2007年1月10日 (水)

ブログの変更

あけましておめでとうございます。

新年を機会に、ブログの名前とアドレスを変更することとしました。

これhttp://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/ある経営コンサルタントのブログという名前にしました。

理由は、「売れない」が現実になってしまい、ほとほと弱り切ってしまいました。人のコンサルタントどころか自分自身に対して経営コンサルタントをしなくてはならなくなってしまいました。ない知恵を絞った結果、「ある」とすれば、きっと「仕事がある」「楽しみがある」「夢がある」「未来がある」・・・・・・と色々なことが、これから期待できるのではと思ったからです。

今後ともよろしくお願いします。

なお、ブログはおいておきますが、コメントとトラックバックの新規受付は終了します。

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2006年12月28日 (木)

最新の人口推計によれば

約1週間前の20日に「国立社会保障・人口問題研究所が、社会保障審議会人口部会に、長期的な日本の人口動向を予測した「将来推計人口」を報告した。」というニュース(日経-日本の人口、50年で3割減・厚労省が将来推計)がありました。11月 4日のエントリー国勢調査から見る高齢化社会で、国勢調査の結果を踏まえて高齢化社会の様子を見たことから、今回の最新の人口推計を基にした分析を行ってみます。

グラフは、クリックすると小さなウィンドウが開いて読みやすいグラフが現れます。

1) 前回推計(2004年1月発表)との差は?

国立社会保障・人口問題研究所は、5年ごとに人口推計を行っているのですが、前回の推計と今回の推計を比べることにより、5年前に予想した高齢化は更に進んでいるのか、推計の差を見てみます。そこで、人口の様子を表した人口ピラミッドを書いて比べてみました。

Photo_13

65歳以上は余り今と変化がない様ですが、60歳以下は今後人口の減少が続く感じです。なお、前回推計のピラミッドは細い実線で、今回推計のピラミッドは太い実線です。前回より若い世代で推計人口が減少しており、高齢層では逆に推計人口が増加しています。次のグラフは、各年齢における前回推計に対して今回推計での増加或いは減少をパーセントで表しています。若い年齢では減少であり、老年層では増加です。

Photo_14

2) 日本の総人口

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計には、出生率と死亡率についてそれぞれ低位、中位、高位の3通りがあり、従い組み合わせ結果は全部で9通りあります。1)で表した人口ピラミッドは出生中位で死亡中位の場合の推計です。9通のうちで、将来人口が一番大きくなるのが出生高位で死亡低位の推計であり、一番小さくなるのが出生低位で死亡高位の推計です。そこで、この2つの推計と出生中位で死亡中位の推計をグラフに示したのが以下です。なお、前回の出生中位で死亡中位の推計人口も示しました。

Photo_16

日本の人口は、これから減少していきます。

3) 年齢別人口の推計

人口が減少していくが、年齢別に見るとどうなるかを次のグラフに示しました。(出生中位・死亡中位の推計を使用。)

Photo_18

上のグラフを見ると70歳の人口は、今後ともほぼ一定です。そして、80歳、90歳、100歳の人口はこれから増加するのです。一方、減少するのは、0歳、10歳、20歳、30歳で40歳は2014年にピークとなりますが、その後は減少です。

4) 将来の人口構成

次のグラフは、日本の人口を0-24歳、25-64歳と65歳以上の3区分に分けて1950年から2000年までの実績と2010年から2050年の推計を一つのグラフとしたものです。

Photo_26

次のグラフは、この3区分の人口を示しています。

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0-24歳の人口は1950年頃からずっと減少しています。25-64歳の人口も2000年をピークに減少です。65歳以上の人口は2050年に向けて増加していくのです。細線で表したのが、前回の2002年の推計であり、2002年の推計よりもこの傾向は強くなっていることが分かります。高齢化は進んでいます。この3区分をパーセントで表すと次のグラフのように更にはっきりします。

Photo_24

5) 団塊の世代

3)の年齢別人口の推計を見ると2009年の60歳、2019年の70歳が人口が他の年齢より一番多いことが分かります。この年齢こそ団塊の世代です。団塊の世代である現在58歳の将来の人口を表したのが以下のグラフです。

Photo_25

多くの人が長生きをするようになりました。男性でも半数の人が85歳まで生きます。女性の場合は、半数以上の人が90歳以上生きるのです。

実は私も団塊の世代の一人です。団塊の世代とは、小学生の頃に安保騒動があり、東京オリンピックを高校生、そして大学にはいると全共闘運動と万博です。働き初めて直ぐに、ニクソンショックがあり、その後、ベトナム戦争終結、沖縄返還・・・そんな世代です。3)の年齢別人口の推計グラフからして、自分たちの年齢が一番多いという世代は未だ20年以上続くと予想されます。一番人口の多い世代が隠居をしては何も始まらない。やはり、何かをしなくてはいけないのだと思うのです。出来れば、社会のため。そして、自分でも楽しいこと。これ重要だと思います。そうでなくては、長続きなんかしないと思いますから。何をすべきかお正月の間、ゆっくり考えてみたいと思います。

多分、年内はブログ更新をしないだろうと思います。このブログを読んで頂いている皆様が良い年を迎えられることをお祈り申し上げて今年の最後にしたいと思います。

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2006年12月27日 (水)

日興役員に対する株主代表訴訟

昨日(25日)の日興コーディアルからのプレスリリースは次の3つでした。

・代表執行役等の異動および特別調査委員会の設置について
・社長就任にあたって
・課徴金に係る審判について

日興コーディアルは、金融庁より指摘を受けた2005年3月期の連結決算に関わる利益等は偽りであったことを認め、証券市場の担い手として信頼回復に努めるという内容であります。しかし、日興疑惑の基であるベルシステム24の買収には連結決算の問題のみならず、他にも疑問点が多いと思います。ベルシステム24買収は2005年3月期であり、当時の日興コーデァルグループの代表取締役は本日退任した有村純一でした。株主代表訴訟を起こして取締役の責任(善管注意義務)を問う必要が、ないだろうかとして以下可能な範囲で検討します。

