、金額ベースですが、物価上昇を加味する必要があるので、米国都市部消費者物価指数を適用して1980年を1.0とした場合の、各グループの平均所得の推移をグラフにしたのが下のグラフです。

Usincomeind

上位所得者の所得増加割合が大きく、下位50%の人達にとってはほとんど所得は増加していないと言えます。従い、私の結論は「米国においては、下位50%の人達の所得は減少はしていない。しかし、高所得者の所得は高い人ほどその増加が大きく、所得格差は米国においては拡大している。」であります。

所得だけが物差しではなく、忙しくて自分の時間も持てずに追い回されているよりは、自分の人生や生き方を追い求めている方がよっぽど幸せであると言えます。しかし、所得は重要で、お金がなくては生きていけない。米国についての私の分析は以上です。本当は、日本についても同じ様なグラフを書いてみたいと思います。データがあれば書いて発表します。良いデータがあれば教えて下さい。

米国では、下位50%のグループ1987年から1997年頃は少し落ちこんでいる時代でありましたがほぼずっと横這いです。日本の所得のグラフを書いたら、まさか下位の人達は下がりつつあるなんてことありますかね?心配になってきました。

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2006年11月25日 (土)

内部統制、SOX法と企業犯罪

内部統制、SOX法とと企業犯罪なんて大層なエントリーにしましたが、ホリエモン事件を少し引きずります。

1) 証券取引法違反の罰金と懲役

11月22日のエントリーの「3)ヤメ検弁護士高井康行の反撃」のなかで、証券取引法違反は5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金であり、業務上横領は10年以下の懲役、特別背任は10年以下の懲役又は千万円以下の罰金なので証券取引法違反は罪が軽いと書いたのですが、実は本年6月14日に公布された証券取引法等の一部を改正する法律により197条及び198条が改訂され197条の2が追加され、次のようになり本年7月4日から施行となっています。(厳密には、197条のなかでも、197条の2に移され、改正がなかった部分もある。)

197条:5年を10年に延長し、5百万円を1千万円に増額(対象犯罪は、有価証券届出書の虚偽記載及び風説の流布・偽計、相場操縦等)
197条の2:改正前の198条の1号から10号を197条の2とし3年と3百万円を5年と5百万円に改正した。(対象犯罪はインサイダー取引等)
198条:改正前の198条の10号から19号は、3年と3百万円で改正なし。

ホリエモンについては、改正前の規定が適用となるはずです。

2) 改正の理由

金融庁の言葉で言えば、「金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、投資者保護のための横断的法制を整備することで利用者保護ルールの徹底と利用者利便性を向上し、「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図るという所要の目的を達成するため」です。改正は、罰則の強化のみが行われたのではなく、改正の条文ボリュームからすれば、罰則部分はほんの1%強位です。改正の主要部分は公布から1年6月以内に施行となっているので、2007年12月と思います。そして、この時に証券取引法は金融商品取引法と名称が変わります。

罰則の強化は、ホリエモン事件が関係あったと、言えます。但し、ホリエモン事件のみならずカネボウ事件、村上ファンド事件、その他の事件も関係しています。太平洋のかなたのエンロン事件やワールド・コム事件の影響もあると言えます。

資金運用を行う方法としては、(1)不動産等の資産購入をする。(2)預金として銀行に預ける。(3)株式や債券を購入する。の3通りが考えられます。(2)の銀行預金は、最終的には銀行が企業等に貸付を行うのであり(3)を銀行経由で行うこととなるので似通った所があります。銀行経由にすることにより、リスクは銀行に振り替わるので、安心できると言えます。但し、銀行も(現時点では郵貯を除けば)株式会社等であるので実は(3)の信用リスクがない企業の債券と本質的に変わりはないと言えます。

預金には銀行の経費・利益・リスク相当分が加わって企業に貸し付けられているのであり、また預金保険(ペイオフ)で一行1千万円まで預金保険のカバーがありますが、この費用も貸付利率と預金利率の差で賄われています。

銀行を通さずに直接企業に出資したり貸付けた場合は、リスクヘッジ等の銀行による仲介機能はなくなるが、費用は安く済むはずです。投資家にとっては、銀行金利より高い収益が期待でき、企業側にとっては銀行借入より安く資金調達を行える。このような銀行を通さない直接金融がもっと活発になって良いのですが、その大前提は一般投資家から資金調達を行う各企業が、その企業内容、事業内容、事業成績、財政状態等を正しく公表することです。もし、情報開示が不正確であるならば、安心して株や社債に投資できない。だから、2)の冒頭の金融庁の言葉となっています。

3) SOX法

SOX法とは、Sarbanes-Oxley Act of 2002と称する2002年に制定された、日本でSOX法とかサーベンス・オックスレイ法と呼ばれている米国連邦法です。その法の冒頭には、An Act to protect investors by improving the accuracy and reliability of corporate deisclosures made pursuant to the securities laws, and for other purposes.と書いてあります。

連邦法である米国証券取引法(Securities Exchange Act)に加えて投資家保護としてSOX法が制定されたのですが、その契機となったのがエンロンやワールド・コム事件です。優良だと信じていた会社が虚偽の報告、粉飾を行っていた。ホリエモン事件で検察が言っている偽計、風説の流布、粉飾決算でありほぼ同じです。(エンロンであったマネーロンダリングはホリエモン事件では検察の起訴事項に入っていないようですが、ホリエモン事件でもスイス、香港の口座やダミー会社を使い何の金か判らなくするような操作をしているので、私はホリエモン事件でもマネーロンダリングがあったと思うのです。)

SOX法により企業からの正確な情報開示をすることとなるとそんな単純ではありません。正確な情報開示なんてことは、元々証券取引法等に書いてあることです。でも最近は本屋さんに行くと「SOX法****」との表題の本が山のようにあります。これは何かというと、SOX法404条にManagement Assessment of Internal Controlsが書いてあります。404条の全文は続きを読むに入れておきますが、年次報告書(Annual Report)にInternal Control Report(内部統制報告書)を含めるようにし、そのルール作成はSecurities and Exchange Commission(米国証券取引委員会-SEC)が行うと規定しています。SECは、2004年2月にルールを発表し、2004年11月15日以降終了する事業年度から適用されることとなりました。

日本の場合、SOX法404条に相当するのが金融商品取引法24条の4の4です。条文は続きを読むに入れておきますが、SOX法404条とよく似ているので日本版SOX法とも言われています。私にとって大きく違うと思うのが、米国では証券取引委員会がルールを作るが、日本では内閣府令が定めるとなっていることです。日本では、政府が様々な意見を聴取し調整を行い、決定するのが多くの関係者が、仕方がないかと受け入れられる方法。一方、米国の場合は、政府は中立とは限らず、自分たちのことは自分たちがとことん議論して決める。政治決着は良くないのであり、専門家である証券取引委員会が関係先の意見をくみ入れて決定するのがよい。こう言ったところで、日米の文化、伝統、考え方、社会の違いが出ているのかなと思います。

4) 裁判と判決

カネボウ事件の帆足隆元社長に対する東京地裁の判決は懲役2年、執行猶予3年で、宮原卓元副社長は懲役1年6月、執行猶予3年でした。(日経記事)ライブドア事件では、宮内被告に懲役2年6月、熊谷被告、岡本被告、中村被告ら3人に懲役1年6月が求刑されており、この4人の公判は本日結審した。(共同記事

実は、これを米国のエンロン事件、ワールド・コム事件と比べると日本では罪が極めて軽い。エンロン元CEOのJeffrey Skillingは禁固24年4ヶ月の判決。(Sacbee-Associated Press)ワールド・コム元CEOのBernard Ebbers は25年の禁固刑。(Chicago Tribune)米国の場合は、犯罪の数が全部積み重なるから禁固期間が長くなると理解しますが、それでも実質終身刑です。それに比べると日本は桁が違うのと、全員執行猶予ですから刑務所には入らない。

アメリカ合衆国は、自由の国です。でも何をしても自由なのかというと、ルールに従うことが前提で、ルールを受け入れることが出来なければ、合衆国で暮らすことは出来ない。米国市民ではないという考え方です。特に市場ルールは尊重されなければならないものです。公正な市場ルールを悪用することは最大の罪なのです。11月22日のエントリーで日本では、業務上横領や特別背任の方が罪が重いと書きました。合衆国的発想からすれば、法廷で弁護をするなら、業務上横領や特別背任の方が罪を軽くすることが出来ると思えます。何故なら、与えた損害はずっと小さいはずだし、そこには監視制度・管理制度・内部統制にも問題があったと指摘出来るはずだからです。公平な競争が行われるべき市場を荒らすことは合衆国ではより大きな罪なのです。だから、談合を合衆国でやったら大変なことになります。

実は、米SOX法は、罰則の強化もしています。意図的な市場操作は25年。悪質な違反は20年及び罰金5百万ドル(6億円)。風説の流布の様なことは5年が20年に改正されました。いずれにせよ、米国はこの種の犯罪に非常に厳しいことが判ります。だから、ルールを守っていれば、村上ファンド事件で村上被告が会見したときのセリフ「無茶苦茶儲けました。それが悪いことですか?」です。合衆国の考え方は、「自由な市場を維持することにより社会全体が繁栄し、発展する。でも市場には、市場ルールがある。」です。

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2006年11月19日 (日)

ホリエモンの個人資産

1) ホリエモンの個人資産

共同通信:11月17日ー資産100何十億円と堀江被告 検察官に「悔い改めよ」という記事がありました。東京地裁で検察側の被告人質問で個人資産を問われ「有価証券などが100何十億円あり、現金や預金も数億円」答えたとのことです。同じ記事ですが、朝日:11月17日-堀江被告公判 検察「高株価の恩恵で女性と旅行」は、「欲のために使っていた」と報道しています。共同通信の記事は、続きを読むに入れておきます。

2) ホリエモンは一般株主の資金でこの個人資産を形成した

当然、ホリエモン個人の収入からですが、一般投資家からの資金で個人資産を作り、六本木ヒルズに住み豪華な生活を送っていたのです。ホリエモンの起訴理由に粉飾決算がありますが、この粉飾の内容は、ライブドア株の売却益を利益として計上したと言うことです。でも、ライブドア株の大株主はホリエモンであったのです。当然、ライブドア株をホリエモンは、高値売却しています。そして、高値で買ったのは、一般投資家ですから、一般投資家の資金がホリエモンに渡ったのです。現在ホリエモンが何株のライブドア株を保有しているか調べていませんが、100何十億円の有価証券と言うからには、ライブドア株以外の有価証券で、他の上場株式や国債、社債、投資信託等も含まれているのだと思います。

ちなみに、ライブドア株は、素人の投資家がムードで勝ってしまった感じがあると思います。この辺りについて、ホリエモンは独特のセンスを持っていたと思います。綿密に会社内容を分析したら、こんな訳のわからない会社に投資など出来ない。でも、近鉄球団を買収するなんて、ホワイトナイトの様なことを言うかわいい奴だと思わせる。

だから、悲劇ですね。私は豊田商事事件を思い出してしまいます。

3) 他の経済事件との違い

ホリエモンの保釈金は3億円でした。これと比べると、カネボウ事件の帆足元社長は800万円で、三井銀行から来た宮原元常務は500万円であった。山一証券の粉飾決算で起訴された行平元会長は、2500万円で、三木元社長は600万円であった。ホリエモンの保釈金は桁違いである。

カネボウ事件で起訴された帆足にしろ、宮原にしろ、ホリエンモンの様な個人資産形成はしていない。カネボウという会社の体質に巻き込まれてしまった。それは、山一証券事件も似たようなものと思う。彼らは、粉飾を正す勇気がなかったと言えば、それまでで、経営者として失格だったと言えるだろう。しかし、山一証券の自主廃業を涙を流して「社員は悪くありません。再就職できるようよろしくお願いします。」と発表したのは最後の社長野沢正平であったが、会社が信用を失い、多くの社員を路頭に迷わせることを恐れて、粉飾を正すことが出来なかった。自分の私利私欲よりも、サラリーマンとして会社のため、社員のため、取引先のために回りを見失ってまでもがむしゃらに働いたというのが実体に近い気がする。

ホリエモンは古い経営者とは異なるというより、自分のことしか頭になく、人を騙すのが上手な人間が、たまたま金脈にぶつかったときに形成される人物なのかなと思う。

4) ホリエモンの所得税

2004年の高額所得税納税者第一位は約36億9000万円を納税した東京都内の投資顧問会社部長の清原達郎さん(46)で推定収入額100億円ということでした。ホリエモンは1400万円だったと言うことです。

何故、ホリエモンは節税が可能であったかというと、証券税制です。現在、上場株式は譲渡益の7%所得税+3%地方税ですが、創業者の場合で上場後3年以内に譲渡する場合は、1/2の税率となります。証券税制が目まぐるしく変わっていますが、いずれにせよ低い税率でしか課税されないので、100何十億円の資産は作るが、払う税金はほんの少しという構造は可能でした。

これって、インサイダー取引ではないのと思うのですが、ホリエモンがインサイダー取引で起訴されたと報道されていないことから、検察もインサイダー取引の証拠を掴めなかったのかなと思っています。どのみち、ホリエモンは、全てふてぶてしく否定するでしょうが。

5) ストックオプションの所得税の訂正

11月12日のエントリーファンド・マネジャーFortressの株式上場の2)でストックオプションで株式を入手すると税金がかかると書いたのですが、租税特別措置法第29条の2(特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)により非課税あつかいになるだろうと思いました。但し、権利行使価額の年間の合計額が、千二百万円を超えない部分についてのみですが。

売却した際には、売却益に税金はかかります。いずれにせよ、ストックオプション自体、会計面、税務面はそうとうややこしいです。

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2006年11月16日 (木)

教育とは?

