2006年12月22日 (金)

大淀病院の産科は来年3月末で閉鎖

10月20日-奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず
10月20日-大淀病院事件の続き
10月21日-大淀病院事件 (続)
10月23日-続続々 大淀病院事件
10月27日-真実の報道-大淀病院事

と本ブログで5回取り上げてきました。そして、本日は来年3月末に閉鎖することになったと報道されました。

朝日(関西)-奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える
読売-妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診
NHK(関西)-妊婦死亡 町立病院産科休診へ

私もそうですが、このブログを読んで頂いている多くの方は、このようなことになることを予感しておられたと思います。

「学校でのいじめ」が最近多く報道され、話題になっています。子供の世界は大人の世界を写している面があると思います。子供の世界に起きていることをよく見て、大人は反省をし、良い社会を未来を作っていかなければならない。大淀病院事件とは、「学校でのいじめ」に通じる事件ではなかったかと思うのです。大淀病院と産科医師とを攻撃して得られるものは何か?本当に悪いのは何か?教訓とすべきは何か?結論を必ずしも急ぐ必要はないと思うのです。重要なことは誤った判断をしないことです。

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2006年10月27日 (金)

真実の報道-大淀病院事件

もう少し大淀病院事件を引きずります。2チャンネルに大淀病院のカルテを下にして書いた文章というのがありました。

これの701、703、704、705です。

毎日新聞のスクープ記事はこれであったのですが、やはり私には筆が走りすぎていると思えます。なかでも、「この日当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。」の部分は、その後もこれを裏付ける情報はネットでも確認できず、情報源は何であったのだろうと思います。マスコミに情報源の開示を求めないが、情報が正しいことを確認した上で発信する必要があり、その情報に関する責任をマスコミは持つべきです。(誤報なら、誤報であったと入れることも必要。)

なお、10月21日のエントリー大淀病院事件 (続)の3)一つ前のエントリでの”4)  裏情報”の一部訂正でカルテのコピーが病院から報道陣に渡されたとありますが、これに関して2チャンネルの707も同じ趣旨を言っています。事実である可能性が高いと思うのですが、そうなるとマスコミとはバカ集団で真実を追い求めることが出来ない人達なのだろうかと思ってしまいます。

米国であれば、マスコミ各社は病院と医師から名誉毀損による損害賠償で訴えられたのだろうと思います。

これは、2006年5月17日の奈良新聞の記事ですが、今回の事件の背景を良く映し出していると思います。リンク切れにならないと思いますが、念のため、続きを読むに入れておきます。

「南和地域は、病院と診療所を合わせても町立大淀病院だけしか出産を扱う医療機関がない。」と言っていますが、南和地域とは奈良県南部の五條市と吉野郡の一市三町十村(五條市、吉野町、大淀町、下市町、黒滝村、天川村、野迫川村、十津川村、下北山村、上北山村、川上村及び東吉野村)の地域のことで、町立大淀病院産科の存在は貴重だと思います。2006年5月17日の奈良新聞の報道で伝えている奈良県の産科及び産科医不足が問題を引き起こしたと見るべきで、この現象は奈良県だけではないと思います。高校の履修単位不足問題と同じように日本各地に広がっているのではと思います。

医療において地域格差が拡大していっていると私は考えます。でもかけ声だけで無くならないのでしょう。根本的なところを良くして行かねばならないと感じます。これ以上の格差拡大は日本国民を悲惨な道に追い込んでいく恐れもあるのではと心配します。

本日の衆議院厚生労働委員会で、この事件に関連しての討議があったものと了解します。議事録を見て追って紹介します。

誰も知らずに問題が発生することは更に悪く、改善すら出来ない。その意味では、毎日新聞も貢献したことを認めます。

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2006年10月23日 (月)

続続々 大淀病院事件

またまた大淀病院事件について書いてしまいます。

(1)正義のマスコミ?