1) プレスリリースを見ると

日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)のベルシステム24に関するプレスリリースは下記です。

a) 2004年7月20日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資引受について
b) 2004年8月5日-株式会社ベルシステム24の株式取得および第三者割当増資払込について
c) 2004年8月6日-株式会社ベルシステム24の株式取得について
d) 2004年9月27日-日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社による株式会社ベルシステム24株式の公開買付けの開始について
e) 2004年10月28日-日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社による株式会社ベルシステム24株式の公開買付け結果について

ベルシステム24のプレスリリースで特に関係があると思われるものは下記です。

a) 2004年7月20日-BBコール株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
b) 2004年7月20日-第三者割当による新株式発行並びに親会社、主要株主および筆頭株主の異動に関するお知らせ
c) 2004年7月20日-株式会社ベルシステム24とソフトバンクBB株式会社との包括的業務提携について
d) 2004年7月20日-当社の第三者割当増資についての株式会社CSKによる新株発行差止仮処分の申立に関するお知らせ
e) 2004年7月30日-仮処分申請却下の決定について
f) 2004年8月3日-株式会社CSKによる仮処分の申立てに関するお知らせ
g) 2004年8月4日-抗告棄却の決定について
h) 2004年8月5日-親会社、主要株主および筆頭株主の異動に関するお知らせ
i) 2004年8月5日-仮処分申立て取り下げについて
j) 2004年8月5日-第三者割当増資の払込み完了のお知らせ
k) 2004年8月11日-取締役及び監査役の就退任に関するお知らせ
l) 2004年8月30日-「第23期決算公告」の掲載(注)NPICが株主になる前の2006年5月31日に終了する営業年度の計算書類がここにあります。
m) 2004年9月27日-平成17 年5 月期(第24 期)配当予想の修正に関するお知らせ(注)中間配当をゼロとし、産業活力再生特別措置法に基づく金銭交付による株式交換を実施する予定を述べている。
n) 2004年9 月27 日-公開買付けの賛同に関するお知らせ
o) 2004年10月28日-NPIホールディングス株式会社による当社株式の公開買付けの結果に関するお知らせ
p) 2004年11月26日-株式交換に関するお知らせ
q) 2004年12月15日-株式交換に伴う株券提出のお願い

NPI/NPIHが第三者公募で過半数株主になる前には、CSKが筆頭株主でした。CSKのプレスリリースは次の通りで、2004年7月20日発表の第三者公募に反対していました。

a) 2004年7月20日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資による新株発行差止仮処分の申立てに関するお知らせ
b) 2004年7月30日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資による新株発行差止仮処分の決定に対する当社の方針について
c) 2004年8月2日-株式会社ベルシステム24に対する法的手続きについて
d) 2004年8月4日-株式会社ベルシステム24の第三者割当増資による新株発行差止仮処分申請の却下に対する即時抗告について
e) 2004年8月5日-株式会社ベルシステム24に対する申立て取り下げについて
f) 2004年8月5日-株式会社ベルシステム24の株式譲渡に関するお知らせ(注)1,580,000株@\27,000
g) 2004年8月6日-株式会社ベルシステム24の株式譲渡に関するお知らせ(注)464,000株@\27,000
h) 2004年8月18日-新コールセンター会社設立のお知らせ

最後にBBコールを売却したソフトバンクのプレスリリースを見ると以下でした。

2004年7月20日-ソフトバンクBBとベルシステム24との包括的業務提携について

3) プレスリリースから読みとる株式第三者発行

4社とも同じ7月20日に重大発表を行っています。

これは、ソフトバンクのプレスリリースから逆にたどると、よく解るのですが、BBコール株式(約500億円)をベルシステム24に売却し、貸付債権(約190億円)をベルシステム24に譲渡する。譲渡対価は合計約690億円。更に、ベルシステム24は、テレマーケティングシステム構築投資及び新サービス提供におけるシステム投資をBBコールにおいて行うことが売却の条件であり、この投資額は約590億円である。総合計では、1280億円となります。

ベルシステム24が1280億円の巨額資金を調達する方法が新株の第三者割り当てによるNPI/NPIHからの調達であったのです。そこで、CSKはプレスリリースa)の通り、新株発行差し止め仮処分の申し立てを行いました。当時は商法ですが、特に有利な発行価額の場合は、株主総会における2/3多数決が必要であり、そうではなく授権資本の範囲であれば取締役会で決定が可能でした。東京地裁の判断はCSKの仮処分申請の却下でした。この東京地裁の判断についてのベルシステム24とCSKのプレスリリースは、それぞれe)とb)です。

私は、東京地裁の判断は誤りではと思うのです。その理由は、

i) 発行価額の20,050円は年7月16日の東京証券取引所における株式終値21,780円の7.94%ディスカウントであり、市場価額よりは有利である。「特に」に該当するかどうかであるが。既存株主にチャンスさえ与えず、株式の希釈化を生じ、市場価額より約8%有利というのは、「特に」に該当すると思える。

ii) 発行済株式数 4,898,700株に対して第三者割り当てによる増加株式数 5,200,000株であり、この取締役会決議はベルシステム24のb)であるが、NPIHを引受人として決議されており、取締役会が50%超の支配株主を決定するという逆転の決議が行われている。私には、このような取締役会決議を認めることは株主軽視も甚だしいと思える。

iii) ベルシステム24の事業年度は5月末であり、定時株主総会は3ヶ月以内の8月末頃である。NPIHが株主となる 5,200,000株は、8月に開催する定時株主総会で議決を有する。この部分についてCSKのプレスリリースc)は、「ベルシステムが行った基準日公告は、定款に定める基準日後に新たに新株主となった者のうちNPIだけに議決権行使を認めようというものであり、商法上、違法である。」と述べている。

株式会社は株主総会が最高意志決定機関であり、多数決による運営となる。しかし、東京地裁の判断は、株式会社の私物化を容認することになる。貯蓄と投資が適正に運営されてこそ、安心して暮らせる世界になるのだが、残念ながらこれでは信頼できない投資の世界を裁判所が作り出しているように思える。