毎日のように「いじめによる自殺」という報道が続いています。この記事読売11月16日-「自殺予告」、文科省に新たに4通…計22通になんかとても悲しいことだと思うのです。

でも、いじめ自殺に関連して読売11月12日-校長が自殺、児童のたかり行為を正確報告せず…北九州という、校長が自殺することがありました。

自らの命を絶つことはとても悲しいことです。教育とは、何であるか。一番大事なことは「生きることの喜び、楽しさ、うれしさ」そんなことを教えることだと思うのです。疲いこと、悲しいこと、寂しいこと、苦しいこと、その他嫌なことは一杯あります。でも、それ以上にうれしいことがあるんだって、勇気とか希望とか、そのようなものがあることを学ぶのが教育ではないかと思うのです。

校長は学校の責任者です。すなわち、その学校の児童や生徒のことを本当に思い、児童や生徒のために心身をなげうって奉仕する人であり、その為に全力を投じて先生を指導し、力になり、助けていく人のはずです。自殺した校長は、児童のために働いていたのではなく、教育委員会のために働いていたと思えてしまいます。

本当に児童のためを思っている本当の教師であれば、何がいじめを金銭トラブルと報告させたのか、何を改善する必要があるのか、そんなことに全力を尽くすべきで、自殺なんてとんでもないと思います。自殺をするほど、追い込まれていたのだと思います。でも、そこで、自殺をしたら、児童と同じであり、今のいじめ自殺を解決し、なくすことができないのだと思うのです。

本日は読売11月16日-教育基本法改正案が衆院通過、野党は欠席というニュースがあった日です。力で、押し進めていくことに教育があるのだろうか?教育基本法は1947年3月31日に公布され同日施行の法律である。私は、戦前の軍国主義教育の反省から生まれた法律と理解する。憲法を守るなら、教育基本法なんて必要ないじゃないのと言いたいのだが。今回、野党欠席のなか衆議院本会議で採決してしまった。これって、学校では、どう教えるのでしょうか?もし「そんな採決は、いじめじゃないの?」とか「弱い者の声には、耳を傾けないのね?」と子供達に質問されたら、どう答えるのでしょうか?先生には、自分が信じる真実の回答をして欲しいと思います。

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2006年11月14日 (火)

ホリエモン「バカ殿戦術」の勝算

ホリエモン「バカ殿戦術」の勝算て実は私の言葉ではなく、AERA11月20日号(13日発売)の広告に出ていたタイトルでした。

言い得て面白いなと感心しました。ホリエモンは、よく「想定内」、「想定外」等と言っていました。想定とは、現状を分析した結果の今後の予想です。綿密な分析に基づいた予想という感じです。今になって、それを「私は、理解せずに、単なる広告塔として発言していました。」と言うのだから、バカ殿ってあたっているなと思ったからです。

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2006年11月 8日 (水)

医療事故調査委員会

1) 衆議院厚生労働委員会

10月27日のエントリー真実の報道-大淀病院事件で、当日の27日に開催された衆議院厚生労働委員会で大淀病院事件についても、取り上げられると書きましたが、午後の会議で質問を行った民主党の柚木道義議員が大淀病院事件の関連を取り上げました。詳細は、ここをクリックすれば議事録が読めます。

2) 医療事故調査委員会

この厚生労働委員会の討議の中で、私が注目した点であり、是非実現して欲しいと思ったのが、柚木委員の質問に対する柳澤厚生労働大臣の次の答弁です。

事件、事故には、最近のような複雑な社会のもと、また高度に技術が進歩した段階におきましては、警察権力が直接に入っていろいろと処断をしていくことが必ずしも適切でない分野というものが非常に多くなっているというふうに私は考えるわけでございます。

そういうことで、別に警察権力を排除するという気持ちがあるわけではございませんけれども、やはりその前に、より専門的あるいは技術的な検討がなされるということが、それに携わっている方々が今後十分に活躍をしていくということのためにも必要だというふうに考えるわけでございます。

そういう観点から、実は、先行事例としてあります航空・鉄道事故調査委員会というような、それに類似したような医療事故に対する事故の究明、こういうようなものを行う体制が必要であるということを考えておりまして、現在、そうした機関を構築すべく検討をいたしておりまして、本年度内に厚生省としての試案を提示し、来年度にはそれについてまた有識者の御検討をお願いする、こういうようなことで順を追って体制の整備に取り組んでいるところでございます。

医療事故調査委員会を立ち上げ、国民が安心できる医療が実現することを期待したいと思います。

3) 小田原市立病院の医療事故に関する事故調査委員会

医療事故調査委員会について考える上で、参考になるのが小田原市立病院の医療事故です。報道としては、

毎日-小田原市立病院の医療事故:両親が5830万円損賠提訴 刑事告訴も検討へ /神奈川
朝日-1歳児死亡は病院のミス 両親が小田原市に賠償請求提訴
産経-小田原市立病院の男児死亡、賠償求め両親提訴

があり、概ね以下の内容です。

「2月6日の未明から泣く回数が増えていたにもかかわらず、医師が注視せず異常を見過ごした。看護師もミルクをはく可能性が予見できたのに見過ごした。」ことにより当時1歳の男児が死亡した医療事故で、男児の両親が10月30日、小田原市を相手に5830万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。市側は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。

実は、この医療事故に関しては、小田原市が、事故の背景及び原因について調査等を行い、今後の医療事故の再発防止を図るためとして、小田原市立病院医療事故調査委員会を設置していたのです。事故調査委員会の設立決定は2月20日で、3月1日に第1回審議が開かれ、6月に報告書が作成されました。その報告書はここをクリックすれば読むことが出来ます。

4) 事故調査委員会の報告書を読むと

事故調査委員会の報告書は、再発防止の観点でこの事故をよく分析しており、再発防止と信頼関係の再構築に向けた提言として5項目を挙げています。小田原市もこの提言を受けて、再発防止と信頼関係の再構築に取り組んでいることと思います。

一方、1歳の男児の病状を注視せず見過ごしたことについて、報告書を読んでみると、病院側に特に落ち度があったとは私には認められないのです。続きを読むに事故当時の状況を転記しましたが、6時58分に点滴を終了し、7時10分には窓越しに確認し、その後泣き声も聞こえたが、7時20分にベッドの上でミルクを嘔吐し、ぐったりしているのを発見した(心肺停止状態)とのです。詳細は報告書の4ページ目から12ページ目にわたって書かれています。

5) 小田原市立病院の医療事故の原因

事故調査委員会は、背景の分析や再発防止のための取組等についての検討は行っています。しかし、医療事故の原因究明はしていないのです。理由は、遺体が司法解剖となったため解剖結果を事故調査委員会が手にすることが出来なかったし、一切のデータも入手できなかったからです。

司法解剖とは、刑事訴訟法に基づき検察・警察が犯罪(この場合は、医師の業務上過失致死)捜査を目的として行われる解剖であり、死亡原因を究明する刑法・刑事訴訟法に関係する解剖です。解剖鑑定書は検察庁にわたることになり、その結果は「刑事訴訟法第47条 訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と定められていることから、裁判の前には公表されず、但し書き部分は、司法解剖の鑑定書について適用されていません。

多くの遺族は医師を業務上過失の罪を負うべきだと考えておられるわけではなく、「死に至った納得のいく原因が知りたい。同じ様な思いを他の人がすることのないように、再発防止に取り組んで欲しい。」と思っておられるはずです。でも、小田原市立病院医療事故については、司法解剖となったために、医療関係者のみならず事故調査委員会にも解剖結果は伝わっていないのです。解剖目的は再発防止が主眼ではありません。不起訴となったら、その時点で解剖鑑定書は、遺族や医療機関に開示されることもあるようです。

(この7月に最初にクローズアップされたパロマ事件の当時21歳の松江市から東京に出てきていた人が96年3月18日に死亡した事件では、この人の母親が10年たった今年2月に、当時をしのばせる物が残っていないか赤坂署を尋ね、署員の勧めで都監察医務院に連絡し、「死体検案書」を手に入れて、そこで、解剖所見欄に、高い濃度の一酸化炭素中毒だったことを示す記述があったことを発見したということもありましたが。)

司法解剖とは、刑事訴訟法による解剖です。犯罪の疑いがなければ司法解剖は行われないが、逆に犯罪の疑いがあれば、検証のために強制的に実施されることとなります。小田原市立病院医療事故については、報告書に以下のように書かれているのです。

本件については、心肺停止に至った理由を医学的に解明する必要があると判断した。診療科責任者より患者家族に解剖の必要性を説明したところ、家族は、司法解剖の実施を望んだ。

病院は病理解剖を望んだと思うのです。病理解剖は、犯罪の為の解剖ではないので、結果の開示については、当事者の取り決めで済みます。警察が司法解剖が必要と判断し、裁判所の鑑定処分許可状を取れば、強制的に司法解剖が実施されることとなるのですが、医療機関における死亡の場合に、司法解剖が必要な場合は、どれだけあるのだろうと思うのです。本来、医療は医師と患者の信頼関係がなければ成立しないはずです。司法解剖を望むことは、医師を犯罪者とし、市民のために医療を提供しようとしてくれている善意の医師を医療から遠ざけ、医療崩壊につきすすんでいくことの恐れがないのだろうかと思うのです。勿論、民事訴訟をすることは国民の権利であり、刑事告発をすることも許されます。でも、真相の解明や再発防止の取り組みを阻害することはよくないと考えます。病理解剖の結果により、訴訟や告訴を行うことも出来るはずです。

柳澤厚生労働大臣の言われた医療事故調査委員会の体制作りを是非お願いしたいと思うのです。医療事故調査委員会が病理解剖の結果を審査、検証することでよいと思うのです。医療事故調査委員会による個々の重大事故の原因や背景を分析した有益な提言を入手できることを期待したいのです。それにより医師と患者の信頼関係も、もっと良くなるのではと期待するのです。

6) 追記

時事通信-2006/11/07-17:03 執刀医ら2人を書類送検=腹腔鏡使用、腸の損傷見落とし-慈恵医大病院死亡事故と言う報道がありました。東京慈恵会医科大学附属病院のこの発表では、この医療事故についても、医療事故調査委員会と外部調査委員会が設置されています。

なお、この慈恵医大附属病院の医療事故も、病院発表にもありますが、単純ではなく、2003年12月10日に○○クリニックにおいて子宮内胎児死亡で流産手術を受けた。手術直後より強い下腹部痛があり、超音波検査で腹腔内出血を認めたため、子宮穿孔、子宮内外同時妊娠などを疑い慈恵医大附属病院に緊急搬送となった。患者様ご本人、ご主人(医師)の同意の下、まず腹腔鏡により腹腔内を検索することとし、腹腔鏡下で子宮穿孔部を止血し縫合処置を受け、開腹術の必要なしとの見解で、手術を終了した。12月12日14時30分ごろまでは患者は意識清明で、普通に会話をしていたが、その後、腹膜炎症状が強まり、16時30分消化管穿孔性腹膜炎の疑いで緊急開腹手術を施行した。12月13日未明、突然の循環機能障害、心停止が発生し、ICUにおいて診療科を越えた懸命の治療を続けた結果、一時的には回復を認めた。しかしその後再度全身状態が悪化し、多臓器不全で2004年1月1日に死亡。

事故の要因として、医師間の患者様に関する情報の伝達が適切でなかったこと、情報の共有化が不足していたことが含まれるとしている。なお、○○クリニックの産科医、麻酔を担当した産科医は慈恵医大の卒業生でした。

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2006年11月 7日 (火)

七海ちゃんと移植医療

最近はほぼ毎日、宇和島徳洲会病院の万波誠医師による腎臓移植について日経新聞-万波医師、前任病院でも・病気腎移植のように報道があります。そんな中で、毎日新聞-腎臓移植:米で手術、七海ちゃん帰国読売新聞-米で腎臓移植の七海ちゃんが帰国、両親が喜びの会見という報道がありました。七海ちゃん及びご両親よかったですねとお祝い申し上げます。しかし、移植医療に関する様々な問題を含んでおり、たまたま、宇和島徳洲会病院の移植手術問題やその前の代理出産問題、代理出産による子供の住民登録問題等にも関係することもあり、これを機会に移植医療に関してすこし書いてみます。

1) 日本での臓器移植

臓器移植法が日本において1997年10月16日に施行され、脳死からの心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、小腸などの移植が法律上可能になりました。最も、心臓の停止を人の死としての心臓停止後の腎臓と角膜の移植は、臓器移植法施行前から角膜及び腎臓の移植に関する法律の下で行われていました。それ以外には、1992年から開始された骨髄バンク事業としての骨髄移植や、1999年に始まったさい帯血バンク事業としてのさい帯血移植もあります。河野洋平氏への長男の河野太郎氏の生体肝移植で有名な生体間臓器移植もあります。広い意味では、輸血も生体間臓器移植と考えられると思います。

法としては、臓器移植法(正式な方の名前は、臓器の移植に関する法律)があり脳死からの臓器摘出等を定めています。日本組織移植学会は倫理委員会による倫理指針(ヒト組織を利用する医療行為の倫理的問題に関するガイドライン)を出しています。

日本における移植医療の原則は、次のような事項と了解します。

1. ドナー本人の自由意志による臓器の提供
2. 臓器売買等の禁止(無償の提供)
3. 人道的精神に基づいて提供
4. 機会の公平性

2) 海外臓器移植

海外で臓器移植を受けるのは、日本で臓器移植が受けられないという理由と了解します。決して、日本の医療技術や医療水準が低いからではないのです。

特に、日本における移植医療の原則の1.のドナー本人の自由意志については、臓器移植法が「臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合のみ、臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。」と規定しており、自由意志の表示が行える年齢は15歳以上であると厚生労働省がガイドラインを出しています。15歳以上とした理由は、民法961条が「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と遺言能力を15歳以上としていることによります。

ウェブ検索で「XXちゃんを救う会」として検索すると多くのサイトが出てきます。ほとんどは、患者が幼くて、15歳未満の同じ年格好のドナーからの臓器提供は日本では禁止されており、移植医療を受けられないから、海外で医療を受けるというケースです。その為に、多額の費用がかかるので募金をお願いしますと書いています。

日本では、法律で禁じていることでも、海外であれば、許されるのかという問題があります。海外で、移植用の臓器が余っているわけではないのです。例えば、朝日新聞の記事に、腎臓提供者に金銭「仕組み立法化を」 米移植医が論文という報道があり、「脳死移植の「先進国」である米国でも提供される腎臓の不足は深刻だ。」と書いています。(記事は、リンク切れとなるかも知れないので、続きを読むにも入れておきます。)

「XXちゃんを救う会」の場合、移植そのものについての報道がないのですが、生体間臓器移植のみならず脳死移植が含まれます。自分の子供の命は救われたかも知れないが、ドナーとなった脳死した子供が存在し、さらにはどこかに本来であればその脳死した臓器を受け入れて助かった人がその国にいるかも知れません。日本のマスコミは「XXちゃんを救う会」の発表は伝えるが、臓器移植そのものについては報道していません。

「XXちゃんを救う会」のウェブをみて驚きました。ほとんどが「X月末まで生きられる可能性は1%以下」と書いてあります。ちなみに、七海ちゃんはこのように2月末と書いてありました。例えば、毎日(神奈川版)-心臓移植:白石逸郎さん待望の渡米、今月中にも心臓移植手術をという報道があります。この方の場合は、心臓移植ですから、渡米して脳死で亡くなる方を待つのです。それと約1億600万円の募金を集めたと書いてありますが、すごいと思いました。

3) 臓器移植について

宇和島徳洲会病院の万波誠医師による腎臓移植に問題がないとは言い切れませんが、「XXちゃんを救う会」の活動により代表される日本では法的に問題となるから海外臓器移植を選ぶ、或いは海外代理母出産等を選択するという問題とどちらがどうなのだろうかと思ってしまいます。日本では、法的に認められないから日本以外の完全に合法となる地域に行って実施する。そこまで、他人の個人問題に私も立ち入る気はありません。でも、割り切れない気持ちになります。

このような倫理問題を抱えている医療について、皆様はどう考えられますか?