10月17日に報道があったのですが、毎日新聞のスクープだったのです。毎日新聞2006年10月22日支局長からの手紙:遺族と医師の間で(奈良支局長・井上朗)で「結果的には本紙のスクープになったのですが、第一報の原稿を本社に放した後、背筋を伸ばされるような思いに駆られました。」と言っています。

Webのニュースで各社の時間を見ると毎日新聞3時00分、朝日新聞12時13分、読売新聞13時1分、産経新聞13時03分でした。

報道されている内容は、事件を部分的に捉えているだけで、本質には迫っていないと思うんです。毎日新聞の支局長からの手紙の「背筋を伸ばされるような思い」とはよく分からないのですが、「やったー。万歳!」という感じではないかと思ったのです。

でも「病院のガードは固く、医師の口は重い。」とあり、取材したのは、遺族が中心であったと思うのです。新生児の誕生が8月8日で妊婦死亡が8月16日でした。2ヶ月以上経過しての報道です。だったら、一方のみの取材ではなく多方面の取材を行い誤解を与えない真の問題点や核心を突いた報道にすべきと私は考えます。他社も負けずにと報道しているが、同じ様なセンセーショナルな報道が多く、それに更に輪をかけたのがTV局であり、その上を行っているのがTVワイドショーです。

例えば、医師には守秘義務があります。「医師からは取材できないので、患者からの情報だけとする。」は偏り過ぎと思います。自分自身が患者だとしたら、医師には守秘義務を守って欲しいと思うはずです。さもないと、裸になって弱点をさらけ出せないはずです。医師と患者の信頼関係は重要です。医師が慎重になるのは解ります。

「マスコミは暴力です...」と言っておられるのは、いなか小児科医さんです。マスコミは良い社会をつくるために報道をして欲しいと考えます。

(2) 子癇発作

「元検弁護士のつぶやき」の中のコメントで山口(産婦人科)さんが、解りやすい解説をされておられるので、転載させていただきます。

浅学ながら、他の産科医が書き込みなさらないのでXXXさんに。

まず子癇発作というのは血管が締まって脳に血が行かなくなる状態です。当然脳以外の所でも血管が締まっていますから胎盤や腎臓、肝臓でも血流が極端に落ちます。従って一時的とはいえ脳全体が酸欠になっている上、さらに腎不全と肝不全がこれまた一時的とはいえ起こっているとお考えください。そうなれば脳浮腫(脳がむくむ)も起きますし、胎児の状態も悪くなります。けいれんが起きていれば呼吸状態も悪いでしょうから、胎児の状態はさらに悪いでしょう。母体がそのまま死んでしまうことだってあります。前にも書きましたがこれくらい重症だと大体1割死亡。ここまでで重症の子癇発作がどんな状態かイメージできたでしょうか?
で、医者の間では知られた事実ですが、脳梗塞の後血流が再開すると、そこで脳出血が起こることもあります。今回はこれではないかと推定しているわけです。
さらにさらに子癇発作というのは妊娠中毒症の妊婦に起きやすいわけですが、比較的軽症中毒症でも血が固まりやすくなって、ちょっとしたきっかけで体内に血栓が起きてしまいます。ましてや子癇発作時は、全身に微少な血栓が飛び散ったあげく、かえって止血機構が破綻して出血が止まらなくなるDICという状態も起きやすくなります。こうなったらもう多臓器不全から死亡へまっしぐらです。妊娠中毒症や子癇発作がどんなに危険なものか、おわかりいただけたでしょうか。私自身も遭遇経験はないので、ちょっと怖さを大げさに書いているかもしれませんが、間違っていたらどなたか修正してください。

というわけで、意識の戻らない重症の子癇発作患者を受け入れるというのは、並ではない覚悟が必要です。胎児も死ぬかもしれず、母体も死ぬかもしれない。しかも死ねばバッシングが待っている。おまけに前に書いたように、検察は「万全の体制でやれないところで危険な症例を引き受けるべきではない」と福島県立大野病院の事件で医師を逮捕したのですから、NICU,ICU,新生児専門小児科医、麻酔医、産科医数人ずつと、脳出血が明らかになった時点でさらに少なくとも脳外科医2名を直ちに用意できなければ受け入れ不能と回答するしかありません。野戦病院じゃあるまいし、「ベッドがなくても受け入れろ」という言葉の非現実性がお解りでしょう。
最後に外科医が脳をいじるのは全然無理。どこを切れば脳にダメージを極力与えずに血腫を取り除けるかなんて、脳外科医以外にはできない判断。それにこんな修羅場の帝王切開を専門医でもない外科医がやったら大変ですよ。「やったこともない手術をやった!そのため患者が死んだのだ!逮捕だ!」となるのが分かり切っています。