4) 第三者発行以後の動き

5,200,000株の増資に対する104,260百万円の払込は8月5日に実施され、NPIHは8月6日に株主となった。CSKプレスリリースe)のように、期限も短い中CSKはギブアップせざるを得なくなったのだと思います。但し、申し立て取り下げは、CSKプレスリリースf)とg)のように、一株27,000円でCSK及びCSK子会社が保有する2,044,000株をNPIHが購入することでした。総額55,188百万円。この結果、CSKは、プレスリリースh)のとおり、電話のコールセンター業務をベルシステム24ではなく、新規に会社を設立して新会社に委託することにしました。

その後、NPIプレスリリースd)のとおり、NPIは9月27日にベルシステム24のTOBを発表し、10月27日にTOBにより2,633,027株を取得しました。NPIプレスリリースe)によれば、総額73,850百万円であった。更に、TOBに応じなかった、2%強の株主に対しては、ベルシステム24のプレスリリースp)のとおり一株28,000円で産業活力再生特別措置法に基づく金銭交付による株式交換を実施し、強制的に株主とNPIHの金銭と株式の交換を実現しました。

4) 果たしてこのディールは何であったか

NPIHが支出した金銭は合計2400億円です。この2400億円の支出は何時決定したのか。多分、7月20日に、一連の動きを開始したときには、決定していたと見るべきと思います。日興/NPIは、CSKの反対に逢うことを予測していたと思います。その結果として、市場価額より高く株式をCSKから購入することも、その結果として2/3を超える議決権を取得することも。

全ては、日興/NPIの読み通りであったのだろうと思うのですが、最後に全株を取得したのは、何故か?通常であれば、少数株主から横槍を入れられることなく、思い通りに会社を運営するためです。そして、NPIHの会社内容がよく分かっていませんが、ベルシステム24のみに対する投資であれば、短期間に誰かにベルシステム24を転売して利益を得たかったのかもしれません。そうであるとするなら、NPIHの企業活動は一時的であるとして連結子会社から除外したのは意味があるかも知れない。但し、利益計上はトンデモナイと思います。

しかし、それで納得が行くかというと、トンデモナイです。12月20日のエントリー日興疑惑の通り、ベルシステム24から自ら払い込んだ資本金と資本剰余金以上の金銭をNPIHは戻したわけで、100%子会社だからこんなこともできたはずです。でも、金銭を取り戻したのは、ソフトバンクのプレスリリースにある「新サービス提供における関連システム構築投資額:約590億円」を実行しなかったからです。或いは、初めから実行する気がなかったのか。

気にかかるのは、CSKプレスリリースb)にある「1,000億円を超える増資を行い、ベルシステムの資金を含めて約1,280億円をソフトバンクBB株式会社に流出させるという、ベルシステムに何のプラスもないスキーム」と述べている点です。590億円の投資は実行されなかったことから、最終的にはソフトバンクに資金が回ったのは690億円でした。果たして、690億円の価値がある会社であったのかと言うことですが、私はないと思います。何故なら、電話のコールセンター業務であれば、CSKがプレスリリースh)のとおり、簡単に設立可能と思えるからです。青色発光ダイオードの技術のような、人が簡単にまねできないものとは思えないからです。

2006年4月にソフトバンクは1.75兆円のボーだフォンの買収を行いました。1.75兆円は、LBOという手法を使い、1.28兆円は借入金ですが、ソフトバンクにとっては、悪い子会社は売却し、事業拡大の資金を作る方向であったことは間違いないはずです。それからすると、日興はトンデモナイ高値を掴んでしまったのかも知れません。しかし、そうだとして被害者は日興コーディアルの株主です。株主は、今回の粉飾により損害を受けたはずです。代表訴訟は十分考えられると思うのです。

5) 蛇足

前回は、会計士、監査法人の問題点を述べたのですが、今回は弁護士、弁護士事務所の問題点を述べておきます。3)の東京地裁の判断は、弁護士が書く書類やアピールと密接に関係があるはずです。即ち、CSK側の弁護士事務所も相当有名な事務所であったようですが、正義を通せず負けています。私は、関連書類を読んではいませんが、無能弁護士だったのでしょうか?逆に、ベルシステム24側は誰であったのか知らないのですが、所詮このディールは7月20日に決まったことではなく、相当前から関係者で詰めていたはずで、弁護士も加わっていたはずです。NPIも相談に加わっていたと言うか、むしろ主役であったかも知れません。そうなると、NPIの監査役に森・濱田松本法律事務所という自ら「弁護士約220名とスタッフ約300名を擁する日本有数の大規模総合法律事務所」と言っている事務所の弁護士です。この事務所が関わっているかも知れません。いずれにせよ、弁護士とは依頼主の為に全力を尽くす役割です。戦う相手が正しくとも、引き受けたからには、依頼主のために働く人達です。会計士による監査は、お金の交渉をする相手である経営者のために働くのではなく、株主のために働かなければならず、苦労が多いと言えます。

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2006年12月22日 (金)

大淀病院の産科は来年3月末で閉鎖

10月20日-奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず
10月20日-大淀病院事件の続き
10月21日-大淀病院事件 (続)
10月23日-続続々 大淀病院事件
10月27日-真実の報道-大淀病院事

と本ブログで5回取り上げてきました。そして、本日は来年3月末に閉鎖することになったと報道されました。

朝日(関西)-奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える
読売-妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診
NHK(関西)-妊婦死亡 町立病院産科休診へ

私もそうですが、このブログを読んで頂いている多くの方は、このようなことになることを予感しておられたと思います。

「学校でのいじめ」が最近多く報道され、話題になっています。子供の世界は大人の世界を写している面があると思います。子供の世界に起きていることをよく見て、大人は反省をし、良い社会を未来を作っていかなければならない。大淀病院事件とは、「学校でのいじめ」に通じる事件ではなかったかと思うのです。大淀病院と産科医師とを攻撃して得られるものは何か?本当に悪いのは何か?教訓とすべきは何か?結論を必ずしも急ぐ必要はないと思うのです。重要なことは誤った判断をしないことです。

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2006年12月20日 (水)