「XXちゃんを救う会」はエゴと感情の世界と思います。勿論、自分が、その立場になったら、そうなってしまうかも知れない。でも、大所高所に立った時、問題が大きすぎるはずです。例えば、「XXちゃんを救う会」には、日本の移植医療はどうあるべきかの観点や日本の移植医療に関しての活動はないように思えます。もし、違った観点に立てば、世界にはHIVで薬もなく死亡していく多くの子供達がいます。

多くのマスコミ報道に、大所高所の観点が欠落していると思えて仕方がないのです。

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2006年11月 4日 (土)

国勢調査から見る高齢化社会

(グラフを多く入れたのですが、読みにくい場合はグラフをクリックするかRSS表示で見て下さい。)

昨年実施された国勢調査の第1次基本集計結果が10月31日に発表されました。参考まで、読売新聞の記事は以下でした。

読売新聞-日本の総人口2万2千人減、減少傾向続く…05年時点

記事中にも、あるのですが、特徴として以下があります。

・ 2005年より減少の日本人口
・ 高齢化社会
・ 外国人人口の増加

1) 人口ピラミッド

今回発表があった昨年(2005年)の国勢調査の人口を年齢・男女別に区分して人口ピラミッドを書いてみたのが、次のグラフです。

Populationpilamid_1

最も人口の多い年齢が男女とも56歳で団塊の世代です。団塊ジュニアと呼ばれるのが32歳前後の世代です。ひときわ少ないのがひのえうまの年に生まれた世代の39歳で男71万人、女70万人です。これは、56歳の人口の61%です。0歳児は106万人ですから、団塊の世代に比べると46%で、半数以下です。団塊の世代が高齢化する一方で、生まれてくる世代はその半分以下ですからすごい高齢化社会がやって来ようとしています。

2) 過去の人口ピラミッド

現在の人口ピラミッドは顔の形のようです。しかし、以下の戦前の1930年(昭和5年)と戦後直ぐの1950年(昭和25年)の人口ピラミッドは三角形でした。

193050poppilamid

1950年の方が、1930年より少し膨らんでいるのですが、細部を見ると戦争の影響が見受けられます。1950年の人口ピラミッドは、4歳前後の世代が少なくて、2歳前後が多い。55年経過してこの世代が59歳と57歳であり、そのまま現在の人口ピラミッドに現れています。1950年と1930年を比べて、1950年の人口ピラミッドは男が30歳前後で少なくなっています。1950年は戦後5年を経過した年です。25歳を中心として戦死した男の数は、人口ピラミッドに現れるほど多かったと言うことと思います。

3) 傾向

上の人口ピラミッドに1970年、1990年と今回の2005年を追加したのが、下の図です。

Pilamidhistory_1

さて、これから何が言えるのか考えてみます。

団塊の世代が1950年、1970年、1990年、2005年と年齢が上昇するに連れて人口ピラミッドの上の層に上昇していますが、人数そのものは、ほとんど変化がない様に思えます。次のグラフは1950年から2005年にかけて、その年齢の人口が10年前と比較していくら減少しているか(例えば、2000年の50歳人口の1990年で40歳人口からの減少)を年率減少率で表したグラフです。なお、2005年は5年前との比較、1950年は20年前との比較です。但し、年率に換算しています。

Populdecm_2

Populdecf

各年齢層の人口減少率は死亡率と読み替えてもほぼ同じです。(厳密には、海外居住者や外国人の出入国があるので、少し違います。)死亡率と考えた場合、60歳までは、ほとんどゼロに近く、年齢が高くなるに連れ死亡率が上がります。1950年の死亡率は1930年からの同一世代の人口減少率ですが、男30歳で少し死亡率が高いのは戦争によるものと思います。

上のグラフからは1970年以降60歳を超える高年齢者の死亡率が下がってきているのが読みとれます。2005年の100歳での人口減少率の低下は計算の都合上100歳以上の年齢層の合計で比較したので、実際より低くなり過ぎています。

4) 高齢化

3)の結果は、高齢化ですが、人口を0歳~25歳、26歳~64歳、65歳以上の3区分で表したのが、次のグラフです。

Populage1

このグラフを見ると65歳以上の人口が多くなったのは、それ程以前ではなく15年前の1990年頃からだったのでしょうか。今後益々高齢化が進むと予想されます。そこで、国立社会保障・人口問題研究所による2002年時点の推計を加えた同じグラフを以下に示します。

Poulage2

総人口が減少する一方で、65歳以上の人口はさほど変わらないと言った感じです。同推計では、65歳以上の人口が最大となるのは2040年。総人口の最大は2004年で、既に減少傾向にある。0歳から22歳人口は1950年から現在まで減少傾向にあります。働き盛りの23歳から64歳の人口は2000年にピークを迎え現在は減少傾向に入っています。

最後に、これら3区分の人口の変化を表したグラフを掲げておきます。女性が働くことが当たり前ではなく不可欠の社会に入ってきたと思います。そして、65歳でリタイヤーではなく、65歳以上の高齢者にも適した働き方を社会が作っていかないといけない時代になってきているのだろうと思います。

Jpopulation

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2006年10月31日 (火)

消費者金融業者の引当金計上に関して

1) ニュース

ご存じの通り、経済面のニュースで消費者金融業者が引当金計上を行い、各社の2007年3月期中間決算は赤字になるとのニュースがありました。下に掲げておきます。

日経-消費者金融3社、1000億円超す赤字に
日経-武富士の9月中間、最終赤字1442億円
朝日-消費者金融3社、大幅赤字転落へ 利息返還に備え引当金
産経-アコム、アイフルが巨額赤字に転落へ

2) 各社の発表

各社は下記の発表を行っており、これが1)の報道の情報源です。

アイフル10月30日-中間期業績予想の修正に関するお知らせ
アコム10月30日-平成19 年3月期中間業績予想の修正に関するお知らせ
プロミス10月30日-特別損失の計上ならびに業績予想の修正に関するお知らせ
三洋信販10月30日-平成19 年3 月期 中間業績予想の修正に関するお知らせ
武富士10月31日-業績予想の修正に関するお知らせ

なお、大手の消費者金融としては、上記の5社以外にCFJ(アイク、ディック、ユニマットレディス)とGEコンシューマー・ファイナンス(ほのぼのレイク)がありますが、CFJは米Citigroupの子会社であり、GEコンシューマー・ファイナンスはの米GEの子会社であるため、個別企業としての財務諸表は公表していません。

3) 引当金の計上→グレーゾーン金利の撤廃?

引当金とは、会計を学んだ人なら誰でも知っている「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。」です。

財務諸表は会社法第435条にも規定されているとおり、各会社がその作成義務を負っています。では、どの様な判断で各社が今回引当金を計上したかです。別の表現で言うと、各社は「発生の可能性が高くとあることから、グレイゾーン金利は借りている人達に返還しなくてはいけないと判断したのかどうかです。

答えは、2)の各社発表にあるのであるが、「平成18 年10 月13 日付の日本公認会計士協会による「消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い」の公表内容に基づき各社は計上したと言っています。即ち、各社が「発生の可能性が高いとそれぞれの判断で引当金を計上したと言うよりは、この消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱いに従わないと無条件の監査報告書が入手できないから引当金を計上したと私は理解します。

本来の会計の原則に従えば、過去の貸倒実績や利息返還実績等により合理的に見積り引当金を計上するのです。実は、この3月期については各社とも、合理的な見積による計上を行っていたのです。例えば、アイフルの2006年3月末の財務諸表には次の注記を行っています。

当社は利息返還金につき支出時の費用として処理しておりましたが、みなし弁済規定の適用の厳格化等により財務諸表に与える影響が増したため、日本公認会計士協会審理情報[No.24]「「貸金業の規制等に関する法律」のみなし弁済規定の適用に係る最高裁判決を踏まえた消費者金融会社等における監査上の留意事項について(平成18年3月15日 日本公認会計士協会)」に従い、期末日現在において見込まれる将来の利息返還金相当額を「利息返還損失引当金」として計上することといたしました。

8月22日のエントリー「サラ金ビジネス」で書いたように最高裁が利息制限法を超える金利を否定したのは本年1月だったのです。現在の動きは、日経-貸金業法案を閣議決定、グレーゾーン金利廃止です。でも、施行予定は2年先なので、3月末と9月末で債権・債務は何も変わっていないのです。だから、今回引当金を計上したから、サラ金業者はグレーゾーン利息の返還請求に簡単に応じるかというと、「とんでもない」であり、「従来と同じ」で返還請求を配達証明郵便で送付し、裁判になる直前で和解を求めてこられたりと言うこれまでと同じ戦いが続くと私は思います。

4) 各社比較

2006年3月末の財務諸表(連結)と今回の発表を下として各社の比較を行ったのが、次の表です。

   アコム  アイフル  プロミス 三洋信販  武富士
営業貸付金・・・・・ (A) 1,703,172 2,124,017 1,580,982 483,511 1,540,046
割賦売掛金 131,456 209,581 10,530 40,379 494
営業貸付金利息 389,387 491,357 360,588 128,591 341,463
平均貸付利率 22.9% 23.1% 22.8% 26.6% 22.2%
2006年3月末利息返還損失引当金 23,700 21,074 23,970 4,250 22,500
2006年3月末引当金の営業貸付金に対する比率 1.4% 1.0% 1.5% 0.9% 1.5%
今回発表の利息返還損失引当金繰入額 ・・・・・・(B) 317,000 200,366 174,900 51,300 284,600
今回発表の引当金の営業貸付金に対する比率 18.6% 9.4% 11.1% 10.6% 18.5%
分配可能額(参考)・・・・・・ (C) 751,674 447,173 537,413 173,377 869,358
参考 (C - B)/A 25.5% 11.6% 22.9% 25.2% 38.0%

平均貸付金利率は2006年3月末の営業貸付金残高とその前1年間の利息額から計算しましたが、利息制限法の上限利率(15%~20%)より高い利率です。

2006年3月末に既に引当金を計上していた額と今回の引当金繰入額を合計の2006年3月末の営業貸付金残高に対する割合は、アイフル、プロミス、三洋信販の3社が10.4%~12.6%であり、グレーゾーン利息全額を利息返還損失引当金として計上したものと思われます。アコムと武富士については、アコムが「貸付金元本放棄額を合わせ」と言っており、借り換え等で古い利息が新規借入の元本に組み込まれたものについても返還を考慮したものと思います。武富士も同じと思います。又、過去に支払を受けたグレーゾーン金利の返還をどのように見積もったのかその見積方法にも多少違いがあるかも知れません。

アイフル、プロミス、三洋信販の3社も基本的には同様で違いはないと思うのですが、比率に差があるのは、もしかすると会社の財務体力の差かも知れません。表の分配可能額(配当可能額ですが)は個別財務諸表から私が計算した金額ですが、この分配可能額から今回の引当金繰入額を差し引いた残額の営業貸付金残高に対する比率を見ると3社は、これ以上引当金を増やすと財務状態が苦しくなるのが分かります。これが3社の今回の引当金率の低い理由かも知れません。

5) 今後の見通し

今回の引当金の計上の結果、これからのサラ金・消費者金融ビジネスはどうなるのだろうと思いました。即ち、貸付金を計上する際に、最初からグレーゾーン金利について引当金を計上するのだろうかです。会計からすればバカみたいです。でも、貸付金は契約に従った債権金額で計上すべきであり、一方、同種の貸付金については同じ基準で引当金を計上しなければなりません。そうであれば、最初からグレーゾーン金利のない利息制限法内での利率で貸し付けた方がよっぽでスッキリします。

引当金を計上するなら利息制限法内での利率で貸し付けたのと企業利益は同じである。従って、グレーゾーン金利解消の法律が制定される前に、日本公認会計士協会の監査上の取扱報告が法律制定と同一効果を2年以上も前に先取りしてしまったと言うことでしょうか?これ、「まさか」という頭をひねる問題です。

いずれにせよ、様子を見るしか方法はないのでしょうが、これを契機にヤミ金融が横行しないように規制当局は見守って欲しいと思うし、貸し渋りで一時的に資金が必要な人に資金供給がなされない事態にならないようにして欲しいと思います。

6) 蛇足

10月16日のバングラデシュのグラミン銀行で生命保険の必要性を書いたのですが、すでに生命保険の扱いを中止してしまった会社があるのですね。私が、ウェブで確認した所では、

アコムアイフルプロミス三洋信販武富士がそれぞれ取扱中止を言っています。

マスコミに死に追い込む過酷な取立と批判された結果だと思うのですが、私は本当に止めてしまってよいのだろうかと未だ思っています。過酷な取立が、生命保険の扱い中止で終わるわけではなく、債務者が死亡して残った債務を相続人である遺族が相続して払い続けることは残酷だと思うのです。相続放棄という方法がありますが、相続放棄をするには相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に手続きをしなければなりません。相続を知った日とは通常は死亡の日ですから、下手をすればアッという間にやってきます。手続きをしなければ、債務を継承します。

遺族にとっての地獄にならなければよいがと思います。

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2006年10月29日 (日)

顔のビジネス-お化粧

顔のビジネスなんて言ったら、ヤクザ屋さんの仕事みたいですが、そうではなくて広告の顔の話しです。先ず、次の顔ですが、多分化粧品の広告の顔だと思います。

Advtz

彼女のお化粧をする前の顔は、これだったというのです。

Realface

どう思われますか?私は、お化粧をする前の方が暖かみを感じてしまうのですが。人の顔はそれぞれの色々なものを写しだしており、それぞれに魅力があると思うのです。でも、ビジネスは違うのです。最大の利益を生み出すには、どうするか。それは、各人の利益ではないから別の判断が入る。ビジネスとは冷酷な面が多いですね。

ところでこの写真はYouTubeから持ってきたものです。どのようにお化粧で変身したのか興味ある人は、これを見て下さい。

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2006年10月27日 (金)

真実の報道-大淀病院事件

もう少し大淀病院事件を引きずります。2チャンネルに大淀病院のカルテを下にして書いた文章というのがありました。

これの701、703、704、705です。

毎日新聞のスクープ記事はこれであったのですが、やはり私には筆が走りすぎていると思えます。なかでも、「この日当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。」の部分は、その後もこれを裏付ける情報はネットでも確認できず、情報源は何であったのだろうと思います。マスコミに情報源の開示を求めないが、情報が正しいことを確認した上で発信する必要があり、その情報に関する責任をマスコミは持つべきです。(誤報なら、誤報であったと入れることも必要。)

なお、10月21日のエントリー大淀病院事件 (続)の3)一つ前のエントリでの”4)  裏情報”の一部訂正でカルテのコピーが病院から報道陣に渡されたとありますが、これに関して2チャンネルの707も同じ趣旨を言っています。事実である可能性が高いと思うのですが、そうなるとマスコミとはバカ集団で真実を追い求めることが出来ない人達なのだろうかと思ってしまいます。

米国であれば、マスコミ各社は病院と医師から名誉毀損による損害賠償で訴えられたのだろうと思います。

これは、2006年5月17日の奈良新聞の記事ですが、今回の事件の背景を良く映し出していると思います。リンク切れにならないと思いますが、念のため、続きを読むに入れておきます。

「南和地域は、病院と診療所を合わせても町立大淀病院だけしか出産を扱う医療機関がない。」と言っていますが、南和地域とは奈良県南部の五條市と吉野郡の一市三町十村(五條市、吉野町、大淀町、下市町、黒滝村、天川村、野迫川村、十津川村、下北山村、上北山村、川上村及び東吉野村)の地域のことで、町立大淀病院産科の存在は貴重だと思います。2006年5月17日の奈良新聞の報道で伝えている奈良県の産科及び産科医不足が問題を引き起こしたと見るべきで、この現象は奈良県だけではないと思います。高校の履修単位不足問題と同じように日本各地に広がっているのではと思います。

医療において地域格差が拡大していっていると私は考えます。でもかけ声だけで無くならないのでしょう。根本的なところを良くして行かねばならないと感じます。これ以上の格差拡大は日本国民を悲惨な道に追い込んでいく恐れもあるのではと心配します。

本日の衆議院厚生労働委員会で、この事件に関連しての討議があったものと了解します。議事録を見て追って紹介します。

誰も知らずに問題が発生することは更に悪く、改善すら出来ない。その意味では、毎日新聞も貢献したことを認めます。

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2006年10月26日 (木)

ストックオプション

ストックオプションの課税に関して10月24日最高裁が過少申告加算税賦課決定の税務署の処分を取り消す判決がありました。(判決文はここにあります。)この判決に関して、上告人の代理人であった鳥飼総合法律事務所がプレス・リリースを行っていますが、その文書はここにあります。

この事件は、それ程単純でない面を持っているので、以下に書いてみたいと思います。(単純な事件などないかも知れませんが)

(1) ストックオプションとは

東京証券取引所の用語説明がここにあります。例をあげると、会社が取締役に対して5-10年先に自社株を150で購入するオプションを与えます。(オプション付与時の株価は100とします。)でもオプションだから、この取締役は購入する義務はありません。だから、もし権利行使時期に株価が150以上であれば、購入するでしょう。もし、200で売却できれば50の利益となります。結果、ストックオプションを与えられた取締役は懸命に働いて業績を上げ、自社株の株価を上げようとする。株価が高くなれば、一般投資家もHappy、会社も資金調達が有利になりHappy、当然その取締役もHappyで皆Happyと言うわけです。

(2) ストックオプションを行使して株式を得た人の所得税

(1)の例で、権利行使をして取得した株価が170であったとします。これを150払って取得(オプション取得時は無償。株受領時に150)したのだから時価170との差20の利益を得ました。この20は、取締役の業務対価であると考えるのが妥当です。そこで、給与所得なのです。200で売却したら、株式譲渡所得が30得られたのであり、上場株を証券会社経由で売却したのなら30に対して所得税7%+地方税3%の税金を払います。