(3) 脳内出血

脳内出血を子癇と誤診したから、妊婦が死亡したなんて、そんな報道されているほど単純ではないことを多くの方は理解しておられると思いますが、この妊婦の脳内出血とはどのような状態であったのかm3という医師のブログ・掲示板に転載可として書かれていたというので、下記に掲げます。

今日、患者さんの死亡原因の診断を教えてもらいました。右脳混合型基底核出血で、手術としては脳室ドレナージが行われたようですが、かなり大きな出血だったため、回復され なかったそうです。
脳内出血の原因は、年齢から考えて、aneurysm
(動脈瘤)があったんだろうか。32歳といえば、aneurysm破裂の好発年齢ですよね。年齢から考えるとAVM(動静脈奇形)は、否定的で すし、予後は比較的いいはずですから。aneurysmは分娩時におこる頻度はまれだったな。そういえば妊娠20週まではAVMが多くって、30週から40週まではaneurysmが多いという文献もあったっけ。PUBMEDでももう一度調べてみます。
不幸にも亡くなられた方の既往のepisodeに何かなかったのかなと思いました。
()は私の注です。

大淀病院でこの患者の脳内出血に対処可能であったかに付いては、「元検弁護士のつぶやき」の中で、転載可として脳外科医(留学中)さんが書かれていますので、下記に掲載します。

脳室体外ドレナージだけであったのならば、大淀病院で可能です。
ただし、臨月の妊婦でなければ。
決断してから、準備、手術、回路の設置終了までは、急げば30分程度の処置ですが、この場合片方だけでなく、両側脳室をドレナージした方がベターなので、さらに15分ほど追加、さらに出血で脳室がシフトしていて一度で穿刺できない可能性なども考えると、処置のために「最低」1時間は予測しなければなりません。
そしてドレナージの最中に脳圧の急激な変化が、胎児の心拍数低下などの危機的状況を導く可能性なども考えれば、この処置は手術室で帝王切開と同時に行うべきです。
麻酔科も、NICUもない病院で、このような危険な処置は行うべきではありません。
さらに、いつ搬送先が決まるかもわからない状況です。
もし、CTで出血がわかったとしても、「母子の管理が十分に出来る施設へ一刻も早く搬送して、搬送先の手術室で処置を行ってください」というのが、正しい判断だと確信します。

また、視床から被殻を巻き込む大型の血腫で、かつ脳室穿破を伴っているタイプの脳内出血であれば、CTを撮れば見逃すことはありませんが、たとえ手術を行ったとしても予後は不良です。
出血の原因としては、高血圧性のものが第一に考えられます。若年者なので、脳動静脈奇形も鑑別しなければなりません。動脈瘤破裂の好発年齢は50代で、部位的にも考えにくいと思います。ただし、血腫で何が何だかわからなくなっていると思います。

いつかは起こりえる、そして起こるべくして起きた事故ですが、学ぶことはとても多いと思います。
問題点は、たくさん見えてきました。
少なくとも、このブログをご覧になられている方には、この産婦人科医を責めることは、何も生み出さないということを認識していただけるのではないかと思います。
そしてこれから生まれる命と母になる女性のためにも、今後どのような体制を整えていかなければならないかを考える必要があります。
それが、亡くなられた方と、残されたご家族に報いる、唯一の方法であると思います。

(追記)

たまたま見つけた文章です。

脳室ドレナージは要するに脳圧が上がらないように、水抜きをするということだから、それで 患者の家族が満足できるレベルの「救命ができた」とは言えない。てか、ふつうの人は救命=ふつうに生活できると思いこんでいるが、あくまでも救命=寝たきりであろうがなんだろうが「生きている」状態のことだ。

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2006年10月20日 (金)