日興疑惑

本日もプレスリリースから開始します。

日興コーディアルのプレスリリース「当社株式の管理ポスト割り当てについて」

そこで、再度日興疑惑について、検証をすることとします。

1) ベルシステム24増資関連疑惑
1-1) 1042億円の第三者割り当て増資

一昨日のエントリー日興コーディアルグループのプレスリリースの2)でNPIBがベルシステム24の増資に応じて2004年8月に1042.6億円を払い込んだことを書きました。

この増資資金によりソフトバンクBBが保有するBBコール株式をベルシステム24は取得し完全子会社としました。ベルシステム24の2004年11月に終了する中間期の中間有価証券報告書によれば、499億円で譲り受けたとの記載があり、又貸付債権188億円を譲り受けたとあります。

ベルシステム24の個別単体財務諸表の2004年5月から2006年2月までの期間で大きな動きがあった科目を表にしてみました。(表が切れると思います。見る場合はRSSで見て下さい。お手数をかけます。)

          単位:千円 2004年5月末 2004年11月末 2005年2月末 2006年2月末
現金及び預金 18,771,122 25,864,783 19,266,886 8,401,353
短期貸付金 1,829,900 54,455,500 72,367,300 13,210
子会社株式 0 49,957,550 49,957,550 50,064,652
小計 20,601,022 130,277,833 141,591,736 58,479,215
短期及び長期借入金 0 0 0 50,500,000
上記項目のキャッシュフロー -109,676,811 -11,313,903 133,612,521

2004年11月末の貸借対照表では子会社株式の計上はなく全て投資有価証券となっていましたが、比較のため、2005年2月末の子会社株式と同額としました。貸付債権188億円はBBコールに対する貸付金と思うが、その場合でもBBコールの株式取得と貸付債権の合計は687億円であり、355億円はBBコールの取得以外に使われたと思われる。上記表の資産の勘定科目でも現金預金の増加が71億円で短期貸付金の増加が527億円である。

1-2) ベルシステム24の資本の払い戻し

次の表は、ベルシステム24の個別単体財務諸表の資本金と資本剰余金の動きです。

         単位:千円 2004年5月期 2004年11月期 2005年2月期 2006年2月期
資本金 10,045,000 62,175,000 62,175,000 9,000,000
資本準備金 2,511,250 54,641,250 54,641,250 2,279,000
資本金及び資本準備金減少差益 9,385,364 9,385,364 9,385,364 56,407,695
自己株式処分差益 4,391 368,795 368,795 0

2004年11月期は資本金と資本準備金がそれぞれ521.3億円増加し、合計で1042.6億円増加しています。これは、NPIHの払込と一致します。問題は2006年2月期です。資本金が532億円と資本準備金が523億円減少しています。ところが期末に残っている資本金及び資本準備金減少差益は564億円ですから、585億円は資本剰余金の配当としてNPIHに払い戻したことになります。更に、この期の損益計算書を見ると731億円の自己株式償却額を計上しています。即ち、合計すると1316億円をNPIHに払い戻しています。

1.1の表を再度見ると短期貸付金723億円が2006年2月期には消滅し借入金が505億円増加していることから、預金残高の減少と合わせ1300億円程度のキャッシュが株主であるNPIHに流れたと見てよいはずです。

借入金が505億円は、NPIH若しくは日興グループからの借入金である可能性がありますが、1042.6億円の増資に応じて払い込んだ後1年も経過しない2005年7月に1316億円のキャッシュを戻した。通常であれば、考えられない取引です。(このブログISOLOGUEによれば2006年1月の日経で2005年7月に資本の払い戻しが実行されたと報じられていたとのこと。)

では、利益を得たのかと言うと、前回CSKから購入代金を317億円としましたが、ISOLOGUEによれば1株27,000円だったことのことで、総額2370億円の平均単価23,668円と計算されておられる。85.52%の株式が1316億円で払い戻されたのであるから、712億円の損失となる。

2 EB債評価益の訂正に関する疑惑

この今回の有価証券報告書の訂正はEB債評価益を盛り込んだのが、誤りであったから訂正するとしている。一般的なEB債は、発行側にオプションが存在するが、多分このEB債は保有側に株式と交換する権利が存在する転換社債と似たような社債ではないかと想像する。即ち、オプション実行により社債発行者の株式に転換されるのでなく第三者(この場合は、ベルシステム24)の株式と交換される。半期有価証券報告書から取り出したベルシステム24の株価です。

2004年 6月 7月 8月 9月 10月 11月
最高(円) 24,910 23,170 26,900 28,950 28,000 27,930
最低(円) 22,540 19,500 21,700 25,050 26,770 26,030

日興が訂正を行っているのは、2004年3月期と2005年3月期が経常利益と純資産額の減少であり、2006年3月期が利益増と純資産減です。この結果からすると2004年3月期にては156億円資産を多く評価し、2005年3月期では188億円多く評価していたという感じです。5,200,000株の1042.6億円に直接リンクしていたのであれば、低く見積もっても9月末で250億円くらいの評価益のはずで、完全に1対1の結びつきではなかったと思います。

不思議なのは、ベルシステム24は2005年1月16日に上場廃止となっています。しかし、2005年3月期に至っても日興はEB債評価益を計上していた。だからこそ、今回訂正を行っている。これに関しては、何がどうなっているのか理解に苦し見ます。日経-会計ルール見直しに言及、日興問題で東証社長と言うのがありますが、SPCに関する会計ルールなんてこと以前の問題が今回の疑惑だと私は感じます。

3. 何故という疑惑

何故こんなことをしたのか、だんだん解らなくなってきます。例えば、700億円近い金額で買い付けたBBコールの資本金はベルシステム24のウェブからすると1億円です。資本金で会社の規模や資産価値が計れるものではないし、逆に事業税の外形標準課税を避けたり法人税の中小企業優遇を受けるために資本金を1億円で押さえている会社もなかには存在します。BBコールを子会社にした直後の、2004年11月末のベルシステム24の連結貸借対照表には390億円の連結調整勘定が計上されている。貸付金は(あったとしても借入金と連結相殺となるから)関係なく株式取得499億円のみで計算することとなり、109億円が時価評価を行った結果のBBコールの純資産額である。時価純資産の4.84倍の価格で日興はソフトバンクから購入したこととなる。

しかし、2004年8月に1042.6億円を払い込んで、2005年7月に1316億円払い戻すという取引は貸付金の場合は存在しても資本金では普通は考えられない。考え得るとすれば日興は2002年3月期、2003年3月期と赤字決算であった。2004年3月期は利益を計上したが、無理矢理でも良いからと架空利益の計上に走ったのだろうか?