でもニュースには、一時所得という言葉が出てくるのは何故かです。ストックオプションは、日本では平成9年(1995年)6月施行の商法改正で可能となり、それまでは日本にストックオプションがなかったからなのです。(厳密には、平成7年の特定新規事業実施円滑化臨時措置法の改正により特定の株式未公開会社でストックオプションが可能となった。)でも株式の有利発行は、それ以前から存在していたのであり、株式の有利発行による差額の利益は一時所得と税務署は考えていたし、今でも役員、従業員のその業務・勤務・労働の対価として取得する場合ではない株式有利発行の利益は多くの場合一時所得です。(参考:所得税基本通達23~35共-6)(要は、取得の原因が何によるかで、各種所得のどれに該当するかです。)

給与所得と一時所得は所得税法では次のように規定されています。なお、一時所得は一時の臨時的性格であるとして課税所得金額を求める際に2分の1にするので、税額としても約2分の1となります。(厳密には一時所得は50万円を控除した残額を2分の1。給与所得は金額が大きい場合でも5%は給与所得控除が適用される。)

第28条①  給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
第34条①
 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。

(3) この事件の人達の所得

平成9年以前に日本に制度はなかったが、外国にはあった。この事件のケースは米マイクロソフトやデル、コンパック、シスコシステムズの日本法人元役員ら7人であり、役員就任を受けた会社ではなく、その親会社のストックオプションを得たのである。そして、東京国税局直税部長が監修、所得税課長編集で(財)大蔵財務協会が発行した「回答事例による所得税質疑応答集」において平成6年版まで「ストックオプションが給与等に代えて付与されたと認められるとき以外は一時所得として課税される。」と書いてあったからややこしいのである。”以外は”との表現であるから、この文章も相当読みにくいのであるが。

最終決着はこの平成17年1月25日の最高裁判決(要旨)で、やはり給与所得であるとされた。

(4) 10月24日最高裁判決

10月24日の判決は税務署の過少申告加算税賦課処分を取り消したものです。過少申告加算税賦課処分とは、期限までに申告と納税があったが、正規の税額より小さかった場合に、税務署は追加の税納付(及び修正申告)を求めると共に追加税額に過少申告加算税を賦課したと言うわけです。

これまた、ややこしいのは問題となっている所得は平成8年、9年、10年と11年の4年分でいずれの年もそれぞれの申告期限である翌年の3月15日までに申告納付がなされた。これに対し、税務署が平成12年3月10日に給与所得であるとして増額更正をした。11年分は12年3月15日に一時所得として所得税の申告を行い、税務署は13年3月12日に増額更正と過少申告加算税賦課決定をしたのです。それまでも、税務署と納税者との間でやりとりがあったのかも知れませんが、平成13年に訴訟となったのです。

裁判の結果は、(3)の最高裁判決の通り給与所得税ですが、今回の裁判で確定したのは過少申告加算税賦課は行き過ぎであるから、過少申告加算税賦課を取り消すと言うことです。

ところで、いくら位の金額の話しをしているかというと、日経は7人で総額約2億6000万円と報道していることから、10%が過少申告加算税の税率であるとすると増額更正の税額が約26億円であり、7人で税総額は50億円を超えると言うことです。所得の金額に換算すると7人全員を合計すると100億円を超えると言うことでしょうか?15%が税率であるとしても、34億円位の税額になるから所得金額はやはり100億円程度です。最も、朝日新聞は「7人の過少申告加算税額は、約2億1000万円(2年分)~34万円(1年分)だった。」と書いているので、人によって差はあります。ちなみに、対象となった期間の所得金額はあるデータから見るとA氏3.6億円、B氏16.3億円、C氏2億円、D氏6.6億円、E氏1.9億円となるので、所得金額は普通の人から見れば相当の高額です。ちなみに2000年(平成12年)8月23日当時の報道ではマイクロソフト日本のみで150人、70億円の申告漏れという報道でした。

(5) 企業にとってのストックオプションの経理・税務

従来企業側は、ストックオプションを与えた場合に、自己株式をストックオプション実行に備えて取得し、これを取得価額で自己株式として帳簿に載せ、実行された際に取得価額と実行価額の差を、損失であれば自己株式処分差損、プラスであれば自己株式処分差益として処理していました。貸借対照表、損益計算書の扱いが平成9年以降でも何度か変更となり、それにより法人税法上の益金・損金の扱いも変わっているので本年5月の会社法施行前については省略します。

企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」が企業会計基準委員会より公表されており会社法施行日(2006年5月1日)以後適用となります。その結果、ストックオプションは譲渡不可能ではあるが一種のデリバティブであり、適正額を人件費認識することになりました。例えば、ストックオプション付与時の株価が100でこれを150で購入できるオプションは、150以上に高くなる可能性がある以上はその価値はゼロではなく、何らかの正当な価値を持っていると考え、この価値相当分を人件費とし、人件費/新株予約権という仕訳で、人件費の認識をすべきと言う考え方です。なお、一時に人件費として認識するのではなく、付与日から権利確定日(行使可能期間の初日)まで、期間案分します。

ストックオプションの価値をどのように評価するのかという大問題があります。ウェブを見ると色々なところが売り込みをしています。なお、企業会計基準第8号が制定されるに至った背景には、2005年1月のIFRS(国際会計基準審議会-Internatioal Financial Reporting Standard)基準2号-Share Based PaymentやFASB(米国財務会計基準審議会-Financial Accounting Standard Boad)基準123号-Share-Based Payment(2004年改正)がそれぞれ2005年1月1日、2006年1月1日以後に開始する会計期間から適用されることがあり、国際的な会計基準の統一ということがあります。

企業税務では、2006年5月1日以前(余り前だと違いますが)迄は、自己株式処分差損益は資本積立金(法人税の用語であり、会計用語では資本剰余金に相当します。)を増減させるだけであったので、税への影響はありませんでした。2006年5月1日以後は、法人税法が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。」としていることから、企業会計基準第8号をフォローするのだと私は思います。しかし、ストックオプションの価値評価を故意に高くすれば、人件費が多くなり税額計算の元となる企業所得を下げ、税を減らすことが可能となるから、ストックオプションの価値評価については何か基準が出来るのではと思います。

(6) 報道

私はNHK TVのニュースで報道していたのを見ました。でも、誤解を与える内容と感じました。(私でも混乱を感じましたぐらいで、予備知識のない多くの方が見られたら誤解があるだろうと。)

新聞の方が、未だ正確です。

それと報道の姿勢に「悪の税務署に裁判で勝った。」という雰囲気を感じてしまったのです。「不当な過少申告加算税は否定された。」と言うのが今回の裁判です。税はその課税基準が公平であると共に税徴収も公平でなければなりません。税法の適正な執行と徴収がないとすれば、馬鹿馬鹿しくて税なんて誰も払おうとしないはずです。税の公平という基準に立って、税は考えるべきと思いました。

参考に、各社の報道を以下に並べます。なお、NHKはリンク先が既に消滅しているため、続きを読むに文章を入れておきます。

日経-ストックオプション、加算税賦課は違法・最高裁判決
朝日-ストックオプション「加算税は違法」 最高裁判決
毎日-ストックオプション訴訟:過少申告加算税は不当 最高裁2審破棄、国税の一部敗訴確定
読売-自社株購入権、最高裁が加算税課税認めず…国税が敗訴
産経-過少申告加算税取り消し 最高裁 ストックオプション訴訟
日テレ-ストックオプション上告審 国税側が敗訴
TV朝日-ストックオプションで得た利益は何税?最高裁判決
NHK-続きを読むにあります。

TVは、限られた時間内での報道だから衝撃的な内容になりがちなのでしょうが、やはり製作側には限られた時間でも誤解を与えない正確な報道をするように望みたいものです。(バラエティーは得意でも真実の報道はTV局には難しいのでしょうか?大淀病院事件もそうでしたが)

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2006年10月24日 (火)

良いサマリア人法

医療関係を続けます。良いサマリア人をご存じですか?(ルカによる福音書10章29節~37節に出てくる良いサマリア人です。続きを読むにルカによる福音書10章29節~37節の部分を参考として掲載しました。)

(1) 機内緊急放送

あなたは医師であったとします。用があってパリに行っていました。帰国の飛行機は日本航空406便、パリ発18時05分、成田着14時00分)でした。飛行機は定刻通り、シャルルドゴール空港を離陸。離陸後2時間ほどして、食事が終わりかけようとしていた時に機内放送がありました。

「ただ今、突然具合の悪くなられたお客さまがおられます。お医者様、看護師の方はおられませんか?」

さあどうしますか?名乗り出るか、ダンマリでいるか。大淀病院事件を報じているマスコミだったら、ダンマリでいたら、無茶苦茶たたかれるでしょうね。でも、医療機材は飛行機に装備してある物だけだし。自分の専門外の分野であれば的確な診断は出来ないし。所詮治療なんて出来ないだろう。注射をするにしても気圧が低いから、いつもとは少し違う。患者を助けるには緊急着陸をしての救急医療が必要かの判断が重要かも知れない。丁度今サントペテルブルグ上空を飛行中。間もなくシベリアだし、時間も深夜となる。緊急着陸をしたら、到着時間の遅れは生じるし、航空会社の費用負担も多大だし、乗客にも迷惑を掛ける。もし、名乗り出て何もできなかったら、もし診断を間違ったら、今のマスコミだったらもっと厳しい非難を投げつけてくるかも知れません。

この資料-航空機内での救急医療援助に関する医師の意識調査~よきサマリア人の法は必要か?~ によれば、アンケート結果はドクターコールに遭遇したら申し出ると回答した医師は41.8%(28名),その時にならないとわからないと回答した医師は49.2%(33名),申し出ないと回答した医師は7.5%(5名),その他1.5%(1名)であった。

(2) 良いサマリア人法

米国の各州には良いサマリア人法(Good Samaritan Act)があります。ここに各州の良いサマリア人法の該当条文番号があります。一つの法があるのではなく、ある法に条文を追加しており、リンク先が出てきます。

これらの良いサマリア人法は、緊急の場合に病人やけが人の救助に無報酬で従事する医師等の民事責任の免責(故意または重過失を除く)を規定しており、州によっては一般人も免責の対象としています。例えば、カリフォルニア州の次の規定です。

No licensee, who in good faith renders emergency care at the scene of an emergency, shall be liable for any civil damages as a result of any acts or omissions by such person in rendering the emergency care.

(3) 日本では

日本には良いサマリア人法がありません。従い、民法の事務管理による権利義務が発生します。民法第698条(緊急事務管理)は次のように規定しています。

管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

しかし、この698条は医療行為を想定したものではなく、一般的な条文です。例えば、台風が近づいてきているが隣家は空き家である。親切で補強してあげたと言ったケースです。民法の事務管理は、『他人の事務を管理する義務はない(行き倒れの人を助ける義務は民法上は存在しない)。しかし、ひとたび他人の事務の管理を始めた以上は、依頼された場合と同様に責任を持って事務にあたらなければならない。その代わり、その費用は償還される』と言っているとも考えられます。

医師法第19条第1項は次のように規定しています。

診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

但し、たまたま乗客として乗り合わせていた医師が診療に従事する医師と言うには、無理があると思うし、また機内放送が特定の乗客(医師)になされたものでないことから診察治療の求と言えるのかと考え、私は医師の義務は発生していないと考えます。しかし、名乗り出たらどうなのでしょう。医師法を初め様々な義務が医師に発生しないでしょうか。

日本航空と全日空は、上記(1)の資料によれば「JALとANAは紛争が生じた際に弁護士費用まで含めて医師を保護する方針を公表している。」と記載あることから、航空会社の責任として医師に医療過誤訴訟が生じたとしても対処する方針と理解します。(両社への確認はしておりません。)

(4) 秋田県救急救命士の書類送検事件

2005年3月25日患者を搬送中に救命救急師が除細動器を使用しました。除細動器というのは、この東京消防庁がAEDの講習が始まりました!-平成16年7月から一般市民も行うことができるようになったAED(自動体外式除細動器)と言っているこの除細動器なのですが、少し違うのは自動(Automatic)でない手動除細動器だったのです。実は、救急車は自動除細動器も設置されていたのですが、故障で使えなかったのです。そこで、救命救急師は手動で操作する除細動器を病院に到着するまでの間使用して心臓蘇生に努めたのです。病院到着後も病院の医師がすぐに患者に対応できない状況だったということで、医師が対応できるまでの間継続したと思います。

でも、手動除細動器は医師にしか使用は認められないと秋田県警は医師法違反でこの救命救急師を2005年7月4日に書類送検したのです。秋田地検は8月31日起訴猶予としました。2005年9月1日の共同通信のニュースは以下でした。

「除細動必要だった」 機器使用の救命士起訴猶予

記事:共同通信社 【2005年9月1日】

 秋田地検大館支部は31日、医師しか使用してはいけない除細動器を患者に使ったとして、医師法違反の疑いで書類送検された大館市消防署勤務の男性救急救命士(34)を起訴猶予とした。
 秋田地検は「患者は非常に危険な状態で、除細動しなければならない状況だった」とし、除細動器を使った救命士の判断が患者の遺族から感謝されていることも考慮したという。
 秋田地検などによると、救命士は今年3月25日、心室細動を起こし心肺停止状態となった男性患者を大館市の病院へ運んだ際、病院の医師がすぐに患者に対応できない状況だったため、違法行為と知っていて独断で手動式の除細動器を使用した。

 その後、医師が除細動器を再度使い、患者は一時心拍を再開したものの、間もなく死亡した。

 救急車には、心臓の動きを機械が解析し、電気ショックを与えるかどうかを表示する半自動式除細動器が備え付けられており、救命士は使おうとしたが作動しなかった。手動式除細動器の使用は医療行為に当たり、医師以外は使用できない。
 その後、半自動式除細動器のケーブルが断線していたことが判明し、輸入販売元が各地の消防本部に緊急点検を依頼した。

(5) 良いサマリア人法は日本にも必要と思うが

(4)の秋田県の救命救急師事件のこと、それに奈良の大淀病院事件、福島の大野病院事件、或いはこれ亀田病院事件ですが、医師のほとんどの方はトンデモ判決と言っておられます。千葉日報(本年9月12日)-高2男子死亡 病院に8150万円賠償命令:千葉地裁 カテーテルで血管損傷

「亀田病院はの亀田信介院長は「致死量のテオフィリン中毒のため救命できなかった。このような症例で医療機関に責任があると判断されては、日本の医療は荒廃する。直ちに控訴する」とのコメントを出した。」とのことであります。民事で、トンデモ判決が下される可能性はあるのです。

良いサマリア人法は、私は制定により不都合が生じることはないと思うのです。万一の時でも、医師から治療を受けたい。でも制定に向けての動きはそれ程大きくはありません。むしろ、大淀病院事件の様にマスコミは病院や医師を問題ありとしてたたいています。私の10月14日のエントリー”救急医療ーどうなるの”のこんにゃくゼリー事件も5病院で受入が出来なかったのですが、最終的に受入を行った川崎市立病院が悪者になっている感じです。

日本でもボランティアが推奨されるようになってきた。良いサマリア人が尊敬されて良いと思うのです。

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2006年10月23日 (月)

続続々 大淀病院事件

またまた大淀病院事件について書いてしまいます。

(1)正義のマスコミ?