大淀病院事件の続き

19病院で搬送の受入が出来なかったことから、相当色々なメディア等で取り上げられています。情報源による違いからなのか、記者の受け取り方の違いからなのか、編集方針の違いからなのか、実は本日の報道は様々です。

1) 妊婦、1時間以上放置けしからん

この朝日新聞-意識消失の妊婦、1時間以上放置 奈良・町立大淀病院は、「看護記録を見た日本産科婦人科学会の専門医は「意識を失った患者には医師が付き添い、原因を調べなければならない。けいれんが起きるまで1時間以上放置したのは信じられない行為」と驚く。」と書いています。

2) 奈良県産婦人科医会の発表「主治医にミスなし」

これも朝日新聞-産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡ですが、「記者会見した同医会の平野貞治会長は「失神とけいれんは、子癇でも脳内出血でも起こる症状で、見分けるのは困難。妊婦の最高血圧が高かったこともあり、子癇と考えるのが普通だ」と説明。「CTを撮らなかったのは妊婦の搬送を優先したためで、出席した理事らは『自分も同じ診断をする』と話している」と書いています。

3) 本当の話は?

大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長の話しを前のエントリーの3)で朝日新聞の記事を引用しました。同じ人が毎日新聞-奈良妊婦死亡:搬送先探し、診断不正確で遅れかでは、次のように言っています。本当は、どのような話しをされたのか、新聞ではまた聞きとなり怖いのでしょうか?最も、TVも一部のみをカットして報道するからこれも下手をするともっと怖いのですが。

末原部長は「脳内出血で母親の命が危ないと分かっていれば、産科より救命救急センター、大学病院を中心に搬送依頼した。搬送先が決まるまで待つ時間があるなら、CTを撮る時間もあったのではないか」と指摘している。

4)  裏情報

言葉は適切でないのですが、医療関係者が書いた掲示板にあった文章です。私も、この掲示板を直接見てはいないのですが、相当細かいことまで書いてあるので、真実味を感じます。(おそらく真実と思うが、その確証は取れていないとして読んで下さい。)

ソースが確実なきょう聞いた話。
当夜の当直は外科系は整形外科医、内科系は内科医、産婦人科は奈良医大から派遣の当直医。
患者さんは午前0時に頭痛を訴えて失神、ただ痛みに対する反応(顔をしかめる)はあった。産婦人科当直医は念のため内科当直医に対診を依頼、内科医は「陣痛による失神でし ょう、経過を見ましょう」ということになった。しかしその後強直性の痙攣発作が出現し、血圧も収縮期が200mmHgになったので、子癇発作と判断、マグネゾールを投与し ながら産婦人科部長に連絡した。部長は午前1時37分、連絡してから約15分程で病院に到着。以後二人で治療にあたったが、状態が改善みられないため、午前1時50分、母 体搬送の決断を下し、奈良医大へ電話連絡を始めた。
午前2時、瞳孔散大を認めるも痛覚反応あり。血圧は148/70と安定してきた。この時点で頭部CTも考慮したが、放射線技師は当直していないし、CT室が分娩室よりかな り離れたところにあること、患者の移動の刺激による子癇の重積発作を恐れ、それよりも早く高次医療機関をさがして搬送するほうがよいと判断、電話をかけ続けたが、なかなか 搬送先がみつからない。
午前2時30分、産婦人科部長が家族に状況を説明、そのあいだにも大淀病院の当直医や奈良医大の当直医は大阪府をふくめて心当たりの病院に受け入れ依頼の電話をかけつづけ た。家族はここで「ベビーはあきらめるので、なんとか母体をたすけてほしい。ICUだけがある病院でもいい」と言ったので、NICUを持たない病院にまで搬送先の候補をひ ろげ、電話連絡をとろうとした。家族も消防署の知り合いを通じ、大阪府下の心当たりの病院に連絡をとって、受け入れを依頼した。この頃には産科病棟婦長(助産師)も来院、 手伝いはじめてくれた。大淀病院看護師OGで患者さんの親戚も来院し、多くの人が集まり始めた。けれども受け入れてくれる施設が見つからない。担当医は当直室(仮眠室)か ら絶望的な気分になりながら電話をかけ続けたし、大学の当直医は大学の救命救急部門にまで交渉に行ったが子癇は産婦人科の担当で、我々は対処できないと言うことで受け入れ 拒否された。午前4時30分、呼吸困難となり、内科医が挿管したが、その後自発呼吸ももどり、サチュレーションは98%と回復した。その後すぐに国立循環器病センターが受 け入れOKと連絡してきたので、直ちに救急車で搬送した。患者さんは循セン到着後CT検査等で脳内出血と診断され、直ちに帝王切開術と開頭術をうけたが、生児は得られたも のの脳出血部位が深く、結局意識が戻らないまま術後8日目の8月16日死亡された。