解らないのは、中央監査法人がどこまで知っていたのだろうかである。NPIHは連結対象外であったが、しかしNPIは連結子会社であった。連結子会社には監査の手が及ぶ。NPIに監査が及べば、変なEB債評価益に気が付くはずである。又、こんな2000億円を超える投資を見過ごすはずがないと思う。会計ルールの問題ではなく、監査法人や公認会計士の良心の問題ではないかとさえ思えてくるのだが。

(注)本ブログで引用・参照した財務諸表はEDINETの有価証券報告書とベルシステム24のウェブにおいて公告がなされていた財務諸表です。

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2006年12月18日 (月)

日興コーディアルとミサワホーム

日興コーデァルについては、昨日のエントリーで触れましたこのプレスリリース。ミサワホームも、同じ様なプレスリリースを昨日出していました。

両社とも題が全く同じ「本日の一部報道について」であります。少し違うのは、ミサワホームが月曜日に正式発表すると何となく認める予告をしていました。

そして本日両社とも報道の通りと認めたようなものと思います。

日興プレスリリース-内部管理体制に関する今後の対応等について
ミサワホームプレスリリース-業績に影響を与える事象の発生について

最も、日興コーディアルは、昨日のエントリーに書いたように単純ではなく、不可解な部分が多いのであり、私にとって疑問は解けていません。まだ続きがあるかも知れませんね。

蛇足ですが、両社とも会計監査人は中央青山監査法人でした。中央青山(現みすず監査法人)のことをどう考えるべきか?だらしない、能力不足、或いは中央青山がいたから両社の不正も明るみに出たのだと考えるべきか?

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自民党の来年の税制改正案

自民党が12月14日付で、来年の税制改正案である平成19年度税制改正大綱を発表しました。ここにあります。

このブログでも11月27日のエントリー「法人税の引き下げ」で経団連の税制に対する提言、12月 3日のエントリー「来年の税制改正」で政府税制調査会の答申について触れたことから、この自民党の税制改正大綱についても書いてみます。

1) 有形固定資産の減価償却

正直言ってスッキリした案と思いました。即ち、減価償却の計算に使用する償却率を改正するのは、2007年4月以降取得した固定資産を対象とし、それ以前に取得した固定資産は従来通りの償却率であるが、従来より償却期間を5年間延長して1円までの償却を認める。面白いと思ったのは、定率法の減価償却率を定額法の償却率の2.5倍にすることです。10年の場合は定額法なら0.1、定率法なら0.25と言うわけです。従来は、定額法は0.9を掛けることから0.09で、定率法は0.206であったことから、最初の1年間について定額法では固定資産取得価額の1%、定率法では4.4%減価償却費が多くなります。余談かも知れませんが、定率法の場合は、残存価額を0円にする償却率は数学的には存在しません。償却率が1でない限りは永遠に掛け算が続きます。定率法として定額法の償却率の250%を使用するのは、米国等で採用されていると思いました。国によっては、税務上の減価償却として定率法を認めていない場合もあると思います。

一種の固定資産の投資促進で、色々掲げた中で、これが経済活性化・国際競争力の強化に一番有効と思われるのですが。

なお、市町村民税の税収の40%以上を占める固定資産税の評価の基礎となる評価方法は現行を維持するとしており、当然のことと思います。但し、固定資産税の評価方法として現行の方法が合理的であるかについては、例えば日本公認会計士協会の租税調査会研究報告第16号「固定資産税のあり方について」の公表にも批判があり、今後の課題として検討をすべきと考えます。

2) 特定同族会社の留保金課税と特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入

特定同族会社の留保金課税については、本年3月の改正で課税対象が狭くなっており、更に資本金1億円以下が対象外と狭まる。でも、ほとんどの中小企業は、留保金課税を払うほど利益がなく、どう評価すべきか解りません。特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入については、本年3月の改正で突然導入され、こちらは逆に多くの中小企業が利益を出すと対象となる、法人税と所得税をゴッチャにしたような嫌な税制です。基準所得金額を1600万円にするというのは、妥当ではないかと思います。なお、基準所得金額とは、「オーナー社長の給与と会社の税前利益の合計の過去3年平均です。法人所得が基準所得金額を超えた場合は、所得税の給与所得控除相当額の損金算入を認めない制度です。資本金1円で会社が設立できるから、こんな制度を新設したとの説明でしたが。最も、この800万円を1600万円に変更するのは、法律ではなく政令ですから、これで決定と考えればよいのでしょうか?

3) 移転価格税制についての租税条約の相手国との相互協議に係る納税猶予制度 

日経10月25日-移転価格税制、追徴最高に・申告漏れ総額2836億円のように移転価格税制による追徴課税が増加しています。今後もっと増加すると思います。何故なら、途上国への生産シフトやグローバリゼーションが更に増大すると思うからです。生産シフトは、1国で完成品まで製造するよりは、A国で第1加工をB国で第2加工をC国でアセンブルをと言った具合に、仕掛品や半完成品が国をまたいで親子関係の会社を行ったり来たりしたら、それぞれの適正価格はいくらか、訳がわからないです。そして、価格の付け方により、日本、A国、B国、C国それぞれの源泉利益は違ってくるので、各国の法人税の取り分は微妙に異なってきますから。

租税条約に基づく相互協議は必要である。むしろ積極的に取り組むべきと思います。その際、納税猶予は与えればよいと思います。なお、納税猶予には国税通則法50条に定められた担保を納税者は提供しなければならない。当然のことと思います。

4) 上場株式に関する所得税

1年延長は証券業界に配慮したことと参議院選に対する対策でしょうか?そのうちに株式についても総合課税制度に移行して欲しいと思うのですが。そうすれば、高齢者で所得の低い人は確定申告で源泉税の還付を受けられる。

5) 寄付金税制(所得税)