10月17日に報道があったのですが、毎日新聞のスクープだったのです。毎日新聞2006年10月22日支局長からの手紙:遺族と医師の間で(奈良支局長・井上朗)で「結果的には本紙のスクープになったのですが、第一報の原稿を本社に放した後、背筋を伸ばされるような思いに駆られました。」と言っています。

Webのニュースで各社の時間を見ると毎日新聞3時00分、朝日新聞12時13分、読売新聞13時1分、産経新聞13時03分でした。

報道されている内容は、事件を部分的に捉えているだけで、本質には迫っていないと思うんです。毎日新聞の支局長からの手紙の「背筋を伸ばされるような思い」とはよく分からないのですが、「やったー。万歳!」という感じではないかと思ったのです。

でも「病院のガードは固く、医師の口は重い。」とあり、取材したのは、遺族が中心であったと思うのです。新生児の誕生が8月8日で妊婦死亡が8月16日でした。2ヶ月以上経過しての報道です。だったら、一方のみの取材ではなく多方面の取材を行い誤解を与えない真の問題点や核心を突いた報道にすべきと私は考えます。他社も負けずにと報道しているが、同じ様なセンセーショナルな報道が多く、それに更に輪をかけたのがTV局であり、その上を行っているのがTVワイドショーです。

例えば、医師には守秘義務があります。「医師からは取材できないので、患者からの情報だけとする。」は偏り過ぎと思います。自分自身が患者だとしたら、医師には守秘義務を守って欲しいと思うはずです。さもないと、裸になって弱点をさらけ出せないはずです。医師と患者の信頼関係は重要です。医師が慎重になるのは解ります。

「マスコミは暴力です...」と言っておられるのは、いなか小児科医さんです。マスコミは良い社会をつくるために報道をして欲しいと考えます。

(2) 子癇発作

「元検弁護士のつぶやき」の中のコメントで山口(産婦人科)さんが、解りやすい解説をされておられるので、転載させていただきます。

浅学ながら、他の産科医が書き込みなさらないのでXXXさんに。

まず子癇発作というのは血管が締まって脳に血が行かなくなる状態です。当然脳以外の所でも血管が締まっていますから胎盤や腎臓、肝臓でも血流が極端に落ちます。従って一時的とはいえ脳全体が酸欠になっている上、さらに腎不全と肝不全がこれまた一時的とはいえ起こっているとお考えください。そうなれば脳浮腫(脳がむくむ)も起きますし、胎児の状態も悪くなります。けいれんが起きていれば呼吸状態も悪いでしょうから、胎児の状態はさらに悪いでしょう。母体がそのまま死んでしまうことだってあります。前にも書きましたがこれくらい重症だと大体1割死亡。ここまでで重症の子癇発作がどんな状態かイメージできたでしょうか?
で、医者の間では知られた事実ですが、脳梗塞の後血流が再開すると、そこで脳出血が起こることもあります。今回はこれではないかと推定しているわけです。
さらにさらに子癇発作というのは妊娠中毒症の妊婦に起きやすいわけですが、比較的軽症中毒症でも血が固まりやすくなって、ちょっとしたきっかけで体内に血栓が起きてしまいます。ましてや子癇発作時は、全身に微少な血栓が飛び散ったあげく、かえって止血機構が破綻して出血が止まらなくなるDICという状態も起きやすくなります。こうなったらもう多臓器不全から死亡へまっしぐらです。妊娠中毒症や子癇発作がどんなに危険なものか、おわかりいただけたでしょうか。私自身も遭遇経験はないので、ちょっと怖さを大げさに書いているかもしれませんが、間違っていたらどなたか修正してください。

というわけで、意識の戻らない重症の子癇発作患者を受け入れるというのは、並ではない覚悟が必要です。胎児も死ぬかもしれず、母体も死ぬかもしれない。しかも死ねばバッシングが待っている。おまけに前に書いたように、検察は「万全の体制でやれないところで危険な症例を引き受けるべきではない」と福島県立大野病院の事件で医師を逮捕したのですから、NICU,ICU,新生児専門小児科医、麻酔医、産科医数人ずつと、脳出血が明らかになった時点でさらに少なくとも脳外科医2名を直ちに用意できなければ受け入れ不能と回答するしかありません。野戦病院じゃあるまいし、「ベッドがなくても受け入れろ」という言葉の非現実性がお解りでしょう。
最後に外科医が脳をいじるのは全然無理。どこを切れば脳にダメージを極力与えずに血腫を取り除けるかなんて、脳外科医以外にはできない判断。それにこんな修羅場の帝王切開を専門医でもない外科医がやったら大変ですよ。「やったこともない手術をやった!そのため患者が死んだのだ!逮捕だ!」となるのが分かり切っています。

(3) 脳内出血

脳内出血を子癇と誤診したから、妊婦が死亡したなんて、そんな報道されているほど単純ではないことを多くの方は理解しておられると思いますが、この妊婦の脳内出血とはどのような状態であったのかm3という医師のブログ・掲示板に転載可として書かれていたというので、下記に掲げます。

今日、患者さんの死亡原因の診断を教えてもらいました。右脳混合型基底核出血で、手術としては脳室ドレナージが行われたようですが、かなり大きな出血だったため、回復され なかったそうです。
脳内出血の原因は、年齢から考えて、aneurysm
(動脈瘤)があったんだろうか。32歳といえば、aneurysm破裂の好発年齢ですよね。年齢から考えるとAVM(動静脈奇形)は、否定的で すし、予後は比較的いいはずですから。aneurysmは分娩時におこる頻度はまれだったな。そういえば妊娠20週まではAVMが多くって、30週から40週まではaneurysmが多いという文献もあったっけ。PUBMEDでももう一度調べてみます。
不幸にも亡くなられた方の既往のepisodeに何かなかったのかなと思いました。
()は私の注です。

大淀病院でこの患者の脳内出血に対処可能であったかに付いては、「元検弁護士のつぶやき」の中で、転載可として脳外科医(留学中)さんが書かれていますので、下記に掲載します。

脳室体外ドレナージだけであったのならば、大淀病院で可能です。
ただし、臨月の妊婦でなければ。
決断してから、準備、手術、回路の設置終了までは、急げば30分程度の処置ですが、この場合片方だけでなく、両側脳室をドレナージした方がベターなので、さらに15分ほど追加、さらに出血で脳室がシフトしていて一度で穿刺できない可能性なども考えると、処置のために「最低」1時間は予測しなければなりません。
そしてドレナージの最中に脳圧の急激な変化が、胎児の心拍数低下などの危機的状況を導く可能性なども考えれば、この処置は手術室で帝王切開と同時に行うべきです。
麻酔科も、NICUもない病院で、このような危険な処置は行うべきではありません。
さらに、いつ搬送先が決まるかもわからない状況です。
もし、CTで出血がわかったとしても、「母子の管理が十分に出来る施設へ一刻も早く搬送して、搬送先の手術室で処置を行ってください」というのが、正しい判断だと確信します。

また、視床から被殻を巻き込む大型の血腫で、かつ脳室穿破を伴っているタイプの脳内出血であれば、CTを撮れば見逃すことはありませんが、たとえ手術を行ったとしても予後は不良です。
出血の原因としては、高血圧性のものが第一に考えられます。若年者なので、脳動静脈奇形も鑑別しなければなりません。動脈瘤破裂の好発年齢は50代で、部位的にも考えにくいと思います。ただし、血腫で何が何だかわからなくなっていると思います。

いつかは起こりえる、そして起こるべくして起きた事故ですが、学ぶことはとても多いと思います。
問題点は、たくさん見えてきました。
少なくとも、このブログをご覧になられている方には、この産婦人科医を責めることは、何も生み出さないということを認識していただけるのではないかと思います。
そしてこれから生まれる命と母になる女性のためにも、今後どのような体制を整えていかなければならないかを考える必要があります。
それが、亡くなられた方と、残されたご家族に報いる、唯一の方法であると思います。

(追記)

たまたま見つけた文章です。

脳室ドレナージは要するに脳圧が上がらないように、水抜きをするということだから、それで 患者の家族が満足できるレベルの「救命ができた」とは言えない。てか、ふつうの人は救命=ふつうに生活できると思いこんでいるが、あくまでも救命=寝たきりであろうがなんだろうが「生きている」状態のことだ。

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2006年10月22日 (日)

長期生活資金貸付制度

貸金業の規制についての検討は現在進行形でしょうが、9月6日のエントリーの(3)生活福祉資金の貸付でも書いたモーゲージ・ローンについて書いてみます。

1) モーゲージ・ローンとは

モーゲージ・ローンとは不動産担保貸付です。個人向けのモーゲージ・ローンだったら、住宅貸付金だから、ほとんどの人がマンションや家を購入するにあたって利用しています。米国の場合だったら、自分が住んでいる家を担保に生活費に充てるために借入を行う。そもそもレイオフ(解雇)なんて当たり前の社会だから、高収入が得られたときに高級住宅を購入する、レイオフになったら、或いは自分から止めたら、グレードを落として別の家に住めばよいという文化・社会だから住宅の担保価値もそれなりにある。

日本では、住宅の担保価値は低い。何故なら居住している人を追い出すことが容易ではないから。でも、マンションなんて中古市場が活発に動いて、世の中は変わってきていると思うのです。

いずれにせよ、モーゲージ・ローンだったら、担保があるのであり、無担保サラ金ローンより低金利で月々の返済額も少額の長期融資が可能であろうし、そうでなくては意味がないと思う。消費者金融業と呼ばれている業者だけでなく一般銀行も参加して良い意味での競争により低金利融資マーケットが形成されて欲しいと思う。

一方、収入が無ければいくら利息が安かろうが、返済は出来ない。サラ金業者のCMですが、「無理な借り入れにご注意を。ストップ!借りすぎ」で、返済資金の目途がないにも拘わらず借入をするのは無茶です。

2) 長期生活支援資金貸付制度

「65歳以上で低所得の人を対象とし、低金利で700万円以上貸し付けてくれるローンです。」が、少し解説が必要です。以下をご覧下さい。なお、厚生労働省のWebはここです。

  1. 借入人が65歳以上であることと同時に、同居している配偶者も65歳以上であることです。
  2. 居住土地の評価額が1000万円以上あることです。(貸付金額が土地の評価額の概ね70%となります。)
  3. 土地、住居は借入人の所有であり、抵当権等の担保が設定されていないこと。
  4. 担保として、土地、住居の抵当権と推定相続人が連帯保証人となること。
  5. 低所得であること。(住民税が非課税であること。)
  6. 利率は年3%又は銀行の長期プライムレートのどちらか低い利率

長期生活資金の貸付者は都道府県の社会福祉協議会で、申請の窓口は市町村の社会福祉協議会となります。

3) 住民税の非課税

収入がいくらで非課税になるかというと、65歳以上で年金のみの収入の場合では、年間収入222万円以下の場合に、所得割は非課税となり、更に210万円程度になると均等割りも非課税となります。(均等割り非課税額は居住地により少し金額が異なる。)なお、配偶者は老齢基礎年金のみの収入(年金額79.2万円)のみで、控除対象配偶者になると想定しています。夫婦二人の合計年間収入300万円がボーダーラインという感じです。

自営業で、商店なんかをされていた方であれば、商店の収入も少し継続している可能性はありますが、年金による世帯収入は158万円ですから、高齢者では住民税は非課税の方も多いのではと思います。

4) 生活保護

いくらの収入以下であると生活保護が受給できるかというと、地域により異なるのですが、ボーダーラインの高い1級地-1と低い3級地-2の場合の夫婦二人の場合の金額は次の通りです。(年齢は69歳とします。)

1級地-1: 120,270円(月額)、即ち144万円(年額)
3級地-2: 93,210円(月額)、即ち112万円(年額)

なお、持ち家であるとして住宅扶助は計算に入れていません。また、医療扶助、介護扶助を計算に入れていないので上記以外に受給できます。但し、年金を受給していれば、差額なので100万円年金収入があれば、44万円、12万円が生活保護で受給できる金額となります。

生活保護を受けるには、普通程度の住居用土地家屋を保有することは認められるが、資産、能力等すべてを活用した上でも、生活に困窮する者が対象であることから、預金は最低限を残した後、保険は解約した後、資産は売却した後です。従い、生活保護を受けることはつらいものがあります。

参考までに、これが厚生労働省の生活保護制度の概要です。

5) 扶養義務

民法に扶養義務が規定されています。配偶者と3世代上の直接の親(曾祖父母迄)、3世代下の直接の子(曾孫迄)と兄弟姉妹です。少し前までは、家が生活の中心で扶養義務なんて当たり前ということでした。農業であれば、田畑は自分が手に入れたのではなく、親、祖父母から引き継いだ資産であり、それにより収入を得ていたから、扶養なんて当然だったんです。

現在は、親の面倒を見るのにも金銭的余裕のない人も沢山います。無理矢理扶養義務の実行を迫るのは難しいのが実状です。一方、生活保護費は税金からの支出であり、扶養義務を不問にして保護を与えることは出来ない。非常に単純ではないところですが、必要としている人には憲法と法の精神に従い給付すべきです。

実体としては、生活保護の世帯や人員の数は増加しています。次のグラフは厚生労働省の数字を表したものです。

Photo_9

上のグラフを、年代別に表したのが下のグラフです。60歳代以上の年齢層では保護率が大きいのです。

A_1

扶養義務を言いましたが、扶養義務と密接に関係するのが、相続です。配偶者と子(子が死亡している場合は、その子孫)、子がいない場合は親、そして親も死亡している場合は兄弟姉妹が相続人ですから、扶養義務者と基本的に重なります。

6) 長期生活資金の貸付利用のおすすめ

住民税非課税限度以上の収入がある人については、大きな問題はないとして、それ以下の収入の人にとっては長期生活資金の制度は魅力的だと思うのです。その理由は。

  1. 利子率が年3%以下であることから、魅力的。
  2. 制度上は最大貸付実行額が1月30万円以内であるが、最大額の借入をする必要はなく、最適額の借入とすればよい。
  3. 扶養義務者に無理な負担を強要しなくて良い。(相続されるであろう住宅とその土地が返済のために処分せざるを得ないかも知れなく相続と扶養義務との選択となる可能性があるが、選択権は扶養義務者(推定相続人)にある。
  4. 生活保護の受給のように資産の処分義務はない。

一方、制度としての観点から見ても、長期生活資金の利用にあたっては、民生委員の紹介も受けることから、長期生活資金のローンが利用限度額一杯になっても生活保護にスムースに移行できると考えられる。無理な生活保護の拒絶や不正受給を無くすることにもつながると私は思う。更には、現状であると、扶養を受けられないから、生活保護となるにも拘わらず、住宅の保有は合理的な範囲で認められていることから、受給者が死亡するとその財産は扶養を果たさなかった扶養義務者に相続される。

理由があるから扶養できなかったはず。しかし、生活保護の受給は相続の権利に影響を及ぼさないから、相続が生じるのは当然である。

7) 今後の制度改革

長期生活資金の利用について社会福祉協議会に問い合わせてみたのだが、現実には少ないとのことである。その理由としては、評価額1000万円以上の土地を保有している人が少ないからと言うことである。特に、地方ではそんな土地を保有している低所得の方がほとんどおられないとのことである。一方、都会でもマンションは対象外であり、仮に一戸建てであっても住宅ローンを返済済みで抵当権が残っていない場合となる。

現状では間口は相当狭いのである。高齢化社会を向かえ、高齢者の低所得者に対して低利融資の制度を提供することは必要と考える。その為には、リバースモーゲージローンと呼ばれている長期生活資金貸付制度を利用の容易な形、ニーズにあった形に改革することが必要と思う。話題になっている消費者金融のグレーゾーン金利とは、出資法の上限利率(年利29.2%)と利息制限法の20%程度の利率との差についての話しである。それはそれで重要であるが、収入が低い高齢者については、低利長期の長期生活資金貸付制度の充実等で対処することが必要と考える。

長期生活資金貸付制度は、グレーゾーン金利について検討している金融庁ではなく、厚生労働省であるが、貸金業の改革にあわせて検討して欲しいと思う。

蛇足となるが、年金制度の根本問題(保険料を払わなくて、年金が受給できなくても、それより金額の大きいかも知れない生活保護を受給できる。)についても合理的で無理のない改革をして欲しいものと思う。

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2006年10月21日 (土)

大淀病院事件 (続)

大淀病院事件について、またまたエントリーを。

1) 医師個人の問題か?システムの問題か?