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奈良の妊婦が19病院で搬送受入出来ず

奈良の大淀病院の妊婦が19病院で搬送受入出来ず、亡くなったという報道がありました。多くの報道は、TBSの19病院たらい回しにされ妊婦が死亡の様な内容です。

10月14日の救急医療ーどうなるので、救急医療についてのエントリーを書きましたが、同様な問題を含んでいます。

1) 経過

経過は以下のようなものです。

・8月8日午前0時過ぎ意識不明になる。
・子癇が疑われ、点滴を投与する。
・2時頃、点滴が奏功しないので県立医大病院に受入を打診したが、満床で受入出来ず。
・受入先を探す。
・4時半頃、19ヵ所目で大阪府吹田市の国立循環器病センターへの受入が決定
・6時頃、患者到着
・脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開を実施、男児を出産。
・妊婦は同月16日に死亡。

2) 子癇と脳内出血

メルクマニュアル家庭版の子癇の説明です。

妊娠中毒症の200人に1人は血圧が非常に高くなってけいれん発作を起こします。この状態を子癇(しかん)といいます。子癇のうち4分の1は出産後2〜4日目に起こります。ただちに適切な処置をしなければ、子癇は生命にかかわります。

妊娠中毒症は妊婦のおよそ5%にみられます。と書いてあるので、4000人に1人位の割合で子癇が見られるのでしょうか。

同じく、脳内出血を見ると以下のように書いてあります。

脳内出血は、脳の中での出血です。脳内出血は突然起こり、約半数の患者はひどい頭痛が始まります。

午前0時の段階で、脳内出血を疑わなくてはいけなかったかという点です。CT検査をしないと、脳内出血との診断は出来なかった。時間は午前0時ですから、もしCT検査をするのであれば、CTを扱える検査技師か医師を呼ばねばならなかったと思います。少し様子を見るとの判断で間違いはなかったはずと思います。

3) 搬送

午前2時頃、医師は大淀病院での治療はリスクが大きすぎるとして、県立医科大学付属病院に受け入れを要請したが、ベッドが満床で受入出来なかった。それから、19病院で搬送受入出来ずとなるのですが、この朝日新聞の記事に妊婦の搬送先を探した大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長の話しとして、以下の文章があります。

母体に脳出血がある場合、NICU、脳外科、麻酔科、ICU、産科の五つがそろった病院でないと受け入れが難しい。そんな病院は大阪にも5、6カ所しかない。

深夜、関係者の方々は懸命になって受入可能な病院を探されたのだと思います。ある程度、病状は判っている。意識不明であり、出産は帝王切開で行わねばならず、同時に妊婦の治療も行わねばならない。

4) 奈良県の産科医療状況ー医療が悪くなる

上記の朝日新聞の記事に奈良県の産科医療状況が手薄であることが書かれています。これが根本問題であり、奈良県だけの状況かという点です。

多くの医師の方は、医療は崩壊に向かいつつあると考えておられます。懸命に努力をして朝日新聞-奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題となるのですから。そして、マスコミにたたかれたら逃げ出したくなる。

医療サービスが低下すると困るのは誰でしょうか?国民のはずです。困らないのは誰か?金持ちは困らないでしょう。医療が全て無くなるわけではないし、国外で医療を受けることも可能です。格差社会が医療にはいることは悲しいことだと思います。

5) 関連医師ブログ

医師の方々がブログでは、どのように言っておられるか紹介しておきます。

元検弁護士のつぶやき-18病院が受け入れ拒否(大淀病院妊婦死亡事案)
<ブログ管理人さんは、元検事の弁護士ですが、医師の方が多く書き込みをされています。>
新小児科医のつぶやき- 奈良事件に誤診はあるか
へなちょこ医者の日記(当直日誌兼絶望日誌)-奈良の件追加
いなか小児科医-体制不備への着目
東京日和@元勤務医の日々-マスコミの魔女狩り報道が正しいのか?