寄付金控除の限度額を現行の総所得金額等の30%から40%に引き上げるとしています。総所得金額とは、給与所得控除等は差し引くが社会保険料控除のような所得控除は差し引く前の金額です。総所得金額の30%や40%も寄付を出来る人はある程度の高額所得者になると思うのです。でも、社会のためになる寄付であれば、支出した寄付金額を所得金額から控除するのは当然と思うのです。

寄付金税制で重要なのは、何が社会のためになる寄付金として認定しうるのかという点のはずです。NPO法人にも、もっと拡大すべきと思いますが、一方でNPO法人を隠れ蓑とした制度の悪用を防ぐ手段も確立すべきです。正当な機関(日本では、未だ育っていないので当面は、市町村の地方公務員と市民団体等で構成する委員会の様なものでしょうか?)が認める法人、団体への資金使途を特定した寄付となるのでしょうか?会計報告がなされ会計監査がなされることは、絶対条件にすべきと思います。会計報告についての罰則規定も必要と思います。

税が健全な社会活動をサポートする形になって欲しいと思います。

6) 無駄口

無駄口を一つ。日刊スポーツ12月15日-松坂6年70億円、新人史上最高額というニュースについては誰でも知っています。70億円というのは、6年間で70億円だと思うのですが、契約一時金はこのうちいくらなのでしょうか?何故、このようなことを言うかというと、契約一時金は松坂が日本で所得税の納付義務がある日本居住者として受領する対価のはずです。だから、日本で所得税と住民税を払ってくれる。でも、住民票を米国に移して、米国でプレーすれば、日本で松坂は所得税も住民税も払いません。税法だから、それでよいし、松井も皆そうですから。でも、契約時金が多ければ、日本の税金に少しだけ貢献してくれるのになと、つい思ってしまったのです。

でも米国が全額が米国に帰属するのであり日本には税が発生しないと言うかも知れませんね。3)の移転価格税制と似たようなことになるのでしょうか?

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日興コーディアルグループのプレスリリース

証券大手の日興コーディアルグループが2005年3月期決算について証券取引等監視委員会が調べを進めているとの報道がありました。

日経-日興が不適切な利益計上・監視委調査、課徴金も視野
朝日-日興、利益水増しの疑い 証券監視委、課徴金5億円検討

これに対する日興コーディアルグループのプレスリリースはここにありますが、「本日、当社が不適切な利益を計上との一部報道がありましたが、現時点で申し上げられることは何もございません。」との、これプレスリリースなのと驚く文書でありました。でも、少し調べると余りにも不可解な事件なので以下、少し書いてみます。

1) 日興疑惑

月刊現代2006年2月号に「スクープ! 機密資料が物語る有村社長の『罪』、そして新たな『飛ばし』疑惑 日興証券『封印されたスキャンダル』呪縛はとけていなかった!」が載った。書き手は、元日経新聞記者の町田徹氏。発売されたのが、2005年12月28日で、この月刊現代2006年2月号の目次はここにあります。そして、翌日の12月29日に日経新聞が日興コーディアルグループの会計監査人である中央青山監査法人がNPIホールディングス(NPIH)を連結対象子会社とするように要請していたという内容を報じた。これらのことは、このブログ2006年1月2日に書かれていました。

そして、2006年2月3日の参議院財政金融委員会で民主党峰崎議員が日興コーディアルの粉飾疑惑として取り上げています。財政金融委員会議事録のこの部分は、続きを読むに入れておきます。

2) 疑惑の内容

日興コーディアルグループ(NPIHにしろ親会社である日興コーディアルグループのコントロール下であり、NPIHの判断で投資を行うことはあり得ない。以下”日興”とします。)は、2004年8月にベルシステム24の株式を取得し一気に3分の2以上の67.71%を保有する株主になっています。ここにベルシステム24のプレスリリースがあります。

ベルシステム24のホームページはここにありますが、電話をかけるコールセンターの会社です。日興が2004年8月にベルシステム24の株式を取得した方法は、5,200,000株を第三者割り当てにより1042.6億円で、そして1,580,000株をCSKから購入した。CSKから購入代金は不明であるが株式単価は同じ若しくはそれ以上と見てよいはずであるから317億円以上。従い、合計1,359億円でベルシステム24の株主となった。更にNPIHは、ベルシステム24の株式の公開買い付けを2004年10月に行い、全株を取得。公開買い付けの株式単価は28,000円であったことから公開買い付けにおいて支払った対価は776億円と推定される。以上で日興のベルシステム24に対する投資総額は2,135億円となる。

2,135億円の巨額の投資を日興は何故したのであろうか?日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)によるプレスリリースはここにありますが、このプレスリリースにてNPIは、事業内容を上場企業・未公開企業や証券化関連商品等を対象とした中長期的な投資事業と説明しており、投資目的でベルシステム24の全株式を取得したとのことである。投資事業とは投資の結果としての配当収入と転売益になるが、ベルシステム24の2004年5月期の年間連結売上高は672億円で純益47億円であった。純資産額は431億円で1株当たり8,950円である。2,135億円の投資のうちで、1042.6億円が増資に応じて払い込んだ資金で、残1092.4億円が発行済み株式の購入に充てられたこととなる。そこで、資産・負債価額が帳簿通りであったなら、1042.6億円から431億円を差し引いた661億円が連結貸借対照表に営業権として計上されなければらないことなる。

売上高は672億円、純益47億円、純資産額431億円の会社に対して2,135億円の巨額投資をおこなうことは、不可解と思ってしまう。そして、公開買い付けで買い付けできなかった株式については、産業活力再生特別措置法を使って現金による株式交換を行っている。何故こんなことを日興はしたのであろうか?なお、2006年2月期のベルシステム24の貸借対照表では622億円あると思った資本金がなんと90億円になっている。532億円はどこへ消えたのか、資本剰余金は564億円残っているが、損益計算書を見ると自己株式償却額として731億円が計上させれている。・・・・と言うことは、ベルシステム24は株主である日興から731億円の自己株式を購入した。即ち払い戻しを行ったこととなる。プレスリリースでは、資本減少公告が見あたらなかったが、多分誰も気が付かないうちに官報で公告を行ったのであろう。