本日、こんな報道共同通信-ベッドあったが拒否 「別の妊婦に必要」とがありました。記事の中で、”奈良病院は「切迫早産で入院中の妊婦がいて、確保する必要があった。受け入れていたら、その人を大阪方面に転院させることになった」としている。”と書いてあるので、表題ほど単純な話しではないと思います。

本事件では、産科の医師、医療機関、それに救急医療体制とかの問題がクローズアップされたのだと思うのです。厚生労働省は異なった見解かも知れませんが、医師不足があり、医師不足のために産科を中止せざるを得ない医療機関が多いのは事実と思います。医師を増やすと医療費が増加する、そして国民の医療費負担が増加するとの議論があります。しかし、「医師を増加すると、いくら医療費が増加するか?」、「医療費は高齢化社会を向かえるにあたって、いくらが妥当であるか?」が本当に重要な議論だと思うのです。

それと、一人前の医師を育てるには、相当の長期を要することです。年寄りの医師ばかり、皆これからリタイアしつつある。熟練者が新人に経験をさせつつ、教育していくことは大事だと思います。パソコンの操作だったら、新人は優秀。でも、医療はパソコン操作で出来る仕事ではないし、医療を同一にして欲しいとは思いません。若手を含め多くの医師には、最新医療を学ぶと同時に、過去の先輩の蓄積を吸収して欲しいと思うのです。

大淀病院事件は、私は間もなく出産という妊婦が脳内出血となってしまった不幸な事態だと思うのです。時間も深夜であり、転送が手間取ってしまった。私たちが、学ぶべきは何であるのかを考え、今後に生かして欲しいと思うのです。

2) 大淀病院でのCT検査

大淀病院でCT検査をしなかったことについて、批判があります。私は、10月20日のエントリーで「CT検査をするのであれば、CTを扱える検査技師か医師を呼ばねばならなかった。」と書きました。それに加え、次のように言っておられるブログssd's Diary-October 18, 2006エントリーがあります。

CTでのTisch tot(台上死)というのは実は、非常にポピュラーであり、トラブルの元なのだ。交通事故の外傷などでも、手術中に死ぬのと、CT検査中に死ぬのとでは遺族の受け取られ方が全然違う。
救急室で目に見える外傷のとりあえずの止血をしても、血圧が安定しない。開腹開胸手術、あるいはIVRをするにも主たる出血源を決定する必要があり、救急医はプロテクターを来て被曝しながら輸血をpumpingし、アンビューバッグを押しながら、CT台に乗せる。スカウトを撮ったとたんにアレスト。
治療の流れの上でたまたまCT撮影中に亡くなっても、医療側としては不可避の結果であると理解できるが、治療中の死亡なら納得がいっても、検査中の死亡というと遺族は荒れる。裁判まで行かなくとも(今まではだが)現場でなじられるのは珍しくない。
シリンジポンプやモニターが付いた重症患者をCT検査するには、とにかく人手がいる。最低でも循環・呼吸動態に知悉した人間が二人、頭は回らなくても体はよく動く研修医か看護師が二人に、とりあえず、いてくれるだけでありがたい力仕事担当二人。これくらい欲しい。守衛さんや事務当直を動員しても300床の病院では望むべくもあるまい。
高次搬送を早々に決めたことに落ち度はない。そして、搬送するとなったら、CTを撮ることには意義がなくなる。
意地悪な見方では、もし、脳出血が判明していたら、国立循環器センターでも受けなかったのではないかという意見もある。その意味では撮らない方が「正解」だったのかも。

3) 一つ前のエントリでの”4)  裏情報”の一部訂正

一つ前のエントリでの”4)  裏情報”で、紹介した文章で一部訂正が出ていたので、それを以下に掲載します。但し、本質の部分は変更はないと思います。なお、この文章は、2チャンネルhttp://society3.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1161360294/から取ったものです。

なんだ。m3.com情報間違ってたみたいだぞ。
産科当直は一人医長だったそうだ。
ttp://community.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=338896&boardId=3&messageRecommendationMessageId=338896&topicListBoardTopicId=39495&pageFrom=showMessageDetail
1.主治医=担当医=産婦人科部長で、当日の産科当直は産婦人科部長ただ一人でした。産婦人科部長に連絡したというのは、院内(部長室か当直室でしょう)にいる産婦人科部 長に連絡したということです。
お詫びして訂正します。
2.当直の内科医と産婦人科部長の間でCT撮影について議論した事実はなく、当該内科医もそんなことは言っていないし、カルテにもこれに関する記載はない。
3.奈良医大に搬送受け入れを要請したとき、大学当直医は緊急帝王切開で手術室にいた。
4.マグネゾールで痙攣はおさまり、以後投与中は痙攣の再発はなかった。
5.CTGは入院の全経過中ほとんど装着しており、患者には担当の助産師がほとんど付き添っていた。
6.カルテのコピーは病院側から報道陣にあらかじめ配布されたらしい。報道サイドは看護記録の経過をもとにストーリーを作っているが、カルテの内容については専門的で、technical termもあり、十分に把握していない。
7.患者家族の親戚に当たる勤続50年近かった元総婦長が病院側と患者家族の橋渡し役(スポークスマン?)になっている。
以上です。ここに訂正してお詫びします。

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2006年10月20日 (金)

大淀病院事件の続き

19病院で搬送の受入が出来なかったことから、相当色々なメディア等で取り上げられています。情報源による違いからなのか、記者の受け取り方の違いからなのか、編集方針の違いからなのか、実は本日の報道は様々です。

1) 妊婦、1時間以上放置けしからん

この朝日新聞-意識消失の妊婦、1時間以上放置 奈良・町立大淀病院は、「看護記録を見た日本産科婦人科学会の専門医は「意識を失った患者には医師が付き添い、原因を調べなければならない。けいれんが起きるまで1時間以上放置したのは信じられない行為」と驚く。」と書いています。

2) 奈良県産婦人科医会の発表「主治医にミスなし」

これも朝日新聞-産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡ですが、「記者会見した同医会の平野貞治会長は「失神とけいれんは、子癇でも脳内出血でも起こる症状で、見分けるのは困難。妊婦の最高血圧が高かったこともあり、子癇と考えるのが普通だ」と説明。「CTを撮らなかったのは妊婦の搬送を優先したためで、出席した理事らは『自分も同じ診断をする』と話している」と書いています。

3) 本当の話は?

大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長の話しを前のエントリーの3)で朝日新聞の記事を引用しました。同じ人が毎日新聞-奈良妊婦死亡:搬送先探し、診断不正確で遅れかでは、次のように言っています。本当は、どのような話しをされたのか、新聞ではまた聞きとなり怖いのでしょうか?最も、TVも一部のみをカットして報道するからこれも下手をするともっと怖いのですが。

末原部長は「脳内出血で母親の命が危ないと分かっていれば、産科より救命救急センター、大学病院を中心に搬送依頼した。搬送先が決まるまで待つ時間があるなら、CTを撮る時間もあったのではないか」と指摘している。

4)  裏情報

言葉は適切でないのですが、医療関係者が書いた掲示板にあった文章です。私も、この掲示板を直接見てはいないのですが、相当細かいことまで書いてあるので、真実味を感じます。(おそらく真実と思うが、その確証は取れていないとして読んで下さい。)

ソースが確実なきょう聞いた話。
当夜の当直は外科系は整形外科医、内科系は内科医、産婦人科は奈良医大から派遣の当直医。
患者さんは午前0時に頭痛を訴えて失神、ただ痛みに対する反応(顔をしかめる)はあった。産婦人科当直医は念のため内科当直医に対診を依頼、内科医は「陣痛による失神でし ょう、経過を見ましょう」ということになった。しかしその後強直性の痙攣発作が出現し、血圧も収縮期が200mmHgになったので、子癇発作と判断、マグネゾールを投与し ながら産婦人科部長に連絡した。部長は午前1時37分、連絡してから約15分程で病院に到着。以後二人で治療にあたったが、状態が改善みられないため、午前1時50分、母 体搬送の決断を下し、奈良医大へ電話連絡を始めた。
午前2時、瞳孔散大を認めるも痛覚反応あり。血圧は148/70と安定してきた。この時点で頭部CTも考慮したが、放射線技師は当直していないし、CT室が分娩室よりかな り離れたところにあること、患者の移動の刺激による子癇の重積発作を恐れ、それよりも早く高次医療機関をさがして搬送するほうがよいと判断、電話をかけ続けたが、なかなか 搬送先がみつからない。
午前2時30分、産婦人科部長が家族に状況を説明、そのあいだにも大淀病院の当直医や奈良医大の当直医は大阪府をふくめて心当たりの病院に受け入れ依頼の電話をかけつづけ た。家族はここで「ベビーはあきらめるので、なんとか母体をたすけてほしい。ICUだけがある病院でもいい」と言ったので、NICUを持たない病院にまで搬送先の候補をひ ろげ、電話連絡をとろうとした。家族も消防署の知り合いを通じ、大阪府下の心当たりの病院に連絡をとって、受け入れを依頼した。この頃には産科病棟婦長(助産師)も来院、 手伝いはじめてくれた。大淀病院看護師OGで患者さんの親戚も来院し、多くの人が集まり始めた。けれども受け入れてくれる施設が見つからない。担当医は当直室(仮眠室)か ら絶望的な気分になりながら電話をかけ続けたし、大学の当直医は大学の救命救急部門にまで交渉に行ったが子癇は産婦人科の担当で、我々は対処できないと言うことで受け入れ 拒否された。午前4時30分、呼吸困難となり、内科医が挿管したが、その後自発呼吸ももどり、サチュレーションは98%と回復した。その後すぐに国立循環器病センターが受 け入れOKと連絡してきたので、直ちに救急車で搬送した。患者さんは循セン到着後CT検査等で脳内出血と診断され、直ちに帝王切開術と開頭術をうけたが、生児は得られたも のの脳出血部位が深く、結局意識が戻らないまま術後8日目の8月16日死亡された。

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奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず

奈良の大淀病院の妊婦が19病院で搬送受入出来ず、亡くなったという報道がありました。多くの報道は、TBSの19病院たらい回しにされ妊婦が死亡の様な内容です。

10月14日の救急医療ーどうなるので、救急医療についてのエントリーを書きましたが、同様な問題を含んでいます。

1) 経過

経過は以下のようなものです。

・8月8日午前0時過ぎ意識不明になる。
・子癇が疑われ、点滴を投与する。
・2時頃、点滴が奏功しないので県立医大病院に受入を打診したが、満床で受入出来ず。
・受入先を探す。
・4時半頃、19ヵ所目で大阪府吹田市の国立循環器病センターへの受入が決定
・6時頃、患者到着
・脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開を実施、男児を出産。
・妊婦は同月16日に死亡。

2) 子癇と脳内出血

メルクマニュアル家庭版の子癇の説明です。

妊娠中毒症の200人に1人は血圧が非常に高くなってけいれん発作を起こします。この状態を子癇(しかん)といいます。子癇のうち4分の1は出産後2〜4日目に起こります。ただちに適切な処置をしなければ、子癇は生命にかかわります。

妊娠中毒症は妊婦のおよそ5%にみられます。と書いてあるので、4000人に1人位の割合で子癇が見られるのでしょうか。

同じく、脳内出血を見ると以下のように書いてあります。

脳内出血は、脳の中での出血です。脳内出血は突然起こり、約半数の患者はひどい頭痛が始まります。

午前0時の段階で、脳内出血を疑わなくてはいけなかったかという点です。CT検査をしないと、脳内出血との診断は出来なかった。時間は午前0時ですから、もしCT検査をするのであれば、CTを扱える検査技師か医師を呼ばねばならなかったと思います。少し様子を見るとの判断で間違いはなかったはずと思います。

3) 搬送

午前2時頃、医師は大淀病院での治療はリスクが大きすぎるとして、県立医科大学付属病院に受け入れを要請したが、ベッドが満床で受入出来なかった。それから、19病院で搬送受入出来ずとなるのですが、この朝日新聞の記事に妊婦の搬送先を探した大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長の話しとして、以下の文章があります。

母体に脳出血がある場合、NICU、脳外科、麻酔科、ICU、産科の五つがそろった病院でないと受け入れが難しい。そんな病院は大阪にも5、6カ所しかない。

深夜、関係者の方々は懸命になって受入可能な病院を探されたのだと思います。ある程度、病状は判っている。意識不明であり、出産は帝王切開で行わねばならず、同時に妊婦の治療も行わねばならない。

4) 奈良県の産科医療状況ー医療が悪くなる

上記の朝日新聞の記事に奈良県の産科医療状況が手薄であることが書かれています。これが根本問題であり、奈良県だけの状況かという点です。

多くの医師の方は、医療は崩壊に向かいつつあると考えておられます。懸命に努力をして朝日新聞-奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題となるのですから。そして、マスコミにたたかれたら逃げ出したくなる。

医療サービスが低下すると困るのは誰でしょうか?国民のはずです。困らないのは誰か?金持ちは困らないでしょう。医療が全て無くなるわけではないし、国外で医療を受けることも可能です。格差社会が医療にはいることは悲しいことだと思います。

5) 関連医師ブログ

医師の方々がブログでは、どのように言っておられるか紹介しておきます。

元検弁護士のつぶやき-18病院が受け入れ拒否(大淀病院妊婦死亡事案)
<ブログ管理人さんは、元検事の弁護士ですが、医師の方が多く書き込みをされています。>
新小児科医のつぶやき- 奈良事件に誤診はあるか
へなちょこ医者の日記(当直日誌兼絶望日誌)-奈良の件追加
いなか小児科医-体制不備への着目
東京日和@元勤務医の日々-マスコミの魔女狩り報道が正しいのか?

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2006年10月16日 (月)

バングラデシュのグラミン銀行

前エントリーに続いてバングラデシュのグラミン銀行関連を書いてみます。

1) テレフォン・レディー

グラミン銀行は面白いと書きましたが、テレフォン・レディーというのもバングラデシュならではの面白さです。

グラミン銀行から融資を受けた女性達(融資を受けるには、5人以上のグループを結成する必要があるので、女性達と書きました。)は、竹細工、牛飼育、山羊飼育、刺繍、絨毯作り、養鶏、機織り、家具作り等をして、これらを販売し、収入を得てグラミン銀行に返済をします。

最近は、新しい職種としてテレフォン・レディーが現れたというのです。テレフォン・レディーとは、携帯電話貸与サービスなのです。これを理解するためには、バングラデシュの電話事情を知らなければならないのですが、2001年で固定電話56万台、携帯電話52万台で合計しても100人当たり0.83台しかなく、しかもこれは事務所等での業務用を含めてであり、そもそも地方に行くと電話線が引かれていなかったり、携帯電話の中継局、基地局もないので地方では電話は100人当たり0.19台となってしまうという世銀関連の報告書があります。日本だったら、携帯電話を加えると100人当たり100台を完全に超えるはずです。

テレフォン・レディーは、グラミン銀行から融資を受けて、携帯電話を購入するのです。そして、これを貸して使用料を得るのです。どこの電話会社の携帯電話かというと、グラミン・フォーンで、ノルウェーのテレノール62%とグラミン・テレコム(グラミン銀行と資本関係はないようです。)38%の合弁会社です。このグラミン・フォーンは今やバングラデシュ最大の携帯電話会社ということです。携帯電話52万台は2001年の数字ですが、2005年末ではグラミン・フォーンだけで550万台であり、そのうち23万台がテレフォン・レディーが保有している電話というわけです。更に面白いのは、テレフォン・レディー23万台は台数では4%を占めるものの、通話量では16%になるというのです。

でも、一体テレフォン・レディーは、どこで携帯を充電するのだろうと思ってしまいました。何故なら、バングラデシュでは未だ配電線網が行き渡っておらず、30%の国民しか電気の恩恵を受けることが出来ないのです。

2) 生命保険

前のエントリーで無利子の乞食ローンがあると書きました。今までに、81,000人の乞食に68百万タカ(1億2千万円)の貸付を行ったと書いてあるので、一人当たり平均1,500円にもならない金額です。子供を学校に行かせたり、乞食の行為を禁止はしないが尊厳ある生き方をするようにグラミン銀行は指導するのです。例えば、乞食をする場所で良いから、何か物を売って収入を得なさいと。資金使途は、蚊帳の購入というのもあるようです。

乞食ローンもキチンと返済されますとグラミン銀行は言っております。68百万タカ(1億2千万円)の貸付中、これまでに41百万タカ(7千万円)が返済されていると。ところで、この無利子乞食ローンは生命保険をグラミン銀行が費用を負担して付保していると説明しています。