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2006年10月14日 (土)

救急医療ーどうなるの

川崎市と川久保夫妻(報道では実名となっていませんが、このエントリーの中のリンクで実名がでてくるので実名を使います。)との間で同夫妻の長男(当時3歳)がこんにゃくゼリー窒息により川崎市が夫妻に3百万円の和解金を支払うことで10月13日に和解が成立したとのニュースがありました。

毎日新聞 : 3歳児窒息死:救急搬送受け入れ拒否…川崎市と両親が和解

朝日新聞 : 死亡幼児遺族 川崎市と和解

産経新聞 : 長男の窒息死で川崎市立川崎病院と和解

私が知っている限りの情報では次のような事件です。

2003年8月7日午前9時半頃に長男(当時3歳)がこんにゃくゼリーを、のどに詰まらせ意識を失った。救急車を呼んだ。救急隊はこんにゃくゼリーを取り除いて気道を確保した。しかし、心肺停止状態であった。川崎市立病院に受け入れ要請を行うが、当時川崎市立病院には熱性けいれんの患者がおり、蘇生に必要な酸素を送る設備が足りないので受入が出来ないと断った。他の5病院にも断られ、最終的に川崎市立病院が受入を決定した。(この間12分経過。心臓マッサージ継続。)しかし、蘇生せず午後7時に死亡した。

両親は1年と少し経過した2004年11月26日に横浜地方裁判所川崎支部に損害賠償請求訴訟を提起した。

救急患者が同時に重なることはあります。そんなとき病院はどうするか。どうすべきか。先行優先で悪いのか。二兎を追うことが正しいのか。救急医療とは、どうあるべきか。医療が助けることが出来ないこともある。

実は、恐ろしいのは救急医療でも医療崩壊が始まっていることです。過酷な勤務であると同時に、二兎を追え、三兎を追えと医師は攻められるから、医師が逃げ出している分野です。救急医療を閉鎖した病院もあります。ビジネスの言葉を使えば、リスクが大きすぎる。

3百万円の和解金が結果としてどうなるのか、更に救急医療を崩壊に向かわせるのか分からないのですが、川崎市が何故3百万円の和解を行ったのかは、横浜地方裁判所が和解勧告を行ったからです。ここに川崎市議会の議案第135号がありますが、「裁判所から職権による強い和解勧告がなされた」と書いてあります。

裁判所とは、世の中の正義のために存在するとは限らない。訴訟された事件が解決されれば、良い。司法に限界は存在するのですが、その限界を知らせしめてくれている事件かも知れません。断った他の5病院について、どのような事情があったのかは、知りません。他の5病院については、訴訟にはなっていないと理解します。

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追記:

本年4月1日から川崎市立病院は重症救急患者を24時間体制で受け入れる三次救急医療施設の指定となりました。この事故があったときは、三次救急医療施設ではなかった。ところで、初期(一次)、二次、三次の救急医療施設の違いは、続きを読むを読んで下さい。神奈川県の記者発表はこれです。

続きを読む "救急医療ーどうなるの"

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2006年10月13日 (金)

尾鷲総合病院ー産婦人科継続

尾鷲総合病院の産婦人科は継続することになったと報道がありました。

伊勢新聞 : 産科医2人が着任 市立尾鷲総合病院 休診なく存続へ

中日新聞 : 尾鷲病院の産婦人科医確保-市長、奨励金の有効性訴える

ということで、尾鷲市の人々(特に妊婦の方々)にとって一安心ではないかと思うのです。

以前、9月3日の産科崩壊(その3)-尾鷲市が産科医不在にと9月17日の産科医師-尾鷲総合病院 の2回のエントリーで取り上げていたことから、継続になったことを報告します。後任の産科医のうちの一人の医師は来年の4月に着任となるようですが、それでもいるといないでは全く違うと思います。