不可解さは益々増大するばかりである。株式の3分の2多数を得られれば何でも出来る。3分の2の取得となるように第三者増資を仕組み、払い込んだ後は資本、資本剰余金、利益剰余金を好きなように組み替えし(この時点では100%子会社であったから、何でも可能)そして不必要であった資金は回収する。でも、こんなことがばれればやばいから連結対象外とした。そんな憶測も出来る気がします。

参考までに2006年9月29日のJ Castニュース です。

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2006年12月 3日 (日)

来年の税制改正

政府税制調査会は平成19年度税制改正に関する答申を昨日の12月1日に安倍内閣総理大臣へ提出しました。答申そのものはここ(PDF Format)にあります。ニュースは以下です。

日経-証券税制、軽減税率廃止を明記・政府税調答申
読売-企業の税負担軽減、07年度税制改正を答申…政府税調
NHK-政府税調 企業税負担軽減答申(NHKニュースはリンク切れが早いので続きに読むに入れておきます。)

読売新聞とNHKは企業負担軽減と報道しています。いずれにせよ、来年或いは再来年の税に、更には今後の税にも関係してくるので、少し政府税制調査会の答申を見てみます。

1) 減価償却制度の変更

答申の「1.経済活性化に向けた速やかな対応」のなかで、「(1)減価償却制度」については「残存価額(10%)を廃止するとともに、償却率についても国際的に遜色のない水準に設定すべきである。」という文章で強い表現となっています。一方、他の(2)同族会社の留保金課税、(3)エンジェル税制、(4)事業承継関連税制、(5)国際課税、(6)外形標準課税及び(7)政策税制の集中・重点化については、「検討すべきである。検討する必要がある。適切な対応を講ずべきである。見直しが課題となる。引き続き整理合理化を進めることが重要である。」 という様な柔軟性の高い表現であり、経済活性化に向けた速やかな対応という項目なかでは、減価償却制度が来年の税制改正に盛り込まれると予想します。

償却可能限度額(取得価額の95%)の撤廃」とは、耐用期間10年の固定資産の簿価は10年を経過した時点でゼロになることが許される様に変更することで、逆に、今まで何故許されなかったのかという感じもあります。現行では耐用期間終了時の簿価は10%以上である必要があります。そして、耐用年数終了後も更に減価償却を継続してもよい。但し、5%以下の簿価にするような減価償却をしてはならないという規定です。

なお、この減価償却基準は税額計算に使用する減価償却計算用です。会計上、財務諸表上の減価償却は税額計算の減価償却と違って構わないのです。企業は、自己の事業成績や財政状態を正しく表現すると信じる損益計算書、貸借対照表を作成すべきです。例えば、ある製造設備が設備そのものは8年使用できてもマーケットでは次々と新製品が発売されその製造設備は実質3年しか生産に使用できないと考えれば3年で減価償却をすべきです。もし、会計上の耐用期間が税務上より短ければ会計上の減価償却費が多くなり、企業利益は少なくなります。この結果、企業利益と税務上の所得金額及び納付税額は対応しなくなり、対応しない差額を繰延税金資産として計上することとなります。これが、税効果会計であり、上場企業は税効果会計を適用していないと、会計監査で問題が生じます。従い、減価償却制度の変更は本質としては企業利益には影響を与えないのです。

但し、実体として日本のほとんどの企業は耐用年数終了時に10%の残存価額を持つという減価償却方法を採用しているので、多分税制改正と同時に残存価額なしの減価償却方法に変更すると思います。また、そうしないとこの税制改正の恩恵を受けられなくなります。即ち、減価償却に関して税法は減価償却限度額を規定しており、損金計算をした金額以上には税務上も損金扱いできなくなるからです。

減価償却期間を短くし残存価額をゼロとすれば、減価償却費は大きくなります。しかし、その固定資産の取得から破棄までに至る減価償却費の合計は変わりません。費用合計が変わらないので、結局は、税額も固定資産の保有期間全体を合計すれば同じです。減価償却終了後は減価償却費がなくなるので、課税所得が多くなり、税額も多くなるのです。企業にとっての効果は、前の方の期間の税が安くなり、後の方の期間の税がその分増加することとなり、資金効果、利息効果があることから現在価値・DCFで考えれば有利になると言えます。

それと固定資産の減価償却が関係するのは、法人税だけではありません。所得税のうちで事業所得と不動産所得には当然全く同じことが言えます。だから減価償却制度の変更は、企業に有利と特別に言えるほどのものではないと私は思います。

2) 上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率の廃止

3.国民生活に関連する税制」では「(1)金融所得課税」のなかの「②上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率」において「期限到来とともに廃止し、簡素でわかりやすい制度とすべきである。」と、廃止という言葉を使って書いてあります。

預金利息は15%の所得税と5%の地方税が差し引かれて80%しか受け取れません。上場株式の場合は、受取配当金が7%の所得税と3%の地方税が差し引かれ、売却した場合は売却益に対して7%の所得税と3%の地方税が課税されます。株式の場合は、預金の半分の税しか払わないことになっているのです。

但し、2008年3月31日以降に受け取る配当金は所得税15%+地方税5%の合計20%が差し引かれ、株式の売却益(売却損がある場合は、売却損を控除した純利益)については2008年1月1日から所得税15%+地方税5%の合計20%の税率適用となります。即ち、再来年から預金と投資が同条件となるのです。少し前には、株式売却時の税は、売却価格の1%の所得税と0.3%の有価証券取引税のみという時代があり、嘗ては架空名義の預金や株取引が多く存在しました。しかし、IT時代の現代では米国のように総合課税をすべきと思います。

即ち、超過累進課税の適用で、所得はその原因が何であれ平等に課税するのが原則で公平課税がなされるはずです。公平は税において最も重要です。公平でなければ、バカらしくて税を真面目に納めたいとは思いません。社会を支える金であるとして社会貢献をしている気持ちで納めることができる税を私は望みます。本当は、株式売却益を総合課税で納付できれば20%より税を節約できるのです。何故なら、所有期間5年以上の長期譲渡所得は利益から50万円(短期譲渡所得がない場合)を控除した残額の1/2が総所得金額となるからです。即ち、税率を1/2にしたのと同じです。

しかし、この証券税制は政府税制調査会の提案通りに政府案が作られるかどうか不明です。何故なら、産経-自民税調 証券優遇の延長が大勢 道路特定財源は19年度にこだわらず のような報道もあり、政府案は与党と話し合いの上で作られますから。

一つ断っておきますが、これ全て個人所得税の話しです。法人税は、受取配当金も売却益も所得の計算に入れるので、軽減税はありません。

3) 減税?まさか?