乞食ローン以外の通常のローン、住宅ローン、その他のローンについては保険料は借入人負担となるが、生命保険の付保があります。万一死亡しても生命保険金で完済となるのでご安心下さいと言っています。

日本と社会環境がまるで違うので比較することは正しくないのですが、現在マスコミがサラ金の生命保険を非難しています。しかし、本質は債務も相続されるのであり、相続放棄があるから問題はないと簡単には言えないはずです。先ずは、死亡した人がサラ金債務があったかどうか、簡単に分からないかも知れない。あったとしても、未返済額なんていよいよ分からないし、聞くのもバカらしいと放っておけば、相続放棄の期限の3ヶ月を過ぎて、支払を求められたりして。相続放棄は、負債だけを放棄するのではなく現金、預金、住宅、家財を含む一切の資産を含めて全て放棄するのだから、巨額の負債であるならいざ知らず少額のサラ金債務までなかなか目が行き届かないと思います。また、相続放棄をするなら相続人全員がすることとなります。何故なら、負債が大きいからするのであり、一人手続き漏れがあれば、その人に全額が相続されるからです。

私は、生命保険で自動的に全額返済となった方が、よほどスッキリすると思うのです。サラ金業者も、債務者が死亡したら今度は相続人に履行請求をせざるを得ないのですから。しかも、現在の日本のサラ金の生命保険料は全額サラ金業者が負担しているのです。違法な債権取立は、生命保険とは別の問題であり、違法取立は違法取立として厳しく取り締まるべきなのです。問題を混同すると解決に向かわず問題を深刻化させることさえあると思います。

日本のサラ金の生命保険の問題点として言われているのは、「借入人、本人が承認する欄があるが小さくて、無意識でしている。」との指摘ですが、これも保険自身の問題ではなく説明責任の問題のはずです。ちなみに、住友軽金属が従業員個人の承認なし(労働組合幹部からの口頭の承認のみ)で団体生命保険を付保し、その従業員の遺族が住友軽金属に支払われた保険金の退職金を超える部分の金額を遺族に支払うよう求めていた裁判の最高裁判決が本年4月12日にあったのですが、この最高裁判決は遺族の保険金受け取りを認めませんでした。

住友軽金属事件は、被保険者の承諾なしに他人が生命保険を付保し、保険金を受け取ることが許されてよいのかという問題を含んでいるのですが、サラ金保険は、住友軽金属事件よりも問題がないと私は思うのです。(なお、住友軽金属事件は最高裁判決であるので確定です。)

貸金業制度等に関する懇談会が金融庁にあるのですが、その第19回の議事要旨を見ると事務局が次のような説明を行っている部分がありました。

(消費者信用団体生命保険が)安易な債権回収の手段になっているという議論についだが、各担当者のミクロのレベルでは、保険金が請求可能となればノルマが達成できることになるという新聞記事が確かにあった。一方マクロのレベル、会社レベルでみると、保険会社に支払う保険料は業者の負担で払っているが、この保険料は毎年受け取る保険金より高い。これは団体信用生命保険なので、保険金の受取りが増えると翌年支払う保険料の額が高くなる。つまり、ミクロレベルでは債権回収手段となるが、マクロレベルでは持出しになるというような状況。

私には、グラミン銀行の説明がスッキリします。勿論、私の8月22日のエントリーで書いたグレーゾーン金利が日本に存在するので、生命保険も日本はややこしくなっていますが。

なお、生命保険が被保険者の承認を要するとしている商法第674条第1項と貸金業制度等に関する懇談会における消費者信用団体生命保険についての事務局の説明を続きを読むに入れておきます。それから、住友軽金属事件の最高裁判決文はここにあります。

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サラ金はノーベル賞に値する

バングラデシュのユヌスさんとユヌスさんが運営するグラミン銀行が2006年のノーベル平和賞を受賞することとなりました。バングラデシュで初のノーベル賞受賞です。

先ずは、関連の新聞記事を以下に並べます。(NY Times, Washington Post, LA Timesは登録をしていないと開かないかも知れません。)

日経 : ノーベル平和賞に経済学者ユヌス氏とグラミン銀行

朝日 : ノーベル平和賞、ムハマド・ユヌス氏に 貧困解消に尽力

産経 : ユヌス氏にノーベル平和賞 バングラデシュの経済学者

毎日 : <ノーベル平和賞>バングラデシュのグラミン銀行と総裁に

読売 : ノーベル平和賞、ユヌス氏とグラミン銀行…貧困撲滅で

東京 : ノーベル平和賞 救貧銀行と創設者に

バングラデシュThe New Nation(英語)Nation celebrates first Nobel Prize: Settle issues amicably, Yunus urges parties

インドThe Hindu(英語)Yunus says Bangladesh's new found unity must extend to political arena

パキスタンDawn(英語)Banker to the poor gets Peace Nobel

ロイター(英語)WITNESS-Bangladeshi Nobel Prize surprise confounds prediction

米Washington Post - Micro-Credit Pioneer Wins Peace Prize

米New York Times - Peace Prize to Pioneer of Loans to Poor No Bank Would Touch

米Los Angels Times - Peace Prize to Yunus, Grameen Bank for Micro Loans

「おめでとうございます。」と申し上げます。でも、ロイターの記事が書いているように、実は予想外だったんですね。例えば、この毎日新聞の記事は別の人を書いています。

バングラデシュは、その国土が14万平方キロメートルの広さで、日本の38%位、北海道の1.8倍位の面積ですが人口が1億4千万人程度です。南が海ですが、東の一部がミャンマーと国境を接している以外は、全てインドと国境を接しています。例えば、旧日本軍の作戦の西の端インパールはバングラデシュの東でミャンマーより西のインドです。

国土は、ミャンマーと接している地域以外はほとんどが平らで、ガンジス川やブラマプトラ川といった大河が海に流れ込む国です。だから、上流(主としてインド)に降った雨で洪水が発生する国です。

貧しい国であり、貧困生活を送っている人が多い国です。世銀の資料によれば、1日2ドル以下で生活している人が82.8%です。アジアの最貧国で、例えば同じ様な国を世界で探すとアフリカのナイジェリアです。ナイジェリアは人口1億4千万人で90.8%が1日2ドル以下の生活。私も、ダッカに行ったことがありますが、交差点毎に乞食集団がいて。それも小さな女の子が多いんです。道路の中央分離帯の茂みにお母さんか乞食集団の現場責任者かがいてといった感じです。

ユヌスさんが偉いと思うのは、お金を借りることが出来ない人の為のマイクロ・クレジットというお金を借りる仕組みを作ったことです。制度ではなく仕組みなのです。即ち、単に貧しい人にお金を恵むだけだったらお金が続く限りは可能です。昔から、それはあったわけで、一方、生活保護みたいな制度もバングラデシュ政府にそんな財政能力はないので期待できない。貧困から抜け出すには、資金が必要である。かけ声だけでは、貧困をなくすことは出来ない。

グラミン銀行のウェブはここにあります。貸付金等の残高は、本年8月末現在で319億タカ(552億円)で、8月中の貸付実行額は48億タカ(83億円)で、返済回収高は47億タカ(81億円)です。グラミン銀行の説明がウェブに色々ありますが、面白いんです。その中のIs Grameen Bank Different?で次のようなことを言っています。

「普通の銀行とは逆の銀行です。お金を借りることは人としての権利である。だから、借りれない人に貸します。借りた人の能力が返済原資です。グラミン銀行の所有者は金持ち(ほとんどは男)ではなく、貧しい女性です。」

総資産446億タカ(772億円)のうちの10%が資本であり、この資本の94%が借入人で、一方、負債についても203億タカ(351億円)が借入人による預金で、115億タカ(199億円)が借入人以外による預金です。そして、この借入人の97%が女性と言うわけです。サラ金生協みたいな感じです。貧困層の女性の地位は低い。貧困から抜け出すには貧困層の最下層の人を助けなくてはならないという発想であると同時にその中で貸付により最貧状態から抜け出すのを手助けしましょうと言うわけです。

普通に考えると机上の空論で、すぐに倒産しそうですが、貸倒率は1.15%と言っています。教育ローンや住宅ローンもあるのですが、乞食ローンと言うのもあり、乞食にも一定額を無利子貸し付けするのです。世銀、アジア開発銀行、その他の援助機関もCGAP(The Consultative Group to Assist the Poor -ウェブはここ)という組織を作りマイクロ・ファイナンスを途上国に広めようとしています。日本は、国際協力銀行が入っています。

2000年9月に国連で採択されたミレニアム開発目標というのがあるのですが、その8つの主要目標の1番目(極度の貧困と飢餓の撲滅)と3番目(ジェンダー平等推進と女性の地位向上)に取り組んでいるノーベル賞に値する仕事だと思います。

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2006年10月11日 (水)

北朝鮮の核実験

ブログの更新が、ある仕事をしていて、それを良いことに怠けてしまった。

ブログを休んでいた間の一番大きな出来事は、やはり昨日の北朝鮮の核実験であると考えるので、北朝鮮の核実験について、思うところ感じるところを書いてみます。

(1)予期された核実験

北朝鮮は突然核実験をしたのではなく、以前から核兵器保有を目指していたはずです。米国と北朝鮮の間で北朝鮮は核兵器開発を凍結する、その代わりに米国は原子力発電所(軽水炉)を提供するとの合意が成立したのは1994年です。例えば、この英語のWikipediaにあります。

しかし、2002年11月に「米国から重油供給がなされず、米国が1994年の合意事項に違反した。核兵器開発を開始する。」と北朝鮮は発表したのです。例えば、このCNNのニュース(英語)を見て下さい。2002年12月北朝鮮は国連の原子力監視員に出国を求めました。

核兵器を食料、燃料、安全その他色々な物と交換するための手段として保有しようとしていたと思います。

(2)怖い物なしの北朝鮮

TVで、街行く人がインタビューに答えて「強い経済制裁」と多くの人が言っておられました。でも、経済制裁をしても、北朝鮮にはほとんど影響がないと思うのです。これ以上、貧しくなりようがない位貧しいと想像するのです。中国とは少し貿易もあり、中国からの援助もあるかも知れません。でも、ほとんど鎖国に近い状態で、私はもしかしたら北朝鮮の外貨収入のトップは日本向けの麻薬だったりするのではと思うのです。麻薬なんて経済制裁の対象とならないのですから、何故なら既に禁制品で手を出すのは違法行為であり暴力団だけなのですから。

米国がマカオの銀行口座を北朝鮮に利用させないように凍結したことがありました。これも、取引金額からすればほんの少額で北朝鮮にとっては、蚊が鳴くようなものだったのではと思うのです。

(3)核実験後の動き

北朝鮮が核実験後どうなるか私もよく分からないのですが、おそらく北朝鮮を含む世界各国の動きを見て参考にするのが、イランだろうと思うのです。米ブッシュ大統領はイラク、イラン、北朝鮮の3ヶ国を悪の枢軸国と名指ししたのです。言ってみれば、米国の敵国です。イラクは米国に攻められた。イランと北朝鮮は残っています。イランが核兵器を保有しているかどうか私には判りませんが、可能性はあると思います。

イランは北朝鮮の今回の核実験の後の各国の動きを必ず、参考にすると思います。イランの強みは、原油も天然ガスも埋蔵量が世界第2位なのです。米国も武力でイランを操ることは出来ないはずです。イラクが、それを証明したと思います。

(4)最悪のシナリオ

日本人にとっては、北朝鮮が日本に核弾頭を搭載したミサイルで攻撃してくることでしょう。でも、その可能性は私は低いと思うのです。何故なら、それで北朝鮮が得る物はなく、逆に世界を敵にして自国を攻撃され占領されることになると思うからです。そこまでのことを出来る北朝鮮政府だとは私は思わないのです。

では、最悪のシナリオは何かというと核兵器をオサマ・ビン・ラディン達アルカイダ一派に売ることです。日本の暴力団に麻薬を売る国です。キム・ジョンイル(金正日)が、どこまで統制力を持っているのか私は判りません。北朝鮮のある一派が、核兵器をアルカイダに売却なんて、そんなことが生じたら、恐ろしいことが現実になると思うのです。

死を恐れず、神の為に死ぬことが至福であるなら、最早何でもありです。でも、アルカイダが核攻撃をする相手は、多分日本ではないだろうと思うのです。米国の象徴的な都市。もし、それが警備が厳しくて実現が難しそうであれば、隣国からねらえるイスラエルの可能性が高いのではと思うのです。

(5)核保有国

もっとも北朝鮮は核実験をしたと言っているが、未だ本当かどうかは確認されていない。しかし、核兵器保有国と考えて良いはずで、そうなると現在の核保有国は、

米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9ヶ国

21世紀の問題は、核保有国が増加することへの対処ではないかと思うのです。5ヶ国に絞った核兵器保有国が幻想となりつつあるときどうするのか、大きな課題と思います。

(6)キム・ジョンイル(金正日)

キム・ジョンイル(金正日)は、けしからんと思っている人は多いと思います。でも、キム・ジョンイルがいなくなったら、北朝鮮はもっと大変な国になるかも知れない。金日成の息子であるから、政府組織が成り立っているとしたら、キム・ジョンイルがいなくなると軍事国家になってしまう、あるいは統制が採れていない破綻国家になってしまう恐れはないのだろうとかと思ってしまう。

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2006年9月26日 (火)

健康なこころとからだ

本日(9月26日)の朝日新聞の天声人語は小泉首相の退任を書き出しとしてのコラムでした。

その中に、次の三輪和雄氏の『病める政治家たち』より引用した文章が入っていました。

脳神経外科医・三輪和雄著『病める政治家たち』(文芸春秋)に、こんなくだりがあった。「成人病(がん・心臓病・脳卒中)のサンプルを眺めているような気がする。強烈な欲望、攻撃性、多忙、上昇志向などが、いかに人間の身体を蝕(むしば)んでいくか、の典型をみることができる」

強烈な欲望、攻撃性、多忙、上昇志向というのは、政治家に限らず、ビジネスマン・ウーマンにも見受けられるのではと、思ったのです。ビジネスでの成功の秘訣として、押しの強さという点が言われることがあります。成功している人には、人よりも強い欲望や上昇志向を持った人が多いと思います。

必ずしも、悪いことではないでしょう。でも、強すぎると何かを攻撃せざるを得なくなる。自分の体や心を蝕むことになっていないか、常に考えておくことが必要だなと思ったのです。

三輪和雄氏の『病める政治家たち』を、私も読んでいないのですが、多分の次の本と思います。

病める政治家たち―病気と政治家と権力
Book
病める政治家たち―病気と政治家と権力
著者 三輪 和雄
販売元 文藝春秋
定価(税込) ¥ 2,039

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2006年9月25日 (月)

独リニア事故

(1)独リニア事故の原因

独リニア事故の、直接の原因は管制センターの人為ミス(共同通信記事)ということなのであろう。

(2)安全システムはどうなっていたのか?

しかし、人為ミスで済ますことが出来るとは思わない。例えば、仮にこれが在来線であったならば、メンテナンス・カーとかサービス・カーとかいう車両が線路内に入っていれば、信号機が作動して万一特急列車が後ろから来ても信号機に気が付いて停車したはずである。新幹線でも、基本的には同じで、信号機がなくても列車の運転台に前に何かがいることを知らせて自動減速が働いたのであろうと思う。

おそらく独リニア実験線でも安全システムは備わっていたのだろうと思う。人為ミスは、人間である以上は、ゼロには出来ない。人為ミスがあっても、それをカバーするシステムを備えることで安心して利用できるのである。

独リニア事故は、リニア鉄道で事故が起こった場合、多人数の死亡事故を伴う可能性があることを示唆したものと考える。

(3)リニア鉄道の実現は何時か?