本日NHKは”地域発 金曜特集「医師が足りない~崩壊する地域医療体制~」”という番組の中で尾鷲総合病院の産婦人科継続のことを取り上げていたのですが、尾鷲総合病院のことだけではなく、全てでしょうが問題を正面から取り上げていないように感じました。特に、コメントを付すにあたって。例えば、尾鷲市の財政が6千万円の医師の報酬のために苦しくなるが、正当化されるかとの言い方です。そう言う面はあるでしょう。しかし、本質は何が問題であるかであり、このことについては、掘り下げていないように思うのです。

(NHKは報酬がいくらが妥当かなんてコメントできる程、この件を調査していないと思うのです。前任の医師のことは全く言及していませんでした。)

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2006年9月17日 (日)

産科医師-尾鷲総合病院

9月3日に尾鷲市立尾鷲総合病院の産科医の契約更新が不調となったことを書きました。

その産科医との話しとして、中日新聞の取材に応じ、1年間の勤務状況や契約の経緯、現在の心境などを語ったとして、9月16日の中日新聞に記事が掲載されました。

これです。

「休みも年末の2日間だけだった。」と語っておられます。産科医不足が最大の根底にあるのでしょうが、その結果としてのしわ寄せは誰にいっているのかを考えなければいけないのでしょうね。今は、地方なのでしょうか?こんな労働条件では誰も産科医になろうとしないから、産科医不足は益々拡大する。地方から更にどこに拡大していくのでしょう?

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2006年9月 3日 (日)

産科崩壊(その3)-尾鷲市が産科医不在に

尾鷲市立尾鷲総合病院の産科医の契約更新が不調となり、10月以降、同市で出産ができなくなる見込みです。先ずは、次の記事を参照下さい。

伊勢新聞-産科医と契約できず 市立病院産婦人科10月から再び休止 尾鷲市

中日新聞-来月以降休診も尾鷲総合病院の産科医、交渉決裂

読売新聞-尾鷲の産科医 不在に 来月から

読売新聞-鷲市 産婦人科医問題 不安募らせる市民

年間5520万円の契約だったが、更新が成立しなかったとのことです。結果、読売新聞は妊産婦は車で約1時間の公立紀南病院(三重県御浜町)か、民間病院のある松阪市まで2時間かけて通わなくてはならなくなると言っています。

でも、連日病院の仮眠室に泊まり込みで、全く休みがなかったという状態のようです。それが何の改善もなく継続するのであれば、人間として嫌になるだろうと思います。使命感でやってもどこかに限度がある。

長い間、箱物投資で、建物を作れば中は自然にできあがるものだと、税金をそういう感覚で土建工事にばかりつぎ込んできたのだと思うのです。ある日、気が付くと最も大事な中身が無かったというイッソプ物語の世界に私たちはいるのではないかと思ってしまいます。

本件について、神戸の開業医の方のブログ「小児科医のつぶやき」のエントリーやっぱりそうなるか続やっぱりそうなるかで医師から見た本件についての感想を述べておられます。続やっぱりそうなるかで引用されておられる議事録はこれです。

一つの市だけで解決できない。根本問題を解決しなければどうしようもないのだと思うのですが。

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2006年8月27日 (日)

「堀病院」事件(その2)

昨日は産婦人科というエントリーで「堀病院」事件に関連して考えるべきこととして産科医療の現状を私なりに記載しましたが、本日もこの事件で言われている無資格診療について考えてみることとします。

堀健一院長他が25日に記者会見し、「患者や妊婦に不安を与え、深くおわびしたい」と陳謝したと報道されています。無資格診療についての言及がどうであったのか、知っていませんが、無資格診療とは、何であるのかについてこのエントリーでは考えてみたいと思います。

(1)保健師助産師看護師法

保健師助産師看護師法の違反として、神奈川県警は家宅捜索を行ったのですから、先ずは法律を見ておく必要があります。その第1条に法律の目的が規定されており、この意味は私にも十分理解できます。

第1条  この法律は、保健師、助産師及び看護師の資質を向上し、もつて医療及び公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする。