実は、来年(2007年)は変なことが生じる人がでてきます。本年3月の税制改正で定率減税がなくなり、増税となりました。この改正で、住民税は一律10%となり、所得税の税率が従来の所得税と住民税の合計の税率を維持するように調整されました。住民税の特別徴収は6月から翌年の5月までです。本年3月の税制改正で住民税の税率が10%以下であった人は、来年1月から5月までは、その前の年の住民税を払うことから旧税率です。一方、所得税の源泉税は新税率で計算するので、今年より減額となる人がいます。定率減税が廃止されて増税となったはずなのに、来年の1月~5月は徴収される税金が安くなるのです。騙されているみたいですが。

どのような人かというと、課税所得金額が700万円以下位の人なので多くの人です。この水準は、給与のみの収入であれば1千1百万ぐらいでしょうか。例として、給与が1千万円であれば、給与所得控除220万円であり、所得控除を180万円とすると、課税所得は600万円程度となります。この人の場合、本年は毎月所得税38,000円と住民税31,700円が差し引かれていたとすると、改正後は所得税36,100円と住民税41,700円になるのですが、住民税の41,700円の適用は6月からですから、所得税が下がった分の毎月1,900円ほど1月から5月は手取りが多くなります。騙されるような話しです。

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2006年12月 1日 (金)

村上ファンド裁判

村上世彰被告とファンド投資顧問会社のMACアセットマネジメントに対する刑事裁判の初公判が本日30日に東京地裁で開かれました。

日経-村上世彰被告「無罪と確信」・東京地裁で初公判
朝日-村上世彰被告「無罪と確信」 検察側と全面対決の姿勢

村上ファンド事件には、様々な側面があると私は思っていますが、初公判が開かれたこと故、少しだけ書いてみたいと思います。

1) 容疑

証券取引法違反(インサイダー取引)と検察は言っていますが、これは何であるかについてです。

一般的にインサイダー取引と言われているのは、証券取引法第166条の違反ですが、村上被告が起訴されているのは証券取引法第167条の違反です。166条は、会社の役員や従業員である会社関係者が自分の会社の株式等を重要事実の公表前に有利に売買して利益を得ることを禁じた条項です。堤義明コクド前会長は証券取引法違反により懲役2年6月、罰金500万円、執行猶予4年で有罪となっていますが、堤義明による西武鉄道株の売買は、166条の違反です。

村上世彰被告はニッポン放送株の売買で証券取引法違反を問われているのですが、ニッポン放送の関係者から入手した情報(インサイダー情報)を利用したとされているのではなく、ライブドアがニッポン放送株を取得しようとしている情報を入手し、これを利用して株式売買で利益を得たとして起訴されたのです。

では167条はと言うと、続きを読むに入れました。でも、この167条を読んでもピンと来ないはずです。そもそもは、公開買い付け情報を事実の公表前に知って公開買い付けにおいて高く売って利益を得ることを禁止した条文だからです。ライブドアがニッポン放送株をToSTNeT-1による時間外取引により取得したのは、2005年2月8日です。実は、この前の2005年1月17日にフジテレビジョンが子会社化を目的に株式公開買付け(TOB)を開始することを発表していました。参考記事は、これを見て下さい。

11月22日のエントリーで紹介したヒルズ黙示録・最終章によれば、ライブドアが2月8日に取得したニッポン放送株は972万株であり、取得した相手は米サウスイースタン・アセット・マネージメントから348万株、村上ファンドから328万株、米ブランデンスから136万株等であり、村上ファンドから取得したのはこの時の1/3だったのです。

何故167条の違反になるかというと、「これに準ずる行為として政令で定めるもの」に該当すると言うわけです。この政令は証券取引法施行令であり、31条に議決権の5%以上を取得する行為を「これに準ずる行為」として規定しているのです。証券取引法施行令第31条も、続きを読むに入れました。

村上ファンドは当時フジテレビジョンによるTOBに応じて、ニッポン放送株を売っても良かった。しかし、ライブドアにけしかけて、フジテレビジョンに売るより高く売れるなら、その方が良かった。ライブドアが多額の資金調達は困難であろうと予測していたのだろうと思います。だから、ライブドアがニッポン放送取得をギブアップしても良しとしていたのだと私は思うのです。村上ファンドは、2003年7月頃からニッポン放送株を買い始め2004年10月以降に大量に取得を始めたようですが、ライブドアへの高値売却を狙っていたと言うよりは、もしかしたらフジテレビジョンへの高値売却を狙っていたのではないかと思うのです。

村上世彰被告が裁判の結果、証券取引法違反となるのか、私もよく解かりません。今後を見ましょう。

2) 何故村上世彰被告は認めたのか

これについては、村上被告自分の口から今回の公判で「事実に反して有罪だと認めて私一人の逮捕で済ませた。」と言っており、すごい演技をしたのだと思います。でも、実はもう一度、やっているのです。本年6月26日に保釈金5億円で保釈が認められ東京拘置所を出てきました。日経-村上世彰被告、21日ぶり保釈・保証金5億円にも、「同地裁は、同被告が起訴事実を大筋で認めていることなどから、証拠隠滅などのおそれはないと判断したもよう。検察側も準抗告しなかった。」とあるように、保釈の際には証券取引法違反を認めているはずです。例えば、共同-堀江前社長の保釈認める 保証金3億円はホリエモン保釈時のニュースですが、ホリエモンは有罪を認めていませんでした。だから、「裁判所が起訴事実を否認している被告の保釈を初公判の前に認めるのは異例。」と書いています。

「一旦有罪と認め、裁判で戦う。」そんな方法があることを、村上世彰被告は示したのかと思いました。

村上ファンド関連は他にも書きたいことはあるので、また今度書きます。

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