独リニア事故は、一方で、この問いかけを投げたものと思う。

なお、リニア鉄道とは磁気浮上方式でリニア・モーターで走行し500km/h以上の速度で走行する鉄道を意味するものとします。(リニアという言葉自身はリニア・モーターを意味し、大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線や都営地下鉄大江戸線の様に通常の方式(鉄輪式)のリニア鉄道も存在することからです。なお、独リニア鉄道は、JRリニア鉄道が超伝導コイルを使用するのに対し、常温の通常方式の電磁石を使用する点が異なっていると理解しています。)

現在、リニア鉄道として実際に運行されているのは2004年から中国で上海空港と市内の間30kmを最高速度430km/h、所要時間8分で走っている列車のみです。

実験・実証鉄道線としては、この事故が起こったエムズランド実験線(31.5km)やJR山梨実験線の先行区間(18.4Km)があります。又、磁気浮上方式ではあるが、最高速度100km/hで走行していた愛知万博リニモ(8.9km)があります。

これら以外としては、1984年から1995年まで運行をしていた英国バーミンガム空港線(600m)があります。運転を止めた理由は、信頼性の問題とのことです。

ところで、リニア鉄道の実現が近いかというと、この事故の直前9月20日のBBC NewsShould UK trains look to magnets?などは英国におけるリニア鉄道の実現性について疑問を投げかけています。即ち、以下の問題点があるとの指摘です。

  1. 技術未成熟
  2. 他鉄道との相互乗り入れ不可能
  3. 巨額建設費

フランスにおいては、TGVが1981年に運行が開始された。TGV専用軌道もあるが、軌道幅(レールゲージ)がヨーロッパの標準軌道幅であることから、在来線にもそのまま乗り入れが可能である。例えば、英仏トンネルを通りロンドン・パリ間を3時間以内で走る。在来線の延長線上にある優位性が発揮できる。こういうことからTGVは、急速に普及したと考えます。

(4)日本のリニア

日本においてはリニア中央新幹線計画として東京都を起点に,甲府市,名古屋市,奈良市付近を経過地とし大阪市に至る延長約500kmのリニア鉄道の計画があります。60%がトンネルであり、総建設費は車両を含めて10兆円との試算があります。現在の新幹線1kmの建設費が70億円であるとすると、3倍の建設費となります。

運行経費は不明ですが、建設費の償却経費・資金コストを含めるとやはり現在の新幹線より高い運賃でないと採算が採れないのではと思います。リニア中央新幹線がほとんどトンネルであるとすると中途駅は余りないと思えます。仮に山の中に駅を作っても、そこからの交通手段を確保する必要があるはずです。又、既存の東海道新幹線は残るでしょうし、仮にリニア中央新幹線が完成して東京・大阪間を1時間で結んだとして1時間半ほど早くなるだけ。

私は、日本でのリニア鉄道の実現は不明というのが実状と思うのです。

(5)中国リニア鉄道

世界中で最も活気がある中国で最初の長距離リニア鉄道が敷設されるのではないかと思えるのです。例えば、上海・杭州間160kmの計画があります。中国には未だ新幹線がないのであり、これから建設するならリニア鉄道を採用することが考えられると思うのです。

ヨーロッパでのリニア鉄道実現が遠ざかることになれば、独のリニア鉄道の技術を中国が買ってしまう。それを中国が発展させて実用化する。そんな可能性もあるのではと思ったのです。

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2006年9月21日 (木)

プロジェクトX と 日本人

New Yort Timesを見ていると、品質低下に悩む日本人(Japanese Fret That Quality Is in Decline)というMartin Facklerの記事がありました。

記事はここです。(NYTimesに登録しなくても読めると思うのですが)

記事の冒頭の文章が”Perhaps only in Japan could a television series like “Project X” have become one of the most popular TV shows.”で始まっていました。

製造業でのチャレンジ・成功が人々の人気を集める日本という特有な国といったニュアンスで、私はこの表現を理解したのですが。1950年末頃からを日本の高度成長期と呼べばよいと思うのだが、製造業が日本のGDP・経済成長の牽引車であった。原料を輸入して、製品を国内需要と輸出に振り向けた。地形も海に面している島国で、大型船が入港できる港湾建設が可能で輸出入の運賃も安く加工貿易に有利である。今や、日本の自動車メーカーは嘗ての米国自動車産業ビッグ・スリーを脅かしている。

製造業は、今のある程度以上の年代の多くの人にとって、人生の誇りであり、生きてきた証のようなものであると思う。そんな自分たちの身近な人々こそヒーローである。身近なヒーローが活躍してくれるプロジェクトXは、最も共感を憶えるTV番組となっていると思う。

未だ、自動車やエレクトロニクスといった分野で日本が製造業の世界的なトップランナーとして活躍する。しかし、一方で、従来のような製造業がその全てといった時代から変化すると思う。現在、中国は嘗ての日本が経験した以上のスピードの高度成長期の中にいると考える。日本は高度成長を終えたのであり、製造業が無くなるわけではないが、どのような産業構造になっていくのだろうか。

多分紆余曲折があるのであろう。上記のような議論は、10年以上も前から皆思っているよとの反論があるだろう。プロジェクトXの人気がなくなる日を思い浮かべてみた。「プロジェクトXて何が面白いのだろう?」そう思えるようになった時が、製造業を中心とした時代が終わって次の新しい時代に入ったときなのだろうと思った。

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2006年9月16日 (土)

松本被告:死刑確定

オウム真理教の松本智津夫被告の裁判に関して、最高裁第3小法廷が、被告側の特別抗告を棄却する決定を出したことにより、松本智津夫の死刑が確定した。

あっけない終わり方だなと思いました。松本被告の裁判の経緯は以下のようになっています。

東京地裁では裁判が開かれ2004年2月27日に死刑判決が出された。しかし、東京高裁では弁護団が控訴趣意書を期限の2005年8月までに提出しなかった。その為、東京高裁は不提出を理由に裁判を打ち切り、2006年3月27日に控訴を棄却する決定をした。その翌日の3月28日に弁護団は控訴趣意書を提出し30日に異議を申し立てて控訴趣意書の受理を求めた。

東京高裁は5月29日に弁護団の異議を棄却した。その結果、弁護団は6月5日に、この異議を退けた5月29日の東京高裁決定を不服として、最高裁に特別抗告した。9月15日の最高裁決定とは、弁護団の特別抗告の棄却だったのです。即ち麻畑被告の犯行・犯罪内容についての審議は最高裁でも行われなかったし、高裁においては控訴した弁護側が控訴趣意書を提出しなかった。

裁判とは真理や真相を追求する場ではなく、争いに決着をつける場であると考えるべきであろうが、この結果も一連のオウム事件の結末の断面として予想されたことであったのだろうか。カルト教団による一連のテロ事件という整理で良いのだろうが、何故おきたのか何時の日か解明されることを期待する次第です。

参考に、最高裁の抗告棄却決定と読売新聞の記事。それに読売新聞のオウム関連過去記事を以下に掲げておきます。クリックで、開きます。

最高裁の抗告棄却決定

読売新聞の記

読売新聞のオウム関連過去記事

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2006年9月 5日 (火)

ライブドア事件初公判

ホリエモンの初公判が開かれました。毎日新聞が検察側冒頭陳述と弁護側冒頭陳述の要旨を載せていました。次のサイトです。

検察側冒頭陳述(要旨)と弁護側冒頭陳述(要旨)

他で報道されている内容とほぼ同じと感じますが、弁護側のホリエモンの関与が無いという主張は、私にはホリエモンは経営者なのに知らなかったで通るのかと思ってしまうのです。

ライブドア事件が村上ファンド事件と異なるのは、ライブドア事件が多くの一般投資家に損失を与えたことであると私は思っています。ホリエモンは、一般投資家に対して、「私は関与していない。責任はない。」で通用して良いのだろうかと思うのです。

ホリエモン裁判は11月までの3カ月間に計26回の公判を開いて結審する予定です。この裁判のために、多くの有能な弁護士を専属でホリエモンは雇っているはずです。弁護士費用だけで普通の人には払えないような天文学的金額かも知れません。ホリエモンもそう簡単に裁判で負けないような布陣をしているはずです。

どう展開するかは、これからです。でも、考えたらホリエモンが支払う弁護士費用も元はと言えば一般投資家がライブドア株に投資した金がめぐりめぐっていった結果かも知れません。

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2006年8月28日 (月)

テロ対策

本日の日経の記事です。

首相「言論封殺許されない」・加藤氏実家火災に初めて言及

私もそう思います。「暴力で言論を封ずるということは決して許されることではない。」

同記事によれば、首相は「自身の靖国神社参拝がナショナリズムをあおっていることはないと思う。」と述べたとのこと。そうであるかどうかに拘わらず、言論に対する暴力の行使は、テロであり、断固として許してはならない。靖国神社参拝について小泉首相が「先の大戦でなくなられた方々のご冥福をお祈りするため。」と述べていることに関連して、言論封殺が日本の大東亜戦争に進んでいった歴史と大いに関係があったことを思い起こしてしまう。

1932年(昭和7年)の五・一五事件では犬養毅首相が殺害された。1936年(昭和11年)の二・二六事件では、岡田啓介首相以下6人の要人が狙われ、高橋是清蔵相、斎藤実内大臣、渡辺錠太郎教育総監の3人が惨殺された。「動機が正しければ」と言った同情感、政治不信それにテロへの恐怖が民衆の間に広まっていったことが、大東亜戦争への一つの道になったと思うのである。

今は、当時と全く様子が違うので、単純に比較してどうの、こうのと言うのは誤りだと思う。しかし、教訓とすべきことはあるし、歴史から学ばなければならない。ビジネスでも、私は過去の失敗を活かすことが成功の秘訣であると思っている。

加藤紘一議員の事務所・実家焼失事件が8月15日であったことから、2週間近く立つ。日経の記事を読んでも「首相が公式に同事件に言及したのは初めて」とのことであり、こんなことでテロ対策は大丈夫なのだろうかと思ってしまう。勿論、事件の動機、背景や犯行内容といった詳細は未だ明らかになっていないが、私はこの事件はテロであろうと思っているし、国内のテロ対策の見直しを行っておいて損はないと思うのだが。

実は、今朝の朝日新聞の「風考計」に放火への沈黙 「テロとの戦い」はどうした という若宮啓文氏のコラムが掲載されていたのである。小泉首相の発言は、若宮啓文氏のコラムを読んだからではないよねと思う。

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2006年8月25日 (金)

冥王星(続報)

国際天文学連合(IAU)の総会で、5Aと6Aが採択されました。IAUのプレスリリースはここにあります。5Bと6Bを含む原案の全ては、私の昨日のエントリーの続きを読む "冥王星"の部分にあります。

なお、採択された5Aと6Aの日本語訳は国立天文台 アストロ・トピックス (233)を読まれるのがよいと思います。(原文を専門家の方が訳された文章であり、変な報道記事のようにバイアスがかかっていないので、私はこちらの方が好きです。dwarf planetを矮(わい)惑星なんて訳した報道もありますが、国立天文台の文章はdwarf planetSmall Solar System Bodiesは英語のままとなっており、未だ日本語訳は決まっていないようです。)

昨日は私も真相解明に努力をし、私なりの解説を行ったのですが、この冥王星に関することについては、国立天文台ホームページ等を参照されるのがよいと思います。

ちなみに、今回の国際天文学連合の総会決議において惑星の定義を行うことになったことについて、国立天文台は次のように説明をなさっています。

8月14日からチェコのプラハで開催されていた国際天文学連合(IAU)総会は、最終日の8月24日、太陽系の惑星について決定しました。これは海王星・冥王星より遠い小天体が最近多数発見されていることなどにより、これまでの太陽系像を改定する科学的必要が生じたもので、2年近い討議と特別委員会での検討、今回の総会での熱心な科学的討議により決定されたものです。

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2006年8月24日 (木)

冥王星

冥王星が惑星ではなくなると話題になっている。

冥王星とは、ギリシャ神話のプルート(ギリシャ語でハーデス)から付けられた名前で、冥界(死者の世界)の王である。9つの惑星の中では一番新しい発見であり、1930年に米アリゾナのローウェル観測所のトンボー氏が発見した。大きさは月より小さい直径2320 km。(ちなみに月の直径は3476 kmで、重量(重力など関係ないから本当は質量)は月の18%) 

ところで、カイパーベルト衛星(Kuiper Belt Objects - KBO)と言うのを、ご存じでしょうか?1992年にハワイ大学のJewitt氏とカリフォルニア大学バークレーのLuu氏がハワイ・マウナケア山の2.2m望遠鏡で最初のカイパーベルト衛星QB1を発見し、その後多くのカイパーベルト衛星が発見されているのです。なお、海王星より遠いところにある衛星をカイパーベルト衛星と呼び、木星と海王星の間にある衛星をケンタウルス衛星と呼んでいる。どれくらいの数が発見されているかというとをList Of Centaurs and Scattered-Disk Objectsを見て下さい。発見されていないのが大多数であるが全部で70,000個以上あるだろうと言うのだ。冥王星をカイパーベルト衛星と呼んでも、不自然ではなくなってしまったのです。

恒星(Star)とは太陽のように自ら光る星。惑星(Planet)とは恒星を回る星。衛星(Satellite)とは惑星を回る星。もし、このように整理すると、実はハレー彗星のような彗星(Comet)や小惑星(Meteor Astronomy)も良く知られている。何を惑星というのか、何故9つの天体(水金地火木土天海冥)を惑星と呼んだのか、訳もわからずに呼んでいたように思える。

以上が、国際天文学連合(IAU - INTERNATIONAL ASTRONOMICAL UNION)が本日惑星の定義について決議しようとしている背景である。決議案そのものは、下の続きを読むに入れておきました。(出所:IAUホームページ)

実は、私はこれを読んで、4つの決議案の全てが採択されても、矛盾を感じないのです。少なくとも5Aは採択されるのでしょう。従い、以下で間違いないと私は思っています。

(1)太陽系の惑星は8つである。(5Bが採択されれば、古典的惑星と呼ぶこととなる。)

(2)太陽を回る天体は、惑星(planet)、小惑星(dwarf planet)、太陽系小天体(Small Solar System Bodies)の3分類となる。(訳は私が勝手に行っているので、正式日本語名とは限りません。)

(3)冥王星は小惑星(dwarf planet)に含まれる。

何故か、新聞やTVの報道は私の上記の見解とは異なっているのが多そうである。報道が正しいか私の説明や見解が正しいか、皆さん是非チェックしてみて下さい。私に誤りがあった場合は、厳しいお叱りをコメントに書き込んで下さい。

ビジネスでは、報道をそのまま信じるのではなく、その情報源にまで遡って調査することが重要であり、勝ち抜くために必要なことであると考えております。

各新聞社の表題及び記事を以下に列挙しておきます。クリックすれば、それぞれの記事が開きます。降格なんて嫌な単語を使っている会社がありますね。

朝日:冥王星降格案が基本、惑星定義最終4案 24日採決

日経:「冥王星」降格に対抗案・国際天文学連合

毎日:太陽系惑星:冥王星除外で最終調整 IAU、今夜全体会合

産経:冥王星、格下げか 太陽系惑星、今度は8個に

読売:天文学連合会長、惑星数で2案提出へ…8個と11個

共同通信:惑星定義で2案採決へ 冥王星残す対抗案も提案

続きを読む "冥王星"

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2006年8月21日 (月)

ワニは魚だっけ?

ボツネタ(岡口基一裁判官)に「オーストラリアでは,ワニが「魚」になったようです。」というのがあった。その記事は、Excite Newsの世界びっくりニュース「ワニは魚である」、オーストラリア議会で決定 であった。

そこで、ロイターの元の記事を探し出して発見したのがこれである。

内容は、同じなのですが、どう思われましたか?

ところで、ロイターの元の記事はCrocodileと言っています。Alligatorは、そうするとどうなのかな?オーストラリアは全てCrocodileなのかな?と馬鹿なことを思いました。手元の辞書を引くと、Crocodileの方が大きいワニを指すようですね。

でも、ワニの輸出規制をするのに、何故ワニとして規制しないのか、わざわざ魚とするのか私には分かりませんでした。日本人にとっては、ワニは絶対に魚ではないだろうな~て思うのです。なぜなら、食べたいと思わないから。

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