問題となっているのは、次の第3条と第5条です。

第3条  この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

第5条  この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

実は、解ったような解らないような文章なのです。但し、今回の議論については、第37条も読んでおいた方がよいと思うのです。

第37条  保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

(2)厚生労働省医政局看護課長通知

ところで、看護師は妊婦の世話が全く出来ないのか、ある程度は出来るのか法律を読んで、解らないので、どうするか。昨日、私は法律の解釈は司法(法廷)でないと最終的には決められないと申しました。その通りなのですが、第3条、第5条を読むと厚生労働大臣の免許を受けてとあり、例えば、第14条第1項に次のような条文もあります。

第14条①  保健師、助産師若しくは看護師が第9条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることができる。

厚生労働省は助産師、看護師等の免許を与え、取り消すことができる権限を持っており、この業務を行うためには、第3条及び第5条の助産師及び看護師の業務の範囲についても厚生労働省としての統一見解を持つこととなります。持っていなければ、保健師助産師看護師法に関する厚生労働省としての仕事が出来ないことにもなるからです。

昨日のエントリーの(4)の緑部分の冒頭の平成14 年11 月14 日付けの文書とは、厚生労働省内部の文書です。何を言っているかというと、次の通りです。

表記について、別添1の鹿児島県保健福祉部長からの照会に対し、別添2のとおり、回答したので御了知の上、貴管下の病院、診療所への周知徹底及び指導方をよろしくお願いしたい。

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別添1

下記の行為については、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)の第3条で規定する助産であり、助産師または医師以外の者が行ってはならないと解するが貴職の意見をお伺いしたい。

(1) 産婦に対して、内診を行うことにより、子宮口の開大、児頭の回旋等を確認すること並びに分娩進行の状況把握及び正常範囲からの逸脱の有無を判断すること。

(2) 産婦に対して、会陰保護等の胎児の娩出の介助を行うこと。

(3) 胎児の娩出後に、胎盤等の胎児付属物の娩出を介助すること。

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別添2

貴見のとおりと解する。

長くなってしまってお詫びします。(これらの文書は日本産婦人科医会ウェブhttp://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/TAISAKU/kome0410.htmから取りました。)

助産師、看護師の第3条、第5条の解釈については、法廷で争われてないし、法廷で争うとしても単純に線引きをすることが出来ないから、やっかいです。当事者間で問題が発生しないなら、法廷に持ち込む必要が無いと言えます。うまく機能しているなら、それで皆Happyであり、わざわざ問題を起こす必要もないからです。

(3)日本産婦人科医会の要望(見解)

昨日も引用した日本産婦人科医会の文書(日本産婦人科医会2005年9月5日づけ産科における看護師等の業務について)が産婦人医会の意見であり、2004年9月13日にも同様な医政局看護課長通知があり、日本産婦人科医会は2004年10月8日に要望書(看護課長通知「産婦に対する看護師業務について」に対する要望書)を提出しています。

(4)私のコメント

以上を読んで頂いた人には、「看護師の仕事でこれが無資格診療だ。」と決めることの困難さをお解り頂けたと思います。

最も重要なことは、第1条の「医療及び公衆衛生の普及向上を図ること」であると私は考えます。そして、我々が安心して医療を受けられる制度を維持、発展させていくことであると私は考えます。助産師・看護師の仕事の内容も、時代と共に変化すると思っております。医療機器の進歩もあるでしょうが、医師不足、助産師不足の解決の方法として人の養成も必要ですが、医師・助産師・看護師が良い連係を保ったチームワークでコメディカルとして仕事をしていただくことも重要なことと思います。

「厚生労働省に任せておけば」とか「私には何もできない」或いは「私の問題ではない」というのは、危険な気がするのです。又、マスコミに惑わされることにも気をつけた方がよいと思うのです。「本質を突かないさも解ったように発言するTVのコメンテーター」と言った人もおります。

安心できる医療を求めていきたいと思います。法は、国民のためにある。法の制定は国会である。そして法のなかには国民の生活や活動に直接関係するものも多い。法を解釈し、法の正しい運用を行うのは、最終的には国民であると私は考えます。主権在民の下に、良い医療、安心出来る医療を求めていきたいと思います。